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今日はN響(NHK交響楽団)の広島公演(NTT西日本N響コンサート)に行ってきました。
1曲目は、ハイドンのチェロ協奏曲第二番で、ソリストは石坂団十郎さん。
2曲目は、マーラーの1番です。
指揮はアレクサンドル・ヴェデルニコフ(Alexander Vedernikov)さん。実は、今日は元々ズヴェーデン(Jaap van Zweden)が指揮する予定だったのですが、急病だそうで、ピンチヒッターです。代役ということで、ちょっと心配でしたが、実に見事な指揮ぶりで、すばらしい演奏を聴かせてくれました。
1曲目のハイドンのチェロ協奏曲、実に見事な演奏でした。
ソリストの石坂団十郎さんのチェロは、実にクリアで、色彩的な音色ですね。
素人の私が言うのも失礼ですが、左指の正確な動きで完璧に弦を押さえ、右手に持った弓はどんな早いパッセージでも常に直角に弦の同じ位置をとらえ、基本的なトレーニングの完璧さを感じさせました。
そのせいかどうかわかりませんが、実にクリアな音です。雑味がないので、ふくよかな音という感じにはなりませんが、色彩豊かな音色がします。
アンコールで演奏されたバッハの無伴奏チェロ組曲も実に見事で、終わるのがもったいなくて、後の曲はやめにして、このまま石坂さんのリサイタルに切り替えてもいいくらいだと思いました。
しかし、石坂さんには悪いけれども、やっぱりそうならなくて良かったです。
2曲目がこれまたすばらしかった。
正直な話、マーラーの1番なんて、まぁ面白いけど、それ以降のマーラーの傑作の数々に比べれば、わかりやすすぎて味がないというか、深みがないというか、ま、せいぜいマーラー入門という程度かな・・・と、馬鹿にしておりました。実際、高校生の頃はよく聴きましたし、CDも10枚くらいはもってますが、ここ数年、ほとんど聴いていないと思います。
今日のマラ1は実にドラマチックな演奏でした。
派手なところは思いっきり派手で、実に切れがある。金管楽器群のパワーのすばらしさと、それにかき消されない弦楽器群の切れの良さ。
関山幸弘さん(tp)すばらしいですね。中学・高校とトランペットを吹いていた私としては、アドルフ・バド・ハーセスさんが、私の中ではヒーローでしたが、関山さんに変わるかもしれません。
この派手な部分の見事さは、対極にある弱音部の良さにも支えられていました。
出だしの弱音の緊張感からして実に見事でした。そこから徐々に音が積み重なっていって、爆発するわけですが、下手な演奏だとこの「徐々に積み重なる」というのが、もう退屈で何をやりたいのかわからないものですが、今日は細かいニュアンスがよくついていて、実に面白かった。
そうそう、弱いところと言えば、第4楽章の主題の再現部なんかは、まるで『未完成』の出だしみたいにおどろおどろしくて、鳥肌ものでした。
マーラーの1番が、こんなに面白い曲だったのかと、改めて気がつきました。
ヴェデルニコフさん、N響の皆さん、すばらしい演奏を、ありがとうございました。
そうそう、ヴェデルニコフさんという指揮者を知ったのも、今日の収穫でした。
実は今日は、ズヴェーデンの指揮ぶりを楽しみにしていました。
何年か前にHMVで安く出ていたブラームスの交響曲全集を買いました。当時はズヴェーデンなんて聞いたこともありませんでしたが、まぁ安いからダメ元で買ってみようという程度でした。ところが聞いてみると、実に切れのあるパンチの効いた演奏でした。特にブラ1は、はつらつとした実にいい演奏でした。
その後、ズヴェーデンの指揮した演奏会を何度か聴けそうなチャンスがあったのですが、日程が合わなかったり、席がいっぱいだったり・・・一度などは、オランダ出張があと1日ずれていれば聴けたのに!なんてこともあったりして、コンセルトヘボウの前で、無念の記念撮影をして帰国したなんてこともありました。
だから、数日前に、ウェブサイトで指揮者が変更になったことを知った時には、かなりがっくりきました。今日は聞きに行くのをやめようかと思ったくらいです。
ですが、今日は、ズヴェーデンでなくて良かったです。急病だそうですから、それはそれで心配ですが、ヴェデルニコフに出会えたことは、幸せでした。
ヴェデルニコフさん、このツアーの代役で、きっと日本でもかなり人気が出るでしょう。
たびたびN響を指揮するようになれば、デュトワ、サバリッシュ、ブロムシュテットといった大指揮者と同じくらい日本でもおなじみの指揮者になるのではないかと思います。
ヴェデルニコフさん、ぜひ広響にも客演してください♪
追記
そうそう、今回は、60歳くらいのご婦人の隣の席でした。クラシックのコンサートは初めてなのだそうですが、「人生残り少ないので、できるだけいろんなことをしておきたくて」とのことでした。最初のうちは「よくいらっしゃるんですか?私はなれてなくて・・・」と恥ずかしそうにされていましたが、体を少し動かしながら、聞き入っておられました。マーラーの1番で、バーンと急に爆発するところなどは、ビクッと椅子から少し飛び上がるくらい驚かれたりして、その反応がかわいらしかったです。演奏が終わると、すごい勢いで拍手して、「すばらしかった」を連発。「今日は聞きに来て良かった。一緒に聴いてくださったあなたにも大感謝です」と、なぜか私まで感謝されて、嬉しいやら訳がわからないやら。
こういう経験をされた方は、きっとこれからもコンサート会場に足を運ばれるでしょうね。
クラシック音楽というのは、なかなかCDに収まりきるものではありません。特にマーラーの交響曲なんて、ホルン8本、トランペット5本、ティンパニが2セット・・・CDに収まるスケールではないのです。
ぜひ一人でも多くの方にコンサート会場に足を運んでほしいものです。
今日は誰も誘わずに、一人で聴きに来たことをちょっと後悔しました。
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