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著者の畢滔滔先生からご新著をご恵贈賜り、拝読しました。 いい本ですね。 まず、問題が明確ですっと引き込まれてしまいます。 タイトルの通り「何の変哲もない、取り立てて魅力もない地方都市」であるはずのポートランド。著者が初めて降り立った時お印象もやはりそうだったというんですね。だけど、なぜかそのポートランドが、「住みたい町No.1」で、人口が増えていて、特にYCE (young-college-educated) の流入が続いているというのです。それはどうやら成長を追求する「成長マシン」という成功する大都市の典型的なイメージと全く違うから良いということらしいのだけれど、成長マシンでなかったら、生活の質も下がるというのがセオリーというものじゃないんでしょうか?事実、ポートランドのYCEは良い仕事を見つけるのに苦労しているというのです。 なのにどうしてポートランドは「住みたい町」なのか? どうやって「住みたい町」になったのか? 最初の数ページを読むだけで、頭の中が「?」でいっぱいになってしまう。「どうしてなんだ?早く答えが知りたい!」と、ついつい引き込まれてしまいます。 そして読み進めていくと、やはりポートランドも最初は「成長マシン」を目指すんですね。そして失敗して、「住みたい町」に変わっていく。 何がターニングポイントだったのか、「成長マシン」を目指していたころの遺物とどう折り合いをつけていくのかなどなど、なぞがどんどん解けていきます。 こういう本が書きたいですよねえ。 それにしても、驚かされるのはこの本の書き出しの最初の文章です。 「筆者が米国オレゴン州ポートランド市に関する研究を始めたのは2014年ころのことである。(p.i)」 ん?いやいや、ちょっと待って。 この本は2017年3月31日の発行ですよ。 ということは2016年にはほぼ原稿ができていたんですよね? これだけの膨大な資料を整理して、本にまとめる作業が、3年でできてしまうというのか? どうやったらそんなことができるんだ? この謎は、なかなか解けそうにありません。 それも含めて、とっても勉強になりました。 畢滔滔先生、ありがとうございました。 畢滔滔(2017)『なんの変哲もない取り立てて魅力もない地方都市 それがポートランドだった: 「みんなが住みたい町」をつくった市民の選択』白桃書房
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Book Review
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ポートランドって美食の街で有名ですよね。おいしいレストランがたくさんできた、と聞きました。そういうことも書かれているのでしょうか。
2017/4/28(金) 午後 10:27 [ みけねこ姫 ]
> みけねこ姫さん
食についてストレートに取り上げてはいないのですが、グルメも含めたハイセンスな街づくりの経緯については書かれています。「成長マシン」だったころの遺産をうまく生かした部分もあるようです。
2017/4/29(土) 午後 10:02
hosoiさん、
ポートランドのような奇跡体験を持つ日本の地方都市って、決して多くないのでしょうね。
広島県南部でいえば、これから特にポートランドに学ぶべき地方都市といえばさしづめ、三原市とか竹原市、大竹市、因島市、府中市といったところでしょうか。中でも三原市は、帝人や三菱重工を柱に重厚長大産業工場が多く所在し、それをよりどころに発展していましたが、特に帝人の発展が行き詰まったり、しまなみ海道の全通とともに陸と海の交通結節点としてのポテンシャルを失い、三原駅を中心とした中心市街地が著しくさびれ、中心市街地には局地的に猥雑な雰囲気が漂っています。こういう地方に近年ありがちなのは、その地方に住む住民や自治体職員の多くが、過去の地域の発展体験の呪縛に取りつかれてタコツボに入り込んで、地域をポートランドみたいに本質的に住みたい街に変えようという心意気が伝わらず、問題の先送り〜後戻り体質が染みつき「どうせわが町は変わらない」という無力感、脱力感が地域を深く覆っているという事に尽きるのでしょうね。
2017/5/1(月) 午後 11:07 [ YouWin ]
この本も素晴らしいのでしょうが、細井さんの解説も素晴らしいのでついつい何で?と引き込まれました。若い人が集まるということは何らかの刺激はあるのでしょうが、でも成長だけを追い求めない?何かがあるのですね。早速ググってみます^ ^
良い連休を!
2017/5/5(金) 午前 9:45
> YouWinさん
この本には「日本の地方都市への示唆」という一節がありまして、(1)小さな成功を積み重ねること、(2)過去の失敗を直視すること、(3)戦略思考を持つこと、(4)合意構築の努力を惜しまないことの4つが大事だそうです。ここの町の事情はよくわかりませんが、当てはまる部分があるように思います。
2017/5/9(火) 午後 7:26
> ヒロシ!さん
そう、何かがあるのです・・・と言いたいところですが、それほどすごいものはないように思います。でも、何もないのにうまくいっているというのがすごいところなんでしょう。普通のことが普通に回っているだけでもあるのですが、それが逆に難しいし、そうなるようにするには普通ではない努力がいるということなのかもしれません。
2017/5/9(火) 午後 7:30