
今年の6月18日に行った“ろあん松田”以来途絶えていたそば通信を発信します。
その間、約半年。実際ほとんど蕎麦店を訪れることはなかったのですが、まったく行かなかった訳でもなく、再訪を含め数店には行っていました。
特に際だった印象がなかったため通信の俎上にのせなかったのですが、筆ならしのため2店について触れてみます。
まず、大阪都島の“愚庵”。
ここには2003年10月4日、つまり2年ほど前に行きました。
その時記帳した芳名帳により、季節毎に自筆の絵手紙(はがき)を送っていただいていて、
近くに行ったときには必ず立ち寄ろうと決めていたのです。
それほど自筆の絵手紙の威力は大きいのですが、
私信においてはついついプリンターや印刷に頼っている現状に、反省を促されています。
さて肝心の蕎麦の味はというと、蕎麦自身は細切りのいい蕎麦に属すると思うのですが、
前回同様、出汁に不満を感じました。
薄目の出汁にたっぷり浸してすするより、濃い目の出汁にさっとつけて頂く方が
味がしまって美味しいように思うのですが、比較的濃口の私の味覚を差し引いても“愚庵”の出汁は残念でなりません。
次に、枚方“天笑”。
菊人形が今年で最後ということで、「昭和残像伝」というテーマで写真を撮っている私としては、
これこそまさしく昭和の残像だと感じ、《ひらパー》に行くことにしました。
その帰り“天笑”に立ち寄ったのです。
前回は経歴や評判、店構えなどから期待大だったのですが、大きく裏切られた印象の店でした。
理由の一つとして考えられるのは、いわゆる新蕎麦前の最悪時期のせいではないか、と疑問符を投げかけていたのですが、今回は新蕎麦真只中。
この手の蕎麦店には珍しく、ゆったりと広い店内のせいで、そこそこお客がいるにもかかわらず、
なによりもまずゆったりとくつろげるのがうれしい店です。
例の(はがきさえボールペンでは書くことができないゴツゴツの)大テーブルに腰掛けたのですが、
斜め向かいに昼間から日本酒をちびりちびとやりながらアテや蕎麦を楽しんでいる上品な老人がいたのですが、まさしく蕎麦屋の醍醐味を感じる光景でした。
さて蕎麦の方は「細切りそば」(840円)と「粗挽きそば」(840円)をいただいたのですが、
蕎麦自体は決して悪くないのですが、やはり出汁にしまりがなく全体として印象がぼやけてしまう味でした。
師匠にあたる“凡愚”はしっかりと煮切ったような濃口の出汁にもかかわらず、“天笑”がその道を歩まないのは、それがまさしく“天笑”の〔生きる道〕なのでしょう。
好みといってしまえばそれまでですが、私の中では“愚庵”同様どうしても三役には上がれない蕎麦店という評価になってしまいます。力は秘めつつも、もう一歩のところで横綱になれない魁皇みたいなもんでしょうか。
さて本題。
場所は福島。
福島といっても福島県ではなく大阪の福島。
朝日放送近くに発見した、蕎麦“まき埜”。
聞くところ昨年の4月開店とのことで1年以上経っています。
たまに前を通っていたにもかかわらず、見逃していました。
今もそれが不思議です。
数日前に発見して昨日出かけたのですが、やはり店に向かうときの気持ちは期待と不安のワクワクドキドキ感でいっぱいです。
まさしく恋しているものの気持ちと同じです。
最近、昔からの知人に、旨い蕎麦屋はそこの女将さんを見るとわかるということをいわれました。
彼は“ろあん松田”に因縁が深い人で、私が薦めた“たかま”にいってそれをますます感じたそうです。
そういえば
“ろあん松田”“たかま”はもちろん“玄”“胡蝶庵”“蔦屋”などの女将さんは清楚な美しさを秘めています。
今回の“まき埜”も『いらっしゃいませ』とでてきた女将さんはまず合格でした。
蕎麦も充分期待できそうです。
盛り(900円)を注文して店内を観察。
高級な造りではありませんが、清潔感がただよい、内装のちょっとしたところに手造り感も演出し、なかなかの店です。
外観も内装もどこか“たかま”に通じるものを感じます。
でも出てきた盛りは“たかま”とはまったく違うタイプの蕎麦でした。
やや太切りでホシのない白い蕎麦です。
透明感はありません。
何も付けずに一口いただくと、《コシ》のある、もちもち麺です。
たぶん55回のそば通信で《コシ》という言葉を使ったのは、初めてではないかと思いますが、
それほど私の中で蕎麦の《コシ》は気にならなかったのです。
でもここ“まき埜”の蕎麦は、いい意味で《コシ》というしか、いいようのない食感がありました。
味わいがあり噛みごたえのある蕎麦でどこかというと兵庫の“久庵”に近く、“久庵”よりも別方向に一歩進んで(?)いる蕎麦です。
私にとっては難しい判断なのですが、生粉打ちの蕎麦とはなにか違う食感にいわゆる[二八蕎麦]ではないかと思いました。
これが当たりなら少しは蕎麦の味が分かってきたかなと思うのですが、しばらく通ってから尋ねてみたいと思います。
行って悔いのない良店の一つです。
(あとで電話番号を見て当たりかなと思いました)
[DATA]
蕎麦“まき埜(の)”
●大阪市福島区福島6-11-13
JR環状線福島駅より北に徒歩約7分、右折して大阪駅に至る道を東に約2分
●TEL.06-6453-2828
●営業時間/11:30〜14:00 18:00〜21:30
売り切れ次第終了
●定休日/水曜日
●予約を入れれば何か1品付くそうです
●店主/牧野龍滋
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