Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

外国映画 2009年

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 二本目はクリント・イーストウッド監督『チェンジリング』(アメリカ、2008年)。「チェンジリング」とは取り替えられた子供という意味。実話に基づく恐ろしい物語。
 1928年、ロサンジェルスで電話会社に勤めるシングルマザーのクリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)の一人息子ウォルターが行方不明になる。数ヵ月後、ロス市警はウォルターを発見するが、クリスティンが再会すると、その子は別人だった。しかし、ジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)は、あくまでその子をウォルターとしてクリスティンに押し付ける。ロス市警の不正と腐敗を糾弾するブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)の助けをえて、クリスティンがこの事実を公表すると、警部はなんと彼女を精神異常として病院に隔離してしまう。
 ところが、カリフォルニアのウィネビラ養鶏場で、ゴードン・ノースコット(ジェイソン・バトラー・ハーナー)が20人もの男の子を誘拐して性的に虐待し殺害した事件が発覚、ウォルターも被害者の一人だったことが分かる。
 こうして、ノースコットの殺人事件裁判とロス市警の権力乱用の調査委員会が、同時進行していく。ジョーンズ警部や上司のロス市警本部長は解任され、のちにノースコットも死刑になるが、ウォルターが本当に殺されたのか、それとも養鶏場からの脱出に成功したのかは、謎のまま残る。クリスティンは息子が生きているという希望を捨てないのだった。
 DNA鑑定があれば、起こりようのない誤認捜査である。しかし、恐ろしい。カリフォルニア版宮崎勤事件である。ノースコットに協力させられた親戚の少年クラークは、その後実に1991年まで生きていたという。警察の非道と非道な犯罪の「二重の非道性」がクリスティンを襲う。
 まさに、事実は小説より奇なりだが、クリスティンもブリーグレブ牧師も立派に描かれすぎていて、人物描写はやや平板か。殺人犯を演じたジェイソン・バトラー・ハーナーは、ほとんど無名だと思うが、鬼気迫る演技だった。
 死刑執行が公開とは、さすがはアメリカである。
 優しく、それ故に哀しい音楽も、イーストウッドが手がけている由。

 本日ワシントンから無事に帰洛しました。
 帰りの機内でも3本!
 まず、バズ・ラーマン監督『オーストラリア』(アメリカ、オーストラリア、2008年)。お洒落な衣装は監督の妻キャサリン・マーティン。
 第二次世界大戦前夜、イギリスの貴族レディー・アシュレイ(ニコール・キットマン)は夫が牧畜業を営むオーストラリアに単身向かった。だが、夫は何者かに殺害され、その事業はカーニーという実業家とアシュレイ卿を裏切ってカーニーに仕えるフレッチャー(デヴィッド・ウェンハム)に簒奪されようとしていた。アヴォリジニーと白人の混血児(蔑称クリーミー)で不思議な霊能力をもつ少年ナラ(ブランドン・ウォルターズ)と野生的なカウボーイ・ドローヴァー(ヒュー・ジャックマン)らの助けをえて、レディー・アシュレイは1500頭もの牛をダーウィンの町まで運ぶことに成功し、カーニーやフレッチャーの鼻を明かした。
 レディ・アシュレイとドローヴァーは愛し合うようになり、ナラを実の子のようにかわいがる。しかし、「クリーミー」は孤島に隔離して教導するのが当時の政府の政策であり、ナラは捕まって孤島に送られてしまう。束縛を嫌うドローヴァーもレディ・アシュレイのもとを去る。
 やがて、太平洋戦争が勃発し、日本海軍がダーウィンを奇襲攻撃するのだった。
 映画『オズの魔法使い』とその主題歌「虹を越えて」が、効果的に用いられている。「わが家が一番」
(nothing like home)という有名な科白が、この作品でも最後に使われている。
 前半は『風と共に去りぬ』のオーストラリア版、後半は『パールハーバー』のオーストラリア版といった感じ。人種問題なども題材になっているが、底は浅い。何しろ、最後は美男美女の白人カップルの誕生である。皮肉を言えば、映画版白豪主義というところか。
 とはいえ、キットマンとジャックマンのキス・シーンはセクシー。二人とも「アラフォー」ですが、中々どうして大したものです。子役のウォルターズも、映画初出演とは思えない達者ぶり。
 ナラは「自分は誰でもない」(I belong to nothing)と言う。思春期のオバマの心境と同じですね。

4月16日 外国映画32

 時差で早くに目が覚めたので、ワシントンのホテルで一本。ウィラードという岩倉全権使節団も泊まったホテルです。
 エラン・リクリス監督『レモンの木』(イスラエル、ドイツ、フランス、2008年)。2008年のベルリン国際映画祭パノラマ部門観客賞受賞の作品で、『シリアの花嫁』の姉妹編という感じ。日本では未公開のようです。
 イスラエルとパレスチナ自治区の隣接地帯。イスラエル要人ナボンが新たに国防大臣になったため、彼の自宅周辺にはフェンスが張り巡らされ、監視塔や監視カメラが設置される。しかも、パレスチナ自治区側に住む未亡人サルマ(ヒアム・アッバス)のレモンの木々も伐採されることになる。安全保障上の理由だという。
 しかし、このレモンの木々は、亡くなった父と夫が育てた思い出の樹木である。サルマは弁護士ジアード(アリ・スリマン)に相談し、軍事法廷に訴えるが敢え無く敗訴。意を決したサルマは最高裁判所に訴え出る。これをメディアが取り上げたため、裁判は政治問題に。
 レモンが大地に落ちる。台所で独りさめざめと泣くサルマの姿が、愛おしい。サルマと弁護士との間には淡い恋が芽生える。また、ナボン大臣夫人も、隣家のサルマに最初は好奇心を、やがては深い共感を抱くようになる。
 ワシントンも登場する。国防大臣はワシントンを訪問するし、大臣夫妻の娘も、サルマの息子も、ワシントンに住んでいる。ただし、前者はジョージタウン大学の学生であり、後者は酒場で働いている。二つの家庭、イスラエルとパレスチナの地位の相違を象徴している。
 『シリアの花嫁』の父親役マクラム・J・フーリも、サルムの義理の兄役で一場面だけ登場する。やはり貫禄です。
 哀愁をそそる音楽も魅力的。
 日本でも公開してほしいものです。

4月13日 外国映画31

 二本目はフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督『善き人のためのソナタ』(ドイツ、2006年)。原題はDas Leben der Anderenで他人のための人生という意味。
 1984年の東ドイツ。ここは国家保安省(シュタージ)が国民を見張る監視社会である。
 シュタージの辣腕取調官ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は、元同級生の上司から有名な劇作家ゲオルク(サバスチャン・コッホ)の監視を命じられる。彼の恋人の女優クリスタ(マルティナ・ゲデック)を、大臣が横取りしようとしているのだ。
 盗聴を続けるうちに、ヴィースラーはゲオルクの才能と人柄に惹かれていく。ゲオルクは仲間と一緒に、東ドイツの芸術家の間で自殺者が増えているという暴露記事を西ドイツの雑誌『シュピーゲル』に匿名寄稿した。シュタージは犯人捜しに躍起になるが、ヴィースラーはゲオルクを庇い秘密を隠ぺいする。だが、クリスタが薬物使用で逮捕され、ゲオルクの秘密を白状してしまう。
 それから数年後、ベルリンの壁が崩壊する。ゲオルクはヴィースラーが自分の命を救おうとして失脚したことを知り、『善き人のためのソナタ』という戯曲を出版、ヴィースラーに捧げるのだった。
 2006年度のアカデミー外国映画賞受賞作品。
 人間の偉大さと矮小性が、細やかに描かれている。静かな迫力に満ちた作品だ。芸術はしばしば政治の干渉を受け、政治に守られ、政治に奉仕してきた。演劇も例外ではない。いや、その最たるものかもしれない。
 ヴィースラーによると、本当のことを告白している被疑者は何度も問い詰められると怒り、嘘をついている者は泣くのだという。また、嘘をついている者は、同じことを何度問われても、返事の表現を変えない。嘘にしがみつかなければならないからだ。
 シュタージはもう存在しないが、われわれはもっと巧妙に監視されているかもしれない。
 
 

4月13日 外国映画31

 今日から1週間ワシントン出張です。
 往きの機内で映画を3本!
 まず最初はデヴィッド・フィンチャー監督『ベンジャミン・バトン』(2008年、アメリカ)。原作はフィッツジェラルドの短編とか。
 ニューオーリンズ、第一次世界大戦で息子を亡くした盲目の職人が逆回りの時計を時計台に設置する。時間が戻って、息子も戻って来るようにとの願いからだ。その直後、戦争が終わった時にベンジャミン・バトンは生まれた。母は出産で亡くなり、ベンジャミンはといえば、何と80歳の老人として生まれたのだ。父親はこの赤ん坊を遺棄した。
 ベンジャミンは老人ホームで働く黒人女性クィニーに育てられる。5歳のデイジーと初恋も経験する。ベンジャミンは年をとるにつれて若返っていくのだ。彼はやがて、マイク船長のタグボートで働くようになり、第二次世界大戦にも従軍した。自分を捨てた父親とも再会し、巨大な遺産を受け取る。ニューヨークでダンサーとして活躍するデイジー(ケイト・ブランシェット)とも再会、同棲を始める。デイジーはベンジャミンの子供を身ごもるが、その子キャロラインが1歳になった頃、ベンジャミンは姿を消す。彼はますます若返り、いずれは子供になってしまうからである。
 この数奇な物語を、死の床にあるデイジーが娘キャロラインに回想する。ニューオーリンズの町をハリケーン・カトリーナが襲いつつあった。
 「私が皺だらけになっても愛してくれる?」「僕がオムツをしても愛してくれる?」「どうせ人間は最後にはオムツをするのよ」
 老いるのも辛いが、若返るのも決して楽ではない。
 ブラピをはじめとする俳優のメイクアップが見事。
 『フォレスト・ガンプ』がそうだったように、20世紀アメリカ史のおさらいのようなところもある。
 2時間半がやや冗長。あと30分短縮してもよかったのではないか。


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