Koji Murataの映画メモ

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邦画 2008年

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9月21日

 今夜は自宅でビデオ(DVDにあらず)。木下恵介監督・脚本『香華』(松竹、1964年)。原作は有吉佐和子。
 日露戦争の頃の和歌山。郁代(乙羽信子)は夫に先立たれて20歳で後家になる。生まれたばかりの女の子・朋子もいる。彼女は子持ちの地主の息子(北村和夫)と再婚しようとするが、郁代の旧式な母(田中絹代)は反対。それでも、郁代は母と娘の朋子を捨てて再婚、その上、夫とともに東京に出奔してしまう。
 やがて、和歌山で母は死ぬが、東京での郁代たちの暮らしも苦しい。そこで、郁代は和歌山にいる娘の朋子を東京に連れ出し、静岡の遊郭に半玉として売り飛ばしてしまう。だが、因果応報、数年後に郁代も夫に捨てられ、その遊郭に女郎として売り飛ばされてくる。母子の再会である。
 朋子は遊郭の女将(市川翠扇)に厳しく芸を仕込まれ、17歳で芸者となる(岡田茉莉子)。一方、郁代は父親のわからぬ子を妊娠して、女郎としては落ち目、屋根裏部屋でお茶を引く毎日である。朋子はさらに赤坂に転じ、ここで神波伯爵(宇佐美淳也)や実業家の野沢(岡田英次)に愛され、のちには伯爵の妾になる。この伯爵の援助で朋子は店をもち、母を引き取る。だがその頃、朋子は若い陸軍軍人の江崎(加藤剛)と出あって恋に落ちる。しかも、関東大震災で朋子の店は全壊する。
 ここまでが、第一部「吾亦紅の巻」である。
 続いて第二部「三椏の巻」。
 震災後、朋子は伯爵の援助で旅館を営み、成功している。夢は江崎との結婚である。大正天皇崩御のまさにその日、大恩ある伯爵もついに死去、朋子は自由の身となるが、愛する江崎からも別れを告げられる。朋子の母が元女郎だったからだ。ところが、当の母親・郁代は昔生家の下男だった年下の八らん(三木のり平)と再会、結婚すると言い出す。「お母さんが何度も結婚して、私はお母さんのために一度も結婚できないのよ」――傷心の朋子に野沢は優しく接した。二人は旅に出る。だが、時局は戦争に。
 敗戦。すでに8年前に野沢も死去した。朋子は旅館を空襲で失い、母と防空壕暮らしである。だが、この母は大坂に住む夫の八らんのところに戻ったり、東京の娘のところに戻ったり、気ままな生活を繰り返す。そんなある日、朋子は江崎大佐が戦犯として死刑になることを知り、必死の思いで無言の対面を果たす。
 朋子の努力で旅館が再開、軌道に乗り出した。朋子は父や祖母、伯爵、野沢、江崎の位牌を作って仏壇で供養しようと決意した。その直後に、彼女は病に倒れる。ようやく病院で意識を取り戻してみると、母の郁代は交通事故で亡くなっていた。あまりにあっけない母との別れである。
 昭和39年、すでに60をすぎた朋子は郷里・和歌山を訪ね、和歌の浦の波を見つめながら、波乱万丈の人生に想いを馳せるのだった。
 他に、杉村春子や柳栄二郎、菅原文太ら。
 静岡の遊郭の女将を演じた翠扇は大迫力。当代団十郎の叔母に当たり、新派の大女優とか。
 3時間を越える長編です。
 作中、岡田と乙羽が50年近く老けていく、その変貌ぶりが見ものである。とことん身勝手な母、それでも娘は母を見捨てられない。
 「吾亦紅」の花は片思い、「三椏」の花は再会を意味する由。
 日露戦争から東京オリンピックの年までの、日本近現代史でもある。同じ有吉原作の『紀ノ川』と似た話だが、本作のほうが濃厚かつドラマティックである。
 朋子が和歌の浦の波を見つめていた、この年に、神戸で私が出生となります。
 朋子は私の祖母と同世代の日本女性ということになります。

 

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ちょうど、母との関係にもやもやする思いを抱えている和歌山県人の妙齢未婚の私です(といってもまだ若いです)。今の時代、母は私を売りとばしたりはしないと思いますが、どんなに憎たらしくても娘は母を見捨てられませんね。作品、機会を作ってひとりでじっくり見てみたいと思います。そういえば先日、東京から観光にやってきた友人を連れて慈尊院(九度山町)に参りました。小説「紀ノ川」にも出てきます。乳房の形の奉納絵馬(乳房が立体)は圧巻でした。

2008/9/26(金) 午後 0:53 [ たら梅子 ]

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香華は「こうげ」と読み、仏前の香と花の意だそうです。きまじめで、けなげな朋子は壊れた家を何度も再建します。郁代はいい加減だが、明るく毎日を生きぬいていきます。神波伯爵は立派な男性だと思いました。和歌の浦の波は寄せても返さないというのは本当でしょうか。

2012/8/29(水) 午後 10:47 [ KIYO ]

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この『香華』、スケジュールの都合でどうしても観ることができません。31日の昼の回が最終回ですね。でも、『歌え若人達』を観た際、なぜか『香華』の予告編が付いていまして、それを見ました。予告編を見ると、余計に本編をみたくなります。予告編のことを英語で、トレイラーというのは、こういう理由なのかもしれません。
『紀ノ川』は観ています。とても美しい映像で、紀ノ川沿いの九度山で撮影されたとか。知り合いに当時の様子を知っている方がいて、撮影中は村中大変な騒ぎだったそうです。
『香華』は観ることができませんが、木下恵介監督の作品、あと三本ほど観たいです。『父』、『衝動殺人 息子よ』、『父よ母よ』。

2012/8/30(木) 午後 1:48 [ 金歯 ]


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