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1988年 監督・脚本:金綺泳(キム・ギヨン) 出演:尹汝貞(ユン・ヨジュン)、玄吉洙(ヒョン・ギルス)、 キム・ビョンハク ★★★+ 98年2月の金綺泳監督の死後、同年10月に初公開された幻の遺作。
お互いの夫を破滅させるために、ある計画をたてるふたりの女の物語。 卑小にして猥雑な人間たちの営みに被さるように響く漢江の架橋工事の槌音が、強烈な印象を残す。 (チラシ解説より) いろんな意味で、非常に壊れた作品だと思う。 「下女」の後に観ると、完成度が低いかなという気がしてしまう。 「下女」同様、かなりのエゴイスト達が登場するし、女性の中に潜む恐ろしさが描かれているとは 思うのだが、脚本がよくないのかな〜、それともわざとこういう風にしているのか… 説明不足の部分が多く、かなり強引な展開になっていると思う。 強引というか、急なんですね。ちょっとぶっ壊れている感じかな? ストーリーは、サスペンスなどでもよくありそうなもので、決してつまらなくはない。 このよくありそうなサスペンスネタが、この作品に至っては「??」という疑問なくては観られない程 ぶっ壊れてしまって分かりづらくなっている。そこがまたこの作品のエキセントリックな魅力でも あるのかもしれないが…。分かりづらくはあるものの、冷静に考えると展開も納得できるし、 心情としては登場人物全ての行動が理解できるものではある。(感情移入はしにくい!) だから決して作品が破綻しているわけではなくて、わざとエキセントリックに仕上げているのだろう。 (あらすじ) ある若い夫婦がいる。夫はやり手の保険外交員。2人は結婚して何年も経つのに、一向に子供が できない。妻は教習所に通っている。ある日、妻がスーパーで買い物をしていると、 見知らぬ子連れの女が自分にスリの疑いをかけてきた。この女は自分の子供を使って財布を この妻の買い物かごに入れて、スリだと騒いでいたのだ。これを目撃していた中年の女が 妻を助ける。妻が家に帰ると、なぜか夫が妻のスリ事件を知っていて、妻が犯人だと 思い込んで怒っている。そして突然夫の両親まで登場し、夫は子供ができないこととスリ事件の ことを責めたてて離婚を迫り、殴った挙句に無理矢理離婚届に判を押させて離婚させてしまう。 この旦那は二股をかけていた。ホステスをしている子連れの女で、結婚前から付き合っている。 旦那は離婚をするとすぐに、この女と籍を入れた。実はこの女こそスーパーで妻にスリ容疑を かけた張本人。離婚させる為に仕組んだことだったのだ。更にこの女、この男が結婚する前に 男の体に、本人に気付かれないように、子供ができないような手術を施していたらしい。 (本人に気付かれないように手術って…可能なの??と少々疑問)つまり子供ができないのは 旦那の体に原因があったのだ。ここで再び男の両親が登場。今度はこの女に離婚を迫るが、 「この子達が戸籍に入っているので立派な子孫です。」と自分の子供達を差し出し、開き直る。 もう一組の中年夫婦がいる。幼い子供を旦那の運転ミスで亡くして以来、夫婦の仲は冷めきっている どころか、お互いに殺意すら感じながら暮らしている。妻は離婚したがっているのだが、旦那は 決して同意しない。妻は夜な夜な若い男を金で買ってセックスをしている。どうにかしてもう一度 子供が欲しいのだ。旦那は既に役に立たなくなっている。旦那は妻が他の男とホテルに入るのをつけて 情事の後にその男を殺すのが日課になっている。こんなことにばかり気をとられたせいで、会社は 倒産寸前。 この中年夫婦と若い夫婦の繋がり。中年夫婦の妻は、若夫婦の旦那である保険外交員から 保険の加入を勧められており、またこの妻は、スーパーでスリ容疑をかけられていた若夫婦の元妻を 助けた中年の女性その人であったのだ。この妻が、かなり強引な感じで(少々疑問を覚えるほど 強引に)若夫婦に関わってくる。旦那の後をつけて二股の事実を嗅ぎつけたり、離婚後この事実を 元妻に告げたり、旦那にはスリ事件は愛人の仕組んだ罠だったことなどを告げたり、散々掻き回した 上で、若夫婦の元妻に頼まれて、愛人(今では旦那の妻となっている)をあっさりと殺してしまう。 そして今度は、自分が愛人を殺してあげた代わりに、自分の旦那を殺してくれと頼む。 心臓発作と似た症状を示すというマムシの毒を用いて、腹上死に見せかけようと計画する。中年の妻は 旦那に多額の保険金をかけており、それも目当てだった。そして、計画通り旦那は死ぬのだが… とてもややこしくなったが、要は保険金目当ての交換殺人である。若い夫婦の妻は恨みから旦那の 愛人を殺してもらい、中年夫婦の妻は恨みと金目当てで旦那を殺してもらう。 若い夫婦の妻と中年の妻と愛人の3人の女は、同じ教習所に通っておりそこで顔を合わせてはいるのだが その交流は殆ど描かれておらず、またそれほど深いものではない。 ここら辺はサラッと流されているし、中年女と保険外交員の繋がりもあっさりと描かれているだけ なので、なぜこの中年女性がこの若い夫婦に入り込んでくるのかが不思議な感じもする。 そのため展開がやや急な感じがして、観ている我々はそれを受け入れるのに少し時間が掛かる。 中年の女性が夜な夜な若い男とセックスをしているかと思うと、 妻が出ていった後に黒眼鏡の男と旦那が入ってきて若い男を自殺に見せかけて殺したり、 目玉をくりぬこうとしたり、その情景がちょっとギャグっぽく描かれている。 この辺りの描き方も、エキセントリックなにおいプンプン。 結局この作品って、子供が要になっていて、“子供さえいれば…”みたいな思いが根底にある。 「下女」では、“家さえ欲しがらなければ…”というのが後半では特に強調されていて、 その対象は様々だがどちらも人間のエゴイズムから発した事件なのだ。 (事件は殆どの場合そうなのだろうが、ここではそれが特に強調されているのだ) 中年の女は子供が欲しくて若い男とセックスをする日々だし、 若夫婦が離婚した理由の一つもそこにある。 愛人はその子供を作らせない為に男の体に細工をするし、 皆子供をめぐる自分勝手な理由から好き放題しているのだ。 人間のエゴイズムから起こる悲劇を描く為に、少し大げさな展開がされているのだ。 そして女性の中に潜む悪と執着を描いているのも「下女」と同じで、 どちらも妊娠・出産という女性だけのものを出すことで、男性にはない女性の魔性を 表現しようとしている。 人間の身勝手さや不気味さが強調されていて、ストーリーは二の次のような気もする。 だから面白くなりそうなストーリーなのに、どこかスッキリしない、退屈なものになっているのだ。 人と人との繋がりがあまり見えてこない作品なのだ。 恨みや愛情やらはあるのだが、それよりも身勝手な欲望が強い為に、どこか皆バラバラである。 バラバラだから、ストーリーが成立していないように見えるのかもしれない。 “死んでもいい経験”とは、勿論最後に死ぬ中年の旦那のことで、 そこにはエクスタシーを味わえるということだけではなく、 死ぬことで初めて妻に恩返しができる、妻と人間らしい繋がりが持てるという意味も含まれているの だろう。そして極めつけは若夫婦の妻にしっかり子供まで授けてしまうという、 大仕事を果たしてこの世を去ったのである。この旦那の命と引き換えに、 ここの人々はやっと結びついた感じがする。 とは言え、なんとも言えない不思議な感覚になる作品でした。
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