よつ葉のくろーばー

人生はハロー&グッバイの繰り返し

私の中の小さな世界

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私の頭の中の『ワンダーランド』へようこそ。。。
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ナノハナ

 
私は陽の光に包まれていた。
まぶたに眩い黄色を感じ、その先にある果てしない宇宙を感じていた。
指先にあるやわらかな陽の光を体いっぱいに取り込んで
これからやってくるであろう暗闇に備えた。

私は小さな星の小さな町に運ばれ生を授かった。
私の生まれる遠い昔、この星では哀しい出来事があったらしい。
「この星は病んでいる。」
あの人はそう言った。

私たちはこの地一面に根をはり、
そしてこの星に起こった哀しい過去をソラへと解き放つ。
「そのために生まれてきたのだ。」
と彼は言う。

私たちは<ナノハナ>と呼ばれ
この地球を救う花となった。

 菜の花畑に 入日薄れ
 見渡す山の端 霞深し・・・

PC 〜最終章〜

「ここの名前、さっきはじめて知りました。変な話ですけど・・・。
私このペンションに縁があるのかな?同じ名前だし。あなたは初恋の人にそっくりだし。
また来てもいいですか?今度はちゃんと予約して。」
聞こえなかったのか男子学生は黙っている。
「ちょっと寄りたい所があるんだけどいいですか?」
私は特に急ぎの用事もないのでかまわないと言った。
少し行った所で細い道へ入り民家が立ち並ぶ場所へ車を走らせると、男子学生は
「ちょっとここで降りてもらっていいですか?」
と言った。
そして男子学生は向かいにある古い3階建てのアパートの階段を上り始めた。
それは鉄製の緑色の螺旋階段だ。男子学生の後姿を追って最上階まで上り終えた所で私は確信した。
ここは<あの場所なのだ>と言うことを。

小さな小川の向こうには赤い屋根。それはさっきまでいたペンションの屋根だ。
どうして?あなたは誰?
もしあなたが彼だとしても若すぎる。彼だってもう32歳のはずなんだから。
でも、あなたが彼でないなんて考えられない。
私は男子学生の背中を見つめたまま声も出さずに泣いていた。
「もうペンションに来てはだめですよ。もう僕は死んでしまったんですから。」
彼である男子学生はそう言った。
振り返った彼の目にも涙が光っていた。
「僕は大学3年の春に病気で死んだんです。
 あなたのPCに送られたメールは、生前僕が君に送れなかったメールです。
 僕のPCを譲り受けた友人が、僕の残したものをそのままにしておいてくれたんだけど、
 2年後に偶然開いた未送信メールを誤って君のPCへ送信してしまったんだ。
 僕はずっと君にちゃんと会うべきだったと後悔していた。
 そして気持ちを伝えるべきだったと。
 君は僕の初恋だった。あの隣町の本屋で君を見かけたときどんなにドキドキしていたか。
 僕の家庭は複雑で、僕はほぼ見捨てられた存在だった。
 それでもなんとか自分の力で生きていこうとしたんだけど、まだ中学生の僕の力なんて大人の力で軽くねじ伏せられてしまった。僕は両方の親に捨てられ施設へ送られたんだ。
 その後奨学金をもらって大学へ進んだ。このアパートは施設を出てアルバイトしながら借りた場所だった。あのペンションの名前に惹かれてこの場所を選んだんだ。今は売り物件になってしまったけど。」
私はきっと夢を見ているんだ。そうでなければ私は壊れてしまったんだ。そう思った。
彼は続けた。
「誤って送ってしまったメールで君を混乱させてしまって申し訳なく思っている。
 そしてあの作品は、僕が果たせなかった夢の一部を君のPCへ送ったものだった。
 そのことも申し訳なく思っている。
 ただ、僕は君に伝えたいことがあったんだ。だからこの場所へ君を導いた。
 君はもっと外へ出るべきだ。ずっと家の中でPCとばかり向き合っていてはだめだ。
 外へ出て自分の目でいろんなものを見て知って感じて。恋もして。
 僕たちは未完成のまま終わった恋だから、君も僕もこんなに惹かれあったのかもしれない。
 僕はもう学校へ行くことも、作家になることも、恋することもない。
 でも君は生きている。なんだってできる。それを伝えたかったんだ。」
 彼はそう言うと私の頬の涙を指でぬぐった。
「本田君。私あなたのこと忘れない。ずっと忘れない。忘れないで生きていく。
 そして約束する。あなたの分までちゃんと生きるって。外に出て恋もするって。
 だから、最初で最後のお願い。」
そう言うと、どちらからとなくキスをした。
初恋の味がした。
「ふたりだけのヒミツ。」
彼はそう言うと小さくウィンクしてみせた。


あれから3年の年が過ぎ、私は35歳になった。
仕事以外のときはPCの電源をoffにして外へ出かけるし、身の回りのことも自分でする。
料理だってする。得意料理はカレー。
本田君との約束どおり、私はちゃんと生きている。
恋?それはただいま模索中かな?
そうそう、去年出した作品「天からの贈り物」がロングランヒットしている。
本田君のことは書いてない。もちろん。
だってあれは“ふたりだけのヒミツ”だから。
                               〜END〜

PC vol.9

その日の晩、私は眠れそうになかった。
あの場所を求めて偶然やってきたこのペンションで、偶然彼にそっくりな人に会うなんて。
こんな偶然ってあるの?
もしかしたら全部夢の中なのかもしれない。
明日の朝目が覚めたら、自分の家のベッドの中かもしれない。
そう思うと眠れなかった。
そんな思いと裏腹に私は深い眠りに吸い込まれていった。
窓からこぼれる朝日に目が覚めると、私はちゃんとあのペンションのベッドの上にいた。
時計を見るとまだ5時半だ。もう少し寝ていようかとも思ったが、なんだか時間がもったいなくて起きる事にした。窓から外を覗いてみる。昨日は暗くて見えなかったが、窓の外には小さな小川が流れその向こうには点々と民家があり、その先には学習塾の看板やアパートが見える。昨日来た頃は過疎地だと思っていたが、それなりに人々の生活はあるのだ。
私は顔を洗い身支度を整えながら今日どうするかを考えていた。もう帰るべきなのかも知れない。そう思いつつ、私の中で何かがひっかかっていた。
男子学生を起こさないようそっと下へ降りていくと、彼はもう起きていて朝食の支度をしていた。
「おはようございます。早いですね?
 すぐに支度しますからもう少し待ってくださいね。
 嫌いなものありますか?」
昨日の晩見た男子学生はやっぱり彼にそっくりだった。
あまり見とれていて返事するのを忘れている私に男子学生の彼は言った。
「木下さん?」
「ごめんなさい。えっと、牛乳以外なら平気。ありがとう。」
と言うと、彼はなぜかおかしそうに笑って言った。
「やっぱり。」
“やっぱり”ってどういう意味だろう?そういう顔してるってこと?
私は小学生の頃から給食に出てくる牛乳が苦手だった。
高校生になって給食がなくなり、どんなにうれしかったことか。
中学生になってからも牛乳が苦手で、こっそり牛乳パックを机の中に隠したところを
彼に見られてたっけ?

朝食をダイニングに並べるのを私も手伝うことにした。
ハムエッグにトーストとサラダ。オレンジジュース。
「こんなものしかなくて。」
男子学生はなんだか昨夜より大人びて見えた。
一人で暮らしていると、世の中の同世代よりもしっかりして見えるのかもしれない。
彼も中1にしては大人びて見えた理由のひとつは、そういうことだったのかもしれない。
後になってわかったことだが、彼の家庭は複雑で転校してきて数ヶ月の間、
彼は両親とはなれて暮らし事実上一人暮らしだったらしい。
本屋のことも高校生と嘘でもついてアルバイトしていたのだろう。
彼が亡くなったという話は中学の同級生から聞いた。
<彼はどこか遠い町でひとり寂しく死んだ>と。
それ以上のことは誰も知らなかった。
朝食を終えると私たちは一緒に洗い物をしてここを出る準備をした。
男子学生も学校へ行く時間なのだ。
私はお礼を言って宿泊料金を支払った。
料金は思ったよりもずっと安くて申し訳ないくらいだった。
「こちらこそ片づけまで手伝ってもらって。」
男子学生を車で途中まで送ることにした私は、
外に出てみて昨日車を路駐したままだったことを思い出した。
大丈夫。切符は切られていない。
明るい中で改めてペンションの外観を見ると、かなり古いものであることがわかる。
ペンションの名前は“SUMIRESOU”と書いてある。
すみれそう?私の名前はすみれ。よっぽど私と縁があるのもしれない。
戸締りをして出てきた男子学生を助手席に乗せると車を発車させた。

PC vol.8

「だって!どうしても信じられないのよ!
だって、だってメールが届いたの!
<木下さん、あの日あの約束守ってくれてありがとう。
 この間偶然木下さんを見かけたよ。全然変わってないね?
 僕はあれからいろいろあって、ひとりで遠い町に住んでいます。
 窓から小川が見える部屋で今は夕日を眺めています。
 木下さんの夢って何かな?
 僕にも夢があるんだ。でも叶いそうにないな。
 木下さんはがんばってよ。僕の分まで。>って。」
「それっていつ?」
男子学生は聞いた。
「私が大学卒業した春。」
そうだ。彼が死んだと言われる年の2年後のことだ。
「私は大学卒業後、地元で就職が決まってOLになったんだけど、
どうしても物書きになる夢を忘れることができなくて悩んでいた頃、
そのメールがPCに届いたの。
それから私はもう一度夢を追い始めた。
仕事は2年前からは軌道に乗ったんだけど、最近書いた作品をどうやって書いたか覚えてないの。その作品の中に出てくる場所がどうしても気になって。
彼につながっている気がして仕方がなかったの。だから・・・」
私は初対面の男子学生に何を話しているんだろう?
「その場所ってどんなところ?」
私はかなりおかしなことを言っているはずなのに、男子学生は真剣な目で私に聞いた。
「そこは螺旋階段のあるアパートで、近くに小川が流れていて窓から夕日と赤い屋根が見えるの。その螺旋階段の手すりの色やアパートの扉の色も、行った事なんてないはずなのに私にははっきりとわかる。」
男子学生はしばらく黙っていたが、私が食べ終わったカレーの皿を下げキッチンに行ってしまった。
やっぱりあきれさせてしまったのかな?
私はコーヒーゼリーの上のさくらんぼを摘んでゼリーの上を滑らせてみた。
男子学生はスプーンを2つ手にして戻ってくると、ひとつを私に差しだして言った。
「木下さんはまだ彼のことが好きなんだね?」
「そうなのかもしれない。」
私は彼にそっくりな男子学生の顔を見つめた。
そういえば私はこの男子学生の名前も年もまだ聞いていない。
「私のことばっかりしゃべっちゃってごめんなさい。
 ところであなたのお名前まだ聞いてないわ。学生さんよね?」
男子学生はこぼれそうな笑顔で
「木下さん、やっと笑ってくれましたね?やっぱり笑ってるほうがいいよ。
 僕は今○○大学の3年。ホンダって言います。」
えっ?ホンダ?
私の頭は混乱した。見た目だけじゃなく名前まで同じだなんて・・・。
この人は・・・?そんなわけない。
私はバカな考えを頭から追い払うと、コーヒーゼリーを一口食べた。
「とってもおいしい。これもあなたが作ったの?」
男子学生はすっかり食べ終わって、私がおいしそうに食べる姿を眺めながら頷いた。
「ホンダくんは将来どんなことめざしてるの?」
“ホンダくん“という呼び方に少しぎこちない感じがした。
彼を実際にそう呼んだことなんてなかった。そう呼べるようになる前に彼は消えてしまったのだから。
「僕も実は物書きになりたかったんだ。」
そう言って男子学生は照れくさそうに笑った。
「“なりたかった“って・・・。今からでしょ?まだ。」
私が言うと男子学生は何も言わず、食べ終わった器を2つキッチンへ下げに行った。

PC vol.7

カレーは上出来だった。
きっと新鮮な野菜と肉を使い丁寧に作られたのだろう。
料理をしない私にもその料理に対する愛のようなものを感じることができる。
そんな味だ。昼にPAで食べたカレーとは比べ物にならない。
「お料理お上手なんですね?」
私はダイニングの奥のキッチンにいる男子学生に声をかけた。
「ありがとうございます。褒められるのも久しぶりです。」
「あの・・・ここには他にいらっしゃらないんですか?ご家族とか・・。」
私は遠慮気味に聞いてみた。
「ここ数年は僕ひとりです。ペンションと言ってもご覧の通りですから、
めったにお客も来ません。僕も昼間は学校ですからペンションが忙しくなれば
こういうわけにいきませんけど。」
私は皿に盛られたカレーをきれいに平らげると声のするキッチンの灯りをじっと見ていた。
そういえば、私まだあの男子学生の顔をはっきり見てない。
ダイニングテーブルの上には料理を引き立ててくれるペンダントライトがあり、
このテーブルに座ってくれればきっと顔が見られるのに・・・。
そう思っていた。
しばらくするとその灯りを背にして男子学生が小さなガラスの器を2つ持って出てきた。
私はちょっとドキドキしながら彼を見ていた。
「これデザートです。味はわからないけどよかったらどうぞ。」
器の中でコーヒーゼリーがつややかな光を放っていた。
男子学生は2つの器をテーブルに置き、私の向かいのイスに座った。
そしてペンダントライトの元にようやく姿を現した。

私は心臓が止まってしまうかと思うくらい驚いた。
彼にそっくりなのだ。あの彼に・・。
私はあの夏と同じようにただ口をパクパクさせていた。
「どうしたの?木下さん。」
どうして私の名前を・・・?そうか、宿泊名簿に名前書いたんだ。
私は明らかに動揺していた。
「木下さん、大丈夫ですか?」
私は我に返り、男子学生が初恋の彼にそっくりだったことを告げた。
「そうだったんですか?でもちょっとうれしいな。
 それで、その木下さんの初恋の彼は今どうしてるんですか?」
私は自分の名前を呼ばれるたびにドキドキしていた。
あの夏、あの本屋で彼に言われたあの一言を思い出して・・・。
“ふたりだけのヒミツ”
「彼、その後すぐに転校しちゃったの。それから7年くらい経って偶然隣町で彼を見かけて、彼に会った隣町の本屋に何度も行ってみたけど結局会えずじまい。
その半年後彼が死んだって聞いたんだけど、どうしても信じられなくて。」
私は彼にそっくりな男子学生をまともに見ることができず、じっとコーヒーゼリーを見つめながら話していた。
「そうか・・・。なんだか悪いこと聞いちゃったな。
 でも、彼が本当に死んじゃったんなら受け入れるべきじゃないかな?」
男子学生は私をじっと見つめて言った。

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