Koji Murataの映画メモ

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邦画 2009年

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 久々の邦画。東宝二条シネマで根岸吉太郎監督『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ』(東宝、2009年)。原作は今年で生誕100年を迎えた太宰治。モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞した作品です。
 戦後ほどなく、作家の大谷譲治(浅野忠信)は酒に溺れ借金を重ねて、ついには行きつけの小料理屋・椿屋の夫婦(伊武雅刀と室井滋)から売上金を盗む。そのため、大谷の妻・佐知(松たか子)は椿屋で女給をすることになる。
 美しい佐知はたちまち店の人気者になった。純真な岡田青年(妻夫木聡)も佐知の虜になる。二人の仲を疑った大谷は、愛人(広末涼子)と心中未遂を引き起こす。新聞は大谷を「人非人」と書きたてた。さらに、大谷は殺人未遂の罪に問われ、佐知は旧知の弁護士・辻(堤真一)に助けを求める。辻は佐知の初恋の相手だった。
 弁護料を払えない佐知に、辻は肉体を求める。大谷は落胆するが、妻は「親子三人が生きていければいいじゃないですか、人非人でもいいじゃないですか」と、夫を励ます。
 もちろん、太宰自身が大谷のモデルで、ヴィヨンというのは破滅型のフランスの天才詩人の名前。
 副題の「桜桃とタンポポ」は主人公夫妻ことです。
 この夫婦の他人行儀な会話が、よくも悪しくも、作品から生活感を拭い去っている。これに対して、椿屋の初老の夫婦は生活実感の塊である。伊武は実に渋い。
 大谷が言う。「女は幸福でも不幸でもない。男は常に不幸だ」、「恐るべきことは、どこかに神がいるとうことだ」。
 大谷夫婦も、夫が虚無感と死を、妻が躍動感と生を体現している。
 松たか子の帯の位置が高すぎるのが、気になりました。
 

10月7日 邦画128

 無事に帰国して、自宅でDVD。
 篠田正浩監督『化石の森』(東宝、1973年)。原作は石原慎太郎、音楽は武満徹。
 治夫(萩原健一)は都内の大学病院でインターンをしている。思春期に母(杉村春子)の不倫を目撃して以来、他人に心を閉ざし、母とは絶縁状態にある。だが、今やラブホテルで働く母は、息子との生活を渇望している。
 ある日、治夫は故郷で高校の同級生だった英子(二宮さよ子)に再会する。妖艶な彼女は美容院で働いており、そこのマスター(田中明夫)の愛人だった。治夫と英子は肉体関係をもつ。これにマスターが激昂し、英子に暴力を加えたことから、二人は毒薬でマスターを殺害することにする。
 他方、治夫の勤務する病院では、少年が脳の手術を受けて聴力を失う。執刀医の教授(浜田寅彦)は患者の母・菊枝に十分な説明を与えていない。治夫だけが菊枝親子の頼りである。だが、菊枝のアル中の夫(日下武史)は治夫と菊枝の関係を邪推し、妻子に暴力をふるう。二人を庇い、治夫は菊枝と肉体関係をもってしまう。それを目撃した少年は、ほどなく視力さえ失う。
 治夫と菊枝の関係に嫉妬した英子は、菊枝にマスター殺しの一件を告げる。治夫の母は英子と親しくなっており、息子を守るために、件の毒薬で英子を殺す。泥沼に陥った治夫は、母を殺害しようとするが、果たせない。
みなが感情を押し殺して化石のように生きているというのが、タイトル「化石の森」の意味。
 他に、治夫の姉の役で、岩下志麻(篠田監夫人)が特別出演。菊枝は息子の治療のために、怪しげな新興宗教に頼るのだが、元医者でそこの僧侶という役に、怪優・岸田森。この人も早くに亡くなってしまいました。82年に43歳で亡くなっています。岸田今日子の従兄弟で、樹木希林の元の夫でした。
 杉村演じる母が英子に言う科白。「男と女は寝るだけじゃダメよ。女にとって、男は社会なの。女は男という窓を通じて社会を知っていくのよ」。
 この母を憎み軽蔑する主人公が、結局は菊枝と不倫関係に陥ってしまうのです。母の不倫と治夫と菊枝との不倫、男の暴力に苦しむ英子と菊枝と、二重のパラレル関係にあります。
 1970年代の懐かしい雰囲気は伝わってきますが、複雑な人間関係と心理描写に振り回されて、ドラマティックでなくなっているような気がします。
 田中明夫というのも、懐かしい悪役・脇役でした。

10月4日 邦画127

 イルクーツクのホテルで、空き時間にDVDプレイヤーを活用して一本。
 松田定次監督『鳳城の花嫁』(1957年、東映)。
 将軍家の義兄に当たる松平安房守(三島雅夫)の嫡男・源太郎(大友柳太郎)は、30歳になるのに独身である。そこで、源太郎は花嫁探しに江戸に単身出かける。
 呉服屋・井筒屋(志村喬)の娘・おきぬ(長谷川裕見子)とおみつ(中原ひとみ)が誘拐されそうになるのを、源太郎はたまたま救う。源太郎はおきぬに一目惚れ、おきぬも源太郎に好意を抱くが、源太郎は女心の機微が読めない。
 姉妹を狙ったのは、旗本のならず者・赤柄組(進藤英太郎、加賀邦男、神田隆ら)であった。彼等は源太郎の名を騙って、姉妹をおびき寄せる。そうと知った源太郎が旗本屋敷に乗り込み、悪党退治に。
 源太郎の身分を知って驚くおきぬ。源太郎は必ず嫁に迎えると約束して、国許に戻るのだった。
 他に、家老に薄田研二、ヤクザに原健策、浪人者に田崎潤、井筒屋の内儀に風見章子ら。
 源太郎はタコが嫌いで、おきぬへの求愛に際して、タコは好きかと聞き、娘を落胆させる。
 大友や田崎が飄々とした余裕の演技を見せている。
 長谷川は色っぽく、中原は愛らしい。長谷川は船越英二夫人です。
 他愛もない時代劇だが、日本初のワイドスクリーン作品とか。
 この作品のヒットで「〜の花嫁」シリーズになったようです。

10月1日 邦画126

 さて、2本目。
 塚本連平監督『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(2008年)。
 人気ブログの映画化とか。
 1979年夏、栃木の片田舎。
 ママチャリ君(市原隼人)ら悪ガキ高校生が、新しく赴任してきた駐在さん(佐々木蔵之介)に様々ないたずらを挑む物語。悪ガキたちは駐在さんの美人妻(麻生久美子)やその妹には、興味深々。また、病気で入院中の小学生の女の子に、花火を見せてやろうと、夏祭りで必死に花火を盗む優しさも持っている。
 スピード感とユーモアに溢れたさわやかな作品。栃木弁もお愛嬌。
 他に、竹中直人や石野真子ら。石野が母親役とは、少しショックです。われらが時代のアイドルでした。
 コンピューター・ゲームや歌謡曲など、懐かしい70年代末の風俗も、うまく取り入れている。
 田舎町にも初めてコンビニが開店し、太川陽介のコンサートのポスターが貼られている。
 この悪ガキたちと私はほぼ同世代に当たる。
 続編をぜひ期待したい。

10月1日 邦画125

 東京からモスクワに向かう機内で2本(現在はイルクーツク)。
 まず一本目。細田守監督『サマーウォーズ』(2009年)。アニメです。
 数学好きでシャイな高校生・健二は、憧れの夏希先輩に頼まれて、先輩の実家で夏休みの数日を過ごす。夏希の実家・陣内家は武田信玄の家臣だった武家の家柄で、大祖母を中心に団結していた。実は、この大祖母の90歳の誕生日で、夏希はボーイフレンドを紹介すると約束していたのだ。
 ある夜、健二の携帯に謎の数式が届き、彼はそれを解いてしまう。翌日、町は渋滞に陥る。各種の公共施設も混乱していた。なんと、世界で10億人もが登録する仮想世界オズのセキュリティが破られ、何者かが侵入して現実世界を混乱させていたのだ。
 その頃、夏希の叔父で10年前に家出した侘助が家に戻ってきた。彼はアメリカで知識欲のある人工知能の開発に成功、国防省がその人工知能「ラブマシーン」をオズに解き放ってしまったのが、混乱の原因だった。身内がトラブルの種を作った知った大祖母は、一家と知人たちを励まし、団結するように諭して、息を引き取る。
 健二が数学の能力を活用し、ネットお宅の少年・主馬も強力なアバターを操って、「ラブマシーン」と戦う。陣内一家も総出で強力だ。最後は花札で雌雄が決せられる。こうして、陣内家の人々はオズの秩序を回復し、地球を滅亡から救うのだった。
 アバターとか、よくわからないネット用語が飛び交うが、こういう仮想世界を描くには、アニメが効果的だろう。
 登場人物たちは、オズの仮想世界と陣内家の地縁・血縁の世界を往復する。不思議な感覚である。
 日本のアニメが宮崎駿に尽きるわけではないことを、痛感させる力作である。


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