浮遊船

しばらく旅行記が続きます…すいません

邦画 1952年〜60年

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「めがね小僧」

1958年/50分/白黒

制作:民芸映画社
監督:宇野重吉
脚本:久板栄二郎
音楽:斎藤一郎
原作:漆田康二

出演:宇野重吉、小夜福子、中西一男、南風洋子

★★★★

現代との“めがね観”の違いにびっくり!


川で遊ぶ子供達。遠くから少年が歩いてくる。楽しそうに遊ぶ子供達を見て、寂しそうに立ち去る―。
小学4年生のすすむは、大変内気だ。友達とも遊ばないし、学校の成績も芳しくない。
すすむは、父(宇野重吉)、母、兄の4人家族だが、父と母は再婚同士、2歳上の兄は父の連れ子である。
すすむは継父に未だなつかないが、継父はすすむのことを大変思い遣り可愛がっている。
小学6年生の兄は学級委員をしていて、成績も優秀、活発で明るい少年だ。
そんな兄もすすむのことを本当の弟のように思って可愛がっている。
ある日、学校から呼び出された母は、すすむの成績が悪く友達とも遊ばないのは、
視力が悪くてよくものが見えないからだ、と告げる。
黒板の文字が見えなくても、内気なすすむはそれを言えない。結果、成績も悪くなる。
友達と遊ぶにしても、キャッチボールの球が見えない。だから友達とも遊ばなくなる―というわけだ。
そこで、めがねをかけることを提案したのだ。

夕飯時、母は先生から言われたことをすすむに告げ、めがねをかけるように言う。
これを聞いたすすむはショックを受けて立ち直ることができない。
翌日めがねを買いに街へ行く母とすすむ。
めがねをかけたすすむは、自分の目の前に別世界が広がったことに喜ぶが、
冷やかされるのを怖れて他人の前では決してつけようとしない。
果たしてすすむはめがねをかけることができるのか…。


めがね。
1958年―。この時代の(子供の)めがねって、珍しい存在だったのですね。
この作品でびっくりしためがねに関する発言は次のようなものです。
●すすむ、めがねかけるのかー!すごいなー!
なにしろめがねなんて6年の○○さんしかかけてないもんな!(たった1人!!)
●(街から戻ってきた母とすすむの姿を見かけた上級生達)
A:おい、あれすすむじゃないか!あいつ、何してんだ?
B:めがねを買いに行ったらしいぜ!
A:めがね!おい、冷やかしに行こうぜ!(めがねで冷やかし!!)
●(なかなかめがねをかけないすすむにカラむ上級生3人)
おい!なんでめがねかけないんだよ!かけろよ!
(逃げるすすむ)
逃げるなよ!おい、めがねかけたら何にもしないからよ。めがねかけてみろよ!
(たかがめがねでこんなにカラむか!!)
●(めがねをかけられないすすむについて、すすむのいない時にクラスで話し合いをする)
先生:みんな!すすむがめがねをかけないのはどうしてだと思う?
生徒A:はーい!恥ずかしいからだと思います!
先生:どうして恥ずかしいんだと思う?
生徒B:誰もかけていないから!
先生:そうだな。これと似たような経験をしたことある人!
生徒C:はーい!余所行きの服を着た時。
先生:どうしてそれが恥ずかしいんだ?嬉しいじゃないか。
生徒C:嬉しいけど…恥ずかしいのと半々だ〜い!
先生:ははは!じゃあみんなにもすすむの気持ちが分かるな?すすむがめがねをかけないのは、
みんなと違うから恥ずかしい、みんなに冷やかされるんじゃないかと思うからだ。
だから、みんな、すすむがめがねをかけても決して見ないこと!知らんふりしているんだ。
知らないふりをするだけで良い。後はすすむの勇気の問題だ。
(めがねをかけることって、こんなに勇気のいることだったんだ!)

私も似た経験あります。いや、多くの人があるんじゃないでしょうか。
めがねではありませんが、些細なことが恥ずかしかった子供時代。
だから、すすむの気持ちはよ〜く分かるのです。
でも、それがめがねということにびっくりなんです。
だって、小学生の時からめがねをかけている人なんて普通にいたし
中学生くらいになると、めがね=知的!という感じがして憧れさえ抱きました。
遂に高校に入ると、目も悪くないのにめがねを購入してしまったくらいです。
だから、当時の子供にとってめがねというものがどんな存在だったのか、
本作を観て大変新鮮で興味深いものでした。勿論、都会と田舎の違いなどもありますし、
この作品だけで決められませんが…。

ユーモアもたっぷりあります。
すすむが、母にめがねをかけなさいと言われた時の、絶望的な顔。
箸を投げ出してふらふらと縁側へ行き座り込む。
ここで、すすむの頭の中の映像。
めがねをかけた怖い大人や変な顔をした大人の姿が浮かぶ。
顔を覆って、もう駄目だ!という姿のすすむ。
すすむの絶望的な思いが、そのオーバーな絶望ぶりにより面白く描かれている。

眼科で検査をしてもらっているすすむ。
まるで、怖い実験でもされるようにビクビクしているすすむ。
この時の不気味な音楽と、緊迫感ある画面が、すすむの恐怖を伝えている。

この子供の目線で描かれた恐怖感・絶望感が、私は好きでした。
これはめがねなので、“たかがめがねで!”って感じで、会場でも笑いが起こっていましたが、
他のことに当てはめてみればと〜っても共感できることで、
子供の繊細で複雑な気持ちってものをよく分かっているな〜と思いました。

人間関係もうまく描けていると思います。
父親と兄の関係、父親とすすむの関係、母親とすすむの関係、兄とすすむの関係。
めがねを通して、喧嘩があったり反発があったりした後に、段々と距離を縮めていく。
やっぱり宇野重吉が温かいですね。宇野重吉の父親がいいです。
ラストが好きでした。
父親は仕事の関係で目を痛め黒めがねをしていたのだが、すすむが自分になつかないのは
黒めがねが怖いからだと思い、かけるのをやめてしまう。
ラスト、めがねをかけて強く明るい子となったすすむは、父親の黒めがねをそっと持ってきて、
「父ちゃん…」と言ってサッとかけてあげる。
自分もめがねをかけるようになったことで、父親にも歩み寄ることができた最初の場面である。
その後家族揃って縁側で西瓜を食べる。
「これでお前もやっと家族の一員だな」と父親。
クラスの先生も生徒も、幸せな時代だなーと思った。
話し合えば全て解決、いじめっ子達でさえ素直!陰険さがちっともない!

めがねを通して成長する子供、その子供の複雑な思い、
複雑な家庭の家族関係の変化、そしてユーモア…
とても丁寧に描かれた楽しい作品だった。

「まらそん侍」

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1956年
監督:森一生
脚本:八木隆一郎
音楽:鈴木静一
原作:伊馬春部

出演:勝新太郎、嵯峨三智子、トニー谷、益田キートン、大泉滉、三田登喜子、夏目俊二、旭輝子
   清川玉枝、千葉登四男、小川虎之助、十朱久雄、佐々木孝丸、東良之助、伊達三郎

★★★★
へえ〜、勝新太郎ってこういう作品にも出てるんだ…と思った。
劇場に貼ってあった解説には、NHK放送劇の映画化と書いてあったが、
この「まらそん侍」というのはテレビで人気だったようですね。
こういうナンセンス時代劇、好きです。
でも、おかしな演技で笑わせてくれたトニー谷、益田キートン、大泉滉という名前には
私は馴染みがなくて、正直あまり知りませんでした。
劇場では、画面に出てきただけでクスクスっと笑っている人が多かったので、
ああ、そういうキャラクターなのだな…と分かったのでした。
確かに、出てきただけで、なんだか面白い(笑)

「遠足の儀」(マラソン)の上位5人には、褒美として家宝の金の煙管(ありえない大きさ!)を吸うことを
許された。その5人の中の数馬(勝新太郎)と幾之助(夏目俊二)は勉強も武芸も同レベルの親友同士
だったが、金の煙管を運んできた家老の娘千鶴(嵯峨三智子)に2人揃って惚れてしまう。
そんな中、千鶴の父である家老・鑑物(小川虎之助)のところに、
次席家老が自分のバカ息子市之丞(大泉滉)と千鶴の縁談を持ち込んできたが、千鶴ははっきりと断り、
鑑物もやんわりと断るのだった。
市之丞が求婚したのを知った数馬と幾之助は、千鶴が断ったとも知らずに大黒屋でヤケ酒をする。
そこで数馬は、大黒屋の娘お糸(三田登喜子)に惚れられる。数馬と幾之助は、藩校の師から、
「ぶち当たってみないで、何が失恋だ!」と喝を入れられ、2人揃って正々堂々と千鶴に
求婚に行く。2人に好意を抱いていた千鶴は迷って決められない。
そんな中再び「遠足の儀」が開催されることになり、殿の提案でこの競争に勝った方に千鶴をやる、
ということになったのだった。
一方、自分の息子の求婚を二枚舌で断られたことに恨みを抱いている次席家老は、顔役の政五郎達や、
泥棒3人組の丹九郎(トニー谷)、勘六(益田キートン)、お紺(旭輝子)らを使って
家老の保管している金煙管を盗ませて困らせてやろうと計画していた。決行は「遠足の儀」の日。
果たして千鶴はどちらのものになるのか?数馬に思いを寄せるお糸はどうなる?
そして金煙管の運命やいかに…。

こういう爽やかな恋愛って良いですよね。
男同士の友情は友情、恋愛は恋愛って、ちゃんと別物になっていてドロドロしない。
この作品の恋している人、皆情熱的でさっぱりしててストレート。(特に女性2人がいい!)
だから見ている方は全員応援したくなるし、どんな結末になっても納得できちゃうだろうな、と。
数馬と幾之助は2人揃って求婚、蹴落とすような真似は絶対しない、恋敵でも助け合う、
ホント正々堂々としていて、微笑ましい。
きっと、嵯峨三智子演じる千鶴が、サバサバしてて気が強いから良いんだろうな。
このサバサバしているというのは結構重要。このキャラクターだから、作品も清々しくなっているのだ。

それにしても、この作品の嵯峨三智子を見ていると、
あー、やっぱり親子だなあ…とつくづく思う。
山田五十鈴にそっくりだ。
馬を乗り回す姿は、可愛いしカッコ良いし、素敵♪

1番健気で応援したくなったのは、三田登喜子演じるお糸。
偽手紙で呼び出し、ビンタされても「何されてもこうやって一緒にいられれば良いの…」と言い、
マラソンの時は駕籠に乗って数馬の横にぴったりくっついているし、
悪い奴らが待ち伏せしているのを数馬に知らせたり…と「あたいはあんたが好き♪」と
ストレートに思いを伝えるところが、とっても好感持てる。
だから、ラストはと〜〜っても嬉しかった。
三田登喜子って初めて意識して見たけれど、綺麗な人ですねー。

これを見ていたら、“好きな人ができたら、兎に角当たって砕けるべしだな!!”と素直に思えた。
もし今恋愛中だったら、勇気を与えられたかも(笑)
汚いことをせずに(勿論、汚いことなんかしませんよ!)、ストレートにガツンと言えばいいんだ、と。

悪役も一応出てくるんだけど、その悪役の利用するのがトニー谷、益田キートンらときてるから
おかしくておかしくて、そのお蔭で悪役に対する腹立ちや不快な思いが和らげられている気がする。
トニー谷のそろばんを使った演奏や益田キートンののっそりとした動きと喋り方、
突然繰り広げられるトニー谷と旭輝子による歌でのやり取り…どれも楽しかった。
こういう人達が悪役の一味になってくれると、楽しい気持ちで観られるから良いよな。
だって、絶対失敗してくれそうだもん(笑)

バカ息子を演じた大泉滉は、なんといってもあのマラソンでの変な走り方が面白い。
あれは…どう考えても逆に疲れるだろうと思うけど、あのちょこまかとした動きを見ていると、
“ああすればマラソン早くなるかも!?”という錯覚を抱かせる。
それから、あの喋り方も面白い。バカ息子役にぴったりだった。

本作のような笑いは、私の“ツボ”ではないのだが、楽しく見られるから結構好きだ。
特に大泉滉の走り方と、トニー谷の関所でのやり取りは好きだったな。
トニー谷がマラソン走者の武士に化けて関所を通過しようとするのだが、
役職と姓を名乗れと言われて、困った挙句に「姓は丹下…」と(笑)
「はて、どこかで聞いたような…」と首をかしげるお役人だが、こういうやり取りって好き。

勝新、美男子ですな〜。こんな爽やかな勝新もあるんだな〜。
やっぱりいい顔してる!と思いました。
マラソン、皆頑張ってました。本当に息を切らして走っていて、大変そうだなーと。
マラソンシーンも見ものですね。

好青年2人(勝、夏目)、おかしな3人(大泉、トニー谷、益田キートン)、
それに殿様や家老などなど、男性陣も勿論良いのですが、
なんといっても女性陣が素敵な作品でした。
嵯峨三智子と三田登喜子、そして清川玉枝も♪
かなり共感できる、そして好感を持てる女性陣でした!

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1960年
監督:山崎徳次郎
脚本:熊井啓
音楽:山本直純
撮影:姫田真佐久
美術:木村威夫
 
出演:赤木圭一郎、葉山良二、芦川いづみ、吉永小百合、天路圭子、堀恭子、二本柳寛、内田良平
   西村晃、深江章喜、沢井杏介、木崎一郎、柴田新

★★★★−
銀座シネパトスで開催されている「追悼 映画監督 熊井啓」に行ってきた。
今日は熊井啓監督の作品ではなく、脚本を担当した作品ということだったが
芦川いづみが出ているので迷わず行った(笑)
それに赤木圭一郎は初めて観るし、山崎徳次郎監督の作品も初めてだったので…。

船の故障により出航が延期になった為、航海士の杉(赤木圭一郎)は陸へ上がり、
連絡の取れなくなっている親友・浜崎(葉山良二)を訪ねに行った。そこで杉は浜崎が自殺したと聞く。
浜崎の死体が上がったという突堤に花束を捧げに行った杉は、浜崎の恋人美也子(芦川いづみ)に
出会う。自殺に疑問を持っている美也子と杉。杉はその後入院している浜崎の妹ゆき子(吉永小百合)に
会いに行くが、ゆき子も「兄は自殺などするはずがない」と言う。
病院を出た杉を待ち受けていたのは森本刑事(西村晃)。森本は、浜崎が麻薬の売人であったことを
杉に告げた。杉は、浜崎が殺されたのではないかと思う。
そんな時、酒場のサリー(天路圭子)が、「浜崎さんのことで重要なことを教える」と言ってくるが、
その矢先サリーは何者かに殺される。杉は、サリーと同じ酒場に勤める和子に、サリーの知っていた
ことを問いただす。和子も殺されそうになるが、間一髪杉が助けに入り和子は助かる。
杉と美也子は、“死体として上がった男は浜崎の身代わりであって、実は浜崎は生きている”という
真相を和子から聞く。浜崎は、警察に目をつけられた為に、一緒に麻薬の売人をしている酒場の
支配人・渡辺(内田良平)らと共に身代わりの男を殺して、自分が死んだように見せかけたのだった。
杉は浜崎に会いに行くが、すっかり変わってしまった浜崎を見て友情も終わったと感じる。
それでも浜崎を救いたい杉は、浜崎と美也子を逃してやろうと思うのだが、森本刑事の説得により
浜崎を自首させることを決意する。美也子と落ちあうはずだったホテルで森本刑事に捕まった
浜崎だったが、渡辺が口封じに雇った殺し屋によって襲われ…。

いや〜、芦川いづみは可愛い!
ホテルのちょっとしたレストラン?、いやバーのようなところで登場するのだが、
その登場の仕方が実に可愛い。夜、なにやら怯えた様子で窓辺に立って外を見ている。
暗い画面に、そ〜っと振り返ったいづみちゃんの可愛い顔が浮かび上がる。
私は思わずここで、「か〜わい〜」と声に出してしまった。観客が少なくて良かった(笑)
酒場でシャンソンを歌う芦川いづみも素敵だし(芦川いづみの歌声ってあまり聴いたことなかった!)、
頭にスカーフ、花柄のワンピースで海を見ている姿もキュート♪

そして、吉永小百合も可愛い!
足の不自由な少女の役だが、演技はまあ普通なのだが、顔がね〜、可愛いんだ。
芦川いづみも吉永小百合も(特に前者)、眺めているだけで幸せなんだよなー。

この作品、「第三の男」に似ていますね。
死んだと思った親友が生きていたり、
その親友が裏で薬の売人みたいなことをやっていたり、
この男によって被害を受けた人たちの悲惨な様子が示されたり、
最後は結局友人に撃たれて死んだり…と、
類似点が多いですよねー。

画面は結構迫力がありました。スクリーンで観たから特にそう感じたな。
浜崎がホテルの窓から逃げて、窓拭き用の台の上を歩いていると、
それを吊ってある鎖が一本緩む。かなり上の階なのだが、台が斜めになって
浜崎がズルズルっと落ちそうになるところなんかは、ハラハラしたし緊張感もあった。
その後の銃撃戦もハラハラしました。エレベーターのドアが開いて、
左右に刑事と浜崎が分かれて、2人を繋ぐ手錠だけがドアの真中に見えていて
そのど真ん中の鎖を拳銃でバ〜ンとやる。手錠が外れて別々になった刑事と浜崎と殺し屋の撃ち合い。
ラスト、向き合う杉と浜崎。杉の説得で拳銃を放り出そうとした瞬間、杉の後ろに現れる殺し屋、
急いで殺し屋を撃つ浜崎、自分を撃とうとしていると勘違いして浜崎を撃ってしまう杉。
この辺りのスピード感もなかなかのもの。
“やっべぇ、勘違いして撃っちまったよ!”って感じで、
杉の片頬がピクピクって引きつるところなんか、好きだったなー。
まー、その後階段から落ちる浜崎は、明らかに人形なんだけど、そこら辺はいいでしょう。

ラストの霧はすごいね。
霧の中に去っていく杉と(この時の赤木圭一郎の航海士の制服姿がカッコいい!)、
なんとな〜く寂しそうな美也子も霧に包まれて(この時の芦川いづみも可愛い!)、
病院の上から船を眺めているゆき子も霧に包まれて、
ちょっぴり切なくなる景色だった。
バックには赤木圭一郎の歌う、例の歌が流れているし。

私、赤木圭一郎ってまじまじと見たのは今回が初めてだったが、
お笑いタレントの長井秀和に見えてしまってどうしようもなかった…。
とは言え、確かにカッコいいですな。
もっと赤木さんの作品を観たいと思いました。

最近、芦川いづみが出てくるだけで興奮気味の私ですが、
作品自体もなかなか良かったです。
あの歌とともに余韻の残るものでした。

「愛と希望の街」

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1959年
監督・脚本:大島渚
音楽:真鍋理一郎

出演:渡辺文雄、富永ユキ、千之赫子、藤川弘志、伊藤道子、望月優子、須賀不二男、坂下登

★★★★
オリジナル脚本『鳩を売る少年』を、自ら映像化した大島渚の第一回監督作品。
「愛と希望の街」というタイトルに少し違和感を感じたが、結構重いテーマの作品ですね。
大島渚の作品では、他にもっと好きな作品があるのだが、
こちら、好きというよりなかなかうまく描けていたなーと思ったものである。

正夫(藤川弘志)の家は貧しくて、病気がちな母・くに子(望月優子)が女手一つで正夫と
正夫の妹で知的障害を持つ保江(伊藤道子)を育てていた。
正夫は生活の為に駅前で鳩を売っていた。鳩は自分の家に戻ってくるという習性を利用して、
買い手の不注意で再び鳩が戻ってくるのを待ち、何度も鳩を売るという行為を繰返していたのだ。
ある日、裕福な少女・京子(富永ユキ)が正夫の鳩を買う。
そして、正夫が詐欺行為のようなことをして鳩を売っているとは知らない京子は、
純粋な気持ちで正夫に同情し、正夫の妹が可愛がっていたという鳩を返してあげたり
正夫の就職の為に会社の役員をしている父(須賀不二男)やそこで働いている兄・勇次(渡辺文雄)に
掛け合うなど、親切に尽すのだった。
正夫の担任をしている秋山先生(千之赫子)は正夫の就職の関係で勇次と親しくなり、
いつしか2人は恋仲のような雰囲気に…。
しかし正夫が就職試験に落ちたことから、秋山先生と勇次の関係は崩れ、
正夫の詐欺行為を知った京子も…。

いや、ムカムカする場面が沢山あったんですよ。
あの少女、京子の行為は、世間知らずのお嬢様の感傷的な同情としか思えなかったのですが、
そんな風に思ってしまう私の心が、もはや純粋ではなくなっているのでしょうか…。
私が中学・高校の頃は、あんなヒロイズムを持っていたかしら…?
京子は令嬢の割りにはサバサバして男っぽくて、気取らないところが好感は持てた。
それがあってか、京子の行為には同情心剥き出しの不快感を感じさせない、
爽やかなところもあったのだが…私だったら、あんなに爽やかに現金を渡したりはできない。
それも1度会っただけの少年に、「何かしてあげたいな〜、お金あげるよ!」なんて、
爽やかに言えないな〜。

京子は、貧しいことを美化している。「貧しくても楽しく暮らしていて幸せだね♪」みたいな
発言をするところがあるが、“貧しい人達は健気に明るく暮らしていて美しい!だから少しでも自分が
救ってあげなくっちゃ!”という見方をしているんだ。ここに正夫と京子が決して理解し合えない
決定的なズレがあるのかもしれない。

初めは心を閉ざしていた正夫が、明るく素直な京子に次第に心を開いていくところは
うまく描けていた。京子の態度には、確かに人を惹きつけるような素直さと迫力がある。

正夫と京子、秋山先生と勇次の2組のカップルの、
心を通じ合わせるところから決定的な別れへと至る過程がうまい。

秋山先生と勇次は、そもそも秋山先生の生徒に対する熱心な働きぶりに尊敬の念を抱いた勇次の
積極的なアプローチから交際が始まった。
秋山先生は途中、現実から目を背けようとするようなところも見られたが、
正夫が詐欺行為(鳩を売る行為)が原因で就職試験に落ちたことから一気に現実に引き戻される。
秋山先生は最後に勇次にこう言った。
「私だってギリギリの生活をしています。彼が鳩を売っていたことは許されないかもしれませんが、
私だってもし苦しくなったら、生活の為に鳩を売るかもしれません。
鳩を売るに等しい、なにか社会的によくないことをしてしまうかもしれません。
あなたは正夫君を擁護したかったかもしれないが、あなたの立場がそれをさせなかった。
そして、あなたのその立場は、これからも変わることはないんです。」
さすが先生、言うことが違う。
そうです、勇次の言葉には、真実味がないですよ。
「乗り越えられます!」なんて…そんな!
裕福な青年のその場だけの言葉ですよ。現実を見ていないです。
勇次も根は好い人です。でも、秋山先生とは根本的な考え方が違う、温度差が違う。
勇次も京子も、陳腐な小説にでも出てきそうな人物で、生ぬるい世界にいるんです。

どの人の言い分も、理解はできるんです。
詐欺行為をしていたという過去によって試験に落ちてしまうというのも、一応納得はできるし、
貧しい=犯罪行為をしても良い、というわけでもないから、京子・勇次側の思いも分かる。
だが、正夫の立場はもっと理解できるし、秋山先生の意見も共感できる。

正夫の行為を受け入れられなかった京子、
私がもしあの年齢だとしても、あそこまで拒絶はしなかったと思う。
やはり、私は京子には共感できないみたいだ。
正夫の行為を“騙していた”とはとれないからだ。
それよりも、自分の抱いていた貧しさへの“美”が馬鹿だったことを思い知り、
おかしなヒロイズムを抱いていた自分を恥じるかもしれない。
そして、1人の少年を自分の力で救うことに満足していたことが
単なるエゴを押し付けている行為だったのかもしれないと反省するだろう。

少年は、この行き場のない怒り、悲しみを鳩小屋を壊すことで表現する。
納得。

少女は、それを鳩を殺すことで表現する。
だが、鳩を殺すことは何の解決にもならない。
正夫に再び鳩を売って欲しくないという思いや、怒りや悲しみがこめられた行為なのかもしれないが、
鳩を殺すことによって決定的な断絶を表しているように思う。

正夫が詐欺行為を告白した、その時の思い、
どんなに傷付いていたかを思うならば、是非、鳩は殺すべきではなかった。
私はそう思う。

ただ、私が思うこととは別に、
ヒロイズムを持ち、貧しさを“美化”している少女と、
現実の波に従うしかなかった少年と、
社会的地位、立場から抜け出すことはできない男と、
教師という立場、そしてどちらかと言うと少年側に属する女性と、
それぞれの立場が明白に描かれていることで
却って作品の主旨がはっきり出ていると感じた。
私がこの作品から受け取ったのは、
貧しい人を救うという行為は、
ヒロイズムや同情心から安易にすべきことではないし、できることではないということ、
そして、この“救う”という立場で行うこと自体が、
既にエゴを押し付けた自己満足的行為でしかないこと、
また、“住む世界が違う”で片付けてはいけないことではあろうが、
実際に少女側の世界と少年側の世界があることは事実で、
その垣根をなくしてお金・社会的地位を全て平等にするということは安易にできることではなく、
我々はその現実を受け止めつつ、自分の置かれた環境の中で考えていかなければいけないのだ、
ということなどなどである。

この先この少女がこの問題をどう考えていくか、
それが重要なことだ。大変難しいことではあるが。

あ〜、第一回監督作品にして、これですか。
大島監督らしいな〜と思いました。

「濡れ髪三度笠」

1959年
監督:田中徳三
脚本:八尋不二
音楽:飯田三郎

出演:市川雷蔵、本郷功次郎、淡路恵子、中村玉緒、楠トシエ、中田ダイマル・ラケット
   和田弘とマヒナスターズ

★★★★★
どうも私は“濡れ髪シリーズ”が好きみたいで、全て★5つになってしまうから困る。
でも実は何年か前に初めて観た「濡れ髪牡丹」(1961/田中徳三)が1番好きだ。
まー、もう1度観たらどうだか分からないのだが、京マチ子が共演だったこともあって…。
まだ映画をあまり観ていなかった時期なので、“楽しいな〜”と新鮮な気持ちで観たものだった。
と言っても、“濡れ髪シリーズ”は本作でまだ3本目。まだまだ観ていないのだ。
解説には、“濡れ髪シリーズ”の本格的なシリーズ化はヒットした「濡れ髪三度笠」からだとなって
いる。ということはその前年の「濡れ髪剣法」はあまりヒットしなかったのかな〜。
「濡れ髪剣法」と本作の2本立てで観たが、私はどちらも好きだった♪
若殿の雷蔵も好きだが、旅がらす姿の雷蔵も大好きで、やっぱり惚れてしまうのだった。

将軍家斉の38番目の若君(本郷功次郎)が突然五万一千石の城主に選ばれた。
江戸へ向う若君・長之助を狙うのは、自分の娘が産んだ若君を城主にしたいと思っている
老中堀尾備前守(尾上栄五郎)であった。そんな長之助を救い、旅を共にすることになったのは
義理に厚い半次郎(雷蔵)、半次郎に惚れているお蔦(淡路恵子)、身売りの為に旅をしている
おさき(中村玉緒)親子であった。

本郷功次郎の世間知らずの我儘坊ちゃん役も良いな〜。
弱い、というわけではないのだが、な〜んか頼りないところが却って良いのかもしれない。
命を狙われているというのに、花火を近くで見たいと拗ねるところが良かった。
扇子をグリグリやって拗ねている姿は、“やれやれこの子は…”と思いながらも
“可愛い〜!”などと思ってしまう(笑)

本郷功次郎と雷蔵のやり取りが面白い。
やくざな雷蔵と坊ちゃんの本郷の対比が楽しい。
それにしても雷蔵は強いね〜。あり得ない強さだけどね。
刀を持ったあの大人数を、下駄でやっつけるのだから…(笑)
智恵もあるし、力は強いし、義理には厚いし、言うことなし!

私もやくざの仁義の切り方を覚えたい。
この作品に限らないが、スラスラと仁義を切っている場面を観るといつも思うのだ。
今回も雷蔵がスラスラと。そしてその横にいる長之助は「右に同じだ!」と堂々と(笑)
あはは。面白い。
良いな〜、仁義を切るって。いつ観ても素敵♪

本作は風景も素晴らしかった。ロングショットが美しい。
山や川や…やっぱりラストの川が好きだな。
人形の照る照る坊主を使った遊び心も楽しい。

長之助と半次郎の仲がどんどん深まっていく…だからこそ別れなければいけないという
2人の関係がうまく描けていて、楽しいだけではなく複雑な作品でもあった。
結局長之助は半次郎達と別れてしまい、“あ〜、皆元の場所へ帰ってしまうのか〜”と
寂しい気持ちでいた私だったが…
やってくれました!長之助は家斉の前へ出ると、あぐらをかき、仁義を切り、
堀尾備前守の悪事を暴き、城主を辞退する!成長したな〜長之助!!
突然の成長だな〜!!いつの間にあんなにスラスラと仁義を切れるようになったのだ!
ウジウジして世間知らずだった長之助が、あんな風に啖呵をきれるなんて私は嬉しいよ!!
ラストは良かった〜。舟に乗っている半次郎、お蔦、おさき。
そして「あにい〜あにい〜」と叫びながら寄ってくる長之助。
「あいつの為にならねえから無視しよう」と言っていた半次郎だが、
服を一枚一枚脱いで川に飛び込んで追いかけてくる長之助の姿を見て思わず自分も川に!
抱き合う2人!良いね〜この終り方。はぁ〜、またまた観終った後幸せになってしまった。

本作は、脇に出てくる人達も素敵だった。
弥次喜多の中田ダイマル・ラケット。
そして宿の若い衆として出てきて、突然歌い始める和田弘とマヒナスターズ(笑)
素晴らしすぎるハーモニーと歌声!
登場の仕方もおかしいし突っ込みをいれたくなる場面であったが、
あまりにも歌声が良すぎて感情が入り込んでしまう為、しばらくすると違和感がなくなってしまうのが
不思議(笑)そしてその内あの歌声が画面にぴったり合ってくるのだ。

「濡れ髪剣法」との2本立ては、楽しくて幸せだった♪

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