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土生神社・森からの手紙・平成二十一年例大祭号
地域の歴史と伝統に
感謝と誇りの気持ちをこめて
土生神社宮司 阪井健二
お祭りの季節となりましたが、今年の岸和田旧市地区のお祭りは日程をめぐって夏まで揺れましたね。結局お彼岸にかかる日程で行われることになりました。お彼岸にだんじりを曳くことに基本的に私は反対ですが、今年の岸和田祭が無事に行われるように祈らずにはおれません。
こちらの十月祭礼は今年七地区全体の年番長を土生町の札本惣太郎氏が務められるということで、地元としても無事故無違反はもとよりいつもに増して麗しいお祭りにして戴きたいと願っています。
今年の十月祭礼のポスターは例年のように六覺千手氏の作品で土生町のだんじりがモデルになっていますが、よく見るとポスターの絵の中の道路のミラーに東岸和田駅前の再開発である防災街区整備事業の完成予想図が映っているのが目に止まりました。現在その事業の工事が進行中ですが、四月二十二日東岸和田駅東地区防災街区整備事業防災施設建築物新築工事の起工式を当神社より出張して行いました。更に八月二十日には東岸和田駅付近高架化事業の安全祈願祭も行いました。これからいよいよ街の姿が大きく様変わりしていこうとしていますが、こうした節目に神事を執り行うのは単に工事の安全や街の発展を祈るだけではなく、どんなに時代や地域が変化しても変わることのない大切なものがあり、いつも神様に見守られて地域が存在しているということをあらためて認識し忘れないようにするためなのです。不変のものをよりどころとするからこそ、我々は自分の姿を見失うことなく変化し発展していくことが出来るのです。
この現在のJR東岸和田駅は昭和五年六月十六日開業当時は土生郷駅でした。ところが昭和七年阪和岸和田駅と改称、昭和十五年南海鉄道に吸収された際東岸和田駅となり、その駅名をその後の国鉄もJRも引き継いでいます。現在岸和田市域の駅名を見ると、JRは東岸和田ー下松ー久米田 南海は蛸地蔵ー岸和田ー和泉大宮ー春木となっていて東岸和田以外はすべて駅の所在地に由来する名前で、土生の駅だけ岸和田に従属するような駅名になっています。せめて今回高架化で新しい駅が出来る機会に東岸和田駅に()で土生の名を入れるように地元から提案してみてはどうでしょうか。
岸和田よりも土生の方が古い歴史と伝統があるのです。岸和田旧市と同じようにだんじり祭をしていても、その歴史と伝統に感謝と誇りの気持ちを込めてお祭をすることが大切だと思います。
現在はお祭りというとパレードなどのだんじりの曳行がメインになってしまっていますが、本来各町の氏神様の例祭に伴う神賑わいの行事がだんじり祭です。神賑わいと言っても神事の一部です。現在ではだんじりが主役になって宮入り神社なんて書いてあったりしますが、氏神様の例祭にだんじりが曳き出され宮入りするのであって本末転倒になっています。氏神様に最大限の感謝の気持ちを捧げて神事を行い、だんじりを曳き出して氏神様の大御心をなぐさめると共に氏地を曳行して氏子が協力して元気にお祭りを行なう姿を氏神様に見て戴き喜んで戴くのが祭礼です。土生町はとにかく東岸和田駅前に集うだんじりのほとんどは自町や氏地を離れて見物人の多いところで曳行するのが祭礼の中心になっているのは時代の流れや広い地域で一つになってする意義を考えればやむを得ないと思いますが、お祭りの本来の意味からはずれていることを認識しておく必要があります。そしてパレードを行うところが土生神社の氏地である以上、その神様に礼を尽くした上で今後も祭礼が行われていくようにするべきだと考えています。
修斉地区のだんじりは試験曳き 曳き出し 本祭の午後と土生神社の横を通過して駅前に下りていきます。毎回私は神社の鳥居前で各町のだんじりを迎えますが、どこの町もパレードを行う土地の神様の前を通っていくという意識がないようでただ通過していくだけです。私が宮司を務める矢代寸神社の氏子も三町あるわけですが、矢代寸神社の宮司としてもこのことは残念なことです。
今年は土生町の札本氏が十月祭礼の年番長ということで年番の役員がそろって土生神社で安全祈願をすることになっていますが、今後も旭・太田、修斉両地区の東岸和田祭礼年番としてパレードが行われる地元の土生神社で毎年安全祈願を行って戴きますように希望します。
七月十日十月祭礼年番の懇親会に出席させて戴きましたが、年番長や警察署長の挨拶の中にだんじり祭はすべての人が歓迎しているわけではない、祭に参加しない人に配慮するようにというお話しがありました。都市化している地域の現状ではそうなのだと思いますが、本来その地域に住むすべての人を守って戴いている氏神様の一年で一番大切なお祭であり、地域すべての人のお祭です。今後そういう意識が地域に広がり深まるように神社からも努力していかなくてはいけないと思います。土生町に住んでおられる皆様はだんじりに関心がなくても例祭の日には土生町の氏神様である土生神社にお参りして戴きたいと思います。
土生神社は昔から土生町一町だけの氏神様です。一町でこれだけの規模の神社を持っている町は近隣にはなく、そこに土生町の歴史と伝統がよく現れていると思います。
土生神社には主祭神に菅原道真公をお祀りし、合わせて武甕槌神(たけみかづちのかみ) 経津主命(ふつぬしのみこと) 天児屋根命(あめのこやねのみこと) 比叱大神(ひめおおかみ)の春日四神 品陀別命(ほんだわけのみこと)をお祀りしています。境内には神明神社、神武天皇社をはじめたくさんの末社があります。こうした神様のほかに氏神様にはこの地域に代々住まれた多くの先人の御霊が神様となられて鎮まっておられると思います。
神社の信仰は個人の信仰ではなく、祖先から代々続く縦のつながりと、地域の横のつながりによって守られている信仰です。この縦と横のつながりを守る感謝と助け合いの心を伝えることこそ地域の伝統を守ることであり、お祭にそれが象徴されていると思います。
今年のご祭礼も氏神様に最大限の感謝の気持ちを捧げて戴きまして安全に麗しく厳かに行われますように祈念申し上げます。
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