Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2008年

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9月22日

 今夜は自宅で三谷幸喜脚本と監督『ザ有頂天ホテル』(東宝、2006年)。
 大晦日のカウントダウン2時間前のホテル・アバンティーの混乱を描いたグランド・ホテル形式の喜劇。
 有能な副支配人の新堂(役所広司)とアシスタント・マネージャーの矢部(戸田恵子)は大忙し。
 そこに、マスコミを逃れる汚職議員(佐藤浩市)、自殺願望のある大物演歌歌手(西田敏行)、鹿の交配の研究で「ザ・マン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた男(角野卓造)、金持ちの老人(津川雅之)とその若い愛人、売春婦(篠原涼子)、腹話術師(榎木兵衛)の逃げたアヒル、迷子になった総支配人(伊東四朗)――などなどが交錯する。
 さらに、汚職議員の元愛人(松たか子)は今やホテルの従業員で、金持ちの老人の愛人と誤解されており、「ザ・マン・オブ・ザ・イヤー」の男は売春婦と関係があり、その妻(原田美枝子)は新堂の別れた妻――と話は複雑に展開していく。
 だが、最後にはそれぞれが、自分に素直に生きることの必要に気づいて、ハッピーニューイヤー、ハッピーエンドとなる。
 他に、香取慎吾、唐沢俊之、YOUなど。
 ホテルの部屋に『グランドホテル』に因んで、「ガルボ」や「バリモア」、「ライオネル」などの名前がついているのは、ご愛嬌。
 腹話術師を演じた榎木、懐かしいポルノ男優であり、チンピラ役を得意としたC級男優です。
 三谷監督は、みごとな職人ですね。伊丹映画も髣髴とさせます。
 

9月21日

 今夜は自宅でビデオ(DVDにあらず)。木下恵介監督・脚本『香華』(松竹、1964年)。原作は有吉佐和子。
 日露戦争の頃の和歌山。郁代(乙羽信子)は夫に先立たれて20歳で後家になる。生まれたばかりの女の子・朋子もいる。彼女は子持ちの地主の息子(北村和夫)と再婚しようとするが、郁代の旧式な母(田中絹代)は反対。それでも、郁代は母と娘の朋子を捨てて再婚、その上、夫とともに東京に出奔してしまう。
 やがて、和歌山で母は死ぬが、東京での郁代たちの暮らしも苦しい。そこで、郁代は和歌山にいる娘の朋子を東京に連れ出し、静岡の遊郭に半玉として売り飛ばしてしまう。だが、因果応報、数年後に郁代も夫に捨てられ、その遊郭に女郎として売り飛ばされてくる。母子の再会である。
 朋子は遊郭の女将(市川翠扇)に厳しく芸を仕込まれ、17歳で芸者となる(岡田茉莉子)。一方、郁代は父親のわからぬ子を妊娠して、女郎としては落ち目、屋根裏部屋でお茶を引く毎日である。朋子はさらに赤坂に転じ、ここで神波伯爵(宇佐美淳也)や実業家の野沢(岡田英次)に愛され、のちには伯爵の妾になる。この伯爵の援助で朋子は店をもち、母を引き取る。だがその頃、朋子は若い陸軍軍人の江崎(加藤剛)と出あって恋に落ちる。しかも、関東大震災で朋子の店は全壊する。
 ここまでが、第一部「吾亦紅の巻」である。
 続いて第二部「三椏の巻」。
 震災後、朋子は伯爵の援助で旅館を営み、成功している。夢は江崎との結婚である。大正天皇崩御のまさにその日、大恩ある伯爵もついに死去、朋子は自由の身となるが、愛する江崎からも別れを告げられる。朋子の母が元女郎だったからだ。ところが、当の母親・郁代は昔生家の下男だった年下の八らん(三木のり平)と再会、結婚すると言い出す。「お母さんが何度も結婚して、私はお母さんのために一度も結婚できないのよ」――傷心の朋子に野沢は優しく接した。二人は旅に出る。だが、時局は戦争に。
 敗戦。すでに8年前に野沢も死去した。朋子は旅館を空襲で失い、母と防空壕暮らしである。だが、この母は大坂に住む夫の八らんのところに戻ったり、東京の娘のところに戻ったり、気ままな生活を繰り返す。そんなある日、朋子は江崎大佐が戦犯として死刑になることを知り、必死の思いで無言の対面を果たす。
 朋子の努力で旅館が再開、軌道に乗り出した。朋子は父や祖母、伯爵、野沢、江崎の位牌を作って仏壇で供養しようと決意した。その直後に、彼女は病に倒れる。ようやく病院で意識を取り戻してみると、母の郁代は交通事故で亡くなっていた。あまりにあっけない母との別れである。
 昭和39年、すでに60をすぎた朋子は郷里・和歌山を訪ね、和歌の浦の波を見つめながら、波乱万丈の人生に想いを馳せるのだった。
 他に、杉村春子や柳栄二郎、菅原文太ら。
 静岡の遊郭の女将を演じた翠扇は大迫力。当代団十郎の叔母に当たり、新派の大女優とか。
 3時間を越える長編です。
 作中、岡田と乙羽が50年近く老けていく、その変貌ぶりが見ものである。とことん身勝手な母、それでも娘は母を見捨てられない。
 「吾亦紅」の花は片思い、「三椏」の花は再会を意味する由。
 日露戦争から東京オリンピックの年までの、日本近現代史でもある。同じ有吉原作の『紀ノ川』と似た話だが、本作のほうが濃厚かつドラマティックである。
 朋子が和歌の浦の波を見つめていた、この年に、神戸で私が出生となります。
 朋子は私の祖母と同世代の日本女性ということになります。

 

9月20日

 今夜は自宅でDVD。今村昌平監督『「エロ事師たち」より 人類学入門』(日活、1966年)。原作は野坂昭如。
 スブやんこと緒方(小沢昭一)は、幼少期に住職だった父(菅井一郎)が後妻(園佳也子)をもらい、継母に当たるその後妻から性的な悪戯を受けた原体験をもっている。今では、スブやんはエロ映画、エロ写真、エロ盗聴と、エロ・ビジネスをきわめるエロ事師である。しかも、彼はそれを人助けだとも信じている。
 スブやんは散髪屋の年上の後家・春(坂本スミ子)と同棲しており、春の長男の予備校生(近藤正臣)と長女で中学生の恵子(佐川啓子)の面倒を見ている。だが、長男はグウタラな上マザコンで身勝手である。恵子は不良仲間と付き合っている。
 やがて、春が入院、この間、スブやんは警察にパクられたりヤクザに脅されたり。ついには、恵子と関係をもってしまう。春はそれを知って、発狂、病死する。スブやんも「カラカラ」(インポ)になってしまう。おまけに、彼はエロ事師の仲間(田中春男)にも裏切られてしまう。
 数年後、恵子は母の残した散髪屋を美容院にして成功しており、長男は大学生に。スブやんは独り、浮き舟生活を送り、ダッチワイフの開発に勤しんでいる。男と女を性から解放するためである。ダッチワイフに植毛しながら「男と女と針仕事」と口ずさむスブやん。かれを乗せた浮き船はいつしか、大阪湾に漂流してしまうのだった。
 他に、中村鴈治郎やミヤコ蝶々も。ミヤコは処女斡旋の売春宿の女将。彼女が言う。「処女が高いのやおまへんで。高いから処女ですのや」。なるほど。
 ラストシーンは井原西鶴の「好色一代男」のパロディだとか。
 また、映画評論家の佐藤忠男によると、スブやんの生き方は「色即是空空即是色」なのだとか。
 小沢も坂本もともに力演。近藤正臣は初々しい(この時24歳)。脇役の田中春男も、例によってとぼけた味を出している。

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9月17日

 今朝、無事に帰国しました。
 午後に早速、祇園会館で松岡錠司監督『歓喜の歌』(シネカノン、2008年)を観る。原作は落語家の立川志の輔で、本人や師匠の談志、そしてリリー・フランキーまで登場する(松岡監督は『東京タワー』を映画化している)。
 東京郊外の小都市の年末。市立みたま文化会館の主任(小林薫)は無気力な公務員の典型。ロシア人キャバクラ嬢に逆上せて、左遷された男だ。今でもその時の借金を抱えており、妻(浅田美代子)には別居されている。
 さて、この会館で大事件が発生する。大晦日にみたまレディース・コーラスとみたま町コーラス・ガールズのコンサートをダブル・ブッキングしてしまったのだ。レディースは創立20周年でハイソな有閑夫人が中心。他方、ガールズは初のコンサートで、パートの主婦らが中心の集まり。前者の代表(由利さおり)は当初一歩も譲歩しないが、後者の代表(安田成美)の熱心な提案で、ついに合同コンサートを開くことになる。これに主任ら会館の職員も全面協力、大晦日の「歓喜の歌」が様々な家庭のトラブルや人間関係を癒していく。大事なのは、まさに“御霊”(みたま)なのである。
 他に、藤田弓子、笹野高史や筒井道隆らも登場する。
 作中、市長の飼っているらんちゅう(金魚の一種、蘭鋳と書く由)が、重要な役割を果たす。
 図式的で予定調和的な話だが(もとが落語ですから)、充分に楽しめる。
 小林は少し臭いが、情けない中年の公務員を好演、元アイドルの浅田の変貌には驚き。
 登場人物の暮らし向きや住まいの様子など、たいへんリアリティーがあると思う。
 ただし、一介の主任が文化会館を大晦日に改造するという筋書きは、リアリティなさすぎである(でも、落語だから―念のため一言すると、私は落語ファンです)。

9月15日

 皆さん、お久しぶりです。
 今ブリュッセルで明日帰国の予定です
 ずいぶんおそくなりましたが、往きの飛行機で観た作品の感想を。
 スティーブン・スピルバーグ監督『インディージョーンズ クリスタル・スカルの王国』(アメリカ、2008年)。
 前作から19年ぶりで、時代設定はアメリカで反共主義が吹き荒れる1957年。その煽りで主人公のジョーンズ教授(もちろん、ハリソン・フォード)は大学を休職になってしまう。
 冒頭のネバダ州の砂漠の核実験場からペルーの秘境まで、謎のクリスタル・スカルをめぐって大冒険が続く。このクリスタル・スカルはソ連KGBの女性将校スバルコ(ケイト・ブランジェット)も追っている。この大冒険にジョーンズの最初の妻マリオン(カレン・アレン)が登場し、マット(シャイア・ラブーフ)という元気のいい若者が、実はマリオンとジョーンズの間に生まれた息子だということも判明する。
 ラストはスピルバーグの『未知との遭遇』を想起させる。
 マットは『波止場』のマーロン・ブランドそっくりの格好で登場する。シャイア・ラブーフという俳優さん、アラブ系の名前だろうか。
 カレン・アレンは、シリーズ第一作以来27年ぶりの登場とか。
 ネバダの核実験場で、ジョーンズは冷蔵庫に閉じこもって被曝を避ける。アドベンチャー映画にこんなことを言っても仕方がないが、いくらなんでも無理やりな話だ。第五福竜丸は、核実験場の近くを通りかかっただけで被爆しているんですから。ジョン・ウェインも映画の撮影現場が核実験場近くだったため、のちに癌で亡くなっている(という話―広瀬隆氏『誰がジョン・ウェインを殺したのか』による)。
 因みに、ハリソン・フォードと私は誕生日が同じ(7月13日)。
 冒険映画のお約束が山盛りで、十分楽しめはするが、目新しさはなくなった感じです。


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