木下長宏のウェブログ

網膜に積もる淡雪のように(まとめサイト:http://kinoshitan.com)

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次回のABCは、1月12日(金)19:00〜21:00,ひさびさの波止場会館4Bで。
新年度の冒頭という意味合いもあって、ちょっと趣向を変えました。

去年暮、本屋の本棚であれこれ本を眺めていたときのことです。−−ボクは一種の活字中毒で、ときどき本屋に出かけて、書物の真新しいインクと紙の匂いを嗅がないといられなくなるのです。棚の前であちこち本を引き出しては拾い読みしたり、面白そうだと「立ち読み」に耽ったり、二、三時間はすぐに費やしてしまいます。なかには、内容に魅き入れられて、とうとう買って帰る羽目になるのもあります。そんな繰り返しの一つとして、去年年末、なにげなく手にした本が『まど・みちお詩集』(岩波文庫)でした。
ボクは、「まど・みちお」は、「彼も詩人」というくらいの認識で「彼こそ詩人」などと思ったことはいちどもないのですが(「詩人まど・みちお」論義は別の機会にします。というより、12日、時間があったら取り上げたいです)、その詩集に《セルゲ・ポリアコフの「無題」》というエッセイが入っているのを見つけ、「へぇ〜童謡詩人の現代美術論?」と、拾い読みを始めました。そして、終わりのほうに、《ポリアコフが一枚の絵でようやっと辿りついた世界は、いったい何を語っているのだろう。「ああ、ここではなかった!」と、行きつくべき所へ行きつけなかったことに気づいた独白が、聞こえるような気がする》とあるのに出喰わし、ちょうど『八雁』の連載エッセイに、ジャコメッティが同じ言葉をなんどもなんども繰り返してやり直していることの大切さを書いた(「年頭の挨拶」としてブログにも掲載した)ところでしたから、これは、捨て置けない、と思った次第です。
誰かの作品を観て、「行きつくべきところへ行きつけなかった独白」を聴くのは、なかなか出来ない/しないことです。そのことに《重みのある共感》をもって作品を観るというのも、興味深い。これは、ぜひ新年の話題にしてみたい、と考えた次第です。

こうして前口上を書くために、岩波文庫をパラパラ読んでいて、すごい面白い、問題にしなければいられない箇所にぶつかりました。これは、ここで語り出すと長くなるので、これも、12日の夜に!

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2018年年頭のご挨拶

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去年最後の足を運んだ展覧会は、自由が丘のgallery21yo-j。池内晶子さんの新作。年末を飾るにふさわしい作品でした。  
今回は赤い生糸で、いつものように壁の四つの隅から張り出された糸が、まんなかへ集まって(あるいはまんなかに集まっていた糸が壁のほうへ向かって伸びているかのように)、その中央で、地下へむかって筒状の形をとっていくのですが、池内は、生糸を指で(道具を使わず)結び結び合わせて作品の原形を作っていく。(展示に至るまでに、そこには「結ぶ」ことに腰を据えた長い時間が溜められている。)その「結ぶ」行為は、「編む」という作業の起源的な意味を持つ人間の行為である。容れ物や布地、着るものだけではない、書かれた文字をまとめるのも「編む」というし、「編む」という行為は、ほんとうに人間の営みの根源的で普遍的な行為であり、そのさらに起源の営みを「造形」という仕事のなかに潜ませて制作しているのが池内の作品で、そのことに気づいて、そこで、いったい人間にとって「編む>結ぶ」ということはどういうことか、と考えに耽ってもいいのですが、作品の前にいるとそんな議論にふけることを許さない微妙な緊張感が迫ってきます。生糸が誘う微かな動きと対峙し身を任したくなるのです。そして、その対峙が誘う対話が言葉ではなく、言葉になる直前のわれわれの息遣いでしか不可能なことに気づかされます。四つの隅から(あるいは四つの隅へ)張り出す生糸の集まるまんなかに作られている形は、「結ぶ<編む」という行為によっておのずから紡ぎ出される動き、右へ旋回する動きを感じさせ、ちょうど立っている人間の胸のあたりに浮かび、それがどこか渦状星雲の姿を想起させる。ここまでは、これまでの池内作品にもあったのですが、こんかいの作品は、さらに、まんなかから筒状にむかって伸びる糸の集まりから離れて、地上に(つまり床の上に)上部の作品と対面するように、平たく赤い生糸の群が敷き伸ばされているのです。それをよくみていると、左にほとんど触知できない速度で回る運動をしているのが、感じ取れます。(あとで、作者に教えてもらわないと判らないことですが、この円盤状にひろがる赤い生糸の群は、じつは一本の糸で長さ13キロメートル、さいごの端っこが、円の外縁にちょろっと出ているのを確認することができます。〔写真に撮ってみました〕)
上部の、四角い外縁を保ちながら、ほとんど不可視に右に回りつつ集中して浮かび、中心の筒状へ動いていく糸の平たい群れと地上の左回りに丸く象る糸の群れが、音もなく響きあっている、そのあいだに生まれているもの。それは、結論を急げば、小さな個々の生命が宇宙の大きな動きと交歓しようとしているとでも言えばいいか、そのようなものを、聞き取ることができるのでした。

この池内作品については、また、筆をあらためて書くことにしたいと思いますが、こうして、2018年を迎えるにあたって、1月5日から封切られる映画のことを紹介して、年頭のご挨拶に代えたいと思います。

「ジャコメッティ 最後の肖像」という映画(スタンリー・トゥッチ監督のイギリス映画)が、この1月5日からTOHOシネマズシャンテ他で封切られます。ボクは試写をけっこう楽しくみてきましたので、ぜひみなさんにも楽しんでもらえればと思い、来る年は、この話題からはじめるのも一興と考えた次第。
(もっとも、1月6日には、千葉市美術館で、小沢剛氏の個展が始まりますから、 こちらも新年の話題にとりあげてもいいのですが、今日は、ジャコメッティの映画のほうをご紹介しておきたいと思います。)

この映画は、前もって、この映画の原作、ジェイムズ・ロード著『ジャコメッティの肖像』みすず書房を読んでおいていただくと、ぐんとおもしろさが増しますので、それを伝えたいということもあっての話題です。
原作を心得て観ると、映画での矢内原伊作や奥さんのアネット、モデルのカロリーヌの扱いかたの異和が気にならなく楽しめるかもしれないと思います。というより、原作ではこう書いているのに、映画ではこんなふうにしちゃってるな、と観る、そんな楽しみがあるということです。
ジャコメッティによく似た俳優を見つけて来て、ブレッソンやシュナイダー、ドワノーといった写真家の撮った名場面を映像化していて笑います。
矢内原も同様の体験を短いエッセイにしていますが、ロード氏も、ある日、モデルになってくれ、二、三日で終わるからと頼まれるのですが、結局肖像はいつまでたっても出来上がらず、なんどもなんども、帰国の航空券を延期して、ジャコメッティのアトリエへ通うはめになる、その経緯を克明に記録しています。それを、映画化しているのです。
毎日毎日、「メールド(日本語に訳せば「くそ」)!」と口走って(この「メルド!」というフランス語を映画では「ファック!」と言わせていて、これも笑わせます。「ファック」と「メルド」はちがうんですね!)、「うまくいっているときにやめようと思った。しかし、 いまはとても悪くなっている。遅すぎた」と筆を投げ出し、そしてまた、「でも、いまここでやめることはできない」と呟き、「明日はきっとうまく行くだろう」と、翌日モデルになることを約束させる。その翌日には、また「メールド!」と叫び、頭を抱え、別の仕事に手をつけ、また戻ってきて、「いまなにか見え始めた、やりなおそう」と筆を執る。そんなやり取りが延々と続くのを共感しながら観ることができました。
こんな調子で、ジャコメッティは、ついにロード氏を十八日間もアトリエへ通わせたのです。作品は完成したとジャコメッティは絶対に言いません。むしろ、「また失敗した、明日やりなおそう」の連続です。その未完成の作品は、要請されていた展覧会の期日が迫ったとか、別の理由で彼の手を離れることになります。(これが、こんにち遺っているジャコメッティの作品です。)
「私はなにかを作るために仕事をしているのか、それとも作りたいと思ったものをなぜ私が作り得ないかを知るために仕事をしているのか、どちらだか私にはわかりません」(1959年、ニューヨーク近代美術館のアンケートに答えて)、と書いていたのをふと思い出しました。
原本には、その日その日、ジャコメッティが絵から離れているあいだにロード氏が撮った作品の写真が十八葉、挿入されています。ちょっと見では、どこが異なっているのか判別しがたい画の一枚一枚を見比べながら「あ、くそ! ぜんぶ壊してしまおう」と言ったり、「もっと遠くまで進むことができたはずだ、突破口はある」などというジャコメッティ の呟きをその絵から読み取ろうとするのは、なかなか楽しい仕事です。 (やっぱり、これは映画では実現できていない)。
それにしても、こんなに自負心を無にして制作する芸術家は珍らしい。ほんとうのところは、誰もがそんな気持ちを抱えているはずだけれど、窯を開けたら、気に喰わない茶碗は叩き割って、残した少数に超高額の値を付ける人間国宝陶芸家や、設計した建物が日常生活に不具合な点があるのを訴えると、そのくらいはがまんしろと逆襲する芸術家風建築家などとは、正反対の心構えです。
近代(現代)の芸術家は「自己表現」を制作の芯に据えることによって、自分の作品が、どのくらい自分の意図から外れた結果なのかを認める眼を曇らせていることは確かです(このことについては、あらめてじっくり考えないといけないと思っています)。
このあいだの六本木であった「ジャコメッティ展」は、せっかく本物の作品をたくさん並べながら、本物にまったく近づけない展示をしていて、ほんとにがっかりさせられましたが、この映画では本物の作品には接しられないのだけど、ジャコメッティという人と作品を考えるには、ずっといい機会を与えてくれるようです。
(ついでながら、ジャコメッティの写真集は、数年前にドイツであった展覧会の図録が『The Unseen Giacometti』という英語版で出ていてお薦めです。ジャコメッティが好きな人はぜひお手元に。)

というわけで、新年は、まずジャコメッティの映画でも観て、お楽しみいただき、いいお正月休みをお過ごしいただけますように。

1月の<土曜の午後のABC>は、12日(金)の夜からです。

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12月1日(金)が、2017年度の最後の集まりになりました。

12月15日(土)は、残念ながら、部屋の確保が難しく、「老子に挑戦」は、2018年2月3日(土)までお休みです。

しばらく間が空く機会に、今後は、「老子から教えられること」と、タイトルをちょっと変えてみようかと思っています(もっとも、タイトルが変わったからと言って、勉強する姿勢や内容が変わるわけではありませんが)。ここまで「老子」を勉強してきて、これまでは、「老子」に、ともかく取り組んでみようという心構えで「挑戦」だったのですが、これからは、いちおう、「老子」をどういう姿勢で読めばいいのかは見通せるようになってきたようだし、もっと謙虚にテクストと向かい合い、「老子」からじかに教わりたいという心構えで進めたい、と考えた次第です。

12月15日(土)は、忘年会だけと相成りましたが、乾杯する前に、30分、勉強できればと店主にお願いしています。
30分で、北齋はなぜあんなになんかいも号を変えたのか、この問題を、これまで考えてきた日本美術の最大特質<無文字文化>の脈絡のなかで解き明かしてみたい、と準備中です。

「30分で!?」

ではでは、お時間のあるかたは、ぜひご参加ください!

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次回12月1日(金)のABCは、シルクセンター地下1階の小会議室です。
<北齋>を続けます。

今回は、北齋が「三体」をどのように考えていたか、を考えて見ます。彼自身が書いた『誹風柳多留』の序、蜀山人が書いた『三體画譜』のなどを読みます。『三體画譜』も覗きます。

それに前回ご紹介した、雅号の途方もない多さ、その秘密を「無文字文化」の伝統という側面から、検証して見たいということ、
また、前回時間が足らなくて、十分読めなかった『富嶽百景』初編の有名な跋文も、改めて読み直してみたい、と思っていますが…

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次回11月18日(土曜日)のABCは、シルクセンター地下の中会議室です。(小会議室が先約があって取れませんでしたので、隣の中会議室です、お間違えのないように!)今年いっぱい、いろいろ、部屋が取れたり取れなかったり、とうとう12月16日の土曜日は、諦めて、忘年会だけということにしました。忘年会の冒頭、30分ほど勉強したいと、店主にお願いしています。30分でなにが語れるか、心許ないですが、集中してみます。

18日(土)は、そんなわけで、今年最後の「老子に挑戦!」です。どうやら、少し、きちんと、「老子」が読めるようになってきたかな、というところですね。

まず、53章を読みます。そこから、派生してくる問題を追って、14、16、18、30、41、43章へ進み、30章からは、68章に飛ぶ、というような読みを用意しました。

テクストが仕上がり次第、アドレスをいただいている皆さんには、お送りします。
前回から、新しいフォーマットで書き起こしていますが、これがいつの日か81章分たまると、製本して、皆さんのお手元に、一冊の『老子』が出来上がる!……そんな日をいつか迎えたいですね。

ではでは、いよいよ、冬に向かう季節、風邪など、くれぐれも気をつけて。
特にインフルエンザには。
報道は制限されているようですが、中国大陸で、新種のインフルが発生、猛威を振いつつあると、聞きました。
ワクチンも効くかどうか。
ともかくは、鼻と喉を、薄い塩水で、毎日外出から帰ったときに、うがいするのを、お勧めします。

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