エフェソスの泉で猫は

古代ギリシャ。悩める人が飲んだエフェソスの泉の水を飲んでみて

全体表示

[ リスト ]

今朝、英文のメールが届いた。また、英会話スクールの英語カード・ゲームと、モノポリ・ゲームをしますとの一斉案内。

あの青年のメールアドレスも含まれていた。印象的なものしずかな日本人青年だった。地方公務員をしているという。わたしは、ものしずかな男性に鮮やかな印象をいつも感じさせられる。

過去に二度、ものしずかな男性にわたしは遭遇した。ひとりは通訳で来日していた白い肌を持つアメリカ人男性。技術通訳した障害者の椅子を作る工場が気に入り工員といて働いていた。心理学の好きな男性だった。

次は半年前に別れた日本人医師の彼。彼は中国史を専攻し大学講師を目出していたが、友人の死をきっかけに医学部に入りなおした。

ふたりとも、過去、大変に孤独をあじわった人で、思慮深く、しずかに運命を受け入れていた。

聡明で明るい暖かい人柄のフィリピン系アメリカ人の先生と、その夫の知的で優しい人柄のイギリス系アメリカ人が開くパーティー。

三月二週目の土曜日。前回のクリスマス・パーテイーは、ホスト・ファミリーが経営とはいえ、高価なキルシュなどを百貨店で買って用意したりしたので、お金を使いすぎたらよくない、何度もするなら持ち寄りパーティーにしたらいい、とわたしは先生に後で言った。

じゃあ、お菓子とポプコーンなどを用意するわ、と言われたので、わたしはチュニジア料理を作って持って行った。フランス・パンを用意したら、カナッペになると。

午後三時。まず、あと、ふたり来客が来て、一緒に食事を取りながら楽しい会話をし、わたしはそれを写真に収めた。後で良い表情に映ったものだけを編集して記念になるようにフォトCDを作るために。

前回のパーティーもそうやって、先生にそれを人数分渡して出席者に配布してもらった。たいした人数ではないので、そんなに負担にはならないし、喜んでいただけるのでこちらも嬉しい。

今回はアメリカ版人生ゲーム「モノポリ」。サイコロを振りながら財テクをする。金持ちになる者も居れば破産する者も居る。初めてするゲーム。英語で説明を受けて、投資を初めていた。

そのうち、一人の女性が帰宅し、先生の友人の日本人と結婚している明るい性格の笑顔が素敵なタイ人の女性が遊びに来た。日本語、英語、タイ語が堪能。彼女が、帰宅した女性の後を継いでゲームをする。前のゲーム者は一番リッチだったので、彼女はラッキーと喜んだ。

そして、今度はもう一人の日本人男性も帰宅しようとした。すると、すぐ後くらいに、その、ものしずかな若者が入ってきた。先生と英語で会話するのを聴いたわたしは驚いた。まるでネイティブ・スピーカーのような発音と流れるようなリズムを持っていたからだ。

彼も先ほど帰宅した男性の後を引き継いだ。前の男性は一番負けていた。持ち金がほとんど無かった。ルールをまだ理解しきれていないまま彼はそれを受け持ち、微笑んでしずかにゲームをし始めた。

一番リッチだったタイ人女性も帰宅することになった。彼女の持ち金を先生は、引き継いで自分のせいではないのに最初から貧乏だった彼に渡した。ラッキーね。みんなで笑った。青年も微笑んだ。

けれども、前のゲーム者の投資先が悪く、また彼が振るサイコロが運が悪く、払いきれない場所に行きついた。彼は、くやしがる感じもなく、スッと、しずかに全財産を渡そうとしたので、銀行役をしていた先生の夫がストップをかけ、投資先を清算して、これだけは残せると言った。

わたしは、その間、笑ったり、くやしがったり、怒ったり、ジェスチャーも加えて楽しんでいて、そのわたしの姿をみて、青年はにこっ、と笑って、「彼女はファニーだ」と好意を込めて英語で言った。

えっ?、ってわたしは驚いた。わたしは表情豊かにハキハキと話し一見利発に見えるので、日本人男性から大変に苦手がられるからだ。

外国人からは、親しみを込められて、日本人独特の雰囲気がなく、たいへんにストレートでオープンだ、と言われることが多い。外国人女性と対応するのに身構える日本人男性は多いので、できるだけ日本人らしく、単調な話し方をし、無表情で目だけ笑うように気をつけるけれど、気を抜くとこうなり、相手から思い切り引かれる。

その後もゲームをしたけれど、とうとう彼は破産に追いやられそうになり、わたしは銀行役のイギリス系アメリカ人男性に、銀行から借金はできないの?と尋ねた。ダメだという。その時、わたしはいつの間にか、ひとり勝ちしていた。ポンと負け金を彼に渡し、「お友達だから、プレゼントします」と英語で言い、そして、ゲームを終わらせた。

イギリス系アメリカ人の男性が笑って言った。「ビギナーズ・ウィンだ」と。でも、彼も初めてのゲームだったのに破産に追いやられた。自分に責任はなく、負けて行くのを、しずかに受け入れていた。

ゲームが終わった後、彼は流れるような自然な英語でアメリカ人夫妻にしずかに話した。海外留学でもされてのでしょうか、と尋ねたら、一度も日本から出たことがないという。そして、この英会話スクールに通い始めてまだ二度目だという。外国人と会話することにまったく壁や、りきみや、緊張感を持っていないのがありありと感じさせれ、ごくごく自然に上がらないで話す姿はどう観ても国際感覚が豊かな外国人慣れしている経験豊富な日本人としか見えない。不思議な青年。

英語の発音とリズムは故人になったマイケル・ジャクソンと、同じく拒食症で亡くなったので有名なカレン・カーペンターの歌が好きで、聴いて歌って身に付いたという。

彼はわたしが作ったチュニジア料理を非常に気にいってくれて、残ったものを母に食べさせたいと申し出た。とてもうれしい、よろこんで! とタッパに詰め、そして、出席者全員に配布したレシピも渡したら、またニコッと微笑んだ。

ミスター・ドーナツが十個残っていたので、フィリピン系アメリカ人の先生が笑顔で彼にプレゼントした。ラッキーだ、と彼は笑った。わたしは、あなたの彼女にあげましょうね、と笑って言ったら、夫のイギリス系アメリカ人が、大勢の恋人に配らなければならない!とジョークを飛ばした。

青年は包みを取り出して、ちいさなかわいい招き猫をアメリカ人たちに渡し、右手で金運を招き、左手で人を招く日本のお守りです、この英会話スクールに飾っておいていださいと言った。

そしてわたしに、ユニセフの包みに入った、「いわさきちひろ」の子供の笑顔の絵葉書を、チュニジア料理のお礼です、と言ってくれた。どちらも、心のこもった優しい暖かいプレゼントだ。

青年はわたしが英訳・アラビア語訳のついた写真詩集を出版していて、先生にプレゼントしていると知り、丁寧に借りたいと言った。

帰り道、やっと日本語で会話した。あなたは先生をされているのでしょうか、と質問された。いえいえ、ただの芸術家です。とっても貧乏です。芸術家と貧乏はお友達なの、とわたしは笑って応えた。青年は、芸術家とお金が結びつくと良い作品ができないと思いますと微笑んで答えた。

自宅に戻ると、メールが青年から届いた。
本の詩の感想を丁寧に綴ってくれていた。あなたの詩を読んで感銘を受けました、と。

あなたは非言語コミュニケーションが大変に豊かで、言葉でなく表情や、しごさや、声の鷹揚で的確に伝えたい内容を相手に伝えている方だと驚きました、と。

実は自分は母子家庭で、教育学の研究者を目指していたけれど、学資が足りなくて中退し、地方公務員をしていますが、資金を貯めて教員免許を持ち、特別支援学校で教師になり、子供たちの世界を開けたい夢をいだいています。明確に目標を持っているというのは幸せなことですよね。

自分が尊敬している教育学者のクルスプカヤの言葉を紹介したいと思います。自分はこの言葉で教育学の研究者になろう、と思ったのです、と。

「・・・人間は本が読めるだけでなくて、生きた生活も読めることが必要である。このためには生活を、人々を観察できなくてはならないし、人々とたえず生き生きと交わっていなくてはならない」(クルスカプヤ)

そして、彼は、自分が書いたエッセイをわたしに送ってきてくれた。

二十年前、わたしは、あり得ない偶然の互いの誤解が重なり、大きな心の傷を受けた。以前はこのブログはその内容を綴っていた。映画のような現実とは思えない物語のように感じたという感想があった。

何人もの精神科医の治療を受けても、何があったのか思い出すことも遮断し、言葉も発することも出来なかったわたしを、何かあったのかと聞き役にまわり、ずっとしずかに十五年支えてくれた友人にも転送した。

そう、半年前に別れた元わたしの内科医の彼氏。もうわたしは彼を恋人とは思っていない。今は、友人として見ている。もうわたしは彼の支えを必要とは思わない。もう自分自身を自分で支えることができるようになったから。

現在の温和な精神科医の主治医の忍耐強い愛情にあふれたカウンセリングを十五年受け、そして、精神科領域の知識を内科医でありながら恋人として、愛も注ぎながら、投げ出すことは自分との闘いだったと後に、やっと本音を言ってくれた彼。自殺した友人の死をきっかけに医師になった決意一心で。二人の精神科医の同時の治療がなければわたしは絶対に回復できなかったと回想する。

医療崩壊で、過酷な現状に置かれている彼。逃げれるものなら逃げたいけれど、患者を見捨てては逃げることは出来ませんと語っていた。感謝を込めて、そのエッセイを転送した。今度はわたしが穏やかに友人として彼をフォローしたいと思う。

返事が来た。彼も深い感銘を受けたようだ。

紹介したいと思う。そのエッセイを。

****
『きたぐに』


最近、仕事を終えて梅田に着く頃にはバスが運行を終了している時刻になっている。
冬なので当たり前だが、寒い。寒いのはそれほど苦手ではないが、全く平気というわけではないので、
やはりなるたけ家のすぐ近くで止まるバスに乗りたいなあ、と思う。

大阪環状線の1番ホームで電車を待っていると、真反対の11番ホームにいつも夜行列車が止まっている。

次の電車は快速電車なので、その次の電車に乗る私には待ち時間が10分以上もある。何となく、ホームからターミナルに降りてみて、11番ホームに向かった。

人びとが行き交う大阪環状線のホームとは真反対に、全く人気のないホームが11番線の北陸線のホームだ。そこが北陸線のホームであること、いや北陸線という路線そのものがあることを初めて知った。

寝台を備えた列車が静かに止まって、出発を待っている。行き先は新潟だ。列車には「きたぐに」という名前が付いていた。私はすぐに川端康成著の『雪国』を思いだす。トンネルを抜けるとそこは「ゆきぐに」なのだろうか。ここよりももっと寒い、雪のくに。

この列車に乗れば、誰も私のことを知らない海に面した北国の街に行くことが出来る。財布の中には1万円ほど入っているが、これに乗っていくら車掌に払えば新潟まで乗せてもらえるのだろうか。

やはり私はこの街からエスケープしたいのだ。いや、私は私自身からエスケープしたいのかもしれない。いずれにしても、現状からの逃避願望である。

1番線に西回りの大阪環状線が滑り込んできた。私は乗り込み、「きたぐに」を背にする。

どこに居ようとも、「あした」はまた東からやってくるのだ。

閉じる コメント(4)

「人々とたえず生き生きと交わっていなくてはならない」

この一文、人と付き合うのが苦手な私にずしっとひびいてきました・・・
海外にいけば、日本にいるよりは人と気軽に付き合えたりするのに。
自分でも不思議です。
この前のスタバで会った友達とは半年ぶり、
以前の職場の先輩からの誘いも何やかやと断り続けてます。

こういう、ほとんど人と交わらない日々を続けて、
たまに思いついたように海外にプチ家出状態って、
私の現実逃避だったのかもしれません。

2010/3/21(日) 午後 7:34 [ スオミ ]

顔アイコン

スオミさん、良い言葉でしょう?

わたしも日本で人づきあいするより、海外で話す方が気が楽です。

日本の芸能人の私生活や、日本のテレビドラマ、ブランド品、グルメ・ショップ巡り、「今、これが新しい」という文句に踊らされて流行を追う日本人と会話するのが超苦手です。(ー_ー)!!

もの覚えが悪いし、お金も無いから、これらの会話に付き合おうとしたら、大変な労力が必要ですから。(−−〆)

会社の同僚とは、働いているうちは、ある程度付き合いでなかよくはした方がいいですが、心の交流が計れない人とは、辞めたあとまで、無理して付き合う必要もないかもしれませんね。(*^_^*)

大切なのは、自分が自然体で居て、自然な自分と付き合える友人を大切にし、アルカダシニン、アルカダシニン、アルカダシ・ディル、で過ごすのもいいかもしれません。(*^_^*)

わたしの元カレも、思い出したように海外一人旅をします。
たまになら、現実逃避もいいかもしれませんね。(^−^)

2010/3/22(月) 午後 3:55 KOKO

顔アイコン

こんちわ〜、おもわず読みいってしまいました、世界の貧しいといわれてる国の写真を拝見しますと写真が生きて見えます、人々の表情がまるで映画のシーンを観ているように魅了的な表情してました、この公務員の青年もすばらしい、アジアの子供達は皆世のため人のためにと考えをもって生きてるんですよね、そんな世界を観てきたら日本の若者やテレビの内容、大人も国も政治家官僚役人をみてうんざりするでしょうね、私は中国しか行ったことないけど日本はこれでいいのかと思ってしまいます、ぽち

2011/6/29(水) 午前 10:27 gar*k*ta_ar*

顔アイコン

ガラクタさん。長い間読まなかったエッセイです。今、東京に来ていて、大使館の方にも会ったりしたのですが、迷いがでていました。。。。感謝を込めて、百万本の薔薇をさしあげます。

2011/6/29(水) 午後 3:19 KOKO


.
KOKO
KOKO
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

ブログバナー

標準グループ

海外

詩集

創作文学

映画

医師と心理学のブログ

ナースのブログ

美術・芸術系

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事