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しばらく旅行記が続きます…すいません

映画感想―キム・ギドク

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2000年
監督・脚本:キム・ギドク
音楽:チョン・サンユン

出演:チュ・ジンモ、キム・ジナ、イ・ジェラク、ソン・ミンソク、キム・ギヨン、ミョン・スンミ
   ソン・ジョンファン

★★★
(あらすじ)
「私」(チュ・ジンモ)は公園で肖像画を描く画家だ。近くの公衆電話を盗聴し、他人の会話を盗み聞き
することが唯一の趣味であり、私と世界のつながりだ。ある日、私の絵を上手いと誉めた少女(キム・ジナ)に誘われるがまま、ついていくと、そこは演劇の舞台のような空間で、激しい怒りにあふれた男がいた。男は、私を挑発する。なぜお前をコケにした連中に怒りをぶつけないのか、と。そして謎めいた少女は私をデジタルカメラで撮影しはじめる。
私に隠れて他の男とセックスを楽しんでいる花屋で働く恋人。私を利用しつつも、私の絵を侮辱しているカメラマン。私に理由のない暴力をふるった軍隊時代の上官。私は、自分の中に潜んでいた暴力性を露わにして、次々と彼らを殺していくのだが…。(パンフレットより)

35ミリカメラ8台、デジカメ10台、撮影時間わずか3時間20分。
「魚と寝る女」と「受取人不明」の間に製作された、好き嫌いの最も分かれる作品、らしい。

私が劇場で観ていた時、1人の妊婦さんが途中退席した。
始まって30分くらいだったかな…。
いや、勿論作品が悪いからではなくて他の理由なのかもしれないが、
退席して正解だったな〜…と思う、そんな作品。
作品が悪いという意味ではなく、妊婦さんは観ない方が良いんじゃないかな…と。(私は全く平気です)

なにしろ、次々と人を殺していく、そんな話ですから。
しかも、なにかストーリーのようなものがあって、
その中で“もう耐えられない!殺してやる!”となり、最終的に殺人に至る、というわけではなく、
公園で肖像画を描いているくら〜い男が、演劇空間で怒りを誘発されて、
突如恨みのある人間に次々襲いかかる、というちょっと感情移入しにくい形で殺人が始まるのです。
その殺し方も、ギドクっぽい痛みを伴うもの、というよりも、
妙に生々しくて痛い、ただ単に痛い、そんな感じかな。
“ギドクっぽい痛みを伴うもの”というのは、飽くまでも私の観方ですが、
他のギドク作品の痛い場面には、一種の美学のようなものを感じたのですね。
それが今回は感じられなかったかなー…と。
ピストルで撃つ、鉛筆で刺す、毒蛇を詰めた袋に頭を押し込む、大型冷凍庫に閉じ込める、などなど。
殺害方法もそうですが、35ミリカメラで撮影というのも、生々しさを強調しているのかもしれない。
ある男の殺人現場をこっそり撮っているような、そんな感じ。

始まって10分くらいあるのかな?公園で肖像画を描くシーンは…
これも隠し撮りみたいな感じで、リアルです。
でも、もしこの公園のシーンが延々と続いて終わったらどうしよう…という不安もありました(笑)
少女に誘われて演劇空間へ。
「この女とセックスしたいんだろう?」という男の質問に、首を横に振る「私」。
すると男は、「私」のズボンをおろし、少女を目の前にして「私」の性器を弄る。
男はこの行為によって「私」の怒りを爆発させようとしているようだ。
案の定「私」はどんどんと怒りを爆発させる。そして殺人へと向かうのだが…
一体この演劇空間はなんなのだろうか。
後になって考えてみると、「私」の頭の中の葛藤、なんじゃないかと。
あの男は、謂わば「私」の分身。代弁者、といったところか。
そんな2人の「私」が頭の中にはいる。そして現実の自分は表わせない怒りを表出させている。
もしかしたら、現実に殺人を犯してしまう人間というのは、こういうやり取りを頭の中で行っていて
自分の犯罪を正当化させているのかもしれない。

この「私」の殺人が、もし現実の出来事として終わっていたら、
私はこの作品、??と感じていたと思う。それどころか、“ただの殺人映像じゃん”と嫌悪感すら
抱いていたかもしれない。
だが、「私」が公園に戻ると、初めに殺したはずの女が!そしてヤクザ達もいる!
この一連の殺人が、「私」の想像だったのだと分かる。
そして、ヤクザに虐げられていたぬいぐるみ売りの男が、公園でヤクザを刺してしまう、という場面が
展開される。うん、この殺人こそ、よくありがちな突発的な行動だ。

演劇空間(自分の頭の中)によって怒りを爆発させたが、大抵はその行動を実際にするのではなく、
頭の中で想像するだけで終わらせてしまうものなのだ。
我々は、「私」の頭の中を見せられていたことになる(笑)

そしてラスト。エンドクレジットが始まると“カーット!!”と言ってスタッフや出演者が出てくる。
花束が手渡され、恐らく韓国語で“お疲れ様でした”などと言われているのだろう…。
あれ、この終り方ってどこかで似たような…そうだ!「蒲田行進曲」だ!
「私」の頭の中を見せられていた私達なのだが、最後に、これは飽くまでも虚構ですよ、
ということを突きつけられて…うう、頭がこんがらがってくる。
しかし、「リアル・フィクション」という通り、これはとても現実的な虚構世界だった。
リアルというのは35ミリ撮影の映像もそうだし、あの殺人が頭の中の想像だったということも、そう。
我々の頭の中には少なからずこのような虚構世界が広がっているに違いない。
そして「私」が頭の中で展開したように、我々の頭の中の虚構世界も理不尽な怒りによって
誰かを殺したり殴ったりしているのかもしれない。

このからくりがあったお蔭で、嫌悪感もなく観終えることができた。
あの退席した妊婦さんも最後まで観ていたらスッキリしたかもしれないが…
う〜ん、やっぱり途中の大量殺人シーンはやめといた方が良いですね。
無口で目をギラギラさせて、次々と手際良く(ホント、手際が良い)殺人を犯すチュ・ジンモは
不気味です。怖いです。
実際いくら虚構世界でも、ここまで考えているとしたら怖いですね(笑)
人間、感情表現を豊かにすることが大事だなーと思いました。溜めてはいけまっせん!

1997年
監督・脚本:キム・ギドク
音楽:カン・イング

出演:チョ・ジェヒョン、チャン・ドンジク、チャン・リュン、リシャール・ボーランジェ
   ドニ・ラヴァン

★★★+++
(あらすじ)
他人の絵を盗んで売ることで食いつないでいる落ちぶれた画家チョンへ(チョ・ジェヒョン)は、
フランス外人部隊に入隊する夢を抱いて密入国した北朝鮮脱走兵ホンサン(チャン・ドンジク)と出会う。
韓国人のローラ(チャン・リュン)は、フランス人の養父母に捨てられてピープショー(のぞき部屋)の
ストリッパーとして働いている。チョンへは白塗りパフォーマーのコリンヌと知り合い惹かれ合うが、
それはコリンヌの恋人の嫉妬をかきたてた。チョンへとホンサンは、地元のマフィアの下で働きはじめ、
麻薬密売人であるローラの恋人(ドニ・ラヴァン)を殺す。やがて、マフィア同志の裏切りの中、組織の
手によって手錠をかけられたまま海に投げ込まれたチョンへとホンサンだが…。(パンフレットより)

パリで撮影されたもの。
ボーランジェ、ドニ・ラヴァンはフランスの“怪優”と言われているようですね?
私は全く知りませんでした…。
この作品、失敗作の烙印を押されたらしいが、私は嫌いじゃなかった。
ちなみに、ギドク自身は“個人的には一番好きな作品”らしい。

よくあるチンピラもの、と言っていいのかな。
あ〜〜、私の好きなチョ・ジェヒョンが、情けない程弱々しいチンピラを演じている!!
「悪い男」ではあんなに逞しくて強引な男だったのに!
「鰐」では、ちょっとチンピラ要素はあったものの、凶暴で強い男だったのに!
同じ人間でも役によって違うんだな〜。当たり前だけど(笑)
本作のチョ・ジェヒョン…時々火野正平に見えて仕方がなかった…。
しかし!これはこれで、また良いのですよ!母性本能をくすぐると言いましょうか。
ほんっとに情けないチンピラなんです!
友達や組織はすぐに裏切るし、喧嘩してもすぐ負けちゃうし、後先考えずに行動するし…
悪気なくやっているところが可愛いのでしょうか。
それとも、私は、やっぱりチョ・ジェヒョンが好きというだけなんでしょうか(笑)
初めは“こんなチョ・ジェヒョン嫌だ〜!”と思っていたが、
その内ムクムクと母性本能が…不思議なもんです。

パリを舞台に、韓国人のチンピラがマフィアの下で働き、
女の為に組織や友人を裏切ったり殺しにまで手を染めていったり、
最後は命を狙われるようになり…という、話としては普通のものです。
だけど、やっぱりただのチンピラものではない。

この作品を観た人が、印象的だった場面として大抵挙げるとは思うが(ギドクっぽいという意味でも)、
魚の場面は良かったですねー。
コリンヌの恋人が物凄い暴力男なのですが、
この男怒りが頂点にくると冷凍庫から“凍った魚”を持ってきて、それで女を殴るんですね!
確か…鯖だったかな??
“凍った魚”を振りかざす男というのは、想像以上に怖いですよ(笑)
以前サスペンスで、つららを凶器に使用するというのは見たことがあったが、
魚は…ないよなー。ギドクって魚が好きですねー。
コリンヌがこの男を殺してしまうのだが、その時の凶器も“凍った魚”!
“凍った魚”で腹を一突き。
パニックになったコリンヌに連れられてチョンへが部屋にやってきた頃には、
“凍った魚”もいい具合に解凍されて、腹から生々しい鯖の頭が顔を突き出している(笑)
ここは、笑うところですね!人間の腹から魚の頭なんて、滅多にないですよ。

チョンへとホンサンが袋詰めにされて海に投げ込まれるのだが、
この時脱出する為に、手首を切る。(←手錠で繋がれていた為)
これは、痛いですね。
ギドクの作品は、やっぱり痛いですね。本作では非常に少ないですが。
でも私だったら、袋詰めにして銃で撃つという念の入れようなのだから、
もう何発か撃って確実に殺してから海へ放り込みますがねー。
ま、それをしたら海中での場面も、その後のラストもなくなってしまうので仕方がないとは思いますが、
ああいう不自然な殺し方というのは、些細なことだが気になってしまいますねー。

南北統一への願いを込めた作品だと言うが、
そこも単なるチンピラものではない面白いところ。
北朝鮮のホンサンと韓国のチョンへは初めは生活の糧を得るためのパートナーとして付き合うが、
その内友情が芽生えてきて、しかし裏切りや喧嘩のある不安定な関係だった。
ホンサンはチョンへの全てを受け入れ許してきた。チョンへに殺されそうになった時でさえ、
「お前が幸せになるなら、俺を殺してくれ。どうせ俺は先が見えない…」と受け入れる。
チョンへも、そんなホンサンを殺すことはできない。
ホンサンは、韓国人だが韓国からもフランスからも突きはなされたローラに、
朝鮮の民族衣装の絵を描いた人形を渡す。
だがチョンへは何も知らずにローラの恋人を殺す。
チョンへとホンサンは銃で撃たれたり手首を切り落としたりとかなり痛い思いをした後で、
やっと強い絆で結ばれ、新たに出発しようとしていたところで、
韓国、或いはフランスの孤児とも言えるローラによって殺される。
なかなか凝っていますね。

普通に楽しめる作品でした。

「悪い女〜青い門〜」

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1998年
監督・脚本:キム・ギドク
音楽:イ・ムニ

出演:イ・ジウン、イ・ヘウン、チャン・ハンソン、イ・イノク、アン・ジェモ

★★★★++
(あらすじ)
うら寂しい浦項(ポハン)の民宿に売春婦のジナ(イ・ジウン)がやってくる。
そこには民宿を経営する父親(チャン・ハンソン)、母親(イ・イノク)、
ジナと同い年の娘ヘミ(イ・ヘウン)、男子高校生のヒョヌ(アン・ジェモ)の一家が住んでいる。
ジナはヘミと親しくなろうとするが、家業を嫌悪し、性に対して閉鎖的なヘミは、自分の家で
体を売るジナを軽蔑する。ジナは父親やヒョヌ、そしてヘミの恋人とも関係を持ってしまい、
家庭内の緊張感はピークに達する。しかし、ヘミはやがてジナの内側にある哀しみと孤独に触れて、
ある種の共感を見出し、ジナもまたヘミの中に孤独を見い出す。二人の間の壁であった「性」は、
今度は媒介者となって、二人をつなげていくのだが…。           (パンフレットより)

“あれ?これ…別に悪い女じゃないじゃん!”というのが観終わった後の感想かな。
これは観ている最中もずっと感じていた。
「悪い女」なんていう題名だから、私はどんなに嫌〜なムカつく女が出てくるのかと身構えていたが、
全く私の想像と違ったのだ。原題は「The Birdcage Inn」だから、“悪い女”ってわけではないのかな。

観終わった後は、青春ものをみたような清々しささえ感じるような、爽やかなものだった。
ジナ役のイ・ジウンは石田ひかりのような女優さん。
売春婦の役だが、ムンムンとした色気や生々しさはあまり感じない。
だから、宿の父親や弟と関係を持ったり、ヘミに意地悪をしても嫌な感じがしないのかな。

いや、父親と関係を持ったのは半ば強引にだし、弟の場合は土下座の勢いで頼みこまれたからだ。
決してジナが誘惑したわけではない。
しかし…男ってものは可愛いもんだ、と思ってしまう。
だって、男どもは初めからジナに好意的ではあったが、関係を結んだ後なんて
もう自分の恋人みたいにして庇っちゃうんだもの(笑)
お父さんは言葉数少ないが、心配そうにジナを見つめていたり、留置所ではそっと抱きしめてあげたり、
変なプレイを要求する客やジナの恋人(コイツが結構悪い男)を殴る時だって、
単なる保護者ではない迫力を感じたよ。
お父さんにとっては娘であり恋人であり、可哀想で労わってあげたくなる存在、なんだろうけど、
それは体の関係を持ったからこそ芽生えちゃったような気がする。
父親と弟は、同じ相手と関係を持ったことで連帯感みたいなものを持ってしまうし、
これこそ“家族!”…ある意味この家族皆、結ばれちゃったね。

ジナにとっては、売春は仕事であって、ある程度は割り切っている。
割り切らないとやっていけないというのは、あるだろう。
父親や弟と関係を持ったからって、なつっこく変わるようなジナではない。
ジナにとって、ある意味それは仕事と一緒だったのだろう。
だが、父親と弟は、単なる遊びではない、なんらかの感情を芽生えさせる。
そこが、可愛いというか、全く男って奴は…という気になってしまうんだな。
留置所で父親がジナに「人は誰も体を使って生きている」と言うが、
“おいおい、あなたが言いますか…”と突っ込みを入れつつも、やはり温かいなと感じてしまう。
こんなゆる〜い家族愛もありかな。

ジナを軽蔑し意地悪をしてくるヘミが初めは嫌で、“これが悪い女?!”と思うくらいだったが、
観ていく内に彼女の孤独や哀しみも分ってくる。確かにこの環境はあまり良いものとは言えない。
「性」に対して閉鎖的になってしまうのも分かる。

このジナとヘミが心を通わせていくところが好き。
語り合うわけでもなく、涙を流して謝罪し合うわけでもなく、
言葉は殆どと言って良いほどないのだが、二人の心がそっと寄り添っていくのが分るのだ。
特に、ジナの行動(食事をしたりアクセサリーを見たり)をじっと見つめるヘミと
今度は入れ替わってヘミの行動を(ジナがしたことと全く同じことをする)
ジナがじっと見つめるという、あの場面が好き。まだ完全に打ち解け合ってはいないが
確実に距離を縮めている感じが出ている。

ヘミは、ジナの哀しみを本当に理解し繋がり合うには、
自分も売春をしてみるよりないと思ったのだろうか。
私は、この行動に、レズ的な愛情を感じて、心地良い気分になった。
自分が愛する人とのセックスでは何の意味もない。
この、どこの誰とも知れない客とのセックスによって、ヘミはジナに愛情を捧げた。

そう言えば、今昼ドラで「麗しき鬼」というドラマをやっているが、
その中でも、A子とB子というレズ的な関係の二人がいて、
A子が英語教師に恋をしたことに腹を立てたB子は、その教師を誘惑し処女にも関わらず
セックスをして、A子の目を覚まさせるということがあった。
B子は「あんたの為に処女まで失ったんだよ!あんたがあんな男に恋するから!」と言うが(笑)
女には、こういう行動を起こさせる何かがあるのかな?
「悪い女〜青い門〜」でも、ヘミはジナと繋がる為に好きでもない男とセックスをする。
この行動が好きだというわけではなく、私はこのレズ的な二人の関係が好きなのだ。
多分、ジナと父親・弟の関係よりも、ヘミとの関係が深いだろうな。
傷を負うことで強まる愛、今回は女同士だったが、後味の悪さを全く感じなかったのは
ラストの二人の姿があまりにも幸せそうだったからか。

「悪い男」の場合は、セックスをしないことによって得た愛情だったが、
今回はセックスをすることによって得た愛だった。(女同士の場合に有効なのかな(笑))
そしてセックスを通してゆる〜く繋がる“青い門”の中の家族。嫌いじゃない。

「魚と寝る女」

イメージ 1

2000年
監督・脚本:キム・ギドク
音楽:チョン・サンユン

出演:ソ・ジョン、キム・ユソク、パク・ソンヒ、チョ・ジェヒョン

★★★★★
(あらすじ)
点々と水に浮かぶ色とりどりの釣り小屋。釣り場を管理するヒジン(ソ・ジョン)は、
一言も口をきかず、釣り人に、時には体も売って生活している。
ある日、浮気した恋人を殺害した男ヒョンシク(キム・ユソク)が、自分の死に場を求めて
釣り場にやってくる。だが自殺の試みは、ヒジンによって遮られ、ヒョンシクは釣り場に留まる。
二人の間には強い感情が流れはじめるが、ヒジンはヒョンシクの要求を拒み、彼は違う女を
自分の釣り小屋に招いて抱く。ある時、別の指名手配者を追って、警察が釣り場にやってくる。
自分ももう逃げ切れぬと覚悟したヒョンシクは釣り針を飲んで自殺を図るが、ヒジンに助けられる。
二人は一気に強く結ばれるが、ヒジンの激しすぎる愛情に、しだいにヒョンシクは
耐えられなくなっていく。しかし、二人の愛の物語は予想しえない結末へ…   (パンフレットより)

いたたたたたっっ!
子宮が痛くなる作品だ(笑)
でも、好き♪

ホラー映画?コメディ映画?純愛映画?
色んな要素が詰った、絶妙な作品だ。

ヒジン役のソ・ジョンは、これまた眼力のある女優さん。
彼女の演技が実に良かった。全く喋らない。全く喋らないと却って印象に残るものなのかも
しれないが、彼女の表情(恨めしそうな表情が特に好き♪)、しなやかな動き、全て良かった。
魚のように静かに泳ぐ女だ。美しいと何度も思った。観ている内に惹き込まれていく感じ。
ああいう魅力にハマると、抜け出せなくなるだろうなー…

「悪い男」でも主人公の男は言葉を発しなかった(一言あったが)。
今回の女も話さない。ギドクの作品に出てくる人達は、言葉少ない人が多い。
「悪い男」のハンギも、本作のヒジンも、行動がストレートなので、余計な言葉がないぶん
強い思いを感じ取ることができる。言葉は時に嘘くさいことがある。
それに、説明のない作品というのは、好きだ。
例えばヒジンの過去の辛い出来事を、回想形式でくどくどと流されるとしたら…
或いはヒジンが言葉を発する人物で、ヒョンシクに向って自分の体験を語りだしたとしたら…
うんざりだろうな。この作品の不思議な世界が一気に壊れそうだ。
ヒョンシクの過去にしても、僅かな映像が挟まれるだけだ。
僅かなヒントから、或いはその暗く苦しげな表情から、過去を推測する。それが楽しい。
語ることすらできないほどの辛い出来事を背負っているヒジン。
言葉を失うほどの辛い体験とは?詳細が語られない分、それほど辛いのだ、ということは伝わる。

ギドクの作品には、なぜ売春を行う女性(或いは乱暴される女性)が多く出てくるのだろうか。
まるで、“セックスによる繋がりなんて、一瞬の欲によって行われることで、
大して重要なことではない”と言わんばかりの無表情なセックス場面。
でも、ホントにそう。ギドクの作品では、セックスによる安易な繋がりではなくて、
痛みを伴うようなもっと強い繋がりを求めているような気がする。愛と言うと軽く聞こえるが。
ヒジンも淡々と客と寝る。
だが、ヒョンシクの初めの求めには応じない。
そのくせ、ヒョンシクが喉から血を溢れさせ苦しんでいる時には、自らセックスを始める(笑)
あの辺りのヒジンの心情は、なんとなく理解できるな。
安易に体を求められると、性欲の捌け口みたいで嫌だが、
ダラダラと血を流して苦しんでいる男ならその権利を与えても良い、というような…。
相手がそれ相当の傷(精神面も含む)を負ってこそ、対等な関係になれる。
その瞬間、相手にとって自分は、必要不可欠な存在になるような気がしてくる。
だからギドク作品の愛には、痛みを伴うのだ。

ゾッとしたが好きな場面。
ヒョンシクと若い娼婦のセックスを、ヒジンがトイレから覗く場面。
トイレの蓋がそ〜っと持ち上げられて、水浸しのヒジンの顔がぬ〜っと現れる。
ヒジンと目が合った時のヒョンシクのあの驚いた顔(笑)
あそこはホラーのようなコメディのような…怖いんだけど笑っちゃう感じで好きだ。
最初の方の場面、携帯で話しながら用を足している威張り腐った客を、
水の中に引きずり込んだ時のヒジンも好きだった。遠くから見つめる水浸しのヒジンが、
なんとも不気味だったな。

痛かったが面白かった場面。
喉に鉤針が刺さったまま、釣られる男。
子宮に鉤針が刺さったまま、釣られる女。
あの、尋常ではない状況と、あり得ないほどの冷静さの、組み合わせが好き。
あたふたとパニックになるわけでもなく、急いで助け出すわけでもなく、
釣りを楽しんでいるように冷静な女、或いは男。
釣って釣られてという構図も楽しい。

ああいうの結構好き、と思った場面。
若い娼婦がプライベートでヒョンシクのもとへ遊びに来て帰った後のヒジンの行動。
凄まじい勢いで小屋に入ってきて、女が持ってきた飲料をグワーッと倒す。
あの時の嫉妬の顔。恨めしそうな顔。そしてヒステリーな行動。
ちょっと笑いも誘ってしまうあの行動、見ていて好きだな。

傷付いた女が深い愛を抱き求めて、傷付いた男は少々戸惑いながらも受け止めて、
そしてあのラスト。
女の子宮の中に入れられてしまった男。
男を完全に自分のものにするには、男を子宮に入れてしまう…
男を孕んでしまうことが1番だ。男を孕んだまま、一生出さないで置いておく。
ふふ、素敵。女ならではの隠し場所ですね。これ以上の一体感はない。

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「コースト・ガード」

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2002年
監督・脚本:キム・ギドク
音楽:チャン・ヨンギュ

出演:チャン・ドンゴン、キム・ジョンハク、パク・チア、ユ・ヘジン

★★★++
(あらすじ)
美しい海辺に海兵隊が駐留している。カン上等兵(チャン・ドンゴン)は忠誠心が強く、
軍務に熱心すぎる男だ。ある夜、軍司警戒区域に何者かが紛れ込み、スパイだと思ったカンは
射殺するが、それは酔っぱらって情事に及んでいた近所の青年だった。真実は隠蔽され、
カンは任務を果たしたとして表彰される。しかし次第にカンは精神に異常を来し、
除隊を余儀なくされる。同じ頃、恋人をカンに射殺されたミヨン(パク・チア)もまた狂気に陥り、
次々と海兵隊の男たちに身をまかせ、誰の子ともわからぬ赤ん坊を宿す。
海岸線には不穏な空気が立ち込め、次々と犠牲者を出しながら、衝撃の結末へと導かれていく。                                        (パンフレットより)

へえ〜、ギドクはこういう作品も撮るのね…と思った作品。
社会性の強い作品だな、と感じたが、カンとミヨンの狂気の描き方はギドクらしいのかな、と思った。

実はチャン・ドンゴンの作品は初めてなのだ。顔も知らなかった。名前は当然知っていたが。
だから、観終ってからチャン・ドンゴンだったと知って驚いた。
チャン・ドンゴンを知らないくせに、彼はこういう作品には出ないというイメージは
ちゃっかり持っていたのだ。ふむふむ、思い返してみれば、確かにカンはいい顔してたわ。

だが、印象に残ったのは彼のギラギラした眼。キム・ギドクの作品に出てくる人間は、眼が印象的だ。
何かにとりつかれたような眼、人を射るような力強い眼、ギラギラした眼、である。
本作のカンも、兎に角ギラギラしている。

この作品は観ながら怒りが込み上げてくるものだった。
まず、海兵隊を挑発してくる青年達に腹が立った。「撃てもしないくせに…」などと言ってくる奴ら、
なんなの??と殴ってやりたくなった(笑)
そしてカンが民間人を射殺してしまった後の、青年達の怒号にも腹が立った。
民間人を巻き込んだということや、安易に、しかも何度も何度も撃ち
手榴弾まで用いる念の入れようには、“やりすぎでは…”という思いもあるが、
そもそも、侵入したら撃つと言われている警戒区域に入り込んだのが悪いのではないか??
しかも、止むに止まれずではなく、セックスをする為にである。
何故この女や青年は非難されずに、カンばかりが責められるのだろう!
そして、カンの彼女にも腹が立った。
カンが、民間人を撃っても平気な顔をして手柄話をするなら、私でも離れる。
しかし、カンは明らかに精神が不安定になっていて、民間人を撃ってしまったことで
おかしくなっているではないか。そんな時には誰かが支えてあげねばならないのでは?
“民間人を撃った”という事実だけを見て、カンを突き放す彼女にも、ホント腹が立ったな。

だが…この作品の理不尽さに対する怒り、違和感こそは、ギドクが狙っていたものなのかなー…
という気もする。カンは青年達に罵られて彼女にも突き放されていくことで、
段々と狂気へと陥っていく。カンはそもそも、初めから周囲とは異なる存在だった。
人一倍軍への忠誠心が強く、真面目に任務を遂行していた。
忠誠心が強く真面目であればあるだけ狂気へと陥らざるを得ない現実。
カンという狂気の人物を描くことで、軍の問題、民間人との温度差を浮彫りにしているのだろう。

そして、ミヨンという女も、初めから少しおかしい。
危険な場所へと敢えて恋人の青年を誘いだす姿も、普通ではない。
カンと同様、狂気の女を描くことで、軍の問題を更に浮彫りにしているなーと感じた。
だが、そんな小難しいことを考える以前に、ミヨン役のパク・チアの演技がなかなか良いのだ。
魚を銜えるところや、男を誘うところ、海の中で遊ぶところ、どこもかしこも普通ではない
雰囲気が漂っている!表情が不気味で、怖いもの見たさで誘われてしまうような、
そんな空気をうまく出している。

チャン・ドンゴンとパク・チアの演技が良いなーと感じた作品だった。

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