Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

外国映画 2008年

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12月27日

 上京前に自宅でオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督『ヒトラー最期の12日間』(ドイツ、イタリア、2004年)を観賞。ドイツ現代史家のヨアヒム・フェストの著作に基づいており、リアリティがある。2時間半を感じさせない大作。ドイツ人による本格的ヒトラー映画である。
 ベルリン陥落直前、稀代の独裁者ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)も追い詰められて神経を病み、孤独感に苛まれている。背中に回した彼の左手は痙攣し、将軍たちを前にすでに存在しない部隊の移動や反撃を命じている。そんな総統とその周辺の様子が、主として若い秘書ユンゲ(アレクサンドラ・マリア・ララ)の目を通じて描かれている。
 あくまで総統の威信に幻惑され続けている者、追従する者、裏切る者と様々である。総じて、男たちよりエヴァ・ブラウン(ヒトラーの愛人、のちに妻)はじめ女たちのほうが気丈である。だが、総統の防空壕の外では、子供たちが武器をとり、親衛隊は市民を見殺しにし、時には殺戮する。ヒトラーやゲッペルスによれば、それは「彼らが自ら選んだ運命だ」。
 狂気の独裁者ですら最期は哀れを感じさせるが、ゲッペルス夫人が多くの子供たちを殺すシーンは鬼気迫る。国際政治学者のジョセフ・ナイによると、これこそがヒトラーのソフトパワーだそうです。
 映画の最後に、晩年のユンゲが登場して証言している。彼女以外にも、ヒトラーの最期に同伴した者のかなりが、最近まで生存しており、うち一人は映画製作段階で存命だったと知り、驚いた。
 主演のガンツはじめ力演で、迫力と重みのある歴史映画になっている。

12月19日

 今夜は東京のホテルでジュリアン・シュナーベル監督『潜水服は蝶の夢を見る』(2007年、フランス・アメリカ)。カンヌ映画祭監督賞など数々の賞に輝いた作品で、以前テレビでご一緒したピーコさんから勧められたが、見逃していた作品です。
 フランスの人気女性ファッション雑誌ELLEの編集長ジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)はある日突然、脳梗塞で倒れ、左目以外は全身が麻痺してしまう。「ロックトイン・シンドローム」(閉じ込められ症候群)である。体は潜水服を着ているような状態だ。だが、左目以外にも自由なものが二つだけある。想像力と記憶である。この二つは蝶のように飛び跳ねる。
 やがて、言語療養士や出版社の女性編集者の協力で、ボビーは瞬きで文字を伝えて、なんと自伝を出版する。瞬きの回数は20万回にも達した。本の出版から10日後に、ボビーは世を去る。
 これは実話だそうです。
 主として主人公の左目を通じて風景が描かれ、そこに主人公の過去の記憶や空想が交差する。
 主人公の父親役にドイツの名優マックス・フォン・シドー(スウェーデン出身ですね、tuneaki999さん、ご指摘ありがとうございます)。久しぶりに見たが、立派にフランス語の台詞を話していました。
 「僕の人生は失敗の連続だった気がする。愛せなかった女たち、つかめなかったチャンス」と主人公は回想するが、誰もが何度もこんな思いをしていますね。
 詩のように美しく切なく、しかし、心温まる秀作です。
 言葉は強し。

12月16日

 今夜は自宅でアラン・クロスランド監督『ジャズシンガー』(アメリカ、1927年)。史上初のトーキー映画とされる。とはいえ、音声がつくのは歌とその前後の若干の科白だけ。
 同じ27年には『メトロポリス』や『チャップリンの黄金狂時代』なども製作されている。
 主人公のジェイキー(アル・ジョンソン)は敬虔なユダヤ教家庭に育った。父は5代続いた司祭長の伝統を誇りにしている。だが、ジェイキーは歌を愛しジャズ・シンガーになることを夢見ている。彼は父から勘当され、ジャック・ロビンという芸名で成功する。ようやくブロードウェーの晴れ舞台に立とうという時、母から父が倒れたと知らされ、舞台か父との和解かで悩んだ末、父のシナゴーグで歌声を聞かせる。
 ジェイキーが舞台のために黒人に扮するシーンは有名。主演のジョンソンは有名な歌手であり、この物語自体が彼の半生に基づいている。
 ショービジネスかユダヤ教か――そして舞台ではユダヤ人が黒人を演じる。これはエスニック・マイノリティーのアイデンティティーをめぐる物語であろう。
 

12月15日

 今夜は自宅でウディ・アレン監督・脚本『アニー・ホール』(1977年、アメリカ)。78年のアカデミー作品賞受賞のアレンの代表作です。
 主人公のアルビー(アレン)はインテリで神経質なユダヤ系のコメディアン。彼の人生遍歴、とりわけ女性遍歴が描かれ、アニー・ホール(ダイアンキートン)という女性との恋愛と同棲、そして破局が、軽妙な会話を交えて描かれている。時として独白、そして現在の登場人物が昔の自分に語りかけたりもする。
 ニューヨーク、ユダヤ人、精神分析、マリファナ、セックスと、少しビョーキの大人の恋の物語がテンポよく心地よい。
 トルーマン・カポーティ本人やマーシャル・マクルーハン(テレビ論で有名)本人も登場する。若き日のクリストファー・ウォーケンやシガニー・ウィーヴァーも顔を出している。
 グルーチョ・マルクスの言葉(実はフロイトが起源ではないかと主人公は言う)。「自分を入会させてくれるようなクラブには入りたくない」。男女関係とはこういうものだと、主人公はのたまう。
 ある男と精神科医の会話。「うちの弟は自分を雌鳥だと思い込んでいる」、「すぐに入院させなさい」、「しかし、卵はほしいからね」。やはり、男女関係とはこういうものだと、主人公はのたまう。矛盾しながら、誰もが卵を欲しているのである。
 浴槽に出没した大きな蜘蛛を退治するのに、主人公が雑誌を手に取るが、その表紙がジミー・カーター。「誰だ、これは。右翼のロック歌手か」。この人たちには、ブッシュ大統領なんて蜘蛛以上に唾棄すべき存在でしょうね。

12月10日

 今夜は自宅でヴィム・ヴェンダース監督・脚本『ベルリン天使の詩』(ドイツ、1987年)。私が大学を卒業した年のカンヌ国際映画祭最優秀監督賞受賞作品です。
 主人公は天使(ブルーノ・ガンツ)で、彼は仲間の天使(オットー・ザンダー)と悠久の歴史を目撃してきた。彼らには、人間の心の呟きが聞こえる。
 そんな天使がサーカスの空中ブランコ乗りのマリオン(ソルヴェイグ・ドマルタン)に一目惚れする。ベルリンに映画のロケにやってきていたアメリカの俳優ピーター・フォーク(もちろん本人)は、目には見えない天使に人間世界の素晴らしさを伝える。実は、彼も元天使だったのだ。ついに件の天使は人間になることを決意し、マリオンと結ばれる。
 枯れた白黒の映像がカラーに変わる。人間世界の色、味、匂い。この作品は人間賛歌である。
 科白はほとんど独白で、落ち着いた音楽とマッチして、詩的かつ哲学的である。
 ベルリンの壁が崩壊する、わずか2年前の作品である。これから20年ほど後に、ベルリンにアメリカの黒人政治家が訪れ、20万人もの聴衆を魅了するとは。
 因みに、作中ピーター・フォークだけが英語を話している。
 作品の最後は何と"to be continued"である。
 原題は"Der Himmel uber Berlin"ですから、「ベルリンの上空」ですね。

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