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映画感想―増村保造

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「やくざ絶唱」

1970年
監督:増村保造
脚本:池田一朗
音楽:林光
原作:黒岩重吾

出演:勝新太郎、大谷直子、田村正和、川津祐介、太地喜和子、加藤嘉、荒木道子、内田朝雄
   早川雄三、中条静夫、橋本力、平泉征

★★★★++
やくざの立松実(勝新太郎)には、目の中に入れても痛くない程可愛がっている
異父兄妹のあかね(大谷直子)がいた。妾をしていた母は既に他界しており、
実はあかねが小さい時から父親のように可愛がり育ててきた。
その可愛がりぶりには、実の情婦可奈江(太地喜和子)も嫉妬して喧嘩が絶えないほどだった。
実は、あかねに近づく男は容赦なくぶっ飛ばす。少し帰りが遅いだけでも狂ったように心配して、
かごの中の鳥のように異常とも言える愛情を注いでいた。
あかねはそんな兄の愛情を複雑な思いで受けていた。そして兄の異常な愛情から逃れるように
兄に反抗し、高校教師貝塚(川津祐介)に身を任せてしまう。
あかねから「男と寝た」と聞いた実は、ショックのあまり自暴自棄になり喧嘩をし、刑務所へ
行くことになった。あかねは高校を辞め、働きながら実の帰りを待つことに決めた。
これまでも何度も会いに来ては実に追い返されていたあかねの父親(加藤嘉)と
その養子裕二(田村正和)は、実がいない隙を狙ってあかねに会い、一緒に暮らそうと言ってきた。
その申し出は断ったものの、あかねと裕二は互いに魅かれ合い男女の関係になる。
そんな中あかねの父親が亡くなり、実が保釈で出てきた…。


やくざものも好き、兄妹のこういう愛情ものも好き、勝新太郎も好き…
ということで、この作品、好きです。
増村の「音楽」を思い出してしまった。「音楽」の高橋長英と黒沢のり子も良かったですが、
本作の勝新と大谷直子も良いですねー。
勝新が魅力的です。暴れっぷりがいい!こういう豪快さ、たまりません。
それとは対照的に「あかねー!あかねー!」と心配そうに家の中を探す姿や
「お土産だ!」と言って浴衣やハンドバックを買ってくるところも、たまりません。
やはり勝新は観ている人を惹きつけるな、とつくづく感じます。

私が好きだった場面は、ここです。
夜。あかねが部屋の蒲団で横になっている。眠ってはいない。
実から貰ったハンドバックを嬉しそうに抱いている。
実が部屋に入ってくる。急いでハンドバックを枕の下に押し込み、寝たフリをするあかね。
「あかねー、あかねー、寝たのかー??」と、べろべろに酔っている実。
「寝てるのか…。大きくなったなー…。お前は俺がずっと育ててきた。
俺にはお前が全てだ…」などと言いながら、あかねの体を抱く実。
そこで可奈江が帰ってきて、実は名残惜しそうにあかねの部屋を出て行く。
可奈江と実の楽しそうな話し声。あかね、起き上がりハンドバックを投げる。

この場面の、2人の間に流れる空気が好きです。
勿論あかねは寝たフリをしているので、言葉は交わさないのですが。
実があかねに抱きつくところは、ドキッとしました。
あかねの兄に対する愛情と嫌悪感、実の妹に対する深い愛情がよく出ている場面だなーと思いました。

ストレートに愛情をぶつけてくる実と、
兄妹という立場がブレーキとなっているあかね。
兄の異常な愛情に反発するのは、鬱陶しいからではなくて、
自分にブレーキがきかなくなるのが怖いから、だと私は思います。
それが、愛してもいない教師に処女を捧げるという行動に出させるんですね。

あかねが本当に愛しているのは実。
ただ、兄妹の関係で愛し合うのは無理なので、
それを思い知らせる為に教師と関係を持ったり、
裕二を婚約者として連れて行ったりするだけなんだろう。
実に、「あかねさんをください」と言いに来た裕二。
この時のやり取りも印象深い。
裕二「あかねさんと結婚させてください」
実「許さない。殺すぞ。俺は本気で殺すからな」
あかね「裕二さん、兄ちゃんを殺して」
裕二「あかねさん、それはできない」
あかね「殺せないの?嫌い。大嫌い。私あなたを嫌いになったわ」
裕二「そんな無茶な、あかねさん」
あかね「嫌いなの。出て行って」

こんな感じのやり取り。
この時あかねが裕二に向かって「嫌い」と言ったのは、
そう言わないと裕二が実に痛めつけられるかもしれない、という配慮の上かもしれないが、
私にはそれだけでもないような気がした。
自分に近づく男には容赦しない、本当に殺す勢いの実の強い愛情。
そんな強い愛情を注がれ続けていたら、裕二のような愛情では到底物足りないだろう。
実に勝るような愛情を注いでくれる男性などいないのだ。
あかねは裕二を好きだが、実の強い愛情に勝る人はいない、
そして自分も実を深く愛していると思った瞬間なのではないだろうか。
ただ、兄妹であるから不可能なのだ、と。
あ〜あ、哀しい結末だったな…。
せめて実が表向きだけでも可奈江とうまくやっていける人間だったら良かったが、
情婦を抱けないほどあかねを愛しているんじゃ…
こうなるのが良かったのかな。

くらげシリーズの渥美マリ、「音楽」の黒沢のり子、そして本作の大谷直子…
同じような演技だなーと感じました。
ちょっとわざとらしく感じる喋り方、感情を強くこめながらも棒読みっぽくするところ、などなど。
やはり監督の好みなのだろうか、この演技は。

私なら、結婚しないで実とずっと一緒にいるだろうなー。
勝新みたいなおにいちゃん、欲しい!

「氷壁」

イメージ 1

1958年
監督:増村保造
脚本:新藤兼人
音楽:伊福部昭
原作:井上靖

出演:菅原謙二、山本富士子、川崎敬三、野添ひとみ、上原謙、山茶花究、浦辺粂子

★★★
もう少し重厚感が欲しかった。人間関係の深みが描けていない気がする。
恐らく原作を読んだ人には了解しているであろう関係性が、描かれていない為に希薄なのだ。
何故夫が妻の浮気相手の事を知っているのか?それまでに妻と小坂の間を疑うような描写もないのに。
何故一回会っただけで夫人は魚津の事をあんなに愛してしまったのか?
妹は、何故夫人が魚津を愛していると確信したのか?この辺りの心境や関係性の描写が希薄だったな。
他殺を疑われるあたり、もっと緊迫感をもって描かれても良かったのでは?
上原謙の役どころも微妙だな…。

「偽大学生」

イメージ 1

1960年
監督:増村保造
脚本:白坂依志夫
音楽:芥川也寸志
原作:大江健三郎

出演:若尾文子、ジェリー藤尾、藤巻潤、船越英二、伊丹十三、岩崎加根子、中村伸郎

★★★★★
善と悪、正義と不正、正常と異常の逆転。
この作品の主役は、まさにジェリー藤尾でしょう!
幼児のようにはしゃいで無邪気に尽すところなんか、見ていて笑っちゃう。
民主主義社会での労働者の人権の為と称して運動している学生達が、
自分達の将来や名誉の為に不正を働く。そしてそれを正当化する。
また偽大学生を演じていた青年が最後には本物の学生だと信じ込んでしまう。
笑える話だが、なかなか奥が深い。

「しびれくらげ」

イメージ 1

1970年
監督:増村保造
脚本:石松愛弘・増村保造
音楽:山内正

出演:渥美マリ、川津裕介、田村亮、草野大悟、玉川良一、根岸明美、平泉征

★★★★★
このユーモアセンスは凄いよ!これだけの悲劇で笑えるとは!みどりが親爺を蹴る場面が最高!
またこの親爺が良い演技するんだわ。しかし…つくづくこのくらげシリーズは身に沁みるよ。
この親爺のせいで婚約破棄、仕事はクビ。それでも捨てられないのが親なんだね。
本作は「遊び」大人バージョンと言った感じ。「遊び」は10代の初々しい少女とヤクザの純愛、
こちらは愛だけではなく生きていく為の強さ、度胸のようなものをまざまざと見せつけられる。
自分を踏みつけにした男は絶対に許さないという信念で生きるみどりは逞しい。
ラスト、長い髪を靡かせながら颯爽と歩く渥美マリは格好良い。

「でんきくらげ」

イメージ 1

1970年
監督:増村保造
脚本:石松愛弘・増村保造
音楽:林光
原作:遠山雅之

出演:渥美マリ、川津裕介、永井智雄、玉川良一、西村晃、真山知子、根岸明美

★★★★★
母親の愛人に犯され、バーではヤクザに目を付けられ、求婚者には親のせいで逃げられ、
お金の為に親父達と寝て、最後は2号さん。男に翻弄されているようでいて決して流されていない。
由美の強い生き方!私もこういう強い女になってやろう!
「母さんが男に騙されるのを見てきたお蔭で、騙されずにここまで来たわ」と言って、
涙を流すことなく強かに生きた。
渥美マリには何処か翳があり、スタイルも容姿も抜群だが孤独で強い豹のような表情を持った女だ。
浮き足立っていない雰囲気が、強い女性像にぴったりだ。
鉢巻姿で体を貪る西村晃も良かった。

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