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著者の栗濱先生からご新著をご恵贈賜りました。
頂いたのは先月のことなのですが、やっと拝読できました。

この本、いわゆる監査論の本と思ってページを開くと、ずいぶん勝手が違って、驚きます。
まず序章で引用されている文献と言えば、アリストテレスに始まって、トマス・クーン、ファイアアーベント、ハンソン、村上陽一郎といった、科学哲学や認識論の大物がずらり。
その他の章を読んでも、ナイサー(認知心理学)、山岸俊夫(社会学)と、引用されている文献の幅広さに、ほんとにこれが監査論の本なのかと、目を疑います。

しかし、このような幅広い文献の引用は、著者の視線が私のような浅学非才の読者のはるか向こうまで伸びていくからで、当の著者には驚きも何もなく、きわめて自然なことなのでしょう。
この本、そもそも財務諸表監査という制度が何故に必要なのかということを、制度派経済学や社会学などまで視野に収めてあぶりだし、監査の基本である人が何かを認識するとはどういうことなのかを、科学哲学や認知心理学にまでさかのぼってあぶりだす。
こうやって、研究対象の本質をあぶり出しておいて初めて、そのあるべき姿について議論を始めるという、実に奥の深い一冊です。
「学者の仕事というのは、こうでなければならない」と感嘆することしきりです。


栗濱先生、現職は愛知大学大学院会計研究科の准教授ですが、2006年の3月まで本学で会計監査論をご担当いただいておりました。
ところどころ、当時ご本人から直接聞いたことのある話が出てくるのですが、まさかそれがこんなに奥の深い思考から出てきていたとは・・・


本当に良い本というのはね、どんなテーマを扱った本であっても、
「人間とは何か」
「社会とは何か」
といった、根本的な問題が見えてくるものなのですよ。


だから、
会計監査論の本を読もうなんて考えたこともないそこのあなた。
この本は、そんなあなたでも読む価値があります。




栗濱竜一郎(2011)
『社会的存在としての財務諸表監査』
中央経済社




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