Koji Murataの映画メモ

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10月7日 邦画128

 無事に帰国して、自宅でDVD。
 篠田正浩監督『化石の森』(東宝、1973年)。原作は石原慎太郎、音楽は武満徹。
 治夫(萩原健一)は都内の大学病院でインターンをしている。思春期に母(杉村春子)の不倫を目撃して以来、他人に心を閉ざし、母とは絶縁状態にある。だが、今やラブホテルで働く母は、息子との生活を渇望している。
 ある日、治夫は故郷で高校の同級生だった英子(二宮さよ子)に再会する。妖艶な彼女は美容院で働いており、そこのマスター(田中明夫)の愛人だった。治夫と英子は肉体関係をもつ。これにマスターが激昂し、英子に暴力を加えたことから、二人は毒薬でマスターを殺害することにする。
 他方、治夫の勤務する病院では、少年が脳の手術を受けて聴力を失う。執刀医の教授(浜田寅彦)は患者の母・菊枝に十分な説明を与えていない。治夫だけが菊枝親子の頼りである。だが、菊枝のアル中の夫(日下武史)は治夫と菊枝の関係を邪推し、妻子に暴力をふるう。二人を庇い、治夫は菊枝と肉体関係をもってしまう。それを目撃した少年は、ほどなく視力さえ失う。
 治夫と菊枝の関係に嫉妬した英子は、菊枝にマスター殺しの一件を告げる。治夫の母は英子と親しくなっており、息子を守るために、件の毒薬で英子を殺す。泥沼に陥った治夫は、母を殺害しようとするが、果たせない。
みなが感情を押し殺して化石のように生きているというのが、タイトル「化石の森」の意味。
 他に、治夫の姉の役で、岩下志麻(篠田監夫人)が特別出演。菊枝は息子の治療のために、怪しげな新興宗教に頼るのだが、元医者でそこの僧侶という役に、怪優・岸田森。この人も早くに亡くなってしまいました。82年に43歳で亡くなっています。岸田今日子の従兄弟で、樹木希林の元の夫でした。
 杉村演じる母が英子に言う科白。「男と女は寝るだけじゃダメよ。女にとって、男は社会なの。女は男という窓を通じて社会を知っていくのよ」。
 この母を憎み軽蔑する主人公が、結局は菊枝と不倫関係に陥ってしまうのです。母の不倫と治夫と菊枝との不倫、男の暴力に苦しむ英子と菊枝と、二重のパラレル関係にあります。
 1970年代の懐かしい雰囲気は伝わってきますが、複雑な人間関係と心理描写に振り回されて、ドラマティックでなくなっているような気がします。
 田中明夫というのも、懐かしい悪役・脇役でした。

10月5日 外国映画86

 モスクワから成田に向かう機内で一本。
 スティーヴン・ダルドリー監督『リトル・ダンサー』(2000年、イギリス)。原題は"Billy Eliot".
 1984年。ストライキに揺れるイギリスの炭鉱町。
 ビリー・エリオット少年(ジェイミー・ベル)は母を亡くし、炭鉱夫の父(ゲイリー・ルイス)と兄(ジェイミー・ドラヴェン)、それに年老いた祖母と暮らしていた。父の指図でボクシングを習っているものの、馴染めない。ある日、ウィルキンソン夫人(ジェリー・ウォルターズ)が少女たちにバレーを教えているのを見かけて、バレーに惹かれていく。いつしか、ビリーは少女たちに交じってバレーを習いだした。ウィルキンソン夫人は少年に才能を見出し、熱心に指導する。
 しかし、これが父の知るところとなった。「男がバレーを習うなど」と、父は絶対に反対である。兄もそうだ。だが、クリスマスの夜、ビリーがバレーを踊る姿を目撃して、父も息子の才能に気づく。ビリーをロンドンのバレー学校に進学させるため、父はスト破りに加わろうとさえする。父は兄に止められ、仲間たちが金を集めてくれる。
 数年後、成長し成功したビリー(アダム・クーパー)の舞台に、父や兄、友人たちが集うのだった。
 直向(ひたむき)なビリー少年の姿が、愛おしい。
 サッチャー時代のイギリスが舞台になっています。父や兄がバレーに反対するのは、男らしくないということに加えて、バレーが中産階級の趣味だというクラス(階級)意識の問題があります。イギリスらしいですね。
 成長したビリーを演じたアダム・クーパーは、実際著名なバレー・ダンサーです。
 低予算で製作して大ヒットした作品だとか。
 ヘンリー・フォンダ主演の往年の名作『スペンサーの山』を思い出しました。大学進学を希望する息子に、樵の父親(フォンダ)は当初反対するが、やがて、山を売ってまで息子を進学させるという話です。「樵の息子が大学で勉強しようとするのを、神様がそれはいけないと仰るはずはない」と、父は言います。ラストシーンで、故郷から大学のある都会に向かう息子が、バスの中で老婦人に「どこまでいくの?」と聴かれ、「未来です」と答える。そう、教育は未来と希望につながっているはずのものなのです。
 

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