Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

外国映画 2010年

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 おかげさまで風邪は治ったのですが、今度は口唇ヘルペスに悩んでいます。過労でしょうね。
 新山口に向かう新幹線で、DVDを一本。
 アルフレッド・ヒッチコック監督『バルカン超特急』(1938年、アメリカ)。
 ヨーロッパの架空の軍事独裁国家バンドリカが舞台。
 ここの雪山から帰る一行が列車に乗り込む。結婚を間近に控えたイギリス人女性アイリス(マーガレット・ロックウッド)は頭を怪我し、ミス・フロイ(メイ・ウイッティ)という老婦人に親切にしてもらう。ところが、仮眠から醒めるとミス・フロイはいない。同乗者に聞いても皆、そんな女性はいなかったという。医者のハーツ博士(ポール・ルーカス)は、頭の打撲による幻想だと診断する。イギリス人のギルバート(マイケル・レッドウッド)だけが、アイリスと一緒に老婦人を捜してくれる。
 二人はミス・フロイが実在する証拠を一つづつ確認していく。実は、ミス・フロイはバンドリカに送り込まれていたイギリス外務省のスパイで、そのことが発覚して車内で誘拐されたのだった。ハーツ博士こそは、バンドリカの追っ手の首領だった。
 列車がバンドリカを出る国境の直前で、二人はミス・フロイを救出するが、ハーツやバンドリカの秘密警察と銃撃戦を戦い、何とか脱出した。ロンドンで二人はお互いの愛を確認するのだった。
 さすがヒッチコック、中々の迫力とスリルです。
 不倫をしている野心家の弁護士が、実は平和主義者で、バンドリカに降伏しようとして殺されてしまいます。ナチスへの抵抗の必要を訴える政治的メッセージです。

 久しぶりに京都みなみ会館へ。
 ハル・アシュビー監督『ハロルドとモード』(1971年、アメリカ)。
 ハロルド(バッド・コート)は上流階級の子弟だ。だが、母親(ヴィヴィアン・ピックルズ)は権威主義的で冷淡極まりない。ハロルドは自殺の真似をすることで母親の関心を惹こうとするが、いつも無視される。
 ハロルドのもう一つの「趣味」は、見知らぬ人の葬儀に参列することだ。そこで、彼は不思議な老婆モード(ルース・ゴードン)と出会う。若いハロルドが生きた屍なら、老いたモードは生命力に溢れている。彼女の型破りな生き方に、ハロルドはどんどん惹きつけられていく。生まれて初めての友人である。
 やがて、ハロルドはモードと結婚する決意をして、周囲を驚かせる。しかし、それも束の間、モードは80歳の誕生日に、かねてよりの予定通り服毒自殺するのだった。
 ルース・ゴードンは、本当に味のある女優でした。
 生と死、若さと老いが対比され、そして交錯する作品です。
 折々に流れる歌詞がまたいい。
 ハロルドが切腹(ハラキリ)の真似をするシーンがあって、そこで彼は「スキヤキ」と叫びます。

 札幌の映画館でマイケル・ホフマン監督・脚本『終着駅 トルストイ最後の旅』(ドイツ、ロシア、2009年)。
 文豪トルストイ(クリストファー・プラマー)の妻ソフィア(ヘレン・ミレン)は悪妻として知られる。トルストイを崇拝するトルストイ主義者のチェルトコフらは、文豪を妻から引き離し、著作権を民衆のために放棄させようとしている。
 トルストイの個人秘書に雇われた若いワレンチン(ジェームズ・マカヴォイ)は、トルストイ夫人への好意とトルストイ主義との間で揺れ動く。美しいマーシャと恋に落ちて、男女関係の機微も理解するようになる。
 だが、側近たちと妻との確執から、トルストイはついに家出を決意する。その旅先、まさに人生の終着駅で文豪は倒れる。瀕死のトルストイが最後に口にしたのは、悪妻とされたソフィアの名前だった。
 私は独身ですが、夫婦とは実に不思議なものですね。
 「私は立派なトルストイ主義者ではない」と、トルストイは言う。マルクスもそう言いました。偶像化されるのも大変です。
 ミレンもプラマーも、そして若いマカヴォイも、たいへん重厚な演技でした。
 今年はトルストイの没後100年です。
 トルストイが暮らしたヤースナヤ・ポリャーナにも行ってみたくなりました(さすがに、これは中々実現しないでしょうが)。
 映画で歴史上の人物の半生を鑑賞するのも、よいものです。

 東京に向かう新幹線でDVDを一本。
 ウィリアム・ディターレ監督『ゾラの生涯』(1937年、アメリカ=ワーナー・ブラザーズ)。
 フランスの文豪エミール・ゾラの半生を描いた作品で、アカデミー作品賞を受賞。
 貧しい文筆家のゾラ(ポール・ムニ)は権力を批判しつつ、親友の画家セザンヌや妻に支えられて暮らしている。だが、ある時、売春婦のナナと出会い、彼女の物語を書いたところベストセラーになる。
 ゾラは大成し、アカデミー・フランセーズの会員に推挙されるまでになるが、反骨精神を失っていく。そんなある日、反逆罪で逮捕され有罪になった陸軍のドレフィス大尉(ジョセフ・シルドクラウト)の無実をはらすよう、ドレフィス夫人に求められる。
 ゾラは立ち上がり「私は糾弾する」という文章を新聞に発表するが、陸軍に訴えられる。裁判でも陸軍は露骨な介入を示す。有罪になったゾラはロンドンに亡命し、ドレフィス無罪を国際世論に訴え続ける。ついにフランス政府も動き出し、陸軍の隠ぺい工作が露見する。
 ドレフィスが名誉を回復し復職する前夜、ゾラは書斎で一酸化炭素中毒で亡くなってしまうのだった。
 「真理はつねに前進する」
 「愛国心の方法は様々だ。ある人は剣で、ある人はペンで」
 ポール・ムニのゾラが見事に老けていきます。

 急に寒くなってきましたので、皆さんお風邪など召しませんように。
 私は明日から札幌なので、少し不安です。
 さて、今夜は「お寺deシネマ」という企画で、東本願寺の総会所で映画を鑑賞。
 ニコラウス・ゲイハルター監督『いのちの食べかた』(オーストリア・ドイツ、2005年)。
 鶏や豚、牛が大量に飼育され、大量に屠殺されていく。ただ、それだけ。
 作業員たちの会話が雑音のように入るものの、基本的には意味のある会話はない。
 途中で、作業員たちがさほど豊かとはいえない食事をするシーンが、何箇所か挿入されている。
 流れ作業をこなし集団で移動する人間が家畜の群れのようにも見え、追い立てられ皮を剥がれる家畜たちが人間のようでもある。
 淡々としたドキュメンタリーだが、最後に牛を殺すシーンは迫力がある。
 和歌山県のイルカ漁を問題にした『ザ・コーヴ』も、ドキュメンタリーを称するのなら、こういう撮り方もあったろうに。
 昔聞いた詩を思い出した。
 「人殺さねば生を得ず、寺巡らねば罪消えず 人殺しつつ寺巡る」


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