猫のひとりごと・私って、野良猫のメグちゃんなの?

野良猫とこの家の人々との、とても愉快な、でもちょっと寂しい生活物語

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チキンの冒険・最終章

前ページよりつづく

それからほんの少し歩いただけですが、神様が大きな贈り物を持って来てくれました。
ジョンにも他の鶏達にも、それはとてもビックリする贈り物でした。それは信じられないものでした。

 先頭を歩いていたサニーが、遠くに微かに見えるものを見つけました。そのものは、ゆっくりとゆっくりとした速度で、こちらに向かって歩いて来ているようです。
「あれは。」
「ああ、こちらに向かって来ているようだな。」
「仲間か。」
「そのようだが。」
「それにしても、随分と年老いているなあ。」
年老いた鶏が、ゆっくりとした足取りで、歩いてこちらに向かって来ているのです。
「何でこんな処に居るのかなあ。」自分達以外に、ここに鶏が居る事が不思議なことです。
サニーも、自分がこの辺りを歩いていた時は、それを見る事は無かったのです。
「そうだなあ。どうして居るのだろう。サニー、お前は見掛けたのか。」
「いえ、見なかったですよ。」
「ふうん。」
「少し見ていようか。」
「そうですね。」
ジョンとピンクとジャックが追い付いて来ました。
「どうしたの皆、どうして止まっているの。」
「うん、あれ。」
サニーがそれを指差しました。
ジョンもその方向を見た。
するとジョンは、「ああ。」と、声を出した。
「どうしたのジョン。」ピンクはジョンに、どうしたのかと聞きました。
「あいつだ、あいつは生きていたのか。」
ジョンは、その歩き方をハッキリと覚えていたのです。その歩き方は、年老いて少しは衰えているものの、ハッキリと記憶に残っている歩き方でした。
「ジョン、あれは誰だ。」
「あれを見て分からないのかナイフ。お前なら覚えていると思っていたけれど。」
「俺なら。」
「そうだ、お前とは一緒に苦労した仲間ではないか。」
「そうか分かった、あれはイエローか。」そう言えばイエローの歩き方です。思い出しました。ハッキリと思い出しました。
「あいつ、生きていたのか。それにしても随分と老けたなあ。」
「そう、イエローなの。」ピンクは、未だそれがイエローとは分かりませんでした。
「そうだよ、イエローだよ。」
「どうして、今まで生きて来られたのから。」
「そうだなあ。」
ジョンも、イエローが生きていたとは思っていませんでした。
突然出て行ったイエローの事を忘れた事は無かったのですが、再び会えるとは考えてもいなかったのです。

 それからの鶏達は、その老いた鶏が近づいて来るまで、待つことにしました。
その鶏は、静かに皆の処にやって来ました。
「皆、久しぶりだな。元気だったか。」
ゆっくりと落ち着いた話し方で尋ねてきました。まるで、皆に会う事が分かっていたような、静かな話し方です。
「はい、元気です。」

サニーには、イエローの事は、余りハッキリと見覚えのある事では無かったのですから、突然に現れたその老人が不思議な者に見えていました。
「イエロー、お前こそ元気だったのか。」ナイフが尋ねると、
「私はこの通りだよ。見た通り少し老けてしまったけれど、元気ですよ。」
「そのようだなあ。」
「皆、元気で良かったよ。」
「うん。ただジョンが少し。」
「ジョンが。」
「ああ、少し具合が。」
「ジョンはどちらに居るのかな。」
「イエロー、ここだよ。」最後部で腰を降ろしていたジョンが弱々しい声で、ここに居ると言うと、イエローは、ゆっくりとジョンに近づいて行きました。
「ジョン、久しぶりだなあ。」
「ああ、本当に。」
「お前は痩せたなあ。」
「お互いにな。お前もお爺さんになっているよ。」
「お爺さんか。そうだな、確かにお爺さんになったよ。ジョン、お前、何処か体が悪いのか。」
「ああ、少しな。」
「そうか。お前は随分頑張って来たからなあ。」
「そう言うお前も、お前に会えるとは思わなかったよ。」
「そうか。俺はここに来れば、お前達に会えるような気がしていたよ。」
「そうか。」
「ああ。」
久しぶりに会ったというのに、ジョンとイエローはとても落ち着いていました。
こんな場合には、手を取り合ったり、抱擁したり、笑い合ったりするのが普通の事と思われるのですが、ジョンとイエローは、お互いを優しく見詰め合うだけでした。
ここで会えるのを、お互いに楽しみにしていたように話をしていました。
「イエローも苦労したのだろうなあ。」
「ああ、それはなあ。苦労はあったけれど、一人暮らしは気が楽だよ。それに比べて、お前は大変だよ。お前の方が、俺よりももっと苦労していると思うよ。」
「それは違うよ。俺はこの苦労を楽しんで来たから。」
「そうか、それがお前の良いところさ。」
「それで、イエローはこれからどうするのか。」
「俺は一人で永く暮らしてきたから、もうお前たちと一緒にはできないよ。これからも一人で暮らしていくよ。」
「そうか。」
「ジョン、体を大切にしろ。」
「何だ、もう行くのか。」
「お前に会えたから、もう良いよ。」
「そうか。行くのか。お前も元気でな。」
「ああ、ジョンお前もな。ピンク、ジョンを宜しく頼むよ。」
「ええ。」ピンクは短く答えました。
「またどこかで会えるかな、イエロー。」
「そうだな、何処かでな。」

そう言うとイエローは、ほんの少し手を上げて合図をすると、静かに去って行きました。
その姿は、草原に吸い込まれるように消えて行ったのです。

ピンクもそうですが、ジャックもナイフもガンも他の鶏達も、殆どイエローとは言葉を交わす事ができませんでした。それ位に静かに現れ、静かに去っていったのです。

鶏達は皆、イエローのその姿を、黙って見ているだけでした。不思議なものを見ているように黙って見ていたのです。と言うよりも、言葉を交わせる相手では無いような、そんな不思議な感覚に襲われていたのかも知れません。

                          つづく


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