|
日本商業学会第58回全国大会、二日目です。会場は法政大学。
写真は、関西学院大学の石原武政先生とご著書の『商業組織の内部編成』。石原先生編集で流通のテキストが出るのですが、その一章を描かせていただくことになっている関係で、学会の合間に打ち合わせ。それに便乗してご著書について、いろいろうかがわせていただきました。
学会に行くと、本の著者に直接会えて、その内容の詳細やら、執筆意図やら、ふつうは聞けないお話がきけるという点もありがたいですね。
さて、ここから先は、ちょっと専門的なので、興味のある方だけどうぞ。
(ただし、ゼミ生は、興味がなくても、ちゃんと読むこと!)
さて、この本、何の本かといえば、商業組織(もうちょっと一般的な言い方をすれば流通システムかな)の分業関係がどういう原理で編成されるかということですが、流通システムなんてものは「暗黒大陸」と言われるくらいで、その編成原理なんてものが簡単に分かろうはずもない。
ところが賢い人にはわかってしまうんですねぇ。しかも極めてシンプルに、極めて論理的な整合性の高いかたちで、明快にわかる。この本の内容を要約すれば「流通システムは品ぞろえ形成のためのシステムだ」というこの一点に尽きます。
しかし、消費者が必要とするものを全部そろえるために、無限に近い多数の生産者と消費者を個々に結び付けるなどということはしょせん不可能。それゆえに、商業者に売買を集中させて、情報を縮約して需給をマッチングするわけですが、あらゆるものを特定の商業者に集中するというのも無理なはなし。そこで業種(取り扱い品種)による分業というのが、基本になるわけです。なぜ業種で分かれるかといえば、業種ごとに要求される技術が異なるからです。とはいえ、業種別に分かれたのでは、消費者が必要とするすべての品揃えを実現する商業者というのはいなくなるわけで、そこで商業集積を形成して異なる商業者が補完し合う体制ができる。しかし、この補完関係というのも、補完し合いながら競争するという、微妙な関係になるわけで、競争が激化すれば、競争を有利に進めるために新たな技術が生まれてくる。この新たな技術は、同じ業種内でも異なった技術で異なったニーズに対応した業態という新たな分類軸を出現させる。そして、この技術が大いに発展して、業種の壁を乗り越えるに至った時には、業種の分類さえ塗り替わってしまうこともあるわけですね。こんな風に、品揃え形成を目的として、それを実現する手段としての技術の変遷が、商業組織の編成原理を決めるというわけです。
注意すべきは、この技術というものが、ニーズに対応したかたちで出てくるとはいうものの、必ずしも受動的な適応ではないという点ですね。競争を勝ち抜こうと、新たな技術で新たなニーズを切り開こうという積極的な努力の結果として生じてくるという点です。そして、新たなニーズを切り開くことに成功した技術のパッケージが、業態として認知され、勝ち残っていく。商業組織の編成原理というのは、こういう積極的な努力の結果なのだという点です。
今日直接お話をうかがった最大の収穫もこの点です。先生は「競争的使用価値」という概念を提唱されて、今では学会のスタンダードになっていますが、本書の商業組織の編成原理も、その競争的使用価値も、基本的には同じアイディアだということです。
「王法をば額にあてよ、仏法をば内心に深く蓄えよ」
本書の序章で、商業研究に独自の認識論的アイデンティティを確立したいと述べられています。それを蓮如の言葉を引用されて、仏法にたとえられていますが、いや、まさに仏法を極められていますね。
と、こんな話をしていると・・・
「そうは言っても、この本、あんまり売れてへんのや」と照れ笑いをされます。
それは、まぁ、このタイトルでこの内容ですから、万人うけする本ではないのはご自身も百も承知でしょうし、そもそもたくさん売ろうという意図はないでしょう。
ただ、この途を志す者なら、必ず読まなければならない古典になることは間違いないでしょう。
ゼミ生諸君、とにかく一度は読みなさい。
石原武政
『商業組織の内部編成』
千倉書房
|