Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2009年

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6月21日 邦画69

 今夜は自宅でビデオ。川島雄三監督『貸間あり』(東宝、1959年)。原作は井伏鱒二、脚本は川島と藤本義一。
 大阪のアパート屋敷に住む与田五郎(フランキー堺)は便利屋をしている。四ヶ国語に堪能で、代筆、代書、あげくには替え玉受験まで依頼される。そこに若い美人の陶芸家ユミ子(淡島千影)が引っ越してくる。「貸間あり」である。
 このアパートの住人たちは、奔放な奇人ばかり。お千代(乙羽信子)は三人の旦那を抱えている。熊田(山茶花究)は怪しげな発明に勤しんでいる。ヤスヨ(清川虹子)は洋酒の密売をしている。洋さん(桂小金治)はコンニャク屋だ。
 やがて、五郎は江藤(小沢昭一)という予備校生の替え玉受験のために九州まで出かけて、帰ってこなくなる。五郎を慕うユミ子は彼を追って九州に旅立つ。二人がいなくなったことから、洋さんは「貸間あり」の看板を再び掲げる。通天閣を背景に立小便をしながら、「さよならだけが人生だ」と洋さんは口ずさむ。
 「さよならだけが人生だ」は、作中の五郎の名文句であり、夭折した川島の名文句でもあった。弟子の藤本義一によれば、川島の墓碑にはこの名文句が刻まれているとか。
 お下劣なドタバタ喜劇で、川島=フランキーのコンビによる現代版『幕末太陽伝』という感じ。
 他に、益田キートン、浪花千栄子、渡辺篤、藤木悠、加藤武ら豪華な顔ぶれ。若い藤木が調子のいいチンピラ役を飄々と演じている。藤木は同志社の文学部卒業ですが、惜しくも2005年に亡くなりました。子役に頭師満の顔も。
 この映画は喜劇ですが、私は暗い重たい映画も結構好きです。

6月17日 邦画68

 帰宅して夜DVDを。松本清張原作、野村芳太郎監督『疑惑』(松竹、1982年)。撮影は川又昂、音楽は芥川也寸志ほか。
 富山の埠頭で乗用車の転落事故が起こる。地元の富豪・白河福太郎(仲谷昇)が水死し、妻の球磨子(桃井かおり)は一命をとりとめる。だが、妻は夫に3億円もの生命保険をかけており、しかも、彼女は前科4犯だった。地元紙の記者(柄本明)が疑惑をかきたて、物証のないまま警察は球磨子の逮捕に踏み切る。
 裁判になると、球磨子には弁護士の引き受けてがいない。ようやく、国選弁護士で佐原律子(岩下志麻)が弁護に当たる。佐原弁護士と検事(小林稔持)は証人尋問で丁々発止の駆け引きを展開する。しばしば球磨子も激情に駆られて不正規発言を重ねる。
 当初は「毒婦」球磨子の有罪確実と見られたが、最後に白河の遺児の意外な証言で事態は逆転する。実は、夫が無理心中を図ったのだった。
 球磨子は無罪となるが、白河の自殺だったため、保険金を手にすることができない。そして、球磨子と律子は、女としてお互いを受け入れることができないのだった。
 他に、球磨子の元情夫に鹿賀丈史、白河家の姑に北林谷江、球磨子が昔勤めていたクラブのママに山田五十鈴、目撃者に森田健作、裁判長に内藤武敏ら。
 桃井と岩下の女同士の葛藤と対立は、迫力がある。
 球磨子の旧姓は鬼塚で「鬼クマ」と新聞に書きたてられる。「早乙女静とかいう名前だったらよかったのにね」と、球磨子が自虐的に言う。
 しかし、いい味を出していたのが、いかにも情けない初老の夫を演じた仲谷昇である。この人も故人だ。
 刑事訴訟法289条「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない」。これで一悶着あるわけです。勉強になりました。

 

6月17日 邦画67

 今朝も宇和島のホテルで6時に起床して一本。執念です。
 千葉泰樹監督『幸福さん』(東宝、1953年)。原作は源氏鶏太、音楽は黛敏郎、監督助手は岡本喜八。
 53歳の未亡人・花子(田村秋子)は、息子夫婦(伊豆肇と杉葉子)と幸せに暮らしており、孫を連れて釣り堀に来る初老の丹丸(三津田健)に好意を抱いている。丹丸の家には、若い明朗(小林桂樹)とみさき(有馬稲子)の兄妹が下宿している。
 みさきは婚約者にふられてしまうが、周囲の皆の応援で、花子の嫁の弟・次郎(小泉博)に紹介される。次郎は九州の山奥で働いており、出張で東京にやって来たのだ。みさきは次郎の純朴に惹かれ、九州に嫁ぐことにする。
 前半が「老いらくの恋」で後半は若者たちの恋。最後には、息子を置いて家出していた丹丸の娘(丹弥美谷津子)が戻ってきて、すべてハッピーエンド。
 53歳の花子は「お婆さん」で、男性と釣りにいくなど「外聞が悪い」と息子たちに反対される。みさきの婚約者の母も、家柄や嫁入り道具100万円にこだわる。明朗は恋人と手を握ったこともないとか。みさきによると、結婚前の男女が手を握るなど「不良」である。新しいライフスタイルと古いそれとの葛藤である。
 明朗の会社では月給袋が手渡しされている。時代の風俗を知るにはよい。
 それこそ、明朗なホーム・コメディ。田村演じる花子が、実に明るくよく笑う。
 若い有馬が瑞々しく美しい。
 

6月16日 邦画66

 今日は出張で愛媛県の宇和島に来ています。ホテルで一本鑑賞。
 オムニバス映画『歌謡曲だよ、人生は』(2007年)。
 オープニングの「ダンシング・セブンティーン」という曲は知らないが、あとは懐かしい昭和の歌謡曲をテーマにしながら、短編が10話(いずれも歌謡曲の題名)とエンディングの「東京ラプソディ」と続く。
 1「僕は泣いちっち」
 2「これが青春だ」
 3「小指の思い出」
 4「ラブユー東京」
 5「女のみち」
 6「ざんげの値打ちもない」
 7「いとしのマックス/マックス・ア・ゴーゴー」
 8「乙女のワルツ」
 9「逢いたくて逢いたくて」
10「みんな夢の中」
 当然ながら、玉石混交。歌謡曲の雰囲気を反映した作品は、1、5、6、10。3、4、7はナンセンス路線。2と8と9は落ち狙い。
 7には武田真治、9には妻夫木聡が、エンディングには瀬戸朝香が登場します。
 7の監督は漫画家の蛭子能収、9の監督は『ウォーターボーイズ』の矢口史靖です。
 私が一番気に入ったのは5。何といっても本物の宮史郎が出てきて、銭湯で牛乳瓶をマイクに「女のみち」を歌う。それだけで最高!6もいい味を出していました。一番のナンセンスは4。
 鈴木ヒロミツが7と10に登場していましたが、一昨年亡くなってしまいましたね。この作品が遺作だとか。7ではヒロインの死を看取る医師を演じています。
 それにしても、昭和の歌謡曲がテーマで、美空ひばりや石原裕次郎が一曲もないとは。裕次郎の場合、映画化されたものが多いからでしょうか。
 私が一曲選ぶなら、鶴田浩二の「赤と黒のブルース」です。名曲ですよ。

6月14日 邦画65

 今夜は自宅でDVDをもう一本。
 松本清張原作、貞永方久監督『球形の荒野』(松竹、1975年)。
 第二次世界大戦末期にヨーロッパの中立国で客死したはずの外交官・野上(芦田伸介)。
 それから16年、一人娘の久美子(島田陽子)は成長して今では医者の卵で、新聞記者の添田(竹脇無我)と婚約している。二人は野上の好きだったという大和路を旅し、いくつかの寺の奉加帳に野上そっくりの筆跡を発見する。それから、久美子の周辺で不思議な事件が相次ぐ。
 実は、野上は生きていたのだ。彼は終戦工作に深く関与し、日本帝国政府や軍部の闇資金のありかも知っていた。彼の命を狙う旧軍人(藤岡琢也)と彼を守ろうとする元同僚(山形勲や岡田英次)。添田の努力もあって、ついに野上は久美子との再会を果たす。
 他に、乙羽信子や大滝秀治、笠智衆ら。
 原作は力作だそうで、私の尊敬する元外交官も褒めておられましたが、映画は失敗作か。安保改定直後で岸信介批判は読みとれるものの、野上の抱える秘密が抽象的で、芦田の演技も空回り。彼の話すフランス語は、どう聞いてもカタカナ。竹脇や島田も必要以上にシリアスで、作品を陰鬱なものにしている。戦後16年という設定だが、その雰囲気も十分に描けていない。
 親子の再会シーンで、娘が海岸に腰をかけるよう、父がハンカチを敷いてやるのだが、その直後に涙ぐんだ父は別のハンカチで目頭を拭う。いったいハンカチを何枚持っているのか。親子が夕陽を背景に「カラスなぜ鳴くの」の童謡を歌いながらラストとは、「〜サスペンス劇場」のようでもある。
 祖国を失った主人公にとっては、地球全体が荒野のようなものだ、というのがタイトルの意味。
 清張映画を観るといつも思うのだが、ホテルや旅館、郵便局に電話一本で他人の情報を提供してもらえるとは、のどかな時代ですね。


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