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網膜に積もる淡雪のように(まとめサイト:http://kinoshitan.com)

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あらわれ         

                           ステファンヌ・マラルメ

 
 

月はふさぎこんでいた。天使たちは、涙など浮べつつ

夢を見、手にした弓は、柔らかな花びらの静寂のなか

深い紺青の花冠の上に滑らせて、ヴィオラの

切なげな白い啜り泣きを奏でていた。

―あれは、きみの初めてのキスの、祝福された日だった。

私の夢想は、自分を聖なる出来事に捧げたいと思いながら

訳知り顔に、後悔するでもなく、幻滅するでもなく、心が

摘み取るまま摘み取った「夢」の哀しみの香りに酔っていた。

だから、私はあれこれ彷徨っていた、

眼は古びた敷石に釘付けしたまま。

そのとき、陽の光を浴びた髪のきみが、街の通りに

それも夜に、笑いながら私のところへあらわれたのだ。

そのとき私は、眩しい帽子を冠った妖精を見たと思った。

むかし、私のいたいけな子供のころの晴れやかな睡りの上を

通り過ぎて行った、指のあいだから、いつも、香り高い星々の

白い花束の雪を零していた妖精。

                                             

                                (木下 私訳)

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