Koji Murataの映画メモ

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外国映画 2009年

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 今夜は二条の東宝シネマズで、ロン・ハワード監督『フロスト×ニクソン』(アメリカ、2008年)。
 ウォーターゲート事件で失脚したニクソン大統領(フランク・ランジェラ)への28時間に及ぶ単独テレビ・インタビューを、イギリスの人気トークショーの司会デヴィッド・フロスト(マイケル・シーン)が思いつく。成功すれば、アメリカ進出だ。しかし、スポンサーもつかず、フロストは私財を投じて、この企画を実現させる。ニクソンへの謝礼だけで60万ドルである。
 したたかなニクソンは、このテレビ・インタビューで自己正当化を試み、うまくいけば政界復帰の足がかりにしたいと考えている。フロストはテレビ業界のプロだが、元コメディアンである。ニクソンの圧倒的な貫禄に威圧されてしまう。しかし、ウォーターゲート事件をめぐるやりとりで、フロストは起死回生を図るのだった。
 1977年に世界中の注目を集めた有名なインタビューである。
 ニクソン役はそっくりとは言えないが(むしろ、ブレジネフのようだ)、口ごもった話し方はよく似ている。作中ニクソンがピアノを弾くが、実際にニクソンが作曲した曲のようだ。
 最後に、フロストはニクソンの苦渋の表情をモノにする。好敵手への敬意を込めて、このインタビューの終了後にニクソンは初めてフロストを「デヴィッド」とファースト・ネームで呼ぶ。そのフロストが最後にニクソンに贈ったのは、グッチの靴だった。当時、保守的な男性が履くには女性的と見なされていたのだ。
 後年、フロストはサー(騎士)の称号を得ている。
 テレビは怖し。
 引退したとはいえ、アメリカ合衆国大統領の威厳というのも、凄いものです。
 果たしてブッシュの引退生活やいかに。

 京都シネマで久しぶりに外国映画。ジョン・パトリック・シャンリィ監督・脚本『ダウト〜あるカトリック学校で〜』(2008年、アメリカ)。
 1964年、ニューヨークにあるカトリック学校での出来事。
 フリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、日曜礼拝の説教で「確信が持てない時、疑惑は人の絆になりうる」と説いた。教会付属学校の厳格な校長シスター・アロイシス(メリル・ストリーブ)の心に不安がよぎる。なぜ「疑惑」を説くのか?
 若く純粋な新任教師シスター・ジェイムズ(エイミー・アダムズ)は、クラスの掌握に苦心している。彼女が担任するジミーは、この学校ではじめての黒人生徒だ。ある日、ジミーが授業中にフリン神父の部屋に呼び出され、戻ってくると動揺しており酒臭い。シスター・ジェイムズはこれを校長に報告した。
 やがて、校長の心に「疑惑」が広がり確信になる。フリン神父が少年を性的に誘惑したのではないかと。ジミーの母親(ヴィオラ・デイビス)と面談して一層確信を深めた校長は、神父に辞任を迫る。神父はこれを「不寛容」、流言卑語と詰る。果たして真相は。
 神父は、友達がなく父親に暴力をふるわれる黒人生徒を庇護しようとしただけなのか。それとも、一線を越えた何かがあったのか。最後に、神父は教会を去るが、校長の心には確信のあとの疑惑がひろがる。自分は正しかったのか。
 1964年といえば、ケネディ暗殺の翌年で、私の生まれた年だ。
 シスター・アロイシスは、ボールペンを使うと筆跡が乱れると主張するほど謹厳実直。これに対して、フリン神父は教会をよりリベラルなものにしなければならないと主張している。
 世のアカハラやセクハラも、こうしたグレーゾーンの出来事が多かろう。
 ストリーブとホフマンの激論は白熱。ともに名演でした。
 もとは舞台劇ですが、映画としてはもう少し展開がほしかった気もする。

 二本目は、ヒトラー暗殺未遂事件を扱ったブライアン・シンガー監督『ワルキューレ』(アメリカ、2008年)。
 「ワルキューレ」とは戦死者を選ぶ女神たちの名前で、ヒトラーの愛したワーグナーの楽劇でもある。
 ヒトラー打倒をめざすシュタウフェンベルグ大佐(トム・クルーズ)らは、クーデター防止のための国内予備軍の作戦計画「ワルキューレ」を改ざんし、ヒトラー暗殺後にクーデターを成功させようとする。
 他にレジスタンスの指導者ベッグ将軍にテレンス・スタンプ、同じくトレスコウ将軍にケネス・ブラナーなど名優が。また、美しいシュタウフェンベルグ伯爵夫人にカリス・ファン・ハウテン、クーデター計画を鎮圧するレーマー少佐にトーマス・クレッチマン。前者は『ブラックブック』のヒロイン、後者は『戦場のピアニスト』で主人公を救うドイツ軍将校役。東ドイツの元オリンピック水泳選手だそうで、この作品でも見事な水泳シーンを披露している。因みに、シュタウフェンベルグ夫人は2006年まで、レーマー大佐(二階級特進)は1997年まで存命だったという。
 結末は判っているのだが、「ナチス以外のドイツ人がいたことを示したい」というレジスタンスの勇気と苦悩に、ついつい引き込まれてしまう。また、軍人たちに対するヒトラーのマインド・コントロールの強さにも驚く。
 舞台設定も壮大です。

 引き続き大坂アジアン映画祭で、アカデミー作品賞など8部門を受賞したダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア』(イギリス、2008年)。
 インドのムンバイ(ボンベイ)。
 携帯電話の会社でお茶くみをしている少年ジャマール(デーヴ・バテル)が「クイズ$ミリオネア」に出演。次々に難題に正解して2000万ルピー(3800万円)の賞金に手が届く。だが、学校も出ていないスラム育ちの孤児に正解できるわけがない。ジャマールは警察に逮捕されて、拷問され取調べを受ける。少年は辛い過去から多くの知識を学んだのだった。しかも、彼がこの番組に出演した真の理由は、愛する幼馴染ラディカ(フリーダ・ビント)と再会するためだった。
 孤児を引き取って盲目にして商売をさせようとするヤクザ、イスラム教徒を惨殺するヒンデゥー教徒、そして売春などなど、インド社会の暗部が抉り取られる。しかし、そこに孤児たちの生活力と兄弟の葛藤、純愛が絡み、活き活きとした作品に仕上がっている。
 It is written. それは運命だった。
 アメリカの100ドル紙幣に描かれている人物は?
 デュマの小説「三銃士」の三人目の名前は?
 皆さんなら、何問答えられるでしょうか?
 間もなく一般公開されます。是非ご覧下さい(何か、配給会社の広報みたいですね)。
 しかし、映画祭まで来ていながら、エンド・クレジットの途中で音を立てて退出する行儀の悪い客の多いことには、正直驚きました。

3月17日 洋画26

 夕刻に京都シネマでテンキンズ・アブラゼ監督『懺悔』(1984年、グルジア)。
 スターリン批判の映画で、監督は投獄されたことも。グルジアはスターリンの郷里ですが、シュワルナゼがグルジアで党の第一書記になったことから、製作が許された。ゴルバチョフ登場で、ソ連全土に公開される。
 グルジアの地方都市で市長ヴァルラム(アフタンディル・マハラゼ)が死んだ。長男のアベル(マハラゼの二役)一家によって葬儀が行われる。ところが、市長の遺体が何度も掘り起こされて、アベルの自宅に運ばれる。犯人はケテヴァン(ゼイナブ・ボツヴァゼ)という中年女性だった。
 裁判になる。ケテヴァンは犯行の動機を語りだす。かつて、彼女の両親がヴァルラム市長によって冤罪に問われ、死んでいった。市長は埋葬されるに値しないというのだ。彼女の両親だけではない。多くの無辜の市民が、市長によって「公益」を理由に処刑されていったのだ。
 父の旧罪を暴かれ、アベルは善悪の判断に悩む。ケテヴァンが精神病院に無理やり送られると、アベルの息子は猟銃自殺してしまう。その猟銃は祖父の贈り物だった。
 重たいテーマをシュールな映像で表現している。
 「暗い部屋で黒い猫を見つけるのはたいへんだ。まして、いなければもっとたいへんだ」と、市長は言う。示唆的な発言だが、市長によると、孔子の言葉だそうだ。
 ラストシーンで、老婆の通行人が教会への道を尋ねる。
 「ヴァルラム通りは教会には通じてないわ」
 「教会に通じてない道が何の役に立つのですか」と、老婆。
 ヴァルラムは市長の名である。来るべき民族主義と宗教の復活が予言されている。
 主演のマハラゼは、たいへんな力演でした。


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