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無事に帰国して、自宅でDVD。
篠田正浩監督『化石の森』(東宝、1973年)。原作は石原慎太郎、音楽は武満徹。
治夫(萩原健一)は都内の大学病院でインターンをしている。思春期に母(杉村春子)の不倫を目撃して以来、他人に心を閉ざし、母とは絶縁状態にある。だが、今やラブホテルで働く母は、息子との生活を渇望している。
ある日、治夫は故郷で高校の同級生だった英子(二宮さよ子)に再会する。妖艶な彼女は美容院で働いており、そこのマスター(田中明夫)の愛人だった。治夫と英子は肉体関係をもつ。これにマスターが激昂し、英子に暴力を加えたことから、二人は毒薬でマスターを殺害することにする。
他方、治夫の勤務する病院では、少年が脳の手術を受けて聴力を失う。執刀医の教授(浜田寅彦)は患者の母・菊枝に十分な説明を与えていない。治夫だけが菊枝親子の頼りである。だが、菊枝のアル中の夫(日下武史)は治夫と菊枝の関係を邪推し、妻子に暴力をふるう。二人を庇い、治夫は菊枝と肉体関係をもってしまう。それを目撃した少年は、ほどなく視力さえ失う。
治夫と菊枝の関係に嫉妬した英子は、菊枝にマスター殺しの一件を告げる。治夫の母は英子と親しくなっており、息子を守るために、件の毒薬で英子を殺す。泥沼に陥った治夫は、母を殺害しようとするが、果たせない。
みなが感情を押し殺して化石のように生きているというのが、タイトル「化石の森」の意味。
他に、治夫の姉の役で、岩下志麻(篠田監夫人)が特別出演。菊枝は息子の治療のために、怪しげな新興宗教に頼るのだが、元医者でそこの僧侶という役に、怪優・岸田森。この人も早くに亡くなってしまいました。82年に43歳で亡くなっています。岸田今日子の従兄弟で、樹木希林の元の夫でした。
杉村演じる母が英子に言う科白。「男と女は寝るだけじゃダメよ。女にとって、男は社会なの。女は男という窓を通じて社会を知っていくのよ」。
この母を憎み軽蔑する主人公が、結局は菊枝と不倫関係に陥ってしまうのです。母の不倫と治夫と菊枝との不倫、男の暴力に苦しむ英子と菊枝と、二重のパラレル関係にあります。
1970年代の懐かしい雰囲気は伝わってきますが、複雑な人間関係と心理描写に振り回されて、ドラマティックでなくなっているような気がします。
田中明夫というのも、懐かしい悪役・脇役でした。
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