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父が、いそいそと、近くの小学校へ将棋を教えに行った。
年に一回。地域の老人が、小学生に遊びを教える交流会だ。
昔なつかしい、お手玉を教える人や、人それぞれ、自分が子供の頃遊んだ遊びを子供たちに老人が教える催し。
父は将棋三段の実力がある。
男の子相手に様々な将棋をおしえるようだが、一人、印象深い子供にあたったそうだ。
とにかく強い。基礎が出来ていて、その学校ではその少年に、指導する先生すら勝てない。少年の父親も将棋が強いようで、子供に英才教育し、自慢の息子として褒めまくっているようだ。
父は、その子をけちょんぱんに負かした。
惨敗したその男の子は、父の前で泣きそうな顔をしたという。
才能があり、負けん気の強い、将棋が強くなる条件を持つその男の子には、ひとつだけ、大きな問題があった。
とにかく、学校で誰も少年に勝てないので、いばりまくっていたそうだ。
父は泣きそうな顔をした少年に言ったそうだ。
「お前は強い。おじさんの子供の頃よりも強いと思う。でもな。上には上が居るんだ。
学校で一番でも、もっと別の世界には、よい強いヤツがいる。だから、威張るのはよくない。
おじさんだって、勝負しても、その上の人間に負ける。将棋は強い者が勝つ。そして、強くなっても、まだ上がいると思って、絶対に威張るな」
少年は、シュンとなったという。暴走していて、生まれて初めてガツンと壁にあたった。
先生が、父に言った。困っていたんです。天狗になっていて。でも、先生でも勝てないので、どうしようもなくて。助かりました。
少年は、自分の間違いをガツンと叱ってくれた頼もしい大人が居て、それがとても嬉しかったようで、また父と勝負したい、と言った。明後日は、六年生に教える、と父が言うと、少年は校長先生に頼んで、六年生のクラスに入れてもらって、またやりたい、と言った。
こういう、いじけない、ガッツのある子は、父の好みだ。
「よし、来年も生きていたら、お前を名指しで一番に勝負してやる」。
「おじさん。来年も死んだらあかんぞ。絶対、来てくれよ」
側にいた先生が少年を叱った。
「ダメよ。お年寄りに、絶対、来年も来てくれなんて、せがんだら」
父。内心。フクザツ。
周囲に居た老人もフツザツ。
老人は明日もしれない命と、こう、はっきりと言われたら・・・言い返せない。
後で、老人同士、今時の大人から叱られたことのない、親からも成績だけで褒められる子供も問題あるけれど、何も考えないで、話す今時の先生にも問題あるなぁ・・・・
苦笑いしながらも、父は、来年もその負けず嫌いの少年と将棋をさせるのを楽しみにしている。
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どなたか分かりませんが、ぽち☆ありがとうごさいます。
2011/6/7(火) 午後 11:02
おはようございます、お父さん、いいですね、中国の三国志や水滸伝を読んでるみたいになりました、この子供も生意気だけどすなおに負けを認めお父さんを敬服するところなどいい少年だと思います、ぽち
2011/6/29(水) 午前 9:57
ガラクタさん、ありがとうございます。
老齢の父が来年まで、生きてこの生意気だけれど素直な少年と再び、将棋ができるように祈ってくださいね。
少年がどれほど強くなっているか、たのしみですね!
2011/6/29(水) 午後 3:23