Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2008年

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9月10日

 明日ヨーロッパに発つのですが、今晩は自宅で小津安二郎監督『宗方姉妹』(東宝、1950年)。脚本は小津と野田高梧、原作は大仏次郎。
 宗方家の姉妹は好対照で、姉の節子(田中絹代)は昔気質、失業した夫の三村(山村聡)を支えて小さなバーを経営している。妹の麻理子(高峰秀子)は自由奔放な性格だ。二人の父(笠智衆)は京都で独り暮らし、癌で静かに死期を迎えようとしている。
 節子は昔の恋人・田代(上原謙)に心惹かれており、田代も節子を愛している。失業中の三村は二人の仲を怪しみ、妻に暴力さえふるう。麻理子も義兄を嫌っており、姉と田代が結ばれることを願っている。
 ようやく節子が三村との離婚を決意した直後、三村は心臓麻痺で死ぬ。心に暗い影を抱いた節子は、田代に別れを告げるのだった。
 妹が姉の古い価値観を詰ると、姉は言う。「本当に新しいものは、古くならないものよ」。父が独り京都に住んでおり、姉妹や田代もしばしば古都を訪ねるが、これらも温故知新のモチーフにつながっていよう。
 逆に、妹の麻理子は父と縁側で鶯を見ていて、「あ!うんこした!」と言う。何かあると舌を出す。でも、さすがは高峰秀子で、品はあるんです。
 山村演じる夫が自暴自棄になっていき、田中演じる妻にビンタをくわせるシーンは迫力。
 実生活では、上原謙のほうが息子の加山雄三に体罰を加えていたそうです。
 それにしても、笠と田中は五歳違いで親子の役とは。

9月9日

 内出好吉監督『鳴門秘帖』完結編(東映、1961年)を自宅で。原作は吉川英治。
 幕府の隠密・甲賀世阿弥が阿波の国で消息を絶って、すでに2年。その娘・千絵(大川恵子)までが、世阿弥の弟子だった旅川周馬(岡田英次)に誘拐監禁されている。千絵の恋人・法月弦之丞(鶴田浩二)は旅から江戸に戻り、千絵を助け出し、さらに、千絵とともに陰謀渦巻く阿波の国に世阿弥を捜しに出かけるが、世阿弥の認めた「鳴門秘帖」の奪い合いが展開される。
 弦之丞に恋し、彼と千絵を助ける女すりのお綱に木暮実千代、お綱に惚れて弦之丞との勝負を望む謎の頭巾の剣客・孫兵衛に近衛十四郎。他にも、薄田研二、伊沢一郎、徳大寺伸、天草四郎ら、時代劇の名脇役たちが多数登場。
 鶴田と近衛の立ち回りは見も物だが、時代劇のお約束どおりの展開が多すぎる上、登場人物も無暗に多くて筋が煩瑣である。おそらく、浩瀚な原作を無理やり一本に収めたからだろう。
 一応、隠密の非人間性がテーマのようですが。
 名優・薄田の台詞回しも、舌がもつれがち。この人の本名、高山徳右衛門というそうです。こちらのほうが、よっぽど時代劇向きですね。
 昔はこういう時代劇が娯楽として量産されていたのですね。
 明後日から1週間ほどヨーロッパです。仕事ですよ、念のため。

9月8日

 今日は大坂・九条のシネ・ヌーヴォで市川崑監督『映画女優』(東宝、1987年)を観賞。原作は新藤兼人。田中絹代の半生記である。
 田中絹代(吉永小百合)は監督・清水宏(渡辺徹)に見出されて、松竹・蒲田撮影所に大部屋女優として採用される。苦労続きの母(森光子)も大喜びである。五所平之助監督(中井貴一)に主演に抜擢され、成功の道を歩む。だが、私生活では、清水との結婚・破局が。
 やがて、大女優に成長した絹代は、京都の撮影所で溝内監督(菅原文太)と運命の出会いを。
 他に、蒲田撮影所長の城戸四郎に石坂浩二、絹代の付き人に平田満ら。
 田中絹代の代表作『マダムと女房』や『伊豆の踊り子』『愛染かつら』『西鶴一代女』が、吉永版で再現されている。『愛染かつら』では上原謙が吉永の相手役を務めるご愛嬌。高田浩吉も登場する。
 この他にも、日本映画史上の名画や海外の珠玉の作品が紹介されており、映画史の勉強にはうってつけである。
 この作品では、絹代と溝内(つまり、溝口健二)が結ばれたことを示唆するシーンがあるが、果たして真相は?
 『西鶴一代女』のラストシーンを再現したラストは、衝撃的である。なにしろ、吉永が落ちぶれた遊女を演じ、化け猫の真似をして、「ニャー」で終わるのだから。
 また、夫の清水監督に殴られて、絹代が部屋の中で放尿して復讐するシーンがあるが、これは実話だろうか。
 前にも書きましたが、昨年は絹代の没後30年、来年は生誕100年に当たります。

9月7日―その2

 今夜は自宅でDVDをもう一本。市川崑監督『億万長者』(新東宝、1954年)。製作は青年俳優クラブ。音楽は団伊伊玖磨。安倍公房も脚本に協力している。
 主人公(木村功)は小心な税務署の徴収係。月給は手取りで9006円である。受け持ちの貧乏人たちから税金を徴収しようとしても、うまくいかない。彼らは実際に貧乏で、しかも18人とか23人とかの子沢山である。中には、広島で家族を亡くし、平和のために原爆を開発しようとしている日雇い労働の娘(久我美子)もいる。
 他方、税務署長(加藤嘉)や他の同僚は、政治家(伊藤雄之助)や実業家と汚職に明け暮れている。赤坂の芸者(山田五十鈴)に唆されて、主人公は同僚たちの汚職と脱税の資料を作成する。それが偶然、検察の手にわたって、政治問題にまで発展してしまう。
 全編、痛烈なブラック・コメディである。
 「そんなことを言うと共産党員だと思われるぞ」――こんな科白が溢れている。
 子沢山の失業写真屋(信励三)一家は、最後に拾ってきたマグロを食べて、皆死んでしまう。「原爆マグロ」だったのである。そう、この映画が作成されたのは、第五福竜丸が被爆した年である。
 このラストシーンを新東宝が削除しようとしたので、市川監督はクレジットから自分の名前を削ったというエピソードまでついている。
 他に、左幸子や岡田英次、北林谷栄など。原泉が老婆役で登場する。この人も昔から老け役だ。

9月6日

 本日は日中に京都文化博物館で、稲垣浩監督『出世太閤記』(1938年、日活)を観賞。
 猿とあだ名された木下藤吉郎(嵐寛寿郎)が、蜂須賀小六(東明二郎)に拾われ、やがては織田信長(月形龍之介)の家臣となって、桶狭間の戦い、清洲城修復、そして墨俣城構築と、手柄を重ねていく、お馴染みの物語。撮影は宮川一夫。
 藤吉郎の弟・小一に原健作(むちゃくちゃ若い!)、ねねの父・藤井又右衛門に志村喬、前田犬千代(のちの利家)に尾上菊太郎など。
しかし、志村は「アラカン」より2歳若いから、義理とはいえ父親役とは、昔から老け役の多い役者なんですね。
 時節がらか、忠君と孝行が前面に押し出された作品。
 また、立身出世が素朴に説かれている。
 「アラカン」はさすがの貫禄。それにしても顔が大きいですね、この人をはじめ、昔の時代劇スターは。
 だが、藤吉郎と犬千代がアップで握手するラストシーンで、時代考証はどうなているのかと首をひねってしまう。
 ちなみに、蜂須賀小六役の東明二郎という老人は、稲垣監督の実父とか。


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