Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2009年

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11月16日 邦画134

 自宅でDVD。クリス・シェリダン、パティ・キム監督『めぐみ――引き裂かれた家族の30年』(2006年、アメリカ)。製作総指揮は『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオン。
 11月15日で横田めぐみさんが拉致されてから32年になるそうです。私はめぐみさんと同い年です。
 1977年にめぐみさんが新潟で行方不明になってから、やがて、それが北朝鮮による拉致だとわかり、小泉首相の二度にわたる訪朝につながっていく。今ではこれほどホットな拉致問題も、当初はいかに人々が冷淡かつ無関心であったかが、よくわかる。
 横田ご夫妻をはじめ、すでに鬼籍に入られた方も含めて、被害者家族の絶望、苦悩、怒り、そして団結と希望が、誇張なく描かれている。横田家の内部も、飾らず描写されている。ご夫妻もお年を召したなあと、若い頃の映像を観ながら、つくづく思った。
 彼らの思いと政治の現実の距離は、あまりにも遠い。私も何度も目頭を熱くしたが、この思いだけでは問題の解決はおろか進展もないのも、冷酷な事実だ。
 めぐみさんが小学校卒業前に歌ったというコーラスと独唱の録音は、まさに感動的。
 二人の監督はジャーナリストで夫婦だとか。それにしても、こうしたドキュメンタリーが日本ではなく、アメリカで作られたということも、考えさせられるところではある。

11月12日 邦画133

 森繁久弥さんが亡くなりましたね。ご冥福をお祈りします。合掌。
 というわけで、例によって東京に向かう新幹線の中で、豊田四郎監督『喜劇 駅前開運』(東宝、1968年)。
 戦後闇屋だった伴野(伴淳三郎)と坂井(フランキー堺)は、その後赤羽の西商店街と東商店街で、それぞれスーパーを営み、安売りで客の争奪戦を繰り広げている。敵対する彼らの共通の悩みは、近くのゴミ焼却炉建造計画だ。元赤羽工兵連隊長の森田(森繁)は今ではその日暮らしだが、彼らを助けるために大物代議士(山茶花究)に取り入っている。
 伴野と坂井は謎の美女(佐藤友美)の持ち込む低廉な高級商品を安売りしていたが、価格破壊を恐れる大手メーカーから圧力がかかる。しかも、件の美女はやり手の万引きだった。さらに、森田が取りいってた代議士にも裏切られ、ゴミ焼却炉が稼働することに。
 だが、森田ら東西の商店街と団地の人々は、他人に頼らず、自力で開運してみせると団結を誓うのだった。
 他に、黒柳徹子や藤田まこと、てんぷくトリオも。南伸介懐かしいや。
 主役の森繁、伴、フランキー、みなが鬼籍に入ったことになります。天国でも賑やかに喜劇を演じてくれるでしょう。
 公害問題や物価高騰問題など社会問題を題材にしている点も、このシリーズではユニークでしょう。
 豊田監督は森繁主演の名作『夫婦善哉』や『雪国』などを手がけた、文芸映画の巨匠です。1977年に北大路欣也の結婚披露宴で心臓麻痺で倒れ亡くなったとか。
 気軽な喜劇なのですが、この巨匠にしては、散漫な作品にとどまっています。

11月4日 邦画132

 新幹線の中でDVD。
 崔洋一監督『血と骨』(2004年)。原作は梁石日。
 1923年といえば関東大震災の年だが、済州島から貧しい金俊平が大坂にたどり着く。のちに俊平(ビートたけし)は子持ちの英姫(鈴木京香)を手篭めにして結婚した。二人の間には長女の花子と長男の正雄が生まれる。戦争中に出奔していた俊平が舞い戻り、暴力で家族を支配しながら、かまぼこ工場を始める。舎弟の信義(松重豊)らがこれを支える。
 ある日、俊平の子供と称するヤクザの朴武(オダギリジョー)が現われ、居候になる。女まで連れ込んで勝手邦題だが、父と殴り合いの喧嘩をして出て行く。正雄はこの異母兄に憧れるのだった。
 かまぼこ工場で財をなした俊平は労働者を搾取しながら、自らは美しい未亡人の清子(中村優子)を愛人にする。やがて、俊平は高利貸しに転じ、莫大な富をえる。だが、清子が脳腫瘍で寝たきりになり、俊平は新たな定子という愛人を見つけた上、清子を殺す。
 長女の花子(田畑智子)は夫に暴力をふるわれ、自殺する。彼女が密かに慕っていた工員の若者(柏原収史)は共産主義運動に身を投じ、逮捕投獄されたのち、北朝鮮に渡った。働きづめだった英姫も癌に冒されていた。英姫の治療費すら出そうとしない俊平に、ついに正雄(荒い浩文)も反抗し家を出る。
 俊平は花子の葬儀の際に大暴れして、脳血栓で半身不随になる。溜め込んでいた金は、定子に持ち逃げされてしまう。それでも、俊平は身勝手かつ強欲に暮らし、定子との間にできた男の子を拉致して、全財産とともに北朝鮮に渡る。1984年、俊平はかつて済州島から大坂に渡った日のことを思い出しながら、息を引き取った。
 暴力とセックスと金だけ――壮絶な男のエゴの物語である。
 しかし、彼をこうした「化け物」にしたのは、日本社会の差別と貧困だった。そして、この孤独な男も「血と骨」、つまり血縁と家族に実は渇仰していた。
 ビートたけし、すごい俳優ですね。
 柏原演じる若者が「金日成将軍万歳!」を叫びながら「共和国」へ旅立っていくシーンは、吉永小百合主演の『キューポラのある町』を思い起こさせました。
 

11月3日 邦画131

 今日は久しぶりに京都シネマで、冨永昌敬監督・脚本『パンドラの匣』(2009年)。原作はもちろん、太宰治。
 1945年、敗戦の頃に結核を患った青年(染谷将大)が、「新しい時代」の「新しい男」に生まれ変わるべく、人里離れた不思議な健康道場に入ることになった。ここでの挨拶は、「がんばっとるか」、「よしきた」。患者(塾生)も看護婦(助手)もすべて、奇妙なあだ名をつけられている。青年のあだ名は「ひばり」に決まった。
 ほどなく、同室の「つくし」(窪塚洋介)が退院していく。「ひばり」が「つくし」に送る手紙のナレーションで物語りは進む。「つくし」の退院と入れ替わりに、美しい組長(看護婦長)の「竹さん」(川上未映子)が赴任してくる。「つくし」は「竹さん」に一目惚れ。「ひばり」は若い助手の「マア坊」(仲里依紗)に興味があるが、彼女は「つくし」に思いを寄せている。やがて、「ひばり」は「マア坊」とも親密になるが、「竹さん」のことも気になり出す。
 一年後、「ひばり」の健康はかなり回復したが、「竹さん」は婚約して道場を去ることになった。「ひばり」は自分が「竹さん」を愛していたことにようやく気づく。去っていく「竹さん」―−彼女の婚約相手は何と「つくし」だった。
 他にも、同室の塾生は変わり者ぞろいだ。長老格の「越後獅子」(小田豊)は実は著名な詩人だったし、大学生の「固パン」(ふかわりょう)は気障な奴。気のいい「かっぽれ」(杉山彦々)は病で亡くなってしまう。
 皆それぞれ元気だが、そこには死が常に隣接している。
 まったりしたテンポと音楽が、不思議な雰囲気を醸し出している。
 『ヴィヨンの妻』と本作では、個人的にはこちらのほうが気に入りました。
 主役の染谷は若いながらも達者なもの。川上は芥川賞作家だし、ふかわはコメディアンだ。道場長役には、ミッキー・カーチスが。『野火』での好演を思い出しました。

10月26日 邦画130

 出張先で仕事の合間にDVD(われながら、もうビョーキですね)。
 島津保次郎原作・脚色・監督『隣の八重ちゃん』(松竹、1934年)。
 スタッフには、豊田四郎や吉村公三郎、木下恵介など、錚々たる名前が。
 昭和初期の東京の郊外。天気がいいと富士山が見える!
 二軒の家族が隣接して暮らしており、親戚同様の間柄。
 女学校に通う隣の八重ちゃん(逢初夢子)は、帝大の独法(ドイツ法学科のこと)に通う恵太郎(大日方傳)に好意を抱いている。青年も八重ちゃんが好きだ。
 ある日、八重ちゃんの姉・京子(岡田嘉子)が、嫁ぎ先から出戻って来る。その京子も恵太郎に関心を示し、八重ちゃんはヤキモキする。だが、恵太郎が京子の告白を拒んだため、京子は家出してしまう。折から、八重ちゃんの父は栄転して朝鮮に行くことになり、八重ちゃんは女学校卒業まで恵太郎たちの一家と過ごすことになる。
 「もう隣の八重ちゃんじゃないわ」の台詞で映画は終わる。
 松竹蒲田調の都会派恋愛劇。
 両家の母親たちを演じた飯田蝶子と葛城文子が、いい味を出している。
 それなりの中流家庭でも、内風呂はないようで、石鹸とタオルだけをもって、皆が銭湯に出かけている。
 恵太郎は八重ちゃんの友達(高杉早苗=本作でデビュー)に、フレデリック・マーチに似ていると言われてご機嫌です。
 それにしても、家出した京子の行方が気になる終わり方です。
 若き日の岡田、思ったいたよりはるかに美人で驚きました。この女優はのちにソ連に出奔し、戦後かなり経ってから帰国します。


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