Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2008年

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6月25日

 今日は谷口千吉監督『暁の脱走』(新東宝、1950年)。脚本は谷口と黒澤明。
 昭和20年の中国戦線。
 従軍慰問団(慰安婦ではない)の歌手・春美(山口淑子)は、滞在中の部隊の副官・成田中尉(小沢栄)に執拗に迫られる。だが、彼女の心は、副官付の伝令・三上上等兵(池部良)にある。やがて、三上と春美は戦闘中に中国軍に捕らえられる。中国軍は彼らを釈放するが、日本の部隊では捕虜になった三上は取調べを受けた上、投獄されてしまう。日本軍のあまりの仕打ちに、三上と春美は暁の脱走を敢行するが、成田中尉によって銃殺されてしまう。
 「こんな軍隊には間違っても入りたくない、と思わせるほど、日本軍の非合理、無慈悲、野蛮が描かれた。以降日本の戦争映画は反戦というより反軍の色合いが強い」とは、映画の生き字引・双葉十三郎の言。
 見ていて楽しい作品ではないし、ストーリー展開は緩慢である。しかも、まだ占領下ということもあって、中国軍はすこぶる美化されている。
 だが、山口淑子の歌声と中国語が聞けたのは、大いに収穫。先日、原節子が米寿を迎えたが、山口も今年で米寿です。相手役の池部に至っては90歳。半世紀以上昔の作品で、主役が二人とも存命とは珍しい。
将校役の小沢は、例によって実に憎々しい。この人、日本の反軍感情に相当貢献してきただろう。池部の上等兵は小沢演じる将校の足まで拭かされている。当然なのか?
 他に、『青い山脈』の伊豆肇や若山セツ子ら。若山はのちに谷口監督と結婚するが、やがて離婚、確か自殺したのではなかったか。その後、谷口は八千草薫と再婚する。

6月23日

 午前中に東宝公楽で三谷幸喜監督・脚本『ザ・マジック・アワー』(東宝、2008年)に。
 街のボス(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)と関係をもってしまった備後(妻夫木聡)は、伝説の殺し屋「デラ富樫」を連れてくることと引換えに一命を救われる。だが、もちろん、そんな当てはない。そこで、備後は売れないアクション俳優の村田(佐藤浩市)を映画の撮影とだまして、殺し屋に仕立て上げる。
 「マジック・ミラー」とは、「太陽が消えてから、周囲が暗くなるまでのほんの僅かな時間」で、映画撮影に最適の時間帯との由。カズオ・イスグロの言う「日の名残り」であろう。
 劇中劇「黒い101人の女」の撮影シーンでは、「黒い10人の女」の市川崑監督が監督役で登場しており、本作は市川監督に捧げられている。他に、市川亀治郎や中井貴一、唐沢寿明も顔を出している。村田のマネージャー役の小日向文世も、いい味を出している。『それでも僕はやってない』で裁判官を演じた役者だ。
 大いに楽しめる軽快で上質のなコメディである。リハーサルでも料理を食べてしまうことを「ああ黒澤方式ね」と言う科白もあり、映画好きにはたまらない。
 往年のB級スターで村田の憧れの的・高瀬允は、今やしがないエキストラになっているが、それでもまだ「マジック・アワー」を待っている。これを演じるのが柳沢慎一。実に懐かしい。最初は気づきませんでした。
 佐藤浩市は、ますます父親(三國連太郎)に似てきた気がする。
 未見の方、お奨めです。

3月12日

 まず、昨夜は川島雄三監督の『愛のお荷物』(日活、1955年)。川島作品は、ちょっとしたマイ・ブームです。
 「産めよ、増えよ」(創世記1章)。
 時の日本の人口は8912万人、あと15年で1億を超えるという事態にある。
 事態を憂慮する厚生大臣の新木(山村聡)は、受胎調整法の成立に精力を注いでいる。ところが、その新木の妻(轟夕起子)が40代半ばにして妊娠してしまった。しかも、長男(三橋達也)は大臣秘書(北原三枝)と婚前交渉をもち、やはり、この秘書が妊娠している。皮肉なことに、大臣の長女夫婦は、結婚6年目にして子宝を授かれない。しかも、夫は産婦人科医である。次女は京都の旧華族の息子(フランキー堺)と婚約しているが、こちらも妊娠している。
 やがて、大臣が学生時代に関係をもった京都の元芸妓(山田五十鈴)との間に子供ができており、成長して新聞記者(三橋の二役)になっていることも、発覚する。
 だが、内閣改造で新木は防衛庁長官に横滑り、妊娠問題から解放される。長女もようやく懐妊、荒木家の番頭(殿山泰司)まで女中と「できちゃった結婚」で、新木家の人口は倍増する。
 他に、新木家の祖父の元蔵相に東野英治郎。東野は当時48歳だが、82歳の老け役を演じている。孫が「おじいちゃん、俳優の東野英治郎にそっくり」とからかう科白がある。
 厚生大臣は「赤線」地帯を視察するが、売春宿の組合長は「ネセサリー・イーブル」(必要悪)を繰り返す。中絶も「ネセサリー・イーブル」らしい。売春防止法が成立するのは翌56年(施行は58年)。
 人工中絶が政治問題化したのは、アメリカだけではなかったらしい。
 それにしても、人口増大が危惧されるとは、半世紀後の少子高齢化社会とは大違いである。
 新木の防衛庁長官就任で、ちゃっかり再軍備批判も入っている。
 やや粗雑だが、テンポの速いコメディーである。
 もちろん、タイトルは胎児=「愛のお荷物」という意味。
 因みに、合法売春の「赤線」に対して非合法地帯は「青線」、そして素人売春が多かった地帯は「白線」(パイセンと読む)、他にも男娼地帯を「茶線」、本番ショーやSM、スカトロ・ショーなどの地帯を「紫線」と呼んだらしい。性事は奥が深いですね。

 さて、今夜は今村昌平監督・脚本『黒い雨』(今村プロ、林原グループ、1989年)。こちらは重い。
 原作は井伏鱒二、音楽は武満徹、撮影は川又昂。
 昭和20年8月6日―広島が原爆で阿鼻叫喚となる。
 20歳の矢須子(田中好子)は「黒い雨」に遭遇する。彼女の叔父夫婦(北村和夫と市原悦子)は市内で一次被爆している。
 それから5年後、彼らは田舎の地所でなんとか暮らしている。だが、いつ「ピカ」が発病するかもしれない。
 実際、同じ村で被爆者たち(小林昭二、小沢昭一、三木のり平)が次々に死んでいく。
 やがては、叔母も。
 叔父夫婦は矢須子の結婚を望んでいたが、彼女が被爆者だという理由でなかなか結婚は決まらない。一次被爆ではなく、「黒い雨」にあたっただけなのにと、叔父夫婦は憤っていた。
 その矢須子も髪の毛が抜け、幻想を見るようになる。叔父の願う奇跡は起こらない。
 他に、医者の役で大滝秀治、住職役に殿山泰司(ごく晩年の作品になる)、祖母役に原ひさ子。小柄な老女役がよく似合う女優である。
 全編白黒だが、被爆直後のシーンなど、おそらくカラーでは衝撃が強すぎよう。
 田中が健康的で色っぽいだけに一層、矢須子の発病が痛ましく、切ない。
 「どうせ日本は負けるのに、なんでアメリカは原爆を落としたんだろう」
 「なんで東京ではなく広島だったのだろう」
 小沢昭一演じる被爆者が、死の床で問う。
 「正義なき平和のほうが、正義の戦争よりましだ」とは、叔父役の北村の科白である。最近も、ある政治学者がそんなことを言っいたが、この作中の科白のほうがはるかに重い。
 体のためにと、アロエをかじったり、鯉の養殖をやったりと、被爆者たちの必死の努力が、なんとも哀しい。
 私は以前広島に5年住んでいて、広島弁には馴染みがあるが、出演者の皆さんの広島弁は、みな大したものです。

2月19日

 今日は気楽に山下耕作監督・舟木一夫主演の『一心太助 江戸っ子祭り』(東映、1967年)。原作と脚本は中島貞夫。
 ご存知一心太助(舟木)と「天下のご意見番」大久保彦左衛門(加東大介)の物語。大久保家の中元が太助の恋人(藤純子)である。
 魚河岸の乗っ取りを企む相模屋(遠藤太津朗)と勘定奉行(小池朝雄)に、太助と彦左衛門が対決するが、彦左衛門は病死してしまう。一時は挫折しそうになる太助だが、魚河岸の仲間や父を勘定奉行に殺された浪人者(里見浩太郎)らの協力をえて、勘定奉行の別邸に殴りこみ、老中・松平伊豆守(品川隆二)の采配で、奉行らはお縄になる。太助は恋人とめでたく結ばれ、将軍家光(舟木の二役)からも褒美をもらう。
 他愛のない勧善懲悪のハッピーエンドである。
 他に、花紀京や笑福亭松乃助、それに財津一郎ら。財津の「非常に」「きびしい」というギャグが懐かしい。
 彦左衛門はかなりの老人のようで、ようやく還暦とか。
 「この彦左をなんと思し召す。そもそも天正3年鳶巣文殊山(とびのすもんじゅやま)の戦いに16歳で初陣し、敵の大将和田兵部のクビを討ち取り、一番乗り一番槍の功名、さてその若武者のいでたちは」と自慢する。
 他方の太助は「二本挿しが怖くて田楽が食えるか」である。
 舟木の全盛時代でしょうか。しかし、舟木の太助より錦之助の太助のほうが、活き活きしていてよい。 

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