猫のひとりごと・私って、野良猫のメグちゃんなの?

野良猫とこの家の人々との、とても愉快な、でもちょっと寂しい生活物語

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チキンの冒険・最終章

二十、永遠の眠り

 イエローが去った後も、鶏達は不思議なものを見たように、その去っていった方向を見続けていました。

イエローに会えた事で、ジョンの顔には安堵感と、優しさや穏やかさが表れていました。
「ジョン、会えて良かったね。」ピンクがそう言うと、
「ああ。あいつの事は何時も。」言葉の途中で、急にジョンの表情が変わりました。ジョンの顔が、口が、苦しそうに小さく震え出したのです。
その後は、ジョンは言葉を出しませんでした。胸を押さえて、苦しそうに倒れこんでしまったのです。
「ジョン。」ピンクは、ジョンを急いで抱き上げました。
「ジョン。ジョン。」
ピンクに抱かれたジョンは、小さく震えています。苦しそうに震えています。
「ジョン。ジョン。」泣き叫ぶようなピンクの声が響き渡りました。
その声に、最後の力を振り絞ってジョンが答えました。
「ああ、ピンク。」かすれた声で、ジョンが言いました。
「ジョン、元気を出して。」
「ピンク。ありがとう。今まで苦労を掛けて、す・ま・な・か・っ・た。」言葉は途切れ途切れになってきました。
「ジョン、駄目よ、駄目よ、ジョン。」
「ああ・・あ・り・が・と・う、あ・り・が・と・う。」途切れ途切れで小さな声でした。
それが、ジョンの最後の言葉でした。
余りにもあっけない最後でした。
ジョンの体は、ピンクに抱かれてグッタリとしていました。
その動かなくなった体を、ピンクは力強く抱いていました。
そして泣いていました。大きな涙が、ピンクの瞳から流れ出ていました。
「ジョン、ジョン、ありがとう。ありがとう。私も方こそ、貴方にありがとうと言うわ。私は、貴方と旅に出てとても楽しかったのよ。ありがとう、ジョン。」

 サニーも他の鶏達も、ジョンの余りにもあっけないほど急な最後に、どうしようもなく、ただポカンと、その時間が過ぎ去るのを待っているかのようでした。
暫くすると、鶏達全員が大きな声で泣き出しました。
全員が、誰をはばかる事無く大声で泣きました。
泣き崩れました。
「ジョン。」
「ジョン。」
「ジョン。」孫たちも泣いていました。
ジョンが死んでしまった事が分かったのです。
「おじいちゃあん。」
そう言いながら泣いていました。


皆は何時までも泣いていましたが、ピンクは既に泣くのを止めていました。
そして、ピンクが静かに話を始めました。
「サニー、皆、私の話を聞いて。私はここに残るわ。ジョンとここに残るの。貴方達は新しい処に向かって行くのよ。サニー、さあ、皆を連れて行ってあげて。」

それには、サニーも他の鶏達も驚いた。ただ、ジャックだけは静かに聞いていた。
「お母さん、ここに残ってどうするの、一人では暮らして行けないでしょう。」
「心配しないで、サニー。私の事は大丈夫よ。」
「大丈夫って、どう言うことですか。何が大丈夫なのですか。」
「私の事は大丈夫よ。それよりも貴方は、皆を安全に生活できる処に案内することですよ。」
「それとこれとは。」
「サニー、貴方はジョンの子よ。ジョンと同じ様に、皆を助けて、幸せにすることよ。」
「何を言っているの、お母さん。」
サニーは、ピンクの言っている事が全く理解できません。ここに一人で残って、どうやって暮らしていけると言うのか。そんなことは出来るはずがありません。ましてや、もう直ぐに冬になるのです。冬になれば寒くなり、雪が降る、そんな事は誰でも分かっている事なのに、ここに残って一人で生活などできるはずも有りません。

 ジャックには、ピンクの考えが分かっていました。
そしてリリーもローラも、それを分かりかけていました。
「サニー、行こうか。」ジャックがそう言うと、
「叔父さん、冗談は言わないでくれるか。」ジャックに襲ってくるかのような、サニーの険しい態度です。
「サニー、お前には分からないのか。」
「何が、何が分からないというのですか。」
「ピンクの気持ちが分からないのか。」
「どんな気持ちを分かれと言うのですか。」
「分からないのなら、ピンクを良く見てみろ。」
そう言われて母を見ると、母はサニーの言葉が耳には入っていないような様子で、ジョンを優しく抱いているのでした。
その姿は、自分のいとおしい子供を抱いているような姿でした。
すでに母の気持ちは、サニーや他の仲間達とは違う処にあるように思えました。
その姿は、今までの母とは明らかに違って見えました。
「お母さん。」そう言ったものの、ピンクにその言葉は聞こえていませんでした。
ピンクは、サニーが「お母さん。」と言っても、サニーを見ません。ただ、ジョンの顔だけを見続けているのです。
「お母さん。」もう一度声を掛けましたが、返事は返って来ませんでした。

 暫くの間、皆は黙ってその姿を見ていました。
ピンクと抱かれているジョンを見て、何も言葉を掛ける事が出来なくなっていたのです。
時間が静かに過ぎていきました。
「お母さんは、何故。」
誰に聞くともなく、サニーが寂しそうに言うと、
「お前にも、何時の日にか分かるときがあるよ。」
そんな返事が静かに返ってきたのです。

ジャックが、「行くぞ。」と、言うと、皆は重い腰を上げた。
サニーも、それに従いました。
そうするしかなかったのです。
そして、鶏達は静かに旅立って行ったのでした。

何時の間にか、ピンクからはサニー達の姿は見えなくなっていました。
ピンクは、何時までも何時までもジョンを抱きしめていました。
「ジョン、皆は行ってしまったわ。」
「・・・・」
「貴方と私だけよ。」
「・・・・」
「ねえ、ジョン。私は楽しかったわよ。貴方に外に行こうと誘われて・・そこはどんな処かと思ったけれど・・とても楽しい旅だったわよ。とても、とっても。」
「・・・・」
「貴方に会わなければ、こんなに楽しい思いは出来なかったですもの・・私は・・何も知らなかったのですもの・・。」
「・・・・」
「子供にも孫にも恵まれて、何て素晴らしい事かしら。ありがとう、ジョン。ありがとう。」
「・・・・・・・・・」
「あら、この音は何かしらね。聞こえて来るわね、なんて美しい音なの。これが、サニーたちの向かっている処の音かしら・・・ねえ・・聞こえる・・ジョン。」

その音は、遠くから聞こえてくる波の音でした。海の音でした。
風に乗って「ザザー、ザザー」と優しい音楽のように伝わって来ていました。
「ああ、良いわねえ。とっても優しい音ねえ。ねえ、貴方。」

どこからか風に乗って、白い物が落ちてきました。
もう直ぐに、この辺り一面は、白い草原になるのでしょうか。
                              完

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書き下ろしの童話だと思って読み始めましたが、
長編でした。
よくぞここまで書かれましたね、初めての作品
なのでしょうか、すっかりのめりこんでしまいました。ありがとうございました〜。

2009/7/21(火) 午後 9:06 [ graychan01 ]

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> graychan01さん
おはようございます。私にブログを開けたのが5年ぶりくらいです。久しく遠ざかっていました。この長い小説読んでいただいてありがとうございます。読むのが大変だったでしょう。素人小説だからごめんなさいね。
あれからいくつか書いてみました。またブログを復活させようかなあ・・・・

2018/6/18(月) 午前 9:24 [ みのけん ]


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