Koji Murataの映画メモ

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 3年生ゼミの前期最後の授業で、サイラス・ナウラステ監督・脚本『レーガン大統領暗殺未遂事件』(アメリカ、2001年)。原題は"The Day Reagan was shot"で、製作総指揮はオリバー・ストーン。
 1981年3月10日にレーガン大統領がジョン・ヒンクリーという若者に撃たれた事件を扱っている。ヒンクリーはジュディー・フォスターのファンで、彼女の注目を惹くために『タクシードライバー』を模倣したのである。当時は米ソ関係も緊張しており、ブッシュ副大統領が不在だったため、ヘイグ国務長官が危機管理のためにホワイトハウスで陣頭指揮をとるが、これがレーガン側近や他の閣僚との摩擦を引き起こす。
 危機管理と法的手続きのどちらが優先すべきか、大統領職権の継承を定めた憲法の修正第25条をどう解釈するか――興味深い問題提起である。そして、政権内には嫉妬と責任回避と権力欲と虚栄心が渦巻いている。
 核兵器の発射ボタンの入ったアタッシュケースの隠語が「フットボール」で、この「フットボール」がどこに行ったか、一時はわからなくなり大騒ぎになる。
 レーガンを演じたリチャード・グレンナは、見た目はそれほど似ていないが、茫洋とした大統領の雰囲気をよく醸し出していた。しかし、この作品は明らかにレーガンを過小評価していると思う。ブッシュ副大統領の描き方も不満だ。すみません、一応このテーマの専門家なものですから。
 ヘイグ役のリチャード・ドレフィスが主演である。彼はストーン監督の最新作『ブッシュ』ではチェイニー副大統領をそっくりに演じていた。この作品で描かれているほどヘイグが立派だったかどうかは、これまた大いに疑問。
 しかし、現代史をテーマにしてこうした作品を作れるアメリカは、さすがと言わざるをえない。
 因みに、レーガンが運び込まれたジョージ・ワシントン大学病院の隣に、私は数年住んでいました。

7月20日 邦画80

 今夜はビデオをもう一本。
 市川崑監督『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』(大映、1959年)。この題名は一般公募したとか。
 自動車会社に勤める青山和子(若尾文子)はキャリア・ウーマンで、大阪にいる幼馴染の許婚・半次郎(菅原謙二)との結婚に気が進まない。実は、母に先立たれ会社も辞めてしまった父親(佐分利信)のことが気になっているからだ。和子は大阪で料亭を経営する親友の梅子(京マチ子)に、半次郎への別れの伝言を託す。
 ところが、梅子が半次郎に惚れてしまった。そうなると、和子も半次郎もお互いが愛し合っていることに気づくのだが、梅子の勢いに負けて、半次郎は梅子と結婚することに。父も娘離れを決意し、和子は会社からアメリカに派遣されることになる。
 この他にも、和子の妹(野添ひとみ)はスチュワーデスで、隣家の夜間大学生(川口浩)は和子に惚れているのだが、結局その妹と結婚することに。梅子の義理の兄(船越英二)は板前で、梅子に惚れているのだが、こちらも失恋する羽目になる。
この他にも、冒頭に田宮二郎と川崎敬三が少しだけ登場する。
 若尾のメガネ姿や科白の棒読みが印象的。小津作品のようで、市川が撮るとどこか都会的でユーモラスになる。
 佐分利はいるだけで絵になる。彼の演じる父親が言う。「若者は所有欲が旺盛だ。年をとるにつれて、それを捨てなければならない。野心も仕事も金も。ところが、娘を捨てるのを忘れていた。これが一番むずかしい」。キケロの『老年について』のような、含蓄のある科白です。
 因みに、和子の渡米は当然、船旅(1950年代ですから)。「プレジデント・クリーブランド」号である。

 今夜は自宅でロベルト・ベニーニ監督・主演『ライフ・イズ・ビューティフル』(イタリア、1997年)。
 1939年といえば第二次世界大戦の勃発する年。イタリアのアレッツォにグイド(ベニーニ)という陽気なユダヤ系イタリア人がやって来る。彼の夢は本屋を開くことだが、当面は叔父のホテルで給仕をすることになる。グイドは美しい小学校教師のドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)に一目惚れ。ドーラには役人の許婚がいたが、グイドの明朗なユーモアに惹かれて、二人は結ばれる。やがて、ジョズエ(ジョルジオ・カンタリーニ)という息子にも恵まれる。
 しかし、戦争の本格化とともにユダヤ人迫害も熾烈になり、ジョズエの誕生パーティーで、一家は強制収容所に連行されてしまう。グイドは息子を怯えさせないために、嘘をつき続ける。これは旅行だ。1000点得点すれば戦車がもらえる大規模なゲームに参加しているのだ、と。
 いよいよ戦争は終わる。グイドは最後まで息子をユーモアで守り抜き、妻を捜している最中にドイツ兵に射殺されてしまう。父の約束したとおり、米軍の戦車がやって来た。ジョズエは米兵に抱きかかえられて戦車に乗り、母と再会を果たすのだった。
 ジョズエが実にかわいい。かわいすぎて、強制収用所のリアリティがない。しかし、これは家族愛の物語である。文句は言うまい。
 グイドが務めていたホテルの常連客がドイツ人の医師で、謎かけに凝っている。グイドは強制収用所で軍医となった彼と再会する。軍医はグイドに相談があるという。助けてくれるのだという淡い期待は砕かれ、軍医はグイドに謎かけの質問をするのだった。
 この軍医のお気に入りの謎かけを一つ。 
 「私の名を呼べば、直ちに私は消えさる」。さて、「私」は誰でしょう。
 答えは「沈黙」。「沈黙」と口にした瞬間に沈黙は破られるから。

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