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2009年6月14日 「きぼう」の組立てを完成させるスペースシャトルエンデバー号によるSTS-127 (ISS フライト2J/A)の打上げが間近に迫り、私のISS(国際宇宙ステーション)長期滞在も残すところ約3週間になりました。 そこで今日は、日本人宇宙飛行士によるISS長期滞在開始の意義についてお話したいと思います。 私が参加した過去2回のスペースシャトルミッションでは、日本やアメリカの人工衛星の回収やISS建設のための作業などを行いましたが、飛行中に分刻みでスケジュールされる作業を地上で事前に何度も訓練し、宇宙での仕事全てを頭と体に叩き込んで飛行に臨む形でした。 しかし今回のようなISS長期滞在では、何ヶ月にも渡る飛行中に行う全ての作業を事前に訓練するのは不可能です。 そのため、飛行中に行う可能性の高い作業に対応するための「知識」と「スキル」を訓練で習得し、軌道上ではそれらを活かして、世界各国の地上運用管制局の支援の下に作業をこなしていきます。 そういう点で、短期宇宙飛行とはかなり異なる経験をしています。 ISS長期滞在の場合、作業内容は非常に広範囲に渡ります。 各国の宇宙飛行士は自分の国の装置だけでなく、各国のISSシステム全体の操作を行わなければなりません。 そのため、長期滞在する宇宙飛行士はISSの運用言語である英語とロシア語を話せる必要もあります。 船外活動やロボットアームを駆使したISSの組立てのための作業、ISSでクルーが生活していくための様々なシステムの操作やメンテナンス、トラブルを起こしたシステムの修理、日本の「きぼう」日本実験棟など各国の実験モジュール内での多岐にわたる宇宙実験の実施、ISSへ届けられた膨大な量の物資の搭載管理、地球観測映像の撮影、広報普及活動、無重力環境下での骨密度や筋力の低下を抑えるための連日2時間の体力トレーニングなど、数々の任務をこなしていかねばなりません。 睡眠と食事時間以外はこのような作業を絶えず行っており、ゆっくりと休む時間がほとんど取れないことも、飛行前の予想を覆す経験です。 ISSでの生活は喩えて言えば、体調を常にモニターしながら全力で走り続ける「マラソン」のようです。 また、過酷な宇宙環境の中で人間が長期間生活していくシステムを維持していくことは、高度な技術と運用経験を要します。 日本が軌道上の恒久的な実験施設を保有し、つくばの運用管制チームが24時間体制で「きぼう」を管制し、つくば側のチームの支援の下に日本人宇宙飛行士が長期滞在を始めたこと。 これは、人間が長期に渡って宇宙で生活していくための非常に複雑な有人宇宙システムを主体的に安全に運用しながら、且つ「きぼう」の性能を最大限に活用して様々な実験運用を行っていく能力を日本が得たという点で、「わが国の有人宇宙活動が新たな段階に入った」と言えます。 この事実が、日本人によるISS長期滞在の開始の大きな意義のひとつだと考えています。 「きぼう」は約1年前に宇宙ステーションに取り付けられてから、大きなトラブルは全くなく、宇宙での過酷な環境の中できちんと動いています。これは品質管理を含めた日本の高い技術力の証だと思います。 今後も日本人宇宙飛行士が継続的にISSに長期滞在します。 今年の12月には野口飛行士が、そして2011年の春には古川飛行士が長期滞在を開始する予定で、また山崎飛行士も来年始めにスペースシャトルによるISS組立てミッションに搭乗予定です。 「きぼう」は国際宇宙ステーションの中で一番大きな、そして大変静かな実験室で、世界に誇れる日本の「宇宙の家」です。 「きぼう」の運用を確実に発展させ、地球低軌道から月面、惑星有人探査と、日本が有人宇宙活動の分野でもさらに世界で重要な役割を果たしていけることを期待しています。 そして私たちの活動を見てくれている子供たちが、宇宙そして科学への好奇心を高め、科学技術立国としての次世代の日本を支えていってくれることを願っています。 このブログの読者の皆さんからも、今回のISS長期滞在ミッションについてのご意見やお感じになっていらっしゃることを伺えれば幸いです。 (マダガスカル上空にて) |
若田光一 宇宙ブログ
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2009年6月10日 国際宇宙ステーションから見える地球は、美しく青い光を放つ宝石のようです。 それは暗黒の宇宙の中に浮かぶオアシスのようにも感じられます。 地球の大気層は、薄く青白い霧が輝きながら地球を優しく包み込んでくれているようにも見えます。 この薄い大気層で地球上の生命体が守られていることを思うと、ふるさと地球のかけがえのない環境を守っていくことの大切さを改めて痛感します。 月の入りの際に大気層の中に月が吸い込まれていくように消えていくときの、月と大気層の色のコントラストもとても印象的です。 (中国上空にて) |
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2009年6月7日 宇宙滞在も85日を迎え、帰還まで残すところ3週間になりましたが、6月13日に打ち上げられるSTS-127(ISS 2/A)に向けた軌道上での準備が忙しくなってきました。 このフライトでは、「きぼう」の船外実験プラットフォーム等が取り付けられ、5回に渡る船外活動が予定されていますが、私は「きぼう」やカナダのロボットアームで「きぼう」組立ての最終段階の作業に取り組みます。 先週は、STS-127で行われる船外活動のための宇宙服や各システムの機能試験、道具類の準備を担当しました。 また6月5日には、ロシアのパダルカ飛行士とアメリカのバラット宇宙飛行士によるロシアセグメントの船外活動が行われました。 その間私は、緊急帰還用のソユーズ宇宙船がドッキングしている位置の関係から、ISSの他のセクションとは隔離されたロシアのズベズダ居住棟の中にひとり残り、装置のメンテナンス作業を行いました。 STS-127に向けて着々と準備が進められています。 (日本上空にて) 船外活動用の宇宙服の機能試験や準備を行いました |
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2009年5月29日 今日は、国際宇宙ステーション(ISS)計画にとって歴史的な一日となりました。 ロシアのソユーズ宇宙船(19S)がISSのザーリャモジュールに予定通りドッキングし、ロシアのロマネンコ飛行士、カナダのサースク飛行士、ヨーロッパ宇宙機関のディビュナー飛行士(ベルギー出身)の3人の宇宙飛行士がISSに到着しました。 3月から長期滞在を開始しているパダルカ飛行士、バラット飛行士と私を含め、ISS計画に参加している全ての宇宙機関からの宇宙飛行士が、軌道上に揃ったことになります。 2000年11月のISS長期滞在開始以降、初めてISSが6人体制になり、今日からISS第20次長期滞在クルーとしての仕事が始まりました。 ソユーズ宇宙船のドッキング後は、直ちにクルー全員で緊急避難時の対応などに必要な機器の確認を行いました。 6人体制になることでISSの利用が本格化し、「きぼう」をはじめISSの優れた実験設備を効率的に活用できるようになります。 (メキシコ上空にて) ISSに最終接近するソユーズ宇宙船 |
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2009年5月24日 今週は、アメリカのデスティニー実験棟にある水再生システムで処理された水を、はじめて飲むことができるようになりました。 味は地上で飲む水と同様、とても美味しい水です。 クルーと地上管制局の皆さんと一緒に、この再生水で乾杯もしました。 この水再生システムは、汗などの凝縮水や尿を飲み水に再生するもので、ISSが「ミニ地球」として機能するための大切な条件です。 水をISS内で循環させることで、ISSへの地上からの水の補給が緊急時用以外には不要になるため、その分実験ペイロードやクルーの食料など、ISSでの活動のために大切なものをより多く打ち上げる余裕が出てきます。 水再生装置の技術はISSだけでなく、今後の月や惑星への有人宇宙探査ミッションにおいても重要になってくるでしょう。 5月17日には尿処理装置のバルブを取り除く作業を丸一日掛けて行い、水再生システムの復旧が上手くいき、間もなくソユーズ宇宙船で到着する3名の新たなクルーの受け入れ準備がさらに一歩進みました。 5月29日からは、ISSは初めて6人体制になります。 (ロシア上空にて) 水再生システムのメンテナンス作業中 再生水を手にする第19次長期滞在クルー 再生水はとても美味しい水です |







