Koji Murataの映画メモ

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3月3日

 昨夜DVDで田坂具隆監督・脚本、佐久間良子主演の『五番町夕霧楼』(1963年、東映)を観た。原作は水上勉で、金閣寺炎上が素材である。水上が社会の底辺の貧困を扱った作品では、翌64年には内田吐夢監督で『飢餓海峡』も映画化されている。田坂と内田は好敵手だった。
 同じ金閣寺炎上を題材にしても、三島由紀夫原作・市川雷蔵主演の『炎上』が放火した修行僧の視点でこのテーマを扱っているのに対して、この『五番町』は修行僧の恋人だった女郎の視点に立っている。いずれも、雷蔵と佐久間の役者としての幅を拡げた作品である。佐久間は同年、『人生劇場・飛車角』でも女郎を演じている。
 主人公のお夕は肺病の母(風見章子)や妹たちのために、父(宮口精二)に売られて丹後半島から京都五番町の遊郭・夕霧楼で働きはじめる。汽車に乗るのも、この時が初めてだ。
 時代背景は昭和26−27年で、サンフランシスコ講和条約やチャタレイ裁判の新聞記事が、画面に登場する。遊郭の女将は、貫禄の小暮実千代。女将は西陣の旦那(千秋実)にお夕の水揚げを頼む。水揚げ料は2万円で、当時の大卒公務員の初任給が7000円前後だから、今にすれば30倍の60万円ぐらいか。
 好色な旦那はお夕の魅力の虜になってしまう。だが、お夕は京都の寺で修行中の幼馴染の僧侶(河原崎長一郎)と再会、修行僧は遊郭に頻繁に通う。彼は強度の吃音で悩んでおり、それを癒そうとするお夕との関係は、あくまでプラトニックだ。
 だが、嫉妬した旦那が寺に密告、二人の仲は引き裂かれてしまう。やがて、お夕は母と同じ肺病を患い、絶望した修行僧は寺に放火した上、自殺、お夕も丹後半島に一人戻って自殺する。
 女将をはじめ先輩の女郎たちがみな善人なのは、ややリアリティを欠く。その中で、やり手婆役の赤木春江と賄い婆役の岸輝子が渋い。赤木はまだ若いだろうに、老け役をうまく演じている。岸は『眠狂四郎人肌蜘蛛』(1968年)の老女楓役で印象に残っていた。この賄い婆は当然地味だが、人を見る目は最も的確。
 佐久間はすでに24歳だが、初々しい。丹後半島の百日紅(さるすべり)が美しく映像を飾る。因みに、京都五番町は千本中立売あたりで、今もポルノ映画館があって、往年の郭の雰囲気を残している。

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先生、ご無沙汰しております。 2000度生の中村です。 今は勤務中ですがあまりに暇なので、 ネットをうろうろしていたら発見しました。 ちなみに先月から警察担当をしています。 先生お勧めの刑事モノ映画を教えていただけますでしょうか? PSまた飲みに連れてってください。

2007/3/4(日) 午後 4:53 [ 中村 ]

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『五番町夕霧楼』夕子と正順の悲恋物語だと理解していたが、今回はそうではないように思えた。全体に流れているのは、故郷と家族への想いだ。貧困の中でも透明な心を失っていない夕子。かつ枝もなかなかの女将だ。『炎上』は美を追求する青年僧が主人公だ。
金閣寺、銀閣寺共に、本山は相国寺だそうですね。

2007/10/30(火) 午前 9:25 [ KIYO ]

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この映画、この前「新世界東映」で上映されてました。当時のポスターが貼られていて「成人映画」の但し書きが着いてました。ヒットしたかどうか不明なんですが、映画としては評価されたんじゃないでしょうか。岩崎加根子が今の田中美佐子によくにていて、それが印象的です。撮影は坪井誠でいい具合でした。

2007/11/14(水) 午後 10:42 [ ロイド・ジョージ ]

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