|
大坂でテレビの仕事があったので、ついでにビデオを借りてきました。
今井正監督『越後つついし親不知』(東映、1964年)。
昭和12年の冬。留吉(小沢昭一)や権助(三國連太郎)は、越後から京都の伏見に出稼ぎに来ている杜氏である。働き者の留吉に比べて、権助は酒や女に溺れやすい。権助は母危篤の報に接して郷里の親不知に戻ったが、酒に酔った勢いで留吉の美貌の妻おしん(佐久間良子)を強姦する。しかも、京都に戻ると、権助は留吉におしんの浮気話を吹き込むのだった。
春になり親不知に戻った留吉は妻を詰問するが、彼女を信じることにした。やがて、おしんが妊娠していることが明らかになる。最初は自分の子供と喜んだ留吉だったが、去年の年末の妊娠と知って逆上し、おしんを殺してしまった。
おしんの遺体を抱擁する留吉。しかし、遺体にはやがて蟻がたかりはじめる。仕方なく、おしんの遺体を焼いた上で、留吉は出兵する権助を道連れに、親不知の断崖から飛び降りるのだった。
留吉の母に北林谷栄、権助の兄に殿山泰司、他にも、田中春男、東野英治郎らベテランが顔を揃える。
ストーリーは暗くて単純。同じく水上勉原作の『はなれ瞽是おりん』を容易に連想させる。
佐久間は実に美しいが、ほとんど科白はない。おしんは過去にも奉公先で強姦されており、彼女の無口は女の運命への黙従を示している。彼女が権助に犯され、結果として命が宿る時に、権助の母が死ぬ。
小沢は飄々とした人物を演じることが多いが、この作品では嫉妬に狂う善良で勤勉な夫を力演している。
昭和初期の農村の風俗が、越後の厳しい自然環境の中で再現されている。この海を越えて、横田めぐみさんは拉致されたわけです。この映画の製作年はめぐみさんや私の生年でもあります。
留吉という名は、私の祖父の名でもありました。この登場人物は、ほぼ祖父と同世代でしょう。こんな古風な名はほとんど耳にすることがなくなりましたが、それだけでも懐かしくなりました。
|