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ある日本兵の戦争と戦後
彼が淡々としていたことは私自身が記憶している。
こういう性格の人物は、語り手としては信用がおける。しかし同時に、こういう人物が、自分の経験を書き残すことはめったにない。個人史を書き残す人間は、学歴や文筆力などに恵まれた階層であるか、本人に強烈な思い入れがあるタイプが多い。前者は一部の階層からの視点になるし、後者は客観性に欠ける傾向がある。
本書でも明らかなように、父の足跡は、本人が意識していなかったにせよ、同時代の日本社会の動向に沿っている。にもかかわらず、同時代の多数派がとっていたとはいえない行動も、父はしばしば行っている。
一生涯を通じて、すべての場面において「多数派」であるという人間は、どこにも存在しない。
生涯に一度も逸脱行動をしない人間がいたとしたら、それこそ「普通の人」ではないだろう。
人間は、ふだんは目立たない生活、「平凡」とよばれる生活を送っている。だが生涯に何回かは、危機的な経験をし、英雄的な行動をする。しかし同時に、大枠においては、同時代の社会的文脈に規定されている。
それこそが、平均的な人間というものだ。
危機的な経験や、英雄的な瞬間をとりだすだけでは、描く対象が個人であれ集団であれ、その全体を描いたことにはならない。もちろん、日常的な生活を描くだけでも、全体を描いたことにはならない。それらを総合的に把握し、同時代の社会的文脈のなかに位置づけてこそ、立体的な歴史記述になりうるのではないかと考える。
と、あとがきに語られているとおりの内容でした。
感情を揺さぶられて悲しくなったり悔しくなったり怒りがこみ上げたりすることもなく。これぞノンフィクション、リアルなんだろうなと。だけど地味にずっと興味ひかれた。
それにしてもちょっと昔は、戦争だけでなく子どもを病気で亡くしていたんだよなあ。こういう本読むと、元気でいてくれるだけで本当にありがたいと思う。
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