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2009年7月12日 3月から始まったISS長期滞在では、「きぼう」日本実験棟をはじめ各国の実験モジュールの中で、ライフサイエンスや材料科学などの興味深い実験を行いました。 特に「きぼう」での実験については飛行中、「JAXA軌道上実験主任」(JAXAサイエンス・オフィサー)として実験運用に参加してきました。 軌道上実験運用での宇宙飛行士の役割は、実験装置のセットや試料の交換などが主な仕事で、「きぼう」での多くの実験はつくば宇宙センターから遠隔操作で行われます。 私たち宇宙飛行士には、実験提案者の方々や地上の実験運用チームの皆さんの軌道上での「手」となって、実験の準備や実施を確実に行うことが要求されます。 これまで私が参加した「きぼうで」の実験のいくつかをご紹介しましょう。 「きぼう」の細胞培養装置を使った、生物の形態形成における重力影響(両生類培養細胞による細胞分化と形態形成の調節(Dome Gene))実験。 これは、組織形成と遺伝子の働きを重力環境と微小重力環境で比較することで、生物の組織形成における重力の影響について手がかりを得る事を目的としています。 細胞培養装置 先端材料の結晶成長実験(ファセット的セル状結晶成長機構の研究)。 これは、酸化物など最先端材料に使われるファセット結晶(平らな面を持つ結晶)の界面の成長過程や形態を詳細に観察し、結晶成長メカニズムを解明することが目的で、「きぼう」の流体ラックに組み込まれている溶液結晶化観察装置を用いて実験が行われました。 氷結晶成長におけるパターン形成(Ice Crystal)実験は、微小重力下で氷の結晶を成長させ、なめらかな形をした円盤状結晶から凹凸ができる過程を解明する実験で、溶液結晶化観察装置(SCOF)を使用して行われました。 溶液結晶化観察装置 宇宙放射線計測実験では、「きぼう」船内の宇宙放射線環境の計測と私自身の宇宙飛行時の放射線被ばく線量を計測しています。 先日ご紹介した、ビスフォスフォネート剤を用いた骨量減少・尿路結石予防対策に関する研究には、自ら被験者として参加しています。 また、軌道上遠隔医療の技術検証(軌道上における簡易型生体機能モニターの検証)では、ホルター心電計とハイビジョンカメラの実用性を検証し、軌道上の遠隔医療の充実を図る事を目的としており、私も被験者として参加しています。 これらの実験は、日常生活をより豊かにできる新しい技術に応用されたり、人間が宇宙での活動領域を拡大させていくために必要な新たなデータと知見を与えてくれるものです。 「きぼう」は世界に誇れる優れた実験能力を持つ宇宙の実験室であり、「きぼう」を利用した様々な実験への参加は宇宙飛行士として最もやりがいのある仕事の一つです。 宇宙滞在も120日目となり、ISSに搭載されているJAXA宇宙日本食28種類の私の分の残りが少なくなってきました。 さばやいわし、カレーやラーメン、お吸い物など美味しい和食を宇宙でも楽しんでいます。 閉鎖環境のISSで長期に渡って慌しいスケジュールの中で仕事を続けている毎日ですが、やはり幼い頃から慣れ親しんだ食事をいただける事は、心理サポートの点からもとても効果が高い事を実感します。 「宇宙(そら)の旅、帰還遅れも至福かな、僅かな和食の残り見つけし」 若田光一 (アメリカ上空にて) |
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2009年7月7日 今日7月7日は七夕ですね。 一緒に飛んでいるクルーと一緒に願い事を短冊に書いてみました。 国際宇宙ステーションは軌道高度約350kmの地球周回軌道を飛行していますが、船内の電気を暗くして窓の外を覗くと、そこから見える星空のきらめきには圧倒されます。 天の川をはさんできらめく牽牛星・織女星の物語は、いまから2000年以上昔の中国の伝説だそうですが、吸い込まれるような暗黒の宇宙に三次元的に奥深く広がっている星々を眺めていると、目の前にあるものが空間としての存在だけでなく、まさに時空の拡がりとして実感できるのと同時に宇宙へ畏怖を感じます。 また、今日はクールアース・デーで、地球温暖化の防止や自然との共生に向け、みんなで地球環境を考え行動し、それを世界に対して広く発信していくことを目指して設けられた日です。 今後、地球環境のモニターと世界に向けたメッセージの発信ステーションとしての役割も、「きぼう」日本実験棟は担っていけると思います。 クールアース・デーに天の川を見ながら、皆さんと一緒に地球環境の大切さを一緒に考えたいですね。 梅雨に入り、日本上空を飛行するときに雲が掛かって写真を全く撮れない日が続いています。 梅雨明け頃には地球に帰還する予定なので、それまでに日本の晴れの日に上空を飛行できるといいなと願っています。 「ふるさとの姿見たしや梅雨の空、今日も白雲日本を覆う」 若田光一 (中国上空にて) |
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2009年7月3日 昨日は、ソユーズTMA14宇宙船のISSドッキング位置を変更するために、約25分間に渡って、ソユーズ宇宙船に乗り込んでISSから一旦離れ、再ドッキングを行いました。 このソユーズTMA14宇宙船は、ISS第20次長期滞在クルーのパダルカ飛行士(露)とバラット飛行士(米)が乗ってきた宇宙船で、スペースシャトルでISSに往復する私にとっては、緊急避難用の宇宙船の役目も持っています。 今回のソユーズ宇宙船のドッキング位置の変更は、この9月にISSにやってくる第21次ISS長期滞在クルーの船外活動の準備の一環として行われたもので、パダルカ飛行士、バラット飛行士と私がソユーズに乗り込んで行いました。 パダルカ船長の完璧な手動操縦で、再ドッキングはとてもスムーズでした。 ソユーズ宇宙船がISSから離れていく時、窓の外には、姿勢制御用のジェットから出る燃料が、宇宙空間を飛び回るホタルのようきらきら輝いて見えました。 ソユーズ帰還モジュールの中は、3人が着席すると身動きできないほど狭い船内ですが、そのシステムの隅々に至るまで、長年の運用経験を通して何度も改良が加えられてきた熟成度を感じます。 今回のISSでの長期滞在では、スペースシャトル・ディスカバリー号による打ち上げ、今回のソユーズTMA14による再ドッキング、今月末に予定されているスペースシャトル・エンデバー号による帰還と、3つの異なる宇宙船で飛行する機会が与えられたことに加え、それぞれの宇宙船の異なるクルーと、運用を支えてくれるそれぞれの宇宙船の地上管制チームの皆さんと一緒に仕事ができることは貴重な経験です。 ソユーズ宇宙船の窓から見えた月の光もとても印象的でした。 「闇に浮く青き地球に沈みゆく月の金色かぐやを想う」若田光一 (エジプト上空にて) |
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2009年7月1日 宇宙の生活も107日を越えました。 微小重力の環境下では、地上にいるときのように1G の重力の下で体を支えるための負荷が骨に掛かりません。 そのため健康体であっても、高齢者の骨粗鬆症患者の約10倍の速さで骨のカルシウム成分が骨から血中や尿の中に溶け出します。 これまでの長期滞在をした宇宙飛行士研究のデータによれば、大腿骨や腰椎の骨密度は1か月で平均して約1.0〜1.5%のペースで減少することが指摘されています。 また、カルシウム成分は尿路結石の原因にもなります。 軌道上で私たちは、トレッドミルや自転車漕ぎ装置、筋力訓練装置で毎日約2時間の運動を行っていますが、軌道上での運動だけでは骨密度の低下は防げません。 地上での骨粗鬆症に対する治療薬として使われているビスフォスフォネートと呼ばれる薬がありますが、私は今回のISS長期滞在で、ビスフォスフォネート剤を宇宙で定期的に服用して、飛行前後での骨密度の変化を調査し、宇宙での骨密度低下を予防するための日米共同の研究に被験者として参加しています。 ISSでの宇宙長期滞在や今後の火星有人飛行などに向けても、骨密度低下の予防や対策の研究はとても重要ですが、骨密度低下の抑制は、地上で骨粗鬆症に苦しむ多くの方々にとっても重要な研究テーマだと思います。 (ニューカレドニア上空にて) |
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2009年6月28日(日) 23:00-23:30 放送 TBS系列 「情熱大陸」 打上げ前の昨年7月から密着取材。ぜひご覧ください。
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