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Ⅰ (過ぎ去った時代の東方の‥‥)
過ぎ去った時代の東方の
昔の手の込んだどんな織物も
その裸の髪には叶うまい。
どんな宝石も、きみが梳 ( す )いたその髪には。
ボクは、数ある絨毯のなか
なにも見ないためにただ「無」だけをみつめたのだ
ボクの眼は、埋葬に飽き飽きしつつ
その神々しい経帷子 ( きょうかたびら )を愛でるだろう
だが、波打ち揺れる緞帳が、死の
闇の波を隠しているあいだ、
ああ! この美しい髪は
精神を光り輝かせ、「存在」の
残忍な火花を産み出すのだ。
ボクの恐怖、ボクの繰り返す否認を。
一八六八年六月末に生まれた友人ボナパルト・ワイズ
の息子のために書いたと推定されている一篇。
Ⅱ 二者択一
手の込んだ魔法にかけられた忘却の
どんな織物も、音楽も、時代も、
あの裸の髪には叶うまい。
どんな宝石も、きみの梳 ( す )いたその髪には。
ボクの夢のなかでは、古代の絨毯の
大通り模様、それだけ。たとえボクが
「無」を願うとしても、この親愛なる裸は
ボクの眼をそこに埋めて満足させるだろう。
いや、波打つ緞帳が
空虚な波とぶつかり合うように、
一個の亡霊のために、その髪は、
こんなにぜいたくに「存在」の偽りの
誓いの微かな光を蘇らせる
――その恐れ、その繰り返す否認を。
一八六九年ごろ、Ⅰの詩篇を書き換えて出来た。
Ⅲ (時代の香りの染みたどんな絹地も‥‥)
時代の香りの染みたどんな絹地も
息絶え絶えの幻想怪獣 ( キマイラ )の絵柄も、
鏡のそとできみが梳 ( くしけず )る
もつれた生まれたままの裸の髪には叶うまい。
勝利に酔う軍旗の数々の弾痕は
大通りに高々と掲げられているが、
ボクには、ボクの眼がそこに埋めて満足する
きみの裸の髪がある。
いや、その口はなにかを噛んでも
なにを味合わったか判りはしないのだ、
もしも、きみの王たる恋人が
その房々とした茂みのなかで
一粒のダイヤモンドにも似た、窒息する「栄光」の
叫びを吐き出すことが許されないとしたら。
Ⅰ、Ⅱの詩篇をもとに、一八八四年か八五年
ごろ作られた一篇。
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