Koji Murataの映画メモ

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外国映画 2009年

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 今夜は自宅でDVD。フランシスコ・コッポラ監督・脚本『コッポラの胡蝶の夢』(2007年、アメリカ他)。原題は"Youth without Youth"で、原作はミルチャ・エリアーデ。
 1938年のルーマニア。70歳になる言語学者ドミニク・マティ(ティム・ロス)は、「言語の起源」という壮大な研究も未完のまま、孤独な老後を過ごしていた。ある日、彼は落雷にあって瀕死の重傷を負う。ところが、回復してみると、ドミニクは30代に若返り、様々な言語能力と予知能力さえ身につけていた。やがて、ゲシュタポが彼に興味をもちはじめる。主治医(ブルーノ・ガンツ)の助けで、ドミニクはスイスに逃れるが、アメリカの工作員(マット・デイモン)やゲシュタポが接触を試みる。
 時は経って1955年。ドミニクの若さは衰えない。ある日、彼はやはり落雷にあった若いヴェロニカ(アレクサンドラ・マリア・ララ)と出会う。彼女は亡妻にそっくりで、落雷のショックから、サンスクリット語をはじめとする古代言語を話しはじめる。ドミニクの研究完成には千載一遇の好機到来である。だが、ドミニクとの生活の中で、ヴェロニカは急速に老いていく。
 ヴェロニカを老いから救うため、ドミニクは彼女のもとを離れ、郷里ルーマニアに戻る。懐かしい酒場に入ると、昔の仲間たちが次々に現れる。ドミニクは1938年に戻ったのだ。翌朝、ドミニク老人は街中で凍死していた。
 『潜水服は蝶の夢を見る』のような出だしで、『ベンジャミン・バトン』のような展開、そして『ドリアン・グレイの肖像』のようなラストである。ドミニクはもう一人の自分の幻影と語り合い、争っていた。
 時間と言語をめぐる哲学的なテーマで、陰影に富む映像は美しい。ティム・ロスも好演だと思う。だが、中だるみする上に(インドのシーン)、必要以上に重い感じがする。コッポラ10年ぶりの監督作品とのことだが、やや観念先行で力みすぎたというのが、率直な感想。
 それにしても、西洋人には荘子の「胡蝶の夢」の話は神秘的なんでしょうね。
 

 京都シネマでハナ・マフマルバフ監督『子供の情景』(2007年、イラン=フランス)。何と、この女性監督の19歳の長編第一作。脚本は監督の母のマルズィエ・メシュキニ。
 舞台はアフガニスタン。6歳の少女バクタイは、隣家の少年アッバスが学校で文字を習っているのを知り、自分も学校に行きたくなる。だが、学校に行くにはノートと鉛筆が必要だという。母親が不在のため、バクタイは家から卵を持ち出してお金に換え、ノートだけは何とか購入した。母親の口紅が鉛筆の代わりだ。
 だが、苦労して学校に到着すると、ここは男子用なので対岸の女子用の学校に行くよう追い出されてしまう。バクタイが女子用の学校に向かう途中、タリバンの戦争ごっこに興じる男の子たちに捕まり、ノートの大半を破られ捕虜にされてしまう。帰宅途中のアッバスも犠牲になる。
 何とか男の子たちから抜け出し、バクタイは女子用学校に着くが、彼女には席がない。他の女の子と口紅で遊んでいるのが見つかって、ここも先生に追い出されてしまう。帰宅の途次、彼女は再びタリバンごっこの男の子たちに捕まり、処刑されることになる。死んだふりをすれば、難を逃れることができる。「自由になりてかれば、死ぬんだ」とアッバスが叫ぶ。バクタイは倒れ、バーミヤンの大仏破壊の映像がそれに覆いかぶさる。
 バクタイのつぶらな瞳と過酷な現実。われわれがしばしば無駄にするたった一冊のノートが、彼女には宝物である。世界中で1億人を越える子供が、貧困その他の理由で学校に通えないのだという。
 それにしても、19歳の監督もたいへんなものだし、演じる子供たちも驚くべき表現力である。

4月24日 外国映画37

 東京のホテルで試写用DVDを鑑賞。
 オリバー・ストーン監督『ブッシュ』(2008年、アメリカ)。原題は"W."ブッシュ大統領のミドル・ネームですね。日本公開は5月16日。
 ストーン監督はこれまでもケネディやニクソンを映画化してきたが、本編ではブッシュの愚かさや頑迷を揶揄しながらも、その孤独に迫ろうとしている。政治ドラマというより、父と子の葛藤を軸にした家族ドラマである。
 青年時代からのブッシュの来歴と大統領時代が交差しながら、物語は進む。
 ブッシュを演じたジョシュ・ブローリン、『ミルク』でミルク殺害犯を演じた役者だが、時として本人そっくりの迫真の演技。父ブッシュを演じたジェームズ・クロムウェルは『クィーン』ではエジンバラ公を演じていた。この人も達者なもの。きわめつけは、チャイニー副大統領を演じたリチャード・ドレイファス。もう、そっくりで、実に陰気かつ陰険そう。ブッシュはチェイニーを「ヴァイス」(副大統領の副という意味)と呼んでいる。「俺がボスだ」と言いたいわけだが、Viceには「悪徳」や「堕落」の意味もある。
 他の登場人物も、なかなかのものです。
 ラスト・ソングの歌詞も痛烈な皮肉がこもっている。
 父が息子に助言する。「人間には器というものがある」。これもきついですね。
 一見の価値あり。
 でも、これだけでアメリカ外交のイメージを固めないでくださいね。

 今日は午前中に京都シネマで、ガス・ヴァン・サント監督『ミルク』(2008年、アメリカ)。主演のショーン・ペンと脚本の俊英ダスティン・ランス・ブラックは、本作でアカデミー賞受賞。
 1970年代のゲイ人権運動家で殺害されたハーヴィー・ミルクの物語。
 ニューヨークに住む会社員のミルク(ペン)は40歳の誕生日に年下のスコット(ジェームズ・フランコ)をナンパし、二人でサンフランシスコに移り住む。二人はカストロ・ストリートで商売を始めるが、隣人たちや警察のゲイに対する差別と横暴に対して、ゲイの人権運動を組織する。ミルクは「カストロ通りの市長」と呼ばれる。
 やがて、ミルクはサンフランシスコ市の市政執行委員(市会議員に相当)に立候補するが、惜敗を繰り返す。政治に疲れた恋人のスコットはミルクのもとを離れていく。ミルクには情緒不安定なラテン系の新しい恋人ができる。
 とうとう、ミルクは市政執行委員に当選する。元警官で保守的なダン・ホワイト(ジョシュ・ブローリン)も当選する。ミルクはダンと協力しようとするが、うまくいかない。カリフォルニア州では、ゲイの教師を公立学校から追放しようとする提案6号の住民投票が控えている。恋人の自殺などを乗り越えて、ミルクはこれに反対する運動を展開、提案を阻止する。
 ミルクが有名になっていくにつれて、ダンは嫉妬を強め、一旦は執行委員の辞任を市長に申し出るが、すぐにこれを撤回した。しかし、市長は撤回を認めなかった。追い詰められたダンは、こともあろうに市庁舎で市長とミルクを銃殺するのだった。サンフランシスコの町中に、二人の死を悼む蝋燭の列が続いた。
 レーガンやカーターの映像も登場する。ほんの30年ほど前のアメリカでの実話である。
 人種や宗教に対する差別に、性に対する差別が続き、また組み合わされる。偏見と狭量と傲慢が、人々を醜くする。しかし、これに立ち向かう人権運動も、やがて既成組織となり、腐敗と堕落を内蔵するようになる。
 "I am here to recruit you!"と、ミルクはいつも演説の冒頭で呼びかける。
 "Civil Rights or Civil War! Gay Rights Now!"と群集は叫ぶ。
 スコットと出合った時、ミルクは自分は40歳にして何一つ誇れるものがない、50歳まで生きられないだろうと言う。アメリカ版「不惑」である。実際に、ミルクは50歳まで生きられなかったが、誇るべき業績を残した。
 ミルクが死ぬ前に見た最後のものは、オペラ・トスカのポスターだった。
 セクシャル・マイノリティの問題が好奇心や冗談の対象ではなく、人権の問題とみなされるようになるには、日本であとどれくらいかかるだろう。
 

 最後は、ルイス・マイルストン監督の『オーシャンと11人の仲間』(アメリカ、1960年)というクライム・コメディ。マイルストンは戦前に『西部戦線異状なし』などを手がけた巨匠で、モルドバの出身。
 第二次世界大戦で第82空挺部隊で戦友だったダニー・オーシャン(フランク・シナトラ)と11人の仲間(ディーン・マーティンやサミー・デーヴィス・ジュニア、ピーター・ローフォードら)が、ネヴァダはラスベガスのカジノを強盗して、見事に数百万ドルを手にするのだが、思わぬアクシデントから意外な結末に。
 いわゆるシナトラ一家の他に、アンジー・ディキンソンやシャーリー・マクレーンら女優陣も懐かしい。
 前半はオーシャンが11人の仲間を集める話で、彼らの個人的な事情や背景が描かれ、後半に見事な犯行とその後の挫折がテンポよく描かれている。
 ディーン・マーティンとサミー・デーヴィス・ジュニアが、得意の歌声を披露している。
 2001年にジョージ・クルーニー主演でリメイクされてシリーズ化したことは、よく知られる。
 気に入った会話を一つ。
 ピーター・ローフォード演じる金持ちの不良息子と母親の会話。まだ美しい母親は五度目の結婚をしようとしている。
 「結婚式には出席してくれるでしょうね?」
 「今まで欠席したことはないでしょう」
 「一回目は欠席だったわ」
 


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