Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2009年

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7月19日 邦画79

 今夜は自宅でビデオをもう一本。先日大量に借りてきたものの一つ。
 木下恵介監督『陸軍』(松竹、1944年)。原作は火野葦平。
 小倉の商家・高木家の三代を通じて、陸軍を賛美した国威高揚映画。
 西南戦争の折に、高木家は知人の武士から水戸学派の『大日本史』を譲り受ける。長男は長じて家長(三津田健)となる。これが一代目で、彼は日清戦争後の三国干渉に憤慨して亡くなる。息子には「立派な軍人になれ」と遺言する。
 二代目(笠智衆)は長じて軍人となり日露戦争に従軍するが、病弱のため戦場に出られなかった。帰国後は商売にも失敗して、妻のわか(田中絹代)と福岡で小さな雑貨屋を営むことになる。二人の長男・信太郎も病弱だ。やがて、二代目は愛国主義者の実業家・桜木(東野英治郎)のもとで働くようになる。
 ようやく、息子の信太郎(星野知正)も成長し、陸軍に入隊、上等兵に出世する。信太郎の部隊も中国に出征だ。母のわかは涙で息子の出征を見送るのだった。
 他に、二代目の戦友に上原謙、一代目の妻に杉村春子。佐分利信や佐野周二も出演していたそうだが、気づかなかった。
 作中、やたらに軍人勅諭が語られ、忠勇や愛国と並んで親孝行も強調されている。
 この作品のラストシーンは有名だそうで、母親の愛情を全面に押し出して、国威高揚の枠を越えている。それ故、木下は次作では陸軍に起用されなかった由。
 二代目の高木と桜木の口喧嘩など、ユーモラスな要素も盛り込まれている。
 笠は熊本出身だから九州弁は自然だろうし、田中も下関出身だ。東野の博多弁はお見事。昔の役者さんたちは、本当にみな達者ですね。

7月19日 邦画78

 今日は京都文化博物館で萩原遼監督『新諸国物語 笛吹童子』(東映、1954年)。三部構成で、時代は応仁の乱ののち。
 第一部では、丹波の満月城が赤柿玄蕃(月形竜之介)率いる野武士の集団に攻め滅ぼされる。城主の子供である萩丸(東千之介)と菊丸(中村錦之助)は明に留学しており、兄は武芸を、弟は面打ちを学んでいる。弟は笛の名手であることから、笛吹童子とも呼ばれている。二人は父の死を知って帰国、途中で城代家老(清川荘司)と再会する。弟は京の都の惨状を見て、平和のための面打ちに専念したいと言い、兄は家老と満月城に乗り込むが、赤柿に捕らえられてしまう。
 ついで第二部。家老の娘・桔梗(田代百合子)は赤柿に捕らえられ、磔の刑にされるところを、大江山に住む妖術師・霧の小次郎(大友柳太郎)にさらわれる。小次郎は子供の頃生き別れになった妹を捜しているのだった。やがて、桔梗は黒髪山に住む魔法使い・堤婆(千石規子)に再び拉致される。堤婆のもとには美しい人間の娘・胡蝶尼(高千穂ひづる)がいた。彼女こそ小次郎の捜し求める妹だった。胡蝶尼は囚われの桔梗らを逃がしてやる。その彼女は小次郎によって堤婆から救われるのだが、恐ろしい妖術師を兄と呼ぶことを拒絶し、谷に転落してしまう。
 いよいよ第三部。萩丸は満月城から脱出、桔梗や家老、そして菊丸とも再会を果たす。やがて菊丸は美しい白鳥の面を完成させる。彼らは白鳥党を結成して赤柿打倒の兵を挙げる。胡蝶尼は実は足利将軍家の落胤で、彼女も白鳥党に加わることになる。小次郎は再び彼女を拉致しようとするが、堤婆から妹を庇って命を落とす。ついに、満月城は落城、赤柿のどくろの旗に代わって、白鳥の旗が翻るのだった。
 かつて少年少女の夢をかき立てた物語で、「ヒャラーリ、ヒャラリコ」の音楽は有名。
 今となっては荒唐無稽な、それこそ子供だましのストーリーと特撮だが、それが結構笑えてしまう。
 小次郎の妖術は菊丸の笛の音を聞くと通じなくなってしまう。『キカイダー』でプロフェッサー・ギルの笛の音を聞くと、キカイダーの良心回路が麻痺するのと同じ(あるいは元ネタ)である。
 千石は昔から老け役がよく似合う。1922年生まれだから、当時はまだ32歳なのに。テレビドラマの『オズの魔法使い』でも魔女をやっていました。私が小学生の頃に話です。悪党一味の中に、懐かしい吉田義夫の顔も。『悪魔くん』で初代メフィストを演じた役者さんですね。

 

7月18日 邦画77

 さらにもう一本。
 増村保造監督『女の小箱・より 夫が見た』(大映、1964年)原作は黒岩重吾(同志社出身)。
 ナイトクラブの経営者・石塚(田宮二郎)は大手企業の乗っ取りを図って、株の買占めを進めている。会社側では、株式課長の川代(川崎敬三)が中心になって防戦に当たっている。石塚は愛人であるバーのママ(岸田今日子)を使って金と株を集めている。川代も石塚の秘書(江波杏子)と肉体関係を結んで、情報を収集している。そうした中で、川代の妻・那美子(若尾文子)は悶々とした夜を過ごしている。
 やがて、石塚と那美子が出会い、最初は石塚は情報収集のために那美子に接近するが、そのうち本当に惹かれていく。那美子も我侭な夫に愛想を尽かしており、石塚に魅力を感じる。この間、石塚の秘書が何者かに絞殺され、川代に容疑がかかる。川代は自らの嫌疑を晴らし、株を奪い返すために、石塚に接近するよう妻に求める。
 那美子は夫との離婚を決意、石塚も乗っ取りを諦めて那美子と結婚しようとするが、愛人だったバーのママに刺し殺されてしまう。
 愛のない夫婦生活より本当の愛に生きようとした女の物語。
 若尾と田宮のラブシーンが、たいへん艶っぽい。田宮は相当マッチョです。
 増村らしく、前近代的な日本の家族観や会社観が、随所で糾弾されている。

7月18日 邦画76

 大阪のツタヤで名作ビデオを大量に発見。さっそく何本も借りて来ました。
 まずは溝口健二監督、依田義賢脚色『女優須磨子の恋』(松竹、1947年)。
 島村抱月(山村聡)は早稲田の坪内逍遥(東野英治郎)の愛弟子で、師弟で新劇の導入と発展に取り組んでいる。島村はイプセンの『人形の家』上演を決意し、赤井須磨子(田中絹代)という新人女優を主役のノラに起用する。厳しい稽古の末、須磨子はノラを好演して舞台は大成功となる。
 やがて、島村と須磨子は惹かれあうようになる。島村は養子だったため、妻(毛利菊枝)や娘と離別して家を出る。島村と須磨子は友人の中村(小沢栄太郎)らの協力を得て、芸術座を立ち上げ、理想の演劇のための活動を開始する。しかし、財政難と座員たちの須磨子への反発から、芸術座の活動は難航する。資金稼ぎのための地方巡業の最中、島村は肺炎で急死してしまう。
 東京の明治座での初舞台も成功のうちに終わり、『カルメン』を熱演したのち、須磨子は島村のあとを追って自殺する。
 日本演劇史上の有名な出来事(実話)ですね。旧劇(歌舞伎)に対する、西洋近代演劇を新劇と呼びます。劇中劇を指導しているのは千田是也。他に千田夫人の岸輝子も坪内夫人役で登場。東山千栄子は島村の義母役。みな新劇を実際に支えた俳優たちです。
 田中は熱演で、須磨子と島村の関係が、田中と溝口の関係に見えてくる。
 しかし、「芸」ではなく「芸術」や「真実の人生」を全面に押したてている分、感情移入がしにくく、同じ溝口作品でも『残菊物語』には遠く及ばない。
 山村の回想によると、島村の使う湯呑み茶碗が気に入らぬと、溝口監督。深夜のことで、スタッフがあちこちを駆けずり回って、ようやく監督の気に入る茶碗をみつけたものの、撮影してみると、件の茶碗は映っていなかったとか。

7月17日 邦画75

 少しご無沙汰しました。
 久々に京都みなみ会館に。今年も市川雷蔵祭です。特に、今年は没後40年に当たります。
 森一生監督『おけさ唄えば』(大映、1961年)。明朗股旅モノの歌謡映画です。
 一本松の千太郎(雷蔵)は腕は立つがお人よしすぎて、ヤクザに向いていない。そこで悪事の修行を積もうと旅に出ている。それでも、ついつい人助けをしてしまう。この千太郎が道中で、歌のうまいチンピラおけさの半次(橋幸夫)とその姉、それに男装の勝五郎ことお勝(水谷良重)らと出会う。やがて、彼らは勘治郎親分(中村鴈治郎)のもとに逗留することに。実は、お勝は親分の娘だった。
 千太郎は勘治郎親分から悪党修行をしようとするが、この親分は女癖こそ悪いものの、仏の勘治郎と呼ばれていた。その勘治郎親分の縄張りを悪辣な繁蔵一家が狙っており、ついに喧嘩に発展する。千太郎は繁蔵に助っ人するふりをして、勘治郎一家に助っ人、悪党を裏切っての悪党修行というわけだ。
 結局、千太郎も半次もヤクザには向かないと悟って、堅気になることを決心するのだった。
 橋幸夫は「歌謡界の市川雷蔵」と呼ばれていた由。さすがに歌はうまいですね。鴈治郎も達者なもの。
 作中、「アベック」などのカタカナや「俺は月光仮面じゃない」といった科白も登場して、遊び心満点。
 傑作とは言えないものの、十分楽しめる90分でした。
 木村玄や寺島雄作など、大映お馴染みの脇役の顔も。
 


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