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昨日のブログに続き、今日も「もみじ饅頭」について考えてみたいと思います。今日は「もみじ饅頭のマーケティング」について考えてみましょう。 こちらの写真は、広島駅の改札前の柱に掲げられた、もみじ饅頭最大手「にしき堂」の看板。誇らしげに「ザ・広島ブランド」と書かれています。もみじ饅頭の市場規模は、一説によると年間約100億円。その内にしき堂が約25億円を売り上げるそうですから、約25%のシェア。圧倒的なトップ企業です。 ちなみに、にしき堂以外にも約100社のメーカーがもみじ饅頭を作っているといいますから、にしき堂1社で25%というのは、圧倒的な強さです。典型的なガリバー型寡占市場といえましょう。 データの出処 土産物新聞社・地域産品チャンネル http://www.e-bussan.co.jp/cent20/index.html http://www.e-bussan.co.jp/cent20/20c9-12.html#momiji しかし、この1か月、各社のもみじ饅頭を食べてみて感じたのは、全くと言っていいほど味の差がないのです。昨日ご紹介した「岩村もみじ屋」だけは、明らかにおいしいと私は思うのですが、その岩村は全くといっていいほど知名度がなく、岩村のもみじ饅頭を手に入れることさえ難しい。「岩村のもみじ饅頭おいしいよね」と言って話が通じるのは、私がお土産として差し上げた、ウプサラ太郎さんと、CMKJ先生くらいです。 なぜ製品自体に全く差がないのに、これほど大きなシェアの差ができるのか? これは、マーケティング力の差だとしか、考えようがありません。 さて、製品そのものに極端な差がないのは、おそらくその製法にあるでしょう。 まず、もみじ饅頭がシンプルな製品で、差別化すべきポイントがあまりないことが考えられます。さらに、昨日のブログへの「なおさん」のコメントにあるとおり、どのメーカーもほとんど同じ機械でもみじまんじゅうを製造していることにも原因の一つでしょう。もし原料の配合を大きく変えるようなことがあれば、おそらく機械が対応できないでしょう。手焼きでもみじ饅頭を焼いているのはミヤトヨ本店さんなど、むしろ例外です。 そして、これもまたなおさんご指摘の通り、型さえ変えれば、どんなもみじ饅頭でもできてしまいます。しかし、型を極端に変えると、「それがもみじ饅頭か?」ということになりかねません。こちらの「はろーきてぃもみじ饅頭」などは、もはやもみじの形をしていないのですから、もみじ饅頭と呼べるのかどうか・・・はろーきてぃ人形焼きといっても違和感はないはずです。 もっとも、これが通常1個80円が相場のもみじ饅頭より、20円も高く売れるのですから、面白いものです。ただ、ターゲットはかなり限られているでしょう。キティラーの方、あるいは知り合いにキティラーがいて、キティグッズならとにかくうれしいという方のみでしょう。 価格面で差別化を図ろうにも、安売りはあまり有効な手段には思えません。こちらのお店は、1個60円と相場より20円安く販売されていますが、だからといって、観光客が飛びつくということはないようです。 むしろ、あくまで私の印象ですが、このように安さをPRすることで、せっかくの老舗のイメージが傷ついているようにさえ思います。こちらのお店は、USACOさんの調査によると、4番目に古い老舗(廃業した店をのぞけば3番目に古い老舗)。このプライシングが適切だとは思えません。 チャネル面ですが、宮島島内に限って言えば、立地が非常に重要な意味を持ちます。宮島港から厳島神社までの300m弱の参道に土産物屋さんがひしめき合っています。 こちらのお店はかなりにぎわっていますね。さぞ立地がいいのだと皆さん思われるでしょう。ところがこの店、参道の一番最後にあるのです。既にここまでたどり着くまでに、観光客はあちこちのみやげ物屋に寄ってからきますから、必ずしもいい立地とは言えないはず。 ところが、この立地を逆転する秘策があるのです。 その逆転の現場の決定的瞬間の写真をご覧ください。 なんと、この団体客、参道を通らずに、海沿いを迂回して、終点から逆行する形で参道に入っていくのです。ガイドさんの旗の先をご覧ください。先ほどのみやげ物屋さんがあるのに気が付かれると思います。みやげ物屋と提携した旅行代理店のガイドさんによる、見事な誘導作戦です。 こういう風にガイドさんが誘導してくる店の看板の横には、かならず旅行代理店のマークがずらっと並んで掲げられています。 この誘導作戦を地図でご確認いただきましょう。 普通観光客が歩いてくるのは、青いルートです。参道を通って、終点近くのみやげ物屋さん(オレンジ色の丸印)に来るのが普通です。これをガイドさんは、赤い矢印のルートで誘導します。まぁ海沿いの道も、眺めがいいですし、そちらを通すのがサービスだと言われればそれまでですが・・・ ちなみに、私、お勧めの岩村もみじ屋は、厳島神社裏の赤い丸印のところです。参道の賑やかさとも、観光客の誘導合戦とも、無縁です。17時前には、客が途絶えて店を閉めるというのもわかります。 さて、ところで、宮島から出るとどうなるでしょうか。実は、最大手のにしき堂のもみじ饅頭は、宮島では全く売っていないのです。シェア25%の最大手企業が、もみじ饅頭発祥の地の宮島で全く販売していない。ということは、旅行代理店も巻き込んだ、この熾烈な誘導合戦とも、全く無縁だというのは非常に興味深いところです。 広島駅などは、こういう状態です。手前のもみじ模様の箱は、宮島出身の藤い屋のもみじ饅頭。その先、緑のもみじ模様と紫の箱は、にしき堂。さらにその向こうの島に、やまだ屋がすこし置かれています。売り場のほとんどがにしき堂で占められているのがわかるでしょう。 この状況は、広島市内のどこをみてもほとんど同じ状況です。宮島出身のもみじ饅頭店の多くは、宮島島内の観光客誘致合戦に明け暮れ、宮島から外に本格的に進出しているのは、藤い屋とやまだ屋くらい。昨日ご紹介したもみじ饅頭は、ほとんど宮島でしか食べられないものばかりなのです。宮島からでたら、にしき堂がほとんどで、細々と藤井屋とやまだ屋が置かれているという程度です。この圧倒的なチャネル支配力がにしき堂の強さでしょう。 それに引き替え、我が岩村もみじ屋の宮島以外でのプレゼンスはといいますと・・・ ご覧のとおり、福屋広島駅前店の地下1階、土産物売り場に、わずか2フェイス。 現在操業しているもみじ饅頭の店としては、もっとも古い老舗中の老舗なのですが、この露出量では、誰も知らないのが当然です。 岩村のもみじ饅頭を知っているのは、私と、私がお土産で差し上げたウプサラ太郎さんとCMKJ先生くらいのものでしょう。お二人は、広島人よりももみじ饅頭通だと言えます(笑)。 というわけで、もみじ饅頭のマーケティングは、にしき堂の圧倒的なチャネル支配力が決めているというのが、今のところの結論です。 もっとも、今度はこのチャネル支配力がどこから生まれてくるかということを考えなければなりません。第一に挙げられるのは、CM出稿量とそこから生まれる「もみじ饅頭=にしき堂」というほどの強力なイメージでしょう。広島に住んでいると、いつも「にしき堂」のCMを見て、売り場に行っても「にしき堂」ばかり。もう「にしき堂」以外のもみじ饅頭なんて、誰も意識しないといっても、言い過ぎではありません。 そして喚起した需要にこたえられるだけの、生産能力、店舗網、物流体制・・・このバランスのとれたマーケティング力が、25%という圧倒的なシェアを生み出しているわけです。にしき堂の歴史にとっては、この生産面の革新というのが大きいようで、同社は今でも、機械化された衛生的な生産設備をCM等でPRしています。 ふう、長くなりましたね。 このチャネル支配力の裏付けになっている部分が重要なのですが、それはまた後日ということでご容赦ください。 ※今日新たに食べたもみじ饅頭 やまだ屋 黒もみじ(竹炭入り) ※この「もみじ饅頭のマーケティング」、高校生にマーケティングを考えてもらうには、格好のネタ。市商(広島市立商業)の皆さんに、明日から実際に考えてもらいます。その授業の模様はまた明日。
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2008年06月09日
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