Koji Murataの映画メモ

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9月7日―その2

 今夜は自宅でDVDをもう一本。市川崑監督『億万長者』(新東宝、1954年)。製作は青年俳優クラブ。音楽は団伊伊玖磨。安倍公房も脚本に協力している。
 主人公(木村功)は小心な税務署の徴収係。月給は手取りで9006円である。受け持ちの貧乏人たちから税金を徴収しようとしても、うまくいかない。彼らは実際に貧乏で、しかも18人とか23人とかの子沢山である。中には、広島で家族を亡くし、平和のために原爆を開発しようとしている日雇い労働の娘(久我美子)もいる。
 他方、税務署長(加藤嘉)や他の同僚は、政治家(伊藤雄之助)や実業家と汚職に明け暮れている。赤坂の芸者(山田五十鈴)に唆されて、主人公は同僚たちの汚職と脱税の資料を作成する。それが偶然、検察の手にわたって、政治問題にまで発展してしまう。
 全編、痛烈なブラック・コメディである。
 「そんなことを言うと共産党員だと思われるぞ」――こんな科白が溢れている。
 子沢山の失業写真屋(信励三)一家は、最後に拾ってきたマグロを食べて、皆死んでしまう。「原爆マグロ」だったのである。そう、この映画が作成されたのは、第五福竜丸が被爆した年である。
 このラストシーンを新東宝が削除しようとしたので、市川監督はクレジットから自分の名前を削ったというエピソードまでついている。
 他に、左幸子や岡田英次、北林谷栄など。原泉が老婆役で登場する。この人も昔から老け役だ。

9月7日

 今日はフランス映画祭で、マルセル・カルネ監督『嘆きのテレーズ』(1952年)。原作はエミール・ゾラの『テレーズ・ラカン』。
 リヨンの町に住む美貌のテレーズ(シモーヌ・シニョレ)は、病弱でマザコンの夫カミイユ(ジャック・デュビー)の面倒をみながら、叔母でもある姑のラカン夫人(シルヴィー)の嫁いじめに耐える、暗い毎日を過ごしていた。そんなある日、夫が連れてきたトラックの運転手ロラン(ラフ・ヴァローネ)とテレーズは恋に落ちる。嫉妬した夫はテレーズをパリ旅行に誘うが、その夜行列車の車内で、カミイユとロランがもみ合いになり、ロランはカミイユを突き落として殺してしまう。
 テレーズとロランは、これを事故にみせかける。ショックで廃人になったラカン夫人の冷たい目がテレーズを射抜き、警察の取調べが続く。そんな折、事故当夜に列車に乗り合わせていた元水兵(ローラン・ルザッフル)がテレーズを強請りにやってくる。そして、不幸な結末がテレーズとロラン、水兵を待っていた。
 暗い生活の中で燃える秘められた恋。前半の単調な家庭生活の描写と、後半のスリリングな展開。陰気な色気を見せるシニョレが好演。シルヴィーのもの言わぬ目も怖い。
 元水兵は日本軍相手に戦争を戦ったおかげで、肝がすわったという。なにしろ戦後7年目の作品である。
 昔(おそらく中学校か高校時代)、NHK教育の世界名画劇場でこの作品を観たことを、途中で思い出した。

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