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1974年
監督:田中登
脚本:いどあきお
音楽:樋口康雄
出演:芹明香、花柳幻舟、夢村四郎、宮下順子、萩原朔美、高橋明、絵沢萠子
★★★★++
大阪のドヤ街で娼婦をしている19歳のトメ(芹明香)。
母親は40歳を過ぎているが、未だに娼婦をしている。しかも妊娠をしている。
弟の実夫(夢村四郎)は生れながらの精薄。
トメの娼婦としてのしたたかな生き様が、
指名手配犯に似た男との出会いや、母親の情夫との交わり、母親との口論などを盛り込んで描かれる。
また、恋人が会社の金を使い込んだせいで娼婦になった文江(宮下順子)の姿も描かれる。
これはまた、不思議な世界だった。
まず、そのモノクロの映像がなんとも言えず新鮮。虚無感漂う世界を演出している。
モノクロの映像の為か、セックスの場面も乾いた感じがして生々しくない。
これには恐らく、芹明香の表情も関係していると思う。
セックスの場面での彼女の表情は無表情。機械的、である。
このモノクロ映像は、何を意味しているのだろうか?
多分、トメの死んだ心、ではないだろうか。
セックスをしているがそれは機械的にしているだけ。決して心は入っていない。
ラストでトメが言うように“ゴム人形”と同じなのだ。
ラピュタのロビーで、監督のインタビュー映像が流れていた。
そこで監督は、この作品は本当は「受胎告知」というタイトルをつけたかったのだ、と仰っていた。
これは、まさかトメの母親のことではないだろうな?
私は勿論、トメのことだと思っている。
だが、母親が流産しかかって苦しんでいる姿を見て
“うちもああやったんや、サネオもああやったんや”という台詞は一体なんなのだろうか。
あれは、単に、どうでも良いと考えられていた命(自分や弟)がたまたま生まれたに過ぎなかったのだと
思い知る場面なのかな。
「受胎告知」というのは、まさしくトメが実夫と交わる場面だろう。
あそこだけが、カラーになる。それまでモノクロ映像だった為か、
画面がポワーッと温かくなる。トメが初めて感情を込めてセックスを受け入れた場面。
とは言っても快楽ではなく、母性のようなもの。
実夫が、交わりの後に高い場所高い場所へと彷徨っていくところなどは
実夫が生身の人間ではなく天使のような存在で、
トメとの交わりが清らかなものであっただけに“死”が必要とされたのかな、と思いますね。
「受胎告知」って詳しくは知りませんが、生身の男は必要とされませんものね。
実夫はあくまでも“天使”でなければいけません。
実夫の死によって、画面は再びモノクロに切り替わる。
したたかな生き様を描いているものの、“力強い性”ではなく“渇いた心”なのである。
生きていく為にはパワフルになるのも1つの手だが、
心を殺してしまうこともまた1つの方法なのだろう。
何度か観てみたいな、きっと感じ方が違うだろうと思った作品だが、
本日をもって田中登監督特集も無事閉幕なのでした。楽しい一ヶ月間でした。
あ、最後に、本作で1番印象的だったのは、ゴム人形を抱えて立っていた萩原朔美でした(笑)
ああいう人物の描き方、私は好きですね。
“真珠の代わりにパチンコ玉を入れたらどうだろうか”という彼。
“ゴム人形相手にそんなもん入れてどないすんや”と突っ込まれる彼。
いいキャラクターですね。
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