Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2009年

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7月7日 邦画74

 今夜はゼミ生とSABU監督『蟹工船』(2009年)を京都シネマで。もちろん、原作は小林多喜二で、山村聡監督作品(1953年)もある。
 戦前のオホーツク海を航行する蟹工船の悲惨な生活と、労働者の団結・蜂起・挫折を描いた作品である。原作や旧作と異なるのは、新庄(松田龍平)という労働者のリーダー格の若者を設定したこと、彼を中心に冒頭で集団自殺が試みられ、労働者たちの回想や想像が随所に織り込まれたこと、そして、新庄とその仲間が逃亡を企て、ロシア船に救出される件などであろう。ここで新庄らは謎の中国人に出会い、団結の必要を自覚する。
 こうした工夫が、旧作に比べて本作からリアリティを奪っている気がする。新庄や根本(高良健吾)ら労働者たちも、「イケメン」すぎる。彼らの作業服もかっこよすぎる。年寄りがいない。決定的な問題は、残酷非道な監督(西島秀俊)のキャラの弱さである。彼は帝国主義の代弁者にも資本主義の代弁者にも見えない。とりわけ強欲にも冷酷にも見えない。ただ喚き散らしているだけである。
 オールド・ファンは、旧作とちがうと文句を言い、旧作と同じだと批判する。気にしないでください。でも、こんな文句を言われるのが、リメイクのリスクでもあるでしょう。
 通行人で森本レオが一瞬登場したりするのは、お愛嬌。

7月6日 邦画73

 東京の定宿で、伊藤俊也監督『白蛇抄』(東映、1983年)。原作は水上勉。
 水上らしく、若狭の寒村にある寺が舞台。この寺には、うた(小柳ルミ子)という美女が数年前から住み着いている。暗い過去をもち、寺の近くの瀧で自殺しようとしたのを、住職(若山富三郎)に助けられたのだ。住職は脳梗塞を患い、今では寝たきりになっている。それでも毎夜、不自由な体でうたの体を求めるのだった。住職の一人息子で高校生の昌夫(杉本哲太)は、その様子を覗き見しては、うたへの情欲を募らせていた。他方、うたの遠縁に当たる娘・まつの(仙道敦子)は、昌夫を思慕している。
 村の警察署の刑事・村井(夏八木勲)も、うたの魅力の虜になっている。彼はうたの過去を調べて、彼女を脅し、関係を迫ろうとする。すんでのところを昌夫に救われたうたは、結局、昌夫と関係を持ってしまう。寺でも愛し合う二人を、住職は盗み見し、驚いた昌夫に蹴られたはずみに、頓死してしまう。
 昌夫は高校を中退して京都の寺に修行に行くが、うたを忘れられない。毎日何度も昌夫からかかってくる電話に、うたは悩まされ続ける。住職の死に不信を抱いた村井は、再びうたを脅迫するが、彼女に瀧へ突き落とされてしまう。昌夫は京都の寺を抜けて若狭に戻ってくるが、うたは彼の前途を思って拒絶する。もみ合いになり、二人はうたの持っていた鉈で命を落とす。絶望したまつのは寺に火を放つのだった。
 『鴈の寺』と『越前竹人形』を一緒にしたような作品。圧倒的な女性の色香が、次々に周囲の男性の人生を狂わせていく。仙道が本当に初々しく、杉本も子供の面影を残している。確か、私と同い年では。1983年といえば、私が大学に入学した年です。
 しかし、入浴シーンでも、小柳がばっちりメイクしているのには、笑ってしまいました。
 他に、宮口精二や北林谷江らベテランも。若山の演技はさすが。

7月1日 邦画72

 午後に京都シネマで西川美和監督・脚本『ディア・ドクター』(2009年)。満席で立ち見まで出ていました。
 山間の神和田村は人口1500人で半分が老人。この村から医師の伊野(笑福亭鶴瓶)が行方不明になった。井野は村長(笹野高史)以下、村人から神か仏のように慕われていた。警察(松重豊ら)が捜査に乗り出すと、意外な事実が。
 ベテランの看護婦に余貴美子、研修医に瑛太、伊野の正体を知る製薬会社の営業マンに香川照之、ガンに冒されながら娘に秘密にしようとする老婦人に八千草薫、東京で勤務医をしている娘に井川遥ら。
 井野と老婦人は暗黙の密約をかわす。
 ある夜、井野は研修医に、自分には医師の「資格」がないと告白する。若い研修医は病院を経営している父の話をして、「うちの親父なんか経営のことしか頭になく、それこそ資格なんてない」と反論する。果たして、医師の資格とは何か。
 老婦人がラジカセで落語を聞いている。十代目・金原亭馬生と八代目・三笑亭可楽である。これがまたいい味を出している。
 鶴瓶、好演。瑛太は若々しく、井川には大人の色気が。八千草はさすがに老いたが、上品でかわいいお婆ちゃんだ。
 茨木県の緑の風景に、研修医の乗る赤いBMWが一際映えている。『ゆれる』もそうでしたが、この監督は田舎の風景を巧く活かしています。『ゆれる』では、落語のかわりに八ミリが小道具でした。北野武監督は、昔の女性の趣味に八ミリはおかしい、あれは男の趣味だと、鋭いつっこみを入れていましたが。
 この作品の主人公の父親も(は)医者という設定、親子で同じ専門職に就く、つまり、世襲のむずかしさが、ここでも問われていました。

6月28日 邦画71

 アクセスが7万件に達しました。皆さん、ありがとうございます。また、最近は皆さんの間でも会話が進んでおり、何よりに存じます。
 韓国に1泊2日の出張でした。
 帰国して、今日は京都文化博物館で、加藤泰監督・脚本『緋牡丹博徒 お竜参上』(東映、1970年)。シリーズ6作目で、3作目のエピソード(加藤が脚本)を受けて、ストーリーが展開する。
 かつてお竜は自分の偽者を結果として死に追いやった。そこで、お竜はその遺児を捜して、浅草までやって来る。浅草では、鉄砲久親分(嵐寛寿郎)のもとに草鞋を脱ぐ。だが、悪辣な鮫州(安部徹)が鉄砲久の縄張りを狙っていた。
 お竜はついに捜していた遺児を発見する。成長した君子(山岸映子)はスリになっていたが、鉄砲久親分の養女にしてもらい、浅草で舞台に立つことになった。しかし、彼女の恋人(長谷川明男)が鮫州の子分であったこと、鉄砲久とお竜の旧知の渡世人(菅原文太)が鮫州の兄弟分の仇だったことから、鉄砲久は殺され、お竜は鮫州と浅草の凌雲閣で決闘することになる。
 雪の今戸橋で、お竜が渡世人にミカンを渡すシーンは、有名だそうです。
 娼婦がお竜の顔をなでている冒頭シーンからショッキングで、さすがは加藤監督という感じ。捜していた遺児が、子供の頃に目を患っており、顔を手探りすることで、お竜に気づくはずだという想定なのです。
 藤純子のお竜、久しぶりに観ましたが、さすがに綺麗ですね。しかし、当時まだ24歳の藤が、作中の君子に「おばちゃん」と呼ばれるのは気の毒です。若山富三郎も顔を出しますが、これはかなり強引な登場です。チンピラ役で川谷拓三の顔も発見。
 浅草にまたふらりと出かけてみたくなりました。
 浅草名物・凌雲閣は雲をもしのぐ高さという意味で、12階建て。日本で初のエレベーターが設置されていたとか。関東大震災で倒壊しました。
 

6月23日 邦画70

 東宝シネマズ二条のレイトショーに。大友啓史監督『ハゲタカ』(東宝、2009年)。原作は真山仁で、1962年生まれの同志社大学法学部政治学科卒業との由。キャンパスですれ違っていたのかもしれませんが、残念ながら個人的には存じ上げません。
 中国政府の巨大ファンドが、日本のアカマ自動車を狙っている。中国残留孤児三世の劉一華(玉山鉄二)という辣腕マネージャーがブルー・ウォール・パートナーズというダミー会社を作って、敵対的買収に乗り出す。
 アカマ自動車は5兆円の売り上げを誇る名門大手企業だが、社長(遠藤憲一)以下、保守的で「日本そのもの」。銀行出身の役員・柴野(柴田恭平)は会社を救うため、伝説のヘッジファンド・鷲津(大森南明)に助力を求める。鷲津は日本社会に嫌気がさして海外生活を送っており、一部には死亡説さえ流れていた。鷲津率いる鷲津ファンドはアカマ自動車救済のため、「ホワイト・ナイト」として立ち上がる。
 しかし、劉のブルー・ウォール・パートナーズには、中国の20兆円の資金がある。さらに、劉はアカマ自動車の派遣工・守山(高良健吉)をそそのかし、労働争議でアカマ自動車を揺さぶる。鷲津がドバイに資金調達に出かけている間に、アカマの社長は劉に屈服してしまう。しかし、オイル・マネーを獲得した鷲津は、さらに大きな仕掛けに出るのだった。
 劉は日本を「生ぬるい地獄」と形容する。
 鷲津は劉に「お前は何者だ」と問い、劉は「俺はお前だ」と答える。果たして、どちらが「ハゲタカ」なのか。そして、劉は守山に「誰かになれ」と言う。しかし、その劉も結局、誰にもなれずに終わる。
 鷲津と劉が感傷的な過去を背負っているという設定が、やや「なまぬるい」し、米中の結託にオイル・マネーの力を借りて日本企業の再建を図るという発想も、「なまぬるい」。
 そもそも、この物語には、徹頭徹尾、日本政府が不在である。それが今の日本を象徴しているとも言えるが、根本的なリアリティーを欠いている。
 20年ほど前のハリウッド映画で、さかんに日本脅威論が描かれましたが、20年後に中国脅威論はどうなっているでしょうか。
 映画を観ると、いつも作中人物で誰に一番自分が似ているのか考えるのですが、今回は該当者なし。熾烈な金融の世界は、私の生活とはほど遠いようです。知らない世界を垣間見られた点では、素直に楽しめました。また、作品の冒頭とラストがうまくつながっており、定石どおりながら、余韻のあるラストになっています。
 


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