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デンマーク王立歌劇場にて、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚(Le Nozze di Figaro)」を観ました。デンマーク語では「Figaros bryllup 」というらしいです。 Stage director: Kasper Bech Holten Set designer: Steffen Aarfing Costume designer: Marie í Dali Lighting designer: Jesper Kongshaug Conductors: Thomas Søndergård Figaro: Ludvig Lindström Susanna: Gisela Stille Conte Almaviva: Audun Iversen Rosina, Contessa Almaviva: Ylva Kihlberg Cherubino: Elisabeth Jansson The Royal Danish Opera Chorus The Royal Danish Orchestra このフィガロの結婚、まず、音楽的には、軽快で颯爽とした、いい演奏だったと思います。 まず序曲が、速めのテンポで軽快に始まります。 指揮者のThomas Søndergård というかた、初めて知りましたが、きびきびとしたわかりやすい指揮ぶりで、オケをうまくリードしてます。 歌手の皆さんも、若々しくていいですね。 フィガロにしてもスザンナにしても若い役なのですから、あまり年配の大御所の歌手が演じるには無理があると思います。 今回は、実に役にマッチしたいい声の歌手の方でした。 というわけで、今回のこのフィガロ、もし音楽的にどうだと言われれば、「いい演奏だね」で終わりです。 しかし・・・・・・ どうですか!? なんですか!? なんなんだ、これは!?!?!?! そう、今回のフィガロの結婚、思いっきり現代風な演出になっているんですねぇ。 なんと、この写真が、フィガロとスザンナです。 フィガロの服装にご注目! なんと、このフィガロ、サッカーチームという設定になっているんですね。 フィガロの結婚と言えば、伯爵家の使用人のフィガロとスザンナが結婚するのだけども、伯爵がスザンヌに何かとちょっかいを出すもので、フィガロ、スザンナ、伯爵夫人の嫉妬心を利用して伯爵を懲らしめようとするというはなしなんですが・・・ 確かに、伯爵は伯爵と呼ばれていますから、今回のフィガロでも、伯爵のままです。 台詞も音符もモーツァルトが作ったままなのに、設定が、すっかり変えられている。 こちらの写真は、スザンナとケルビーノ。 ケルビーノはお調子者で、城内のいろんな女性にちょっかいを出し、ついに伯爵夫人にまでちょっかいを出したために、伯爵に軍隊の士官に任ぜられセビリヤに飛ばされてしまうという役です。 これが今回のフィガロでは、別のサッカーチームにトレードされるということになってしまう。 もちろん、音符も台詞もすべてモーツァルトが作ったとおりなのです。 ただ、衣装やら小道具やら、演技やらで、それとわかるのです。 テキストが全く同じなのに、文脈が全く変えられてしまっている!! こちらはバルトロとマルチェリーナ。 第一幕で、マルチェリーナが、聞こえよがしにスザンナの皮肉を言うシーンがありますが、今回は携帯電話を片手に電話の相手とスザンナのうわさ話をするというシーンになっていました。 ここでも、音符も台詞も変えていないのに、文脈が完全に変えられている!! こちらが伯爵と伯爵夫人。 お互いに伯爵だの伯爵夫人だのと呼ばれてはいますが、サッカーチームのオーナー兼スター選手か何かかなという感じの設定になってまして、きっとサッカー好きの大富豪か何かなのだろうと納得してしまいます。 ここでも、音符も台詞も変えていないのに、文脈が完全に変えられている!! 唯一難しいのは、伯爵がスザンナと姦通することで、いったん自分で廃止した領主権(いわゆる初夜権)の復活を狙っているという部分です。 しかし、考えてみると、台詞としては「あの権利」くらいの遠回しな言い方しか出てこないのですね。 モーツァルトもさすがに権力に面と向かって対決するような台詞は入れにくいので、遠回しな言い方しかしていないというわけでしょう。 おかげで、なんとでも解釈が可能になるというわけです。 いやぁ、ほんと、今回のフィガロの結婚には驚かされました。 音符も台詞も一つも変えていないのに、文脈を変えることで全く違った意味を持たせてしまう。 もし今回のフィガロを、CDにでもしたなら、誰もなんの疑問も持たずに、「ああ、フィガロの結婚だね」と言うでしょう。 こういうのをテキストの自律性と言うのでしょうか。 ほんとに、音符も台詞も一つも変えていないんです。 ただ文脈だけが変わっていて、そのために意味が全く変わってしまう。 これだけ矛盾なく、すべてを変換できる解を見つけた演出家の能力には脱帽です。 いやぁ、オペラはこういう楽しみ方もできるんですね。 面白いものを見せてもらいました。 ※今回の記事の写真は、デンマーク王立歌劇場のウェブサイトからお借りしました。
http://www.kglteater.dk/Forestillinger/Opera/Opera_08_09/Figaros_bryllup.aspx |
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おもしろい!!!
俄然、興味が湧きました!!!
蜷川幸雄脚本の歌舞伎・・・いやいや工藤官九郎脚本の歌舞伎・・・といった感じでしょうか。<軽重い>現代風なら母のような古典に疎い人間だって入りやすいですもんね。^ο^
目も耳も知識も豊富なHosoiさんがずっこけておられる様子も
W画面で見てみたいものです。(笑)
フィガロ役の方・・・カッコいいです!!
2009/3/29(日) 午前 8:16
現代風歌劇の演出はもう定番になっていますね。
私は伝統的な舞台と衣装・時代設定が
やはり見ていて居心地が良いです。
ただ、オペラファンの方の中には、そうした演出の妙味も
楽しみにされる方もいらっしゃるんでしょうね。
2009/3/29(日) 午前 9:43 [ 名無しの権兵衛 ]
母さん
フィガロに限らず、今回は出演者の皆さん、結構かっこよかったですね。やはりサッカーチームという設定ですから、それなりにスポーティでないといけないのかな?
いや、とにかく面白かったですよ。
2009/3/29(日) 午前 11:31
リッチーさん
確かに現代風の演出は定番だとは思うのですが、衣装がモダンだとか、柱一本とライティングだけでいろんな場面を象徴的に表すとか、そういうものが多いと思うんです。
今回のように、完全に原作のもっている意味を変えてしまうような演出というのは、果たして許されるのかどうか、ぎりぎりのところだと思うんです。しかし原作の改編はしていないわけですから、あくまで解釈の範囲内にとどまっているんですね。原作を改編せずに、よくぞここまで別物に仕立て上げたという、解釈の妙というかなんというか。それがとっても面白かったです。
もっとも、一緒に観ていた同僚は「なんじゃこりゃ?」と言って気に入らない様子でした。
とか言いながら、私も、たまには古風な演出のオペラを観てみたいとも思いますね(笑)
2009/3/29(日) 午前 11:40
何度もスミマセン。
演出の方に気が取られて肝心な音楽とか劇が楽しめないと言った事になっては本末転倒ですね。
勢い演出家の自己満足(失礼!)になっている舞台もたまには見かけます。「演出」の為のオペラかなって・・・(笑)
2009/3/29(日) 午後 0:15 [ 名無しの権兵衛 ]
アハハ・・・アディダス着てますよ!ってとこで撃沈しました
その上、別のサッカーチームにトレードだの携帯電話だのって(爆)
しかし、音符も台詞もすべてモーツァルトが作ったとおりってのはスゴイ
元演劇部(内緒)の私としてはそのヘン固いのはわかりますが・・・
演出家もあきられないように大変ですね ^^
2009/3/29(日) 午後 2:05
私、今までミュージカルしか見たことなくて、去年初めて地元でオペラ観たけど、オペラっておもしろーい、と思って。
やっぱり、曲自体がすばらしいからいいですよね!
でも、それを現代劇にしてしまうなんてすごい斬新的。
写真も美しすぎです。
2009/3/29(日) 午後 4:00
リッチーさん
それはほんとにおっしゃるとおりですね。
ブログの記事にすると、言葉で説明しないといけないので理屈っぽくなりますが、実際に観ているときは、素直に楽しめました。
もっとも一緒に観ていた同僚は、演出に納得がいかないようでしたが(苦笑)
2009/3/30(月) 午前 0:30
サクラノさんが、演劇部!?!?!?!?
いやぁ、衝撃の告白ですね!!ビックリです。絶対陸上部だと思ってました。
それはともかく、いや、ほんと今回の演出、なかなか面白かったです。
2009/3/30(月) 午前 0:32
ぷりんさん
そうそう、広島でもオペラ、結構ありますもんね。
地元の愛好家のものもあるし、あちこちから来るものもありますね。
地方都市としては、その点、かなり恵まれてます。
フィガロの結婚はほんと、オペラ好きの方でなくてもどこかで聞いたことがあるアリアとかが多くて、親しみやすいですね。
それだけポピュラーな演目だけに、演出に一ひねり入れてみたということなのでしょう。
2009/3/30(月) 午前 0:35
オペラブッファ・ブッファ?
サッカーチームのオーナーとはねぇ〜
こうしないと観客が集まらない?
北欧的割り切りだろうが、何だなぁ〜
2009/3/30(月) 午前 9:45
これは実に興味深いです!! おもしろ〜〜〜い ☆☆☆
2009/3/30(月) 午後 1:14
jhata先生
どうでしょうねぇ・・・
いかに「フィガロ野結婚」とはいえ、こうでないと客が集まらないというほど、飽きられているという出し物ではないでしょう。それほどオペラが浸透しているのなら、オペラの将来も明るいです。
でも、まぁ、これはこれで楽しめますからいいんだと思います♪
2009/3/30(月) 午後 11:47
ロシータさん
そうでしょう。面白かったですよ♪
2009/3/30(月) 午後 11:48
お邪魔します。
以前、海外に行った知り合いが「ドン・ジョバンニ」を見たそうですが、
それも思いっきり現代的で驚いたとか。
カタログの歌も手帳ではなく携帯を取り出して説明するとか。
やっぱ世代によってはこういう発想も柔軟になってしまうんですねえ。
後は地獄落ちもかなりの異訳でそこだけはちょっと不満ぶりぶり言ってましたが。
原作をゆがめずに舞台の雰囲気だけ変える・・・荒業なのか神業なのか。
最近そこの境界が危ういですが、これはなかなか神業的で面白そうですね。
2009/3/31(火) 午後 1:04
すごいですね〜!アディダスっていうのがまた・・・・(^m^)
そういえば昨年見たマクベスは黒澤映画からインスピレーションを得た(と監督さんがおっしゃってました)日本の設定でした。違和感なかったです。
こういう演出をするのって賛否両論でしょうから勇気もいるでしょうが、面白いですよね!私は応援派です。でも古典も好きですけどね〜。
2009/3/31(火) 午後 9:07
いやー面白い演出ですね、Tシャツに皮ジャンですか?
でも馴染み易そうですね。
ドン・ジョバンニにもフィガロの結婚の馴染みな曲が挿入されてました。
それにしても、王立劇場のゴージャスなことといったら!!
それだけでも一見の価値ありますね。
2009/4/1(水) 午後 2:38 [ - ]
ティートさん
ご訪問&コメントありがとうございます。
そうですね、翻訳の問題もありますね。
今回はイタリア語上演のデンマーク語字幕でして、デンマーク語訳の方は異訳があったかもわかりませんが、私には知るよしもなく(^^ゞ
まぁ、しかし、イタリア語の部分はおそらく手を加えていないと思いますので、神業の方に近いのだろうと思います。
なかなか面白かったです。
2009/4/1(水) 午後 7:42
めぐみぃさん
そういえば、私もベルリンのStaatsoperで、黒沢映画を彷彿とさせる、マクベスを観ました。でも別の演出かな、確か「幕」がすごい演出効果を出しているとかいうことで記事にされていたやつですよね。
古典的な演出も、もちろんいいですね。古典的でいながら新鮮さを感じられるような演出ができれば、ベストですね。
いずれにしても、いろんな試みがあっていいんだろうと思うんですよね。
それを楽しめる鑑賞眼を持ちたいものだと思います。
2009/4/1(水) 午後 7:47
スルメさん
そうそう、意外となじみやすいんですよ。
最初は、え、サッカーか?と思うんですけど、すぐに違和感がなくなります。
で、劇場だけでもほんとに一見の価値あり。
ヨーロッパでこういう機会があると、演目に関わりなく、とにかくいっちゃいます♪
2009/4/1(水) 午後 7:49