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土生神社 ・森からの手紙・平成二十四年早苗月号
 自然と共に生きることと
   地域の伝統を守ることは一つ
                       宮司 阪井健二
 この通信を書き始めた五月二十一日は日本国内で二十五年ぶり、本州の広範囲で見られるのは九百三十二年ぶりという金環日食が見られた日です。ふだんお日様やお月様への感謝の気持ちを忘れがちな私はこんな時だけ騒ぐのも申し訳ない気がしましたが、神前で朝拝をしていると少し陰ってきていつもと違う静寂の雰囲気に森の中が包まれ、間もなく木漏れ日に変化が現れました。美しい輪になって揺れる木漏れ日は神秘的でさまざまな不安に揺れる人の世にいつも寄り添い支えて戴いている大自然の姿を映し出しているようにも感じられました。
 
 ところで四月に宮城県沿岸部の被災地を訪問した際、東松島市宮戸島の月浜地区を訪ねました。月浜地区に行ったのは震災後さまざまな被災地支援活動を行ってこられた仙台の大崎八幡宮の小野目宮司さまからご紹介を戴いたからです。大崎八幡宮では震災前から月浜で生産されている養殖の海苔を撤饌として使っておられたことから交流があったのです。月浜地区は三十八戸あった家のうち三十五戸が昨年の大津波で流されてしまいました。幸い犠牲者は一人も出ませんでしたが、半農半漁の地区で夏は浜が海水浴場として賑わい地区の家の多くでは民宿を営んでいました。現在地区の皆さんは仮設住宅にお住まいで今後近くの山を開発して高台に移転することが決定しています。津波で船や漁具なども流出してしまいましたが、若い人達が中心となって海苔養殖の復興プロジェクトである月光プロジェクトが動き出しています。私が訪ねた時もボランティアも参加して海苔養殖の筏を製作しているところでした。
 
 この月浜地区で特筆すべきことは、地区に「えんずのわり」という伝統行事が残されていることです。これは地区に住む小学一年生から中学三年生までの男の子が毎年一月十一日から六日間「おこもり」という子供だけの共同生活を送り十四日には祝福の言葉を唱えながら集落を巡る。そして十六日の未明「鳥追い」をして「えんずのわり」は終了するとのこと。「えんずのわり」とは「意地が悪い」という意味で農作物を荒らす意地の悪い鳥を追い払う小正月の行事ですが、意地の悪いのは鳥だけでなく今回の津波のような災害もそうで、子供達の通過儀礼として共同生活を行うことが緊急時の訓練にも自然となっているようにも感じます。「おこもり」は鎮守神の五十鈴神社の脇にある岩屋で行われるのですが、今年は夜の宿泊だけは仮設住宅の集会所で行われたようです。こうした伝統行事が残されているからこそ地域への愛着心も育ち若い人達が地域に残って地元の漁業を復興していこうとしていることにつながっているのではないでしょうか。しかし子供達の数が減っているのも事実です。
 
 震災後交流させて戴いている釜石市箱崎町白浜地区の漁師のⅠさんご一家を今月訪問させて戴きましたが、箱崎町の漁業も少しずつ復興しているようで津波で壊滅した港の漁業施設も復旧し再開し始めている様子でした。イサダ漁が終わったところで、私が訪ねた日はちょうどウニの口開けの日 仮設住宅でおいしいウニをご馳走になりました。何も力になれないのにおもてなしを受けて申し訳ない限りなのですが、四季折々の海の恵みを得て暮らしを立てていることにⅠさんは感謝の気持ちを持っており、海での安全を祈る気持ちと共に神様への深い気持ちを感じさせて戴きました。Ⅰさんは第一次産業の良さや大切さがこれから見直されると思うと言われました。
 
 被災地の光景は一年前とあまり変わっていないところが多いように感じますが、自然と共に生きるということと地域の伝統を守ることは一つのことだということを東北の被災地で学ばせて戴きました。そして災害を通して自然と共に生きる 歴史と共に生きる 地域(人々)と共に生きる心を新たにしながら生きてきた日本人のあり方を東北の人達は今も受け継いでおられました。 
 
 大槌町で臼澤良一さんという方と出会っているのですが、臼澤さんは津波で流されながら九死に一生を得た方です。神様に生かされたと感じ地元復興のボランティアに参加 現在仮設住宅に住まわれながら遠野まごころネットの一員としてご活躍されておられます。今回の訪問で神社の総代会に出席される前の少しの時間お目にかかってお話を伺いましたが、ボランティア活動は自分がしているというより神様にさせられているという感覚だそうで、この震災は日本人の原点に帰ることが大切 人間は神様に生かされていることを忘れている 日本人は鎮守の森を中心に助け合うことで生きてきた 伝統芸能などもそこから生まれた 今は復興も他人まかせになっており復興計画に私達の魂がこもっていない 地域が変わらなければ国は変わらないと言われました。神様に生かされているのだから他人まかせにしないで復興に向けて一人一人の使命を果たしながら助け合うことが大切なのだと教えて戴きました。
 
 今回の震災報道で話題になった宮古市姉吉地区も訪ねてみましたが、昭和八年の大津波で大きな被害を受けてから地区に立てられた「此処より下に家を建てるな」の石碑の教えを守って今回も被害がありませんでした。海まで約八百メートルの曲がりくねった坂道が続いており集落からは海が見えません。漁業を生業とする人ならもう少し海に近い海の見える処で暮らしたいと思うのではないかと思うのですが、目先のことだけにとらわれないで自然と共存する歴史を生きている集落。私達にも学ぶことがありそうです。
 
 被災地や東北に限らずどこの地域でも日本人はその地域の自然や気候風土との関わりを大切にし、感謝と慎みの気持ちを持って自然の恵みを戴きながらその地域にふさわしい暮らしを営み歴史を築いてきたのです。それは神様と人間の協働の営みと言ってもよく、地域の自然と歴史に私達の暮らしが守られていることの象徴が地域の神社の存在です。地域の神社からいつも神様と先人が地域の私達を見守って戴いており、そのことに感謝してたとえ月に一度でも地域の神社にお参りをし、地域の自然や歴史を意識するなら、日々の暮らしに目先だけでない視野が広がってきて心も豊かになり、災害などが起きた時も必ず大きな力を与えてくれるはずです。

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末社稲荷神社の瑞垣が虫喰いなどで傷んできましたので改修工事をすることになり、今日工事前の清祓式を行いました。

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昨日鯉の奉納がありました。
これまでの奉納は鯉が水になじまずうまくいきませんでしたが今度こそうまくいきますように

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