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1986年
監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキー
音楽:バッハ
出演:エルランド・ヨセフソン、スーザン・フリートウッド、グドルン・ギスラドッティル
アラン・エドヴァル、スヴェン・ヴォルテル、ヴァレリー・メレッス
★★★★★
(1度目鑑賞の感想)
私はこの「サクリファイス」で初めてタルコフスキーに触れました。
タルコフスキー監督の遺作。あまりに美しく、心を抉るような深い感動…と絶賛されていて評価も高い。その作品がよく理解できなかった私は、馬鹿なのだろうか?センスがないとか…。
あれが核戦争の危機を告げる放送だったとは…。それすらも分からなかった自分は一体…。
「初めに言葉ありき」。核戦争から自分の家族を守る為に、男は神へ祈り約束を交わす。
言葉ありきとは契約を交わす事を言うのか?家を焼き全てを自然に返す。元の状態の土地で神へ返還し、自己を捧げる事で家族を守る。一見狂気のように感じるが、核戦争への警告が表れている。
映像は美しく哀しい。
(2度目鑑賞の感想)
1度目より睡魔が襲う(._.)
音楽に胸打たれて聴いているだけで涙。オープニングでいきなり涙が頬を伝う。その後睡魔が…。
今回はあまりの睡魔に意味を捉えるというよりも感覚で観た。ラストシーンだけは何度観ても心に残る。走り回る父親、しがみつこうとする家族を追いやる父親。崩れ去る家。
物凄い映像美!映像美だけで魂を震撼させる、ということだけは感じる事ができた。
(3度目鑑賞の感想)
漸く少し解りかけてきた。オープニングは相変わらず涙。
挿入される白黒の映像は、核に因って破壊されている世界。
それは人間の感じる「動物的恐怖」でもある。この「恐怖」を取り除く為にこそ、
神は必要とされているのだ。人間として必要な「言葉」、家族、家、友人…。
それら全てを手放す代わりに自分の大切な家族と友人を核から守ってくれと男は神に祈る。
ラスト、放火して彷徨う男に寄ってくる妻や友人を突き放し、
放火の理由を友人に説明しようとするが神との約束を思い出して口を噤む。
男は手を合わせて謝るのみ。あの時の男の悲痛な面持ちと残酷な程美しい映像に胸を打たれる。
男が家族と引き換えに言葉を失うと同時に、それ迄口の聞けなかった子供が言葉を得る。
言葉の重要性が問われる。
核戦争を行うほどまでに発展してしまった文明に警告している。作品の中で語られる美意識。
そこでは手を加えない自然が最も美しく、手を加えた途端に偽物になるとされる。
誕生日プレゼントの16世紀の地図はまだ文明が発達していなかった頃の世界を表わしており、
イコンの画集は最も純粋な美として示されている。いづれも今日では失くしてしまったものである。
この主人公の男を見ていると「白痴」のムイシュキン侯爵を思い出してしまう…。
着物や音楽等日本が強調されるのは世界では唯一の被爆国で、憲法9条がある為に意識されたのだろうか?反戦反核とは一言で言えない、「世界の重さ」を感じさせる映画。魂で観たい。
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