Koji Murataの映画メモ

映画に関するコメントのみお受けします。

邦画 2010年

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 最近新たにコメントしてくださる皆さん、ありがとうございます。
 ホテルで日本から持ってきたDVDをもう一本。
 内田吐夢監督『大菩薩峠 完結編』(1959年、東映)。
 机龍之介(片岡千恵蔵)は旗本・神尾主膳(山形勲)の客分として、甲府にいる。神尾は上司に当たる甲府支配・駒井能登守(東千代之介)の失脚を画策している。机を追う宇津木兵馬(中村錦之助)も甲府に赴くが、神尾の奸計で捕らわれてしまう。
 兵馬は破獄するが、能登守に救われる。一方、机は能登守殺害に失敗し、かえって神尾に命を狙われる。机は大菩薩峠に向かった。それを追う兵馬とお松(丘さとみ)。
 やがて、兵馬は復讐の虚しさを悟るが、机はますます地獄の業火に苦しみ、笛吹川の洪水に呑み込まれていくのだった。
 因果応報。仏教色を前面に押し出した仕上げです。著者の中里介山も原作を「大乗小説」と呼んでいたそうです。
 この仏教色のためもあって、千恵蔵の机のほうが雷蔵のそれより陰影と苦悩に満ちているように思います。
 瓜二つの女性が何組も登場するのも、この作品の特徴です。何しろ原作は全40巻だそうですから、とにかくストーリーが入り組んでいます。
 山形演じる神尾の憎々しいこと。やはり、時代劇は悪役のスパイス次第でしょう。

 大阪・千日目の映画館で篠崎誠監督『東京島』(2010年)。原作は桐野夏生。
 清子(木村多江)と夫(鶴見辰吾)は世界一周のヨット旅行の途次に嵐で遭難し、無人島に漂着する。やがて、この島に16人の若い男も漂着してくる。彼らは島を東京島と呼び始めた。
 清子の夫は崖から転落死し、彼女は腕力に優るカスカベの妻になる。カスカベは暴力で仲間たちを支配している。特権的な清子は、自分を「東京島のトキ」(希少な天然記念物)だと思い始める。
 ところが、そのカスカベも転落死を遂げた。くじ引きでユタカ(福士誠治)が清子の夫に選ばれた。ユタカは記憶を失った温厚な青年だ。
 東京島には6人の中国人も住んでいた。日本人だが単独行動のワタナベ(窪塚洋介)だけが彼らとコミュニケーションがとれる。中国人たちは船を作って脱出を図る。リーダー格のヤンは清子の肉体目当てで同乗を求める。清子も日本人の仲間たちを裏切り、脱出を図る。ワタナベさえ置き去りにされる。
 しかし、船は潮流のため東京島に戻ってしまう。ユタカは記憶を取り戻して、力強いリーダーになっており、清子は皆から白眼視される。
 ワタナベが消えた。彼だけが船に発見されたようなのだ。残された者たちに動揺が走り、島の秩序が揺らぐ。しかも、清子が妊娠した。再び、彼女とユタカの力関係が逆転するのだが。
 ゴールディングの『蝿の王』を思い出しました。
 小集団の中で主導権争いが繰り返され、対立や迫害が起こる。確かに、面白いテーマです。
 先に観た『南極料理人』が極限状態での食の問題を扱っているのに対して、こちらは極限状態における性が重要なテーマです。
 しかし、話の展開が少し欲張りに詰め込みすぎになっています。
 とりわけ、10年後というラストシーンは、観客の想像力に任せて、なかったほうがはるかによかったと思います。
 私は鶴見と同い年ですが、中年男は映画の中でもこういう扱いをされるのだ、少し寂しくなりました。

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9月15日 邦画84

 自宅でビデオ。
 芳村公三郎監督『地上』(大映、1957年)。原作は金沢出身の作家・島田清次郎、脚本は新藤兼人。
 大正時代の金沢。大河平一郎(川口浩)は金沢中学5年生で、母(田中絹代)と二人で貧しい生活を送っている。平一郎は地元の実業家吉倉(清水将夫)の娘・和歌子(野添ひとみ)に恋をしており、彼女も平一郎に好意を抱いていた。だが、吉倉の工場には平一郎の友人が働いており、そこでストライキが起こる。平一郎も事件に巻き込まれ、しかも和歌子との文通が発覚して、停学になってしまう。
 一方、冬子(香川京子)という娘が輪島から金沢に、芸者に売られてくる。冬子は平一郎と母と親しくなるが、吉倉の背後にいる東京の大実業家・天野(佐分利信)の妾になって、東京に向かうことに。
 和歌子との仲を割かれ、停学になった平一郎も、母とともに東京に向かうのだった。
 他に、殿山泰司や山茶花究、潮万太郎ら、お馴染みの顔ぶれ。
 三者三様の若者の人生。吉村監督らしく、金沢の花柳界は巧みに描かれているが、その背後にある階級闘争の描写は、やや冗長で平板な気がする。
 松江から還ってきたばかりですが、金沢もまた美しい街です。

 松江の映画館で李相日監督『悪人』(東宝、2010年)。
 長崎の土木作業員・祐一(妻夫木聡)は、出会い系サイトで博多のOL佳乃(満島ひかり)と出合った。約束の当日に車で待ち合わせ場所に向かったものの、目の前で佳乃は憧れの大学生・増尾(岡田将生)の車に乗って去っていく。だが、山中で佳乃は増尾の車から蹴り出され、あとをつけてきた祐一とも口論になる。増尾への怒りの捌け口として、「レイプされたと訴えてやる」と叫ぶ佳乃を、祐一は絞殺してしまう。
 当初、警察は増尾を犯人と疑うが、やがては祐一に捜査の手が。その頃、祐一は出会い系で佐賀の紳士服店員・光代(深津絵里)と出会う。寂しさを癒しあう二人。祐一は光代にすべてを告白して、自首しようとする。だが、光代は二人で逃げようと、すがる。祐一の幼い頃の思い出の灯台に、二人は向かうのだが。
 他人から愛されることで、初めて自らを悪人と自覚する主人公。
 地方の過疎化と格差社会が、背景になっています。
 登場人物はそれぞれ、深いリアリティをもっていますが、岡田演じる大学生の身勝手さはコメディ並みで、ここにはリアリティを感じられませんでした。
 とはいえ、たいへん重厚な作品で、今年私が観た邦画の中では、一二を争う力作だと思います。
 妻夫木の金髪と表情が印象的。
 他にも、樹木希林や榎本明らが渋い演技を披露しています。
 妻夫木も深津も九州出身のようですが、九州の様々な方言が、これまた効果的に使われています。

 大阪・天満橋のエル・シアターで試写会。
 三池崇史監督『13人の刺客』(東宝、2010年)。
 工藤栄一監督による1963年の集団時代劇の傑作をリメイクしたもの。
 幕末。明石藩主の松平斉韶(稲垣吾郎)は残虐非道な暴君だが、将軍の実弟で老中・土井大炊頭(平幹二郎)も手が出せない。その斉韶が来年には老中に登用されるという。土井は目附の島田新冷衛門(役所広司)を召し出し、斉韶暗殺を命じる。
 島田ら13人の刺客は、参勤交代の帰路に明石藩の一行300人を襲撃すべく、落合宿に要塞を築く。明石藩の用人・鬼頭半兵衛(市村正親)は島田の同門だが、命がけで主君を守ろうとする。島田の「天下万民のため」という大義と鬼頭の忠義が、落合宿で全面対決することに。
 他に、松方弘樹、山田孝之、伊勢谷友介、伊原剛史、松本幸四郎ら、豪華な顔ぶれ。
 旧秩序と新世代との葛藤、価値観と価値観との衝突などなど――今日の日本の時代状況にも訴えかけるものがあります。
 優れたオリジナルをリメイクすることは至難の業ですが、本作はそれに見事に成功しています。ラスト50分の死闘は「三池ワールド」そのもので、スケールにおいて旧作をしのいでいます。
 9月25日公開です。時代劇ファンなら見逃せない作品です。


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