ひざ小僧のため息。

読者になってみれば?コメントしてみれば?ひざ小僧に触れた人、しあわせが来る予定です。

MOMOSO&TAKERU

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第2章 クマナ戦役
12 王宮での戯れ
サン国の滅亡から4年。

サン元皇女モモソと、イト国皇女ジョシーは、クマナ国首都ファカータの王宮に人質として幽閉されていた。モモソ17歳、ジョシー15歳。

ある日のことー

ジョシーが今日も魔法の修行を受けようと、運動部屋まで廊下を歩いていたところ、声をかける男がいた。クマナ王第一皇子だ。太り 肉 じしでいかつい顔つきの王に比べ、ほっそりとしてハンサムな息子だ。軽薄な感じは否めず、また口を開くと嫌味たっぷりだ。

「ジョシーちゃぁ〜ん」

はうっ! と首をすくめる。近頃皇子にちょっかいだされるので、とても苦手に思っているジョシーだ。思わず、顔がゆがむ。無視して通り過ぎようとする。

「ちょっとちょっと〜。今日も無視する気かい、ベイベちゃ〜ん。いい加減、第一皇子様に 靡 なびいたらどうだい? 」

「い、いやですっ! 」

「君、おつむ悪いの? 馬鹿なの? 僕のモノになれば、人質の身分脱出だよ? 」

今は人質とはいえ、ジョシーはイト国の皇女なのだ。女をモノ扱いする奴はどうあっても許せない。

「人質は、ヒトであるだけましです。あなたの『モノ』になるくらいなら、豚の嫁になります」

「ほぉ・・・ 人質風情が、随分生意気な口をきくじゃないか」

皇子のプライドを傷つけたようだ。目の色が変わる。そのとき・・・

ゴツッ

モモソが皇子の後ろに近づき、いきなり正拳付きを皇子の後頭部にくらわした。

「いってえ! 何すんだよ、ゴリラ女! 」

「おやおや、万能の皇子様には、後ろに目がついてないようですわね、おほほほ」

「ふざけるな! 父上に言って、罰を与えてもらうぞ! 」

自分では何もできないのだ、このバカ息子は。

「結構ですわよ。でも今度あたいの妹分にちょっかい出したら、男であることを生涯悔やむ結果となること、して差し上げますわよ! 」

ひっ! と小さく叫ぶと股間を両手で押さえた。

「マイ・プリ〜ンス! こんなところにいらしたの〜? 早く部屋にもどりましょ〜」

ひらひらと手を振り、胸がすけてみえるような着物を着た皇子の愛妾がやってきた。皇子に寄りかかると、

「皇子さま? 人質風情をおからかいになると、ご身分にかかわりますわよ? さ、早くお部屋にもどって、さっきの続きを・・・ ね? 」

「やれやれ、きついことだ・・・ もう少し休ませてくれよ。そんなに何回もできないよ・・・ 」

「だめです〜、私、早く皇子の子供が欲しいの〜」

うふふ、おほほと立ち去って行く皇子と妾。互いに顔を見合わせる、モモソとジョシー。

そこへ、大ギー国から派遣されている参謀エレノア・ド・ローランがやってきて、

「モモソ、旧サン領からお前に面会だ」



王宮広場で、旧サン領からやってきた使者が座って待っていた。背後に、差入として持参した食糧や衣料などの貢物が置いてある。使者は中年女性で、ひどく汚れた 襤褸 ぼろをまとっていた。

モモソが広場に入ってきたのを認めると、使者は「姫さま! 」と叫ぶなり、平伏する。モモソは駆けより、「どうか頭をあげてくれ」とささやく。

モモソは使者の顔をおぼえていた。確か、サンでも指折りの豪族の夫人だったはずだ。それがこんなに痩せ衰えて・・・

モモソは思わず使者を抱きかかえ、

「許してくれ」

使者はモモソを突き放し、きっとモモソを睨むと、

「許せですって・・・? 姫さま、許せるはずがないじゃありませんか。私達は、姫さまに謝ってほしくなんかない。どうか・・・ どうかサンの再興を・・・! 」

そしてまた、モモソの前で平伏した。

「・・・ わかった」ほかに答えようがなかった。

使者が帰っていくと、エレノアが近づいてきた。

「亡国の民は憐れだな」

からかうつもりかと、モモソはエレノアを睨みつける。

「国という後ろ盾を失うと、民がどのように扱われるか、よく憶えておくがよい」

「・・・ 」 どうやら、ただからかうつもりではないらしい。

「よいか、クマナ王はドケチだ。ここの経費すべて、旧サン領からの税で賄っている。お前とジョシーの食いぶちはああして別に、献上させている」

「・・・! 」 前から不思議に思っていたが、そういうことか。

「旧サン領の税率は、7割5分だ。民はまともには暮らせない」

エレノアは何が言いたいのかと、 訝 いぶかしく思った。クマナは、敗戦国をどこまでいじめ抜くつもりか・・・

「そこまでやられながら、旧サンの民は耐えている。なんでだと思う、モモソ」

「そ、それは・・・ 」

「それはお前だよ、モモソ。皆、お前にかけているのだ。

クマナがいじめ抜く。イトやマツロへの前線も、旧サンの民が送られており、だんだん田畑を耕す男子が少なくなっている。女子どもだけで村を守り、爪に火をともすように暮らし、重税に耐えている。女たちは、クマナ兵に犯されることも少なくないと聞く。

だが、そうしたサンの民は、強いぞ。サンの民の意識がクマナ打倒に向かうとき、それは恐ろしい軍になるであろうな」

「・・・ 師匠。あなたは、クマナの雇われ人だ。なぜ、私にそのような話をする? 」

「なぜだろうな・・・ 私は、いずれお前と剣を交わすときがくるような気がするのだ」


(続く)
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11 大僧正
街は逃亡者に優しい。私は、盗みをして暮らすようになった。商店から食べ物を盗んでは路地裏に逃げたり、街をぶらぶら歩く金持ちから財布をすって路地裏に逃げたり。

盗みをくり返しているうちに、同じようなことをして暮らしている子供たちがたくさんいるのに気がついた。皆、戦争孤児だ。名もなき戦士たちが戦死をした場合、働き手をうしなった家は容易に崩壊し、弱い者が打ち捨てられてしまう。どうして、豚どもは 戦 いくさが好きなのだろう?

将軍の邸宅を逃げだしてから2年。私は、少年盗賊団の頭目のような存在になっていた。金を盗んでは食糧を買い、孤児たちを食わせる。孤児たちは私のことを姉ちゃん、姉ちゃんと慕ってくれた。みな家族のようで、居心地がよかった。

サジムもよく我が盗賊団に加担してくれた。サジムは、私と同じくらいの年頃の男だ。何かというと、私と孤児たちの隠れ家である町はずれの洞窟に忍んでやってきた。

「エレノア、2年前にここの代官、愛人に殺されたの知ってるだろ? 」

「え? 何のこと? 知らないなあ」

とぼけるほか、ないでしょ。

「王の参謀が、交代した代官のこと査察に来るんだってさ。・・・ この意味わかるかい? 」

何、もったいつけてんのさ。答えてやんない。

「新代官は参謀様にたんまり 賄賂 わいろを贈るってこと。参謀様の宿営に忍びこめば・・・ 」

「やる! 」

その話、乗った。大粒の宝石の一つでも盗み出せれば・・・ 子供たちに、家を買ってあげられるかもしれない。それに・・・  役人 ぶたどもにひと泡ふかせることができる。私は2年もの間捕まることがなかったので、このときは自分の力を過信していたのだと思う。



査察に伴ってやってきたギー国中央からの兵士の群れで、街が溢れかえっていた。時ならぬ特需で街は活気づいている。武器を携行している男たちだらけなので、孤児たちに『仕事』はしないように言ってある。

サジムの情報によると、兵士たちは純粋に警備兵だそうで、王査察団の中心は僧兵団だ。白い装束に、目玉の部分がくりぬかれた白い頭巾をかぶり、皆槍の使い手だそうだ。僧兵団を束ねるのが、大僧正。人前にでることがめったになく、謎の人物である。

僧兵団は街外れの広場に、テントを張って野営していた。警備兵の連中は街で飲んだくれ騒いでいるのに、質素禁欲なことだ。サジムと私は、夜も寝静まった頃、野営地に近づいていた。

焚火がパチパチはぜている。しかし、見張りの兵が一人もいない。これから泥棒しようという私達だが、不用心なことだと言わざるを得ない。

難なく、一番大きなテントに入ることができた。細長い蝋燭がちろちろと薄橙色の灯りをともしている。

「さて、参謀殿はどんな賄賂を贈られたのかな? 」

サジムは楽しそうに、大きな 葛篭 つづらに手をかけた。蓋を開けてみると、中は果物がつまっていた。

「・・・ 食糧? 」

蓋を閉じ、他の葛篭に手をかける。そのとき、私の背中に悪寒が走った。

「・・・ サジム、やばい気がする。帰ろう! 」

「何言ってんだよ、まだお宝見つけてないだろ」

ボキボキッ

鈍い音とともに、サジムの右腕があり得ない方向に曲がった。

「うぎゃあああああ!!! 」

サジムが絶叫する。

「・・・ コソ泥、我を侮辱するか。」

白装束に白頭巾、僧兵か。白装束が怪しい力で、サジムの腕を手を触れずにへし折ったのだ。

キサマッ! 私は、持っていたナイフで切りかかった。白装束は人差し指を私の向けた。人差し指の先から不思議な力の束が吹きだし、私のみぞおちに突き刺さるようにぶち当たった。私は悶絶して床に転がった。

「我はキサマじゃない。大僧正じゃ」

こいつが、あの大僧正か・・・ 見張り兵などいらぬはずだ。強すぎる。

「我が賄賂など受け取るわけがなかろう。さあ、次は首をへし折ってやろうか」

やばい、本気だ。私は、痛む腹をかかえ、鳴き叫ぶサジムの前に立ちはだかった。

「頼む、こいつの命だけは助けてやってくれ! 」

大僧正は、しばらく私を無言で見ていた。

「僧兵! 」と呼ばわると、大柄な僧兵が部屋に入ってきた。

「こいつを外に運び出せ」

僧兵は、気絶したサジムを

肩に抱え、テントの外に運び出して行った。

「さて・・・ 」と言いながら、大僧正は頭巾を脱いだ。

声の質からそうじゃないかと思っていたが、やはり女だった。まだ若い、20代半ばくらいの女。頭髪をそり落とし、額に宝石が付いている。

「少女よ、お前のオーラは、我と同じ 薔薇 ばら色の蛇じゃ・・・ 助けてやることにする」

薔薇色の蛇? 一体それがなんだというのだ。

「運命を切り開く、先駆者のオーラ。権力におもねず、かつ権力を掌握する。民の救世主ともなり、あるいは悪魔ともなる。そうしたオーラじゃ」

権力・・・? 権力なんかたくさんだ。それより、街にあふれる孤児たちをなんとかしてほしい。

「ほう、そんなに孤児がおるのか。代官の失政じゃな。よし、孤児院設置をすすめよう」

! 大僧正、人の心を読むのか?

「うん、そうじゃ。お前の名前は? ・・・ エレノア。そうか、ローランの王女・・・ 憶えておるぞ、ローランは美しいオアシスじゃった。なぜ、この街に? ・・・ ああ、あの豚将軍。ほほう、奴を殺したのは・・・ うむ、もはや時効じゃろう。今更咎めても詮方ない」

この人に隠しごとはできない・・・ それにしても、

「あ! 今お主、気持ち悪いと思ったな! 気持ち悪くなんかないもん! 大僧正は美しい王陛下の参謀だもんね! 」

何このギャップ。

こほん、と空咳をして、冷静な顔に戻った大僧正。

「エレノア、我の下で働くがよい。大きな力の使い方、教えてやろう」

こうして私は、王参謀大僧正に仕えることになった。


 
(続く)
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10 初めての殺人
(残酷表現あります。ご注意を。)

将軍家の奴隷になってから4年経った。私は16歳になった。

母は・・・ 奴隷の身分のまま、豚将軍の愛人のような存在になっていた。豚将軍が夜母に与えられた部屋にやってくると、私は隣の納戸やバルコニーに避難した。母がなぜ変な声をあげるのか、私も徐々に理解していった。豚将軍は、わざと行為の音を私に聞かせて喜んでいるんじゃないかとすら疑った。

母が父王を裏切ったと思う嫌悪感と、母をも奪われた寂しさもあって、私は混乱していた。母に優しくすることなんてできなかった。私は何かにつけ母を罵り、あのとき死ねばよかったとか、父に会いたいとか、母を苦しめるだけの言葉を吐きかけた。

将軍家の他の奴隷たちとはうまくやっていた。料理番たち、庭師やメイドたち、皆やさしくしてくれた。彼らも戦争による被害者で、似たり寄ったりの境遇だ。彼らと働いていると安心で、いつしか境遇に慣れて行った。

そんなある日・・・

母がどこかに出かけている間に、母の部屋を掃除していた。昼下がり、まさか豚将軍がやってこようとは思わなかった。

机の上を片付け、雑巾で拭いていたので、机に手を置き尻を突き出すような格好になっていたと思う。豚将軍は音を立てずに近寄り、いきなり私の腰を抱きしめた。

「や、やめてください! 」

豚将軍の顔が私の首の後ろから頬に近づいてくる。荒い鼻息が左耳にかかる。豚将軍の頬の、妙に冷たい油汗が私の頬につき、ぬるりとした感触がする。

「んふふふぅ。お、俺の女になるのね。」

豚将軍は下着一丁の裸だ。私の尻のあたりに、想像したくない熱い塊が触れる。

「は、母親は用事をいいつけたから、しばらく帰ってこないのね。さ、早く俺の女になるのね。」

「嫌です! 離して下さい! 」

「い、言うこと聞かないと、母親殺すのね。もう飽きたのね。」

言いようのない怒りが腹の底からこみあげてきた。そのとき・・・

「将軍様! 娘を離して! 」

振り返ると、母が立っていた。その手には、獣の骨も断ち切ることができる大型の肉切り包丁を握っている。

「おかしいと思って引き返してみてよかったわ。最近娘を見る目が獣だったもの。さあ、離して! 」

「い、いやなのね。お前、飽きたね。どこか行くのね。行かないと、兵に言って娘殺すのね。」

「娘には手を出さないというから、お前みたいな汚らわしい豚に・・・ もう我慢できない! ローランの恨み! 」

母は包丁を突き出して突進し、豚将軍の背後から深々と刺した。豚将軍の手が緩んだので、私はくるりと身を返して離れた。豚将軍は、空をつかむように両手をばたばたさせた後、前のめりに倒れこんだ。

母は、包丁を豚将軍の背中から引き抜いた。黄色い脂肪が傷口からはみ出し、少しの間を置いて、勢いよく血が噴き出す。ビュビュビュビューー!!

母は肩で二、三度大きく息をした後、思い切ったように包丁で首筋を切りつけた。豚将軍の血と混じわり合うように、母の首から鮮血が飛び出す。かなり深く切ったようで、白い筋と骨まで傷口からちらりと見える。

「母上! な、なぜ・・・! 」

「もっと早く、こうすればよかった・・・ 汚れた母を許しておくれ。さ、さあ、人が来る前に、逃げて。あなたは、何があっても生き延びて頂戴。いいわね、生きるのよ、生きる・・・ 」

がくりと母が倒れた。「母上! 」

「・・・ 痛い・・・ い、痛い・・・ お前、助けるのね・・・ 」

豚将軍、まだ生きていた。私の頭の中がカッと炎で一杯になった。母の血でぬるぬるする手から包丁を奪い取り、豚将軍に近づいていった。

「・・・ 痛い・・・ あ、お前、何をする・・・? 」

豚将軍を蹴りつけ仰向けに転がして、心臓めがけ包丁を突き刺した。


これが私の初めての殺人だ。



「ひっ・・・ 」

転がった豚将軍を呆然と見下ろしている私の後ろに、メイド頭のおばさんが立っていた。口に手をあて、悲鳴を揚げないようにしている。

「・・・ エレノア、こっちいらっしゃい。」

おばさんは私を抱きかかえるようにメイド室に連れて行き、血で濡れた服を脱がせ、新しいメイド服を与えてくれた。

「前からね、お前のお母様と話していたことがあるの。万一のときは、お前を逃がしてやってほしいって。今、そのときが来たのね。」

母は、この日のために準備していたのか。

「いいかい、丁度食糧の買い出しに炊事場係が街に出るから、荷馬車に乗ってここを出なさい。街に出たら、とにかくお逃げなさい。私たちができるのはここまでよ。いい? わかった? 」

そう言って、おばさんはいくらかのお金を握らせてくれた。

おばさんの言いつけどおり、荷馬車に隠れ将軍邸を脱出、街中で降り、人ごみに紛れた。


将軍邸は大騒ぎになったに違いないが、警備隊あるいは将軍の兵が私を捜索するようなことはなかった。後から調べてわかったことだが、豚将軍の人望は地に落ちており、ローランの元王妃が豚将軍を殺害したことをむしろ歓迎するムードであったようだ。将軍邸で使用されていた奴隷達の結束も固く、私の行方を誰も頑として話なかったそうである。ギー国中央政府からすぐに代替の将軍が任命派遣され、混乱は収束した。
 
 
 
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9 ローラン
クマナ王宮は、ファカータの港を見下ろす高台にある。エレノアは、忙しい政務に疲れると、王宮のバルコニーから海を眺めるのが習慣になっていた。

モモソは前に、ここから故郷が見えるかと聞いた。見えやしない。エレノアが生まれたローラン国は、海を隔てた大陸にある大ギー国のさらに内陸の砂漠地帯にあるオアシスだ。大陸の東西交易の中継地であり、行き交う商人、旅人の保養や物資の調達により潤っていた。西の強国トュルクと、東の強国ハーンの勢力が均衡している間、平和を 謳歌 おうかした。トュルクの勢力が弱まり、ハーンが滅亡、大陸の東はギーが台頭してきた。

エレノアは、ローランでの日々を思い出していた。





あの日は、夏の初め、太陽の光が肌に刺すような日だった。お庭でひとり遊んでいたところ、母上様が呼ばわった。

「エレノアー? お昼にしましょうー。」

「はーい! 」と返事をし、母上様のもとへ駆けつけた。

「あらあら、こんなに汗かいちゃって。顔を洗ってらっしゃい。先程、父上様がお戻りになると連絡があったの。お昼ごはん、ご一緒できたらいいわね。」

「ホント? 父上様と? エレノア、うれしいなあ。」

「さ、早く。」

パタパタと洗面台に向かった。

私の父、ローラン国王は、国境付近で起こった大ギー国との戦闘に出て行ったのだ。拡張政策をとる大ギー国は、突然ローランに侵攻してきた。その父が急きょ宮廷に戻るというのだから、戦闘に勝利したのか、それとも・・・。幼かった私は、そんなこと気付きもしなかった。

食卓に料理が並び、私の好物である羊のチーズがあることに興奮していたころ。王宮に父王の帰還が知らされた。

「王妃様。姫様。陛下が至急おいでいただきたいとのことです。」

王の執務室に赴くと、父王は兵装のまま立っていた。

「王妃よ。エレノアよ。お前たちはすぐ、ウィグールへ落ちなさい。ウィグール王とは話がついている。」

「え? あなた、それはどういう・・・? 」

「詳しく話している時間がないのだ。ギーに国境を破られた。もうすぐ、ここにもやってくるだろう。その前に、お前たちは逃げてほしいのだ。どうか、生き延びてくれ。」

「あなた! 」「父上! 」

そのとき、執務室の扉の先から声がした。

「陛下! ウィグールから、使者がやってまいりました! 」

「少し早い気がするが・・・。そうか、来ていただいたか、お通ししなさい。」

バンっと扉が開いて、姿を現したのは・・・

「ギーの兵士! さては、裏切ったな! 」

父王が従者を 睨 にらみつけた。従者が、ギーを王宮に導き入れたのだ。睨まれた従者は、首をすくめて、さっと兵らの後ろに逃げ去って行った。

ギーの兵士が執務室になだれ込む。父王は、私の目の前で殺害された。


母上と私は、兵に囲まれた。

「おい、いい女だな。青い目に、銀色の髪に、真っ白な肌。やっちまおうぜ。」

「やめとけ、やめとけ。あの変態将軍に知れたら、家族もろとも殺されるぞ。征服したものはすべて奴のものだからな。命あってのものだねさ。」

「そうだな。くそ忌々しいが、仕方ねえ。報奨金で、都に帰ったら女でも買うか。」




母上と私は、ローランから将軍の領地に連れ去られた。

将軍の邸宅では、下の下着一丁でほぼ裸の、色白でぶくぶく太った中年男が待っていた。むやみに汗をかき、ふー、ふーと鼻息が荒い。将軍その人だ。まるで豚だ。

母上と私は、後ろ手にしばられ、床に転がされている。何人かの兵が周りに立っている。

「も、もう僕のモノね。シルシを入れるのね。」

豚将軍は、真っ赤に熱した炭函の中に刺してあった鉄棒を引き抜いた。鉄棒の先には、『鎌と金槌』の紋章を 象 かたどった焼印がついていた。

「お、おさえるのね。」

兵が、母上の頭を押さえた。

「ぎゃあああああ!!!!! 」

豚将軍は、焼印を母上のひたいに押し付けた。肉の焼ける臭いがしてくる。

母上は、白目をむき、口から白い泡を吹いて気絶してしまった。

「薬を塗って、きれいな傷跡が残るようにしとくのね。・・・ はい、次はおチビちゃん・・・ おチビちゃんは、どこにシルシをつけようかなあ。おチビちゃんの一番きれいで、やわらかいところがいいのね。おしりちゃんをムキムキするのね。」

私は兵に後ろ向きに転がされ、抑えつけられて履いていたズボンを下着ごとずり下げられた。

脳天を突き抜けるような痛みがやってきた。母上と同じ、肉の焼ける臭いがしてきた。

忌々しいが、私の尻の右頬には、今でも『鎌と金槌』の焼印がある。


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8 マツロ
サンの滅亡により同盟国を失ったイトは、クマナの脅威に抗するため新たな同盟国を求めていた。イトは、隣国マツロに同盟を求めることとした。

山賊と呼ばれ、一段低くみられるマツロの人々。マツロは小部族の緩い連合体であり、部族会議で族長、すなわちマツロ国王を決めていた。マツロが山賊と呼ばれるのは、部族が基本山々を周遊して狩猟する民であり、時々は山を下りてイト、サン、クマナの集落を襲うようなことがあったからである。現マツロ国王は、マツロをイトやサンのような『文明国』に変えたいと思っていた。ただし、マツロ国王は頭脳より筋肉が発達しているタイプであり、実質マツロの『頭脳』は、王妃が担当していた。国王は王妃にべた惚れであり、まったく頭があがらない。

マツロ国王・王妃は、山上の小さな集落で、移動可能な簡易住居に住んでいた。モンゴルのゲル住居と同じく、フェルトや動物の毛皮で木造の骨格を包んだ構造になっている。イトから国王代理としてやってきたのは、モモソとタケルの母、旧サンの元女王テファ二アである。簡易住居の中で、テファ二アは正座し、長椅子にふんぞり返っているマツロ国王と対峙した。王妃は、部屋の影から様子をうかがっている。

「クマナは奇襲によりサンを 屠 《 ほふ 》 り、早晩イトも侵略するつもりです。貴国も安泰ではありえません。どうかイトと攻守同盟を締結していただき、クマナに共に対抗してください。」

マツロ王はしばらく黙っていたが、やがて 呵々大笑 ( かかたいしょう ) した。

「あっはっはっは。こいつはおかしい、あの気位の高いイトが、山賊マツロに頭を下げるか! 」

イトは南島の中でも歴史ある国であり、正統性を誇る嫌いがあったことは否めない。

「俺らは、クマナと組んだっていいんだぜ。海の向こうの国との交易で潤っているクマナなら、お宝をたんまり分けてくれるだろうよ。マツロがイトと組んだら、イトは何をくれるんだ? 」

テファ二アは、両手を大きく広げた。

「母の・・・ 母の心にございます。」

テファ二アの目から、涙が一粒つうと落ちた。

クマナは、モモソとイト国の姫ジョシーを人質としてクマナ王都ファカータに連れ去っている。また、タケルの行方も知れない。

マツロ王妃は、黙っていられなくなり、王に声をかけようとしたが、それをさえぎるように・・・

「気に入った! 」と大声で言うマツロ王。

「クマナの今度のやり方は、卑怯だ。山賊と罵られる俺らだが、卑怯者は 大 《 でえ 》 きれえだ。母の心、有り難く頂きましょう。イトとマツロで、クマ公をてんてこ舞いさせてやりましょうぞ! 」

マツロ王妃は、ほっとしていた。やはり、あたいの惚れた旦那だ。あたいも、タケルの母君にお土産を持たせたくなった。

「ちょいとお母さん、あたいについてきておくれよ。」

テファ二アを簡易住居の外にいざなった。

「あれを見てごらん? 」

マツロ王妃が指さす方向に、少年の姿があった。 鍬 ( くわ ) を持ち、マツロの青年と畑の上で何かを話している。

「タ・・・ タケル! 」

タケルは、マツロの山中を徘徊中にマツロ王らに保護されていたのだ。

「マツロの山ん中で熱出して倒れてるところを助けたんだ。あの子、そのままここに居付いて、働かせてくれって。・・・ マツロの弱点は食糧が安定しないことだとか言っちゃって、ああして畑を作り始めてさ。・・・ それから、マツロに学校を作るんだって。部族の長の子供らは強制参加。なぜかわかるかい? 人質でもあるんだが、『マツロ』としての一体感を醸成するためだそうだ。まったく面白い子だよ。」

テファ二アはタケルを優しい目で見つめている。

「お母さん、タケルをこのままマツロに預けないか? クマナはタケルの行方に気付いていないようだし。タケルは強くなりたいって言ってる。あたいらも、タケルを強くしてやりたいんだ。」

「・・・ タケルをよろしくお願いします。私は、タケルに会わずにこのまま帰ります。」

同盟締結の後、イトはマツロに対し、武器の供与及び中央集権的軍隊の創設に対する協力を開始した。
 
 
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