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タンニンとは
タンニンとは植物に含まれる水溶性成分のうち、蛋白質・アルカロイド(植物に含まれる塩基性含窒素化合物。ニコチン・モルヒネ・カフェインなど)・金属イオンと強く結合し、難溶性の塩を作る性質をもつ化合物の総称です。
非常に多くの化合物がタンニンとして知られていますが、主に二種類に大別することができ、それぞれ加水分解性タンニン・縮合型タンニンと呼ばれています。 加水分解性タンニンは名前の通り、酸加水分解(希塩酸とともに熱すると分解)される性質をもつものです。この群のタンニンはブドウ糖など(環状多価アルコール)に複数の、没食子酸に代表される多価フェノールカルボン酸が結合(エステル結合)した構造を持つものが多く知られています。
この代表的な例としてはタンニン酸(ヌルデなどの虫こぶから得られる、複数の加水分解性タンニンの混合物)があり、薬用や皮なめし薬として使われます。
一方の縮合型タンニンは、カテキンやエピカテキン(茶などに多く含まれる化合物の一つ。カテキン類)などが複数で結合(縮合)した構造を持ち、酸加水分解を受けません。 こちらの代表例は紅茶に含まれるテアフラビン、テアルビジンなどです。これらは緑茶には含まれず、醗酵の過程で緑茶のカテキン類から作られます。
加水分解性タンニンも縮合型タンニンも、分子内に多価のフェノール性水酸基をもつ、ポリフェノール化合物に含まれます。
タンニンの性質 タンニンのもっとも重要な性質は、その定義でもある「蛋白質・アルカロイド・金属イオンと結合し、難溶性の塩を作る」ことです。このため、タンニンの水溶液と蛋白質などの水溶液を混ぜ合わせると、単独では溶けきっていたものが不溶化し、沈澱・濁りを生じます。 これを「タンニン活性」と呼びます。
これはタンニンが共通して持っているものですが(この性質がなければタンニンとは呼べませんので)その強さは化合物の分子構造によって変わってきます。
この性質は皮なめし(皮の蛋白質を変成させて「革」にし、持ちをよくする)染色(水溶性の色素を布に染み込ませた後、不溶性の沈澱にする)などに工業 的に利用されます。 またそれだけでなく、薬としても局所の蛋白質と結合して被膜を作り、粘液の分泌を抑えて、消炎・止瀉作用を持つため、タンニンを多く含む植物には薬用とされるものも多くあります。このタンニンの薬理作用は収斂(しゅうれん)作用と呼ばれています ただし、タンニンを薬として飲用するには一つ問題があります。それはタンニンが、どれも極めて渋いという点です。この渋味こそがタンニンの薬効の本体とも言えるのですが、そのままではとても飲むことに耐えられないほどの渋味があります。 渋柿を食べたことのある人であれば、あの渋さを思い出してください。
しかしうまくしたもので、渋柿を干して甘くしたりするのと同じように、タンニンの渋味を弱くする方法は存在します。 タンニンは水に溶けてあの渋味を生じさせるのですから、水に溶けなくしてしまえばいいのです。それにはタンニンの基本性質である、いろいろなものと結合して難溶性になることが利用できます。
実際、加水分解性タンニンの一つ、タンニン酸とアルブミンという蛋白質を結合させたタンニン酸アルブミン(=タンナルビン)、殺菌作用を持つアルカロイドの一つ、ベルベリンと結合させたタンニン酸ベルベリン(ベルベリンの強い苦味も同時に消える)などが、収斂・止瀉薬として認められています。これらはタンニン酸製剤と呼ばれます。 これらの薬は口に入ったときは結合したままですので渋味を感じませんが、腸に到達した時点で代謝されて、薬効を現すようになります。タンニンは胃を刺激するという副作用も持ちますが、タンニン酸製剤であれば結合した状態のまま胃を通過するので、この副作用も軽減されます。 茶、紅茶のタンニン
紅茶には例にあげたテアフラビン、テアルビジンと呼ばれる縮合型タンニンが多く含まれます。 またこれらのタンニンの原料になるカテキン類に没食子酸が結合した、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートという低分子化合物などが、紅茶のみならず緑茶にも多く含まれることが知られていますが、これらの化合物は極めてタンニン活性が強いことが判っています。
総じて紅茶、お茶はタンニン活性の強い化合物を多く含むようです。 このため、例えば鉄分を補うために鉄剤をお茶で飲むと吸収が落ちるとか、カルシウムやマグネシウム濃度の高い硬水で紅茶を淹れるとタンニンが抽出前に不溶化して、水色や味が充分に引き出せなくなるなどの現象が見られます。 蜂蜜を紅茶に入れると黒くなるのも蜂蜜の鉄分がタンニンと反応することが原因だと言われています。 さらに紅茶をゆっくりと冷ましてしまうと、クリームダウンと呼ばれるような白濁を生じますが、これは紅茶に含まれるカフェイン(アルカロイドの一種であるため)とテアフラビン・テアルビジンが結合したものが、さらに蛋白質や多糖類と一緒に、時間をかけて凝集し大きく成長しながら析出してくるためだと言われます。この現象は急いで冷やした場合には大きく凝集するだけの時間がなくなるため、防ぐことが可能です。
また一方ではカフェインと結合することで、カフェインの薬理作用を弱める力があるのではないかとも考えられます。 珈琲のタンニン(?) 珈琲にはクロロゲン酸類と呼ばれる、加水分解性タンニンに非常によく似た構造の化合物が多く含まれています。 これは糖の代わりにキナ酸、没食子酸の代わりにコーヒー酸という物質がエステル結合しているもので、クロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、クリプトクロロゲン酸、イソクロロゲン酸などからなる、一連の化合物です。
これらクロロゲン酸類は構造もタンニンとよく似ており、多価フェノール性の水酸基も多く持っているために、ある種のタンニンの定量試験に反応することなどから「カフェータンニン」と呼ばれていたことがあります。
しかし、これらのクロロゲン酸類は総じてタンニン活性が極めて低く、現在ではタンニンとして扱うのは不適当であるとされます。 ただしイソクロロゲン酸には若干のタンニン活性が見られます。 このことから珈琲は紅茶に比べてタンニン活性が低いと考えられます。これは珈琲と紅茶の違いを考えるとき、多くのヒントを与えてくれます。 例えば、珈琲は紅茶に比べると水の硬度の影響は受けにくいと言われますが、これにはタンニン活性が低くて濁りにくいことが一因(他にももともとの水色の濃さや風味の強さなどもありますが)ではないかという仮説が立てられますし、カフェインとの反応も紅茶のタンニンほど強くないのであれば、カフェインの苦味や薬効がより強く現れることの説明になるかもしれません。 また、珈琲だけに限って考えた場合、クロロゲン酸類の量が増えて多少なりともタンニン活性が上がったとしたら、カフェインの苦味を抑えてマイルドなものにできるということが考えられます。これは苦味に質的な幅を与え、味に立体感とコクを与えることに繋がるかもしれません。もっとも一方では渋味が増えるので増えすぎると却ってまずい結果になるでしょうが。 コーヒーも紅茶同様、ゆっくり冷やしていくと濁りを生じます。この濁りはカフェイン−クロロゲン酸類複合体と少量の蛋白質や多糖からなることが調べられており(このことからもカフェインとクロロゲン酸類が若干なりとも反応していることは示唆されるのですが)紅茶同様に急冷することで防ぐことが可能です。
また、珈琲の抽出時に出てくる泡との関係も見逃せません。珈琲の泡には渋味が凝縮していますから、おそらくこの部分にクロロゲン酸類のように、弱いながらもタンニン活性を持つような成分が集まっているという可能性は考えられます。泡の形成には界面活性作用を持つ物質(セッケン分子など)が必要ですが、もしかしたらクロロゲン酸類にこのような働きがあるのではないかと考えています。 |
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