Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2009年

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5月19日 邦画60

 今日は大学の教室でゼミ生と岡本喜八監督・橋本忍脚本『日本のいちばん長い日』(東宝、1967年)を観賞。
 日本がポツダム宣言受諾を決めてから「玉音」放送が流されるまで(8月14日昼から15日昼まで)の一日を描いた迫真の歴史ドラマ。鈴木首相に笠智衆、阿南陸相に三船敏郎、米内海相に山村聡、東郷外相に宮口精二と、重厚な布陣。
 天皇の「聖断」でついにポツダム宣言受諾と決まり、「玉音」放送が録音される。しかし、徹底抗戦を唱える陸軍の中堅将校たち(中丸忠雄、佐藤允、黒沢年男ら)は森師団長(島田正吾)を殺害して近衛師団を動員、皇居を占領して、「玉音」盤を奪おうとする。これに対して、宮中では徳川侍従(小林桂樹)らが、必死で「玉音」盤を守ろうとする。
 何十年ぶりに観たが、実にオールスター・キャストで豪華な仕上がり。加山雄三が端役で登場したりする。また、史実としてもなかなかしっかりしていると思う。
「戦局非にして」か「戦局必ずしもわれに利あらず」かという表現をめぐって、米内海相と阿南陸相が激論を戦わせる。
 前半の重臣中心の展開と後半の将校中心の展開が対照的。和戦双方が命がけである。
 三船演じる阿南陸相の自決のシーンは凄惨。カラーでは目を覆ってしまうと思う。
 因みに、昭和天皇は登場するものの、「玉顔」はついに映らない。

5月11日 邦画59

 東京のホテルで原田真人監督・脚本『クライマーズ・ハイ』(2008年)。原作は横山秀夫。元上毛新聞記者で、映画『半落ち』の原作者でもある。
 1985年8月12日、日航ジャンボ旅客機が群馬県と長野県の県境・御巣鷹山に墜落、乗客524人のうち生存者はわずか4人だった。この航空機史上最悪の事故を取材した地元・北関東新聞の1週間の物語。タイトルは、登山中に興奮状態に陥るという意味らしい。
 事故当日、北関東新聞の遊軍記者・悠木(堤真一)は親友で販売局の安西(高嶋政宏)と登山にでかける予定だった。だが、ワンマン社長の白河(山崎務)から、悠木は事故取材の責任者に任命され、安西は過労のため脳梗塞で倒れた。白河と悠木の関係は愛憎半ばする。
 現場で取材に当たった社会部の佐山(堺雅人)はいち早く御巣鷹山に登り、事故の惨状をリアルに描く原稿を送った。しかし、締め切りに間に合わず、採用されない。地元紙として事故を最大限に取材し、かつ正確を期そうとする悠木らと、社内の幹部たち(遠藤憲一ら)の思惑は異なる。幹部たちは1970年代の大久保清事件や連合赤軍事件取材時の「成功」体験に縛られており、また、群馬選出の中曽根首相による靖国神社公式参拝問題にも配慮しなければならなかった。悠木はさらに販売局ともトラブルを起す。
 やがて、事故原因についてスクープの可能性が出てきた。しかし、取材のチェックとダブル・チェックを重視する悠木は土壇場で記事化に躊躇する。結果として、この大スクープは毎日新聞にものになる。
 2007年、年老いた悠木は成長した安西の遺児と登山し、仕事で心の離れてしまった息子との再会を決意するのだった。
 新聞社、特に地方新聞社の実情が、ひしひしと伝わってくる。福田と中曽根のバランスをてれとか、「ゆるい」解説記事でお茶を濁せなどなど。
 悠木はカーク・ダグラスが新聞記者を演じた映画を観て、記者を志したという。"Ace in the hole"という作品だ(邦題は「地獄の英雄」1951年)。それ以来、「チェック、ダブル・チェック」が彼の口癖になる。「まだ」は「もう」、「もう」は「まだ」。取材競争も株の売り買いと似ているかもしれない。
 社会部長が言う。「群馬で一番人気があるのは福田でも中曽根でもない。国定忠治だ」。だが、この社会部長は「俺がニューヨークに生まれていたら、ニューヨークタイムズの記者になれたのに」とも愚痴る。新聞記者志望の学生は必見です。
 

 今夜は久しぶりに神戸の実家で母と、山田洋二監督『母べぇ』(松竹、2007年)。
 昭和15年、ドイツ文学者の野上滋(坂東三津五郎)は戦争批判のため治安維持法違反で逮捕されてしまう。残された妻の佳代(吉永小百合)は「母べぇ」として二人の娘・初子(志田未来)と照美(佐藤未来)を育てる。滋の美しい妹・久子(檀れい)や滋の教え子・山崎(浅野忠信)も助けてくれる。だが、佳代は元警察署長の父(中村梅之助)には勘当され、奈良から変わり者の親戚の叔父さん(笑福亭鶴瓶)が舞い込んだりする。
 真珠湾開戦からほどなくして、滋は獄死する。山崎も招集され戦死する。久子も広島の実家で被爆して亡くなった。それから数十年――初子(賠償美津子)は医者に、照子(戸田恵子)は中学校の美術教師になっており、年老いた「母べぇ」の最期を看取るのだった。
 暗い世相の中での暖かい家族愛の物語。吉永が30代の母親から死期の迫った老人までを演じている。いまだに気品がありますね。三津五郎もうまい。しかし、私にとって収穫は、久々に観た梅之助。出番は少なかったが、さすがに巧い。割れた生卵をすするシーンなど、頑固で愛嬌のある俗物を見事に演じている。山崎が海水浴で溺れかかるシーンも、のちに意味をもつ。ただ、滋の郷里が広島と語った段階で、被爆のエピソードは予定されていた。
 わが家の「母べぇ」は大いに感動した模様。何しろ、作中の照美(昭和6年生まれ)とほぼ同い年(昭和5年)なのです。
 難を言えば、「母べぇ」が立派すぎることか。主人公が男なら、どこか偽善的な作品にねっていただろうが、「母は強し」で許される。

5月7日 邦画57

 今夜も自宅でビデオ(原稿がたまっているのです)。
 岩井俊二監督・脚本『Love Letter』(フジテレビ、1995年)。
 神戸に住む渡辺博子(中山美穂)は2年前に恋人・藤井樹(いつき)を山岳事故で亡くした。その三回忌に、恋人が中学校時代に小樽に住んでいたことを知り、恋人への懐旧の情から小樽の旧住所に手紙を書く。ところが、それに返事がやってきた。目下交際中の秋葉(豊川悦司)と調べてみると、小樽に藤井樹(中山の二役)という同姓同名の人物がいたのだ。こちらは女性で、しかも、死んだ恋人の中学校の同級生でもあった。
 亡くなった男性の思い出を仲立ちに、神戸の博子と小樽の樹の文通が始まる。そして、二人は新しい自分を見つけ人生の意味を見つめなおすのだった。
 中学校時代の樹少年役が柏原崇。愛らしい少年です。
 他に加賀まりこや范文雀らベテランも。
 いつまでも亡くなった恋人の思い出にすがっていた博子が言う。「あんなにたくさん素敵な思い出をもらったのに、死んだあともせがむなんて、私はわがままだった」。
 中学校の図書館で樹少年が最後に貸し出していた本は、プルーストの『失われた時を求めて』だった。示唆的ですね。しかし、私は恥ずかしながら未読です。
 神戸と小樽という二つの港町(ともに石原裕次郎ゆかりの地)を選んだのも、よい。
 成人になってからの樹青年が画面に登場しないのも、想像力を一層刺激する。
 ただ、難を挙げれば、豊川の神戸弁がきわめて不自然。すみません、私が神戸出身なものですから。
 さらに、エンド・クレジットの名前がみなローマ字だというのも、大いに違和感。
 それにしても、淡い素敵な作品です。岩井監督なかなかのお手並み。

5月6日 邦画56

 夜遅くにDVD。松林宗恵監督第一作の『東京のえくぼ』(新東宝、1952年)。お洒落なコメディです。
 伸子(丹阿弥谷津子)は就職試験に向かうバスの中でスリに会う。犯人にまちがえられた男は、実は伸子が就職する紀伊国屋物産の社長(上原謙)だった。会社の実務はベテランの林専務(古川ロッパ)らがしきっており、社長はただハンコを押し続けるだけ。
 伸子は社長の失踪を助け、「社長さん」ではなく「左千男さん」として自宅に下宿させる。伸子の両親(柳家金悟楼と清川虹子)も「左千男さん」を歓迎し、娘の婿にと考える。だが、社長不在の会社は大混乱である。下町生活と自分の子会社の工場勤務を経験して、社長は人を信じることを悟り、会社に戻っていく。社長と伸子が結ばれることは言うまでもない。
 他に、高峰秀子と小林桂樹が警官役で登場。伴淳三郎の顔も。
 江川宇礼雄という古い脇役の顔と名前が、はじめて一致した。
 服部良一の音楽も軽快。丸の内をはじめ、昔の東京各地の様子がよくうかがえる。
 丹阿弥は上品で、上原は飄々とした演技。確かに男前です。自慢のホルンも作中で何度か披露している。


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