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<米国>ブッシュ政権が気象学者に圧力 民間団体が調査公表 [ 毎日新聞 01月31日 11時47分 ]
【ワシントン和田浩明】ブッシュ米政権下で連邦政府機関に勤務する気象学者のうち150人が、過去5年間で延べ435回にわたって「気候変動」という言葉を報告書から削除したり研究結果を政権の方針に合わせるよう求められるなどの「政治的介入」を経験していた。米民間団体「憂慮する科学者同盟(UCS)」などが30日公表した調査で明らかになった。
ブッシュ政権は温暖化防止対策を定めた京都議定書から離脱し、最近まで地球温暖化と経済活動の因果関係を疑問視する姿勢を維持していた。昨年11月の中間選挙での与党共和党の大敗を受け、大統領は23日の一般教書演説で温暖化は「深刻な問題」との認識を示したものの、連邦レベルでの温室効果ガス規制には依然難色を示している。UCSは今回の調査で「政権ぐるみの気候科学への介入が明らかになった」と同政権を厳しく非難した。
調査結果は下院政府改革委員会の公聴会でも報告された。それによると、約300人の政府関係機関の気象学者のうち、46%が「気候変動」「地球温暖化」という言葉を削除するよう圧力を受けたことがあると回答。43%が、研究結果の科学的意味づけが変わってしまうような内容の変更を強いられていた。25%が、介入の結果、科学者が辞任したり研究への参加を辞退した例を知ったり経験したりしていた。
公聴会では05年まで米政府機関の気候変動研究に携わったリック・ピルツ氏も証言。米石油業界関係者でホワイトハウス環境評議会の幹部が、研究報告書に手を入れて地球温暖化の影響の印象を弱めようとした、などと主張した。
政府改革委のワックスマン委員長(民主党)は、ブッシュ政権が気象関連研究の結果を操作しているとの批判が、長年あったと指摘。同委が調査目的で関連書類を求めてもホワイトハウスなど連邦機関が拒否している、と強い不快感を示した。
コメント:
今回の問題は、地球温暖化という深刻な問題に対する介入であったために、これほどの関心を呼んでいるのだと思う。しかし、研究内容に対するある程度の国家介入は、他にも目立たない形で行われているのではないだろうか。
例えば日本では、科学研究費助成制度などに基づいて、国家が特定の研究分野を奨励している。原子力関連の研究分野にも巨額の予算がつけられると聞く。
科学分野は専門性が高いので、国民の関心を得にくい。そのために国民による科学行政への監視が行き届かない。例えば、ナノ物質の危険性の問題は、今のところほとんど議論されないまま、化粧品などの製品として出回っている。ナノ物質は、遺伝子操作食物に劣らぬ危険性をもつ可能性があるが、直接口にはいったり、目に見えて影響が感じられたりしないので、一般市民の関心を引きにくいのである。
先端科学の商業利用は、現在当たり前のように行われているが、極めて大きな問題を抱えている。新技術の開発には安全性の検証が必要であるが、それが商品として世界的に普及した場合、安全性の検証が不可能になるからである。地球全体を実験場にして安全性を確認するなど馬鹿げている。危険性が確認されたときは、すでに手遅れだからだ。
産官学の連携による技術開発や商品開発は、安全性の検証の量と質を低下させる傾向がある。金儲けを急いで、新技術の開発と普及が野放しになる恐れがある。こんなことは、既に30年以上前から指摘されてきたが、もはや忘れ去られてしまったかのようだ。技術立国日本などと臆面もなく唱える識者が増えたが、こうした問題をどのように考えているのだろう。
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