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1958年/50分/白黒 制作:民芸映画社 監督:宇野重吉 脚本:久板栄二郎 音楽:斎藤一郎 原作:漆田康二 出演:宇野重吉、小夜福子、中西一男、南風洋子 ★★★★ 川で遊ぶ子供達。遠くから少年が歩いてくる。楽しそうに遊ぶ子供達を見て、寂しそうに立ち去る―。 小学4年生のすすむは、大変内気だ。友達とも遊ばないし、学校の成績も芳しくない。 すすむは、父(宇野重吉)、母、兄の4人家族だが、父と母は再婚同士、2歳上の兄は父の連れ子である。 すすむは継父に未だなつかないが、継父はすすむのことを大変思い遣り可愛がっている。 小学6年生の兄は学級委員をしていて、成績も優秀、活発で明るい少年だ。 そんな兄もすすむのことを本当の弟のように思って可愛がっている。 ある日、学校から呼び出された母は、すすむの成績が悪く友達とも遊ばないのは、 視力が悪くてよくものが見えないからだ、と告げる。 黒板の文字が見えなくても、内気なすすむはそれを言えない。結果、成績も悪くなる。 友達と遊ぶにしても、キャッチボールの球が見えない。だから友達とも遊ばなくなる―というわけだ。 そこで、めがねをかけることを提案したのだ。 夕飯時、母は先生から言われたことをすすむに告げ、めがねをかけるように言う。 これを聞いたすすむはショックを受けて立ち直ることができない。 翌日めがねを買いに街へ行く母とすすむ。 めがねをかけたすすむは、自分の目の前に別世界が広がったことに喜ぶが、 冷やかされるのを怖れて他人の前では決してつけようとしない。 果たしてすすむはめがねをかけることができるのか…。 めがね。 1958年―。この時代の(子供の)めがねって、珍しい存在だったのですね。 この作品でびっくりしためがねに関する発言は次のようなものです。 ●すすむ、めがねかけるのかー!すごいなー! なにしろめがねなんて6年の○○さんしかかけてないもんな!(たった1人!!) ●(街から戻ってきた母とすすむの姿を見かけた上級生達) A:おい、あれすすむじゃないか!あいつ、何してんだ? B:めがねを買いに行ったらしいぜ! A:めがね!おい、冷やかしに行こうぜ!(めがねで冷やかし!!) ●(なかなかめがねをかけないすすむにカラむ上級生3人) おい!なんでめがねかけないんだよ!かけろよ! (逃げるすすむ) 逃げるなよ!おい、めがねかけたら何にもしないからよ。めがねかけてみろよ! (たかがめがねでこんなにカラむか!!) ●(めがねをかけられないすすむについて、すすむのいない時にクラスで話し合いをする) 先生:みんな!すすむがめがねをかけないのはどうしてだと思う? 生徒A:はーい!恥ずかしいからだと思います! 先生:どうして恥ずかしいんだと思う? 生徒B:誰もかけていないから! 先生:そうだな。これと似たような経験をしたことある人! 生徒C:はーい!余所行きの服を着た時。 先生:どうしてそれが恥ずかしいんだ?嬉しいじゃないか。 生徒C:嬉しいけど…恥ずかしいのと半々だ〜い! 先生:ははは!じゃあみんなにもすすむの気持ちが分かるな?すすむがめがねをかけないのは、 みんなと違うから恥ずかしい、みんなに冷やかされるんじゃないかと思うからだ。 だから、みんな、すすむがめがねをかけても決して見ないこと!知らんふりしているんだ。 知らないふりをするだけで良い。後はすすむの勇気の問題だ。 (めがねをかけることって、こんなに勇気のいることだったんだ!) 私も似た経験あります。いや、多くの人があるんじゃないでしょうか。 めがねではありませんが、些細なことが恥ずかしかった子供時代。 だから、すすむの気持ちはよ〜く分かるのです。 でも、それがめがねということにびっくりなんです。 だって、小学生の時からめがねをかけている人なんて普通にいたし 中学生くらいになると、めがね=知的!という感じがして憧れさえ抱きました。 遂に高校に入ると、目も悪くないのにめがねを購入してしまったくらいです。 だから、当時の子供にとってめがねというものがどんな存在だったのか、 本作を観て大変新鮮で興味深いものでした。勿論、都会と田舎の違いなどもありますし、 この作品だけで決められませんが…。 ユーモアもたっぷりあります。 すすむが、母にめがねをかけなさいと言われた時の、絶望的な顔。 箸を投げ出してふらふらと縁側へ行き座り込む。 ここで、すすむの頭の中の映像。 めがねをかけた怖い大人や変な顔をした大人の姿が浮かぶ。 顔を覆って、もう駄目だ!という姿のすすむ。 すすむの絶望的な思いが、そのオーバーな絶望ぶりにより面白く描かれている。 眼科で検査をしてもらっているすすむ。 まるで、怖い実験でもされるようにビクビクしているすすむ。 この時の不気味な音楽と、緊迫感ある画面が、すすむの恐怖を伝えている。 この子供の目線で描かれた恐怖感・絶望感が、私は好きでした。 これはめがねなので、“たかがめがねで!”って感じで、会場でも笑いが起こっていましたが、 他のことに当てはめてみればと〜っても共感できることで、 子供の繊細で複雑な気持ちってものをよく分かっているな〜と思いました。 人間関係もうまく描けていると思います。 父親と兄の関係、父親とすすむの関係、母親とすすむの関係、兄とすすむの関係。 めがねを通して、喧嘩があったり反発があったりした後に、段々と距離を縮めていく。 やっぱり宇野重吉が温かいですね。宇野重吉の父親がいいです。 ラストが好きでした。 父親は仕事の関係で目を痛め黒めがねをしていたのだが、すすむが自分になつかないのは 黒めがねが怖いからだと思い、かけるのをやめてしまう。 ラスト、めがねをかけて強く明るい子となったすすむは、父親の黒めがねをそっと持ってきて、 「父ちゃん…」と言ってサッとかけてあげる。 自分もめがねをかけるようになったことで、父親にも歩み寄ることができた最初の場面である。 その後家族揃って縁側で西瓜を食べる。 「これでお前もやっと家族の一員だな」と父親。 クラスの先生も生徒も、幸せな時代だなーと思った。 話し合えば全て解決、いじめっ子達でさえ素直!陰険さがちっともない! めがねを通して成長する子供、その子供の複雑な思い、
複雑な家庭の家族関係の変化、そしてユーモア… とても丁寧に描かれた楽しい作品だった。 |

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